理系女子大生 奴隷凛々子 episode2 一瞬の夏 【奴隷・雨宮凛々子】 第1部分 (1/5)
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目次
一 横浜外資系ホテル・プールサイド
二 凛々子 護国寺マンション自室
三 エスタブリッシュメントホテル東京・三三〇一号室四 凛々子 護国寺マンション自室五 横浜山手・一条邸六 東京・大河原邸地下調教ルーム七 エスタブリッシュメントホテル東京・会員制ラウンジ二〇一四年八月。
凛々子
が東京に来て、三度目の夏を迎えていた。
一
横浜外資系ホテル・プールサイド
「え。なに、これっ」
三メートルほど前を歩いていた
一条
柚花
が、突然立ち止まった。
ふたりが歩いてきた、間接照明のオレンジ・イエローの柔らかな光が優しく足元を照らす通路の終端、そこから先は夏の陽射しが眩いばかりの光を溢れさせている屋外プールへの出口でのことだ。
僅かに上りの傾斜になっている通路から外へと通じる扉は既に開け放たれており、鮮やかな青い空の色の中に、身長百五十三センチの小柄な柚花のシルエットが浮かぶ。
まるで怯えた小動物のように立ちすくんでいる柚花の背中にすぐに追いついてしまった凛々子は、「どうしたの」
と、柚花の肩越しに少しだけ顔を覗かせて外のプールサイドを見る。
「ここ、いつもガラガラなの。なんで今日に限って…」
確かに柚花が凛々子を誘った時には、外人の宿泊客がたまに泳いでるくらいよ、と言っていたし、ホテルのホームページでも「宿泊者オンリー」とされており、逆に言うと宿泊しないのにプールを使える何らかの特権を、柚花が持っているのだと理解していた。まあ柚花がというよりは、柚花の父親なりがということであろう。
思った以上に大きく、青々とした水をたたえたプールのまわりに、デッキチェアがずらりと並んでいる。
そして、そこには若い上半身裸の男性が、凛々子から見える範囲の全てのチェアに寝そべっていた。しかもなんとその全員がこちらに視線を向けている。中にはオペラグラスを覗き込んでいたり、明らかにこちら側にスマートフォンのカメラを向けている男さえも居た。
横浜ベイブリッジがすぐそばに見える場所に、一昨年にオープンしたこのホテルに、凛々子は初めて来たのだが、柚花は常連で、勝手知ったるとばかりにフロントに行き、更衣室のカードを貰い、ここに来るまでは実にキビキビとしていたのだ。それだけに、ゼンマイ仕掛けの人形が突然止まってしまったような柚花の衝撃が凛々子にはよくわかった。
「みんな大学生とかじゃない」
想定外の出来事に、足を踏み出せなくなっている柚花に、ここで立ち止まっていても仕方がないと、東京に来てからの二年間で様々な場数を踏んで、いや踏まされたことで、それ相応の度胸もつき、動じなくなった凛々子が、促すように肩を押した。
「あら」
渋々ながら小さな一歩を踏み出した柚花の後ろで、再び凛々子が声を出したのは、視界が拡がった瞬間、ひとりだけ女性が居るのがすぐに目に飛び込んできたからだった。
カラフルなパラソルの下で、黒いサングラスをして、濃い茶色の髪をアップにした彼女だけは、真っ白いTシャツの下に透けている真っ赤なビキニで、シャツ一枚の上からでもはっきりわかる胸の高さと腰のくびれを見せつけるように、両手を腰にして、まっすぐに立っている。
下半身はまさに同じく真紅のビキニパンツ一枚で、両側腰ヒモの危うい布に覆われて、まだ日焼けしていない健康的な白い腿に、本来ならそこに居る男の子たちの視線を集めていなければならない。
「あら。あれって楓花ちゃんじゃない」
凛々子の言葉に
「え」
と反応し、その頬の横で凛々子が小さく指差した方を柚花も見た。
「コンタクト外してきちゃって…」
柚花がそう言った時、妹の楓花と思われるその女は、着ていた白いシャツをいきなり脱ぎ始めた。
「え、な、…なに」
顔はよく見えてなくてもその動作はわかるのだろう。下に何もつけていないわけでもないのに、柚花の慌てぶりに思わず凛々子はくすりと笑ってしまう。
普段はおっとりしている柚花が、姉弟のこととなると、急におねーちゃんぶりを発揮するのは、いつものことだからだ。
「
楓
ちゃん」
その動作からなのか、柚花は妹と確信したようだった。
そんな姉の想いなどまるで気に留めるふうもなく、ビキニの上下だけになった楓花がこちらに向かって歩いてこようとしている。
空調の効いている廊下と、灼熱の太陽が照りつけるプールサイドのふたつの極端な温度を身体の前と後ろで感じながら、凛々子は立ちすくんでまたも動けないでいる柚花の右横に立った。
「凛々子さぁん」
楓花が、動揺しているようにさえ見える姉の存在を無視するかのように、手をあげながら名を呼んだため、凛々子も右手を胸元で小さく振って応えた。
胸元の切れ込みも大胆で、その膨らみとそれによって形成される谷間をはっきりと見せ、白く健康的な太腿の付け根の赤い布地も鼠径部すれすれの僅かな赤い布が股間を覆っているに過ぎない、女子大生が同世代の男の子たちの前で着るにしては相当勇気がいりそうな、派手なビキニの上下だけになった楓花が、まっすぐにこちらを向いて歩いてくる。
大学三年生。だが四つ上だという姉より背も高いし、乳房も大きい。
楓花とは、遊びに行った一条家での出会いの後に、姉の柚花が多分知らないであろう接点があった。凛々子と柚花が親友という存在になって、横浜の山手にある一条家の豪邸に何度か招かれるうちに、楓花はあっという間に懐いてしまったのだが、今では「親友の妹」という言葉では括れない存在になっていた。
凛々子がひと目でそれが楓花だと気がついたのも、そのためかもしれない。
プールサイドを一歩また一歩と歩くたびに、赤いビキニの胸が大きくたわんで揺れている。
先程までこちらを見ていた男の子たちの強い視線が、一斉にそこに移ったのが凛々子にさえわかるが、本人は一向に気にする様子もなかった。
姉の柚花がもちろん知らない、凛々子の秘密を楓花は知っている。
一年ほど前のことになるが、楓花ひとりで、予告なく凛々子のマンションを訪ねて来てしまったからだ。
「なにそれ、おねーちゃんの。まるで学生のスクール水着じゃないの」
すぐそばまで来ると、自分の姉をまるで見下ろすようにして楓花が言った。実際、並ぶと柚花よりも楓花のほうが十センチほど背が高いので、どうしたってそうなってしまうのだ。
柚花は、凛々子と同じ女子大学の文学部日本文学科に通う、同じ三年生だ。だが、現役で入学した凛々子と違い、一年浪人しているそうで、実際には凛々子より二十一歳年上ということになる。
身長は百五十三センチで、凛々子よりも三センチほど小さい。百六十四センチあって大人っぽい雰囲気もある楓花の方が姉だと言われても、誰も疑わないだろう。
理学部物理学科の凛々子とは、大学のピアノサークルで知り合った。
入学して早々は、まずは東京の大学に入って一人暮らしをすることの真の目的でもあった「素晴らしいS男性をみつけて奴隷になること」という「夢」を叶えることに時間を費やしていた凛々子だったが、一年の秋口になって、サークルに入れば個室でグランドピアノを使って練習が出来ると知り、半年遅れながら「入部」させて貰ったのだった。
そこに先に入っていた唯一の一年生が一条柚花だった。
仲良くなってから程なく、柚花にも凛々子と同じ血が、マゾの血が流れているのではないかと思うことが何度かあった。その後それは、妹の楓花の言葉で確信に変わったのだが、凛々子がそして妹の楓花までもが、柚花のM性に気づいているということを、本人は知らない筈だ。
また、同じMといっても、おっとり型の文学少女で四人姉弟の長姉の柚花と凛々子では、その発露は随分と違いがある気がする。
まして、それが性に関係することである以上、一番大きな違いは、柚花はまだ処女であるということだろう。当然、SM行為の実戦経験もまったくない筈だ。
「そんなことだろうと思ったからさ。気の利く可愛い妹が、いいもの用意しといてあげたから、ちょっとこっちいらっしゃいよ」
と、自らを気の利く妹と称した楓花が、自分よりも一回り小柄で華奢な姉の腕を掴み、凛々子たちが今歩いて来た通路を、更衣室の方へと半ば無理矢理に連れて行く。
あっけにとられたような顔で、何も言えないままに柚花は妹に従って行ってしまった。
このふたりの姉妹の関係は、いつもこのような感じなので、凛々子も最早慣れっこになっていた。
それにしても、どうやら姉の柚花が今日この時間にここに来るということを、楓花は予め知っていたようだ。もちろん柚花が何らかの形でそれを妹に伝えたからだろうが、大学生は夏休みとはいえ、待ち構えていたのには驚いてしまう。
「あ、凛々子さんは、ぜひプールサイドを一周して、そのビキニのおっぱいみんなに見せてあげて。そのために、こんなに男の子集めてあげたんだから」
呆然とふたりの後ろ姿を見送っている凛々子に、楓花は振り向きもせずに大声で言って、右手を上にあげて振りながら、左手で姉の二の腕を掴んで引きずって行く。
なんと。
このプールサイドの男子たちは、楓花が連れてきたというのか。
柚花と凛々子がこの時間にここに来る約束をしたのは昨日のことだ。それをたまたま知って、翌日の午後に、どうみても十代の男の子を短時間にこんなに集められるというのは、驚きでしかない。一条家と何らかの繋がりがあるのだろうが、宿泊者専用プールであるというホテル側のルールを全く無視してこんなことができるのは、お嬢様姉妹の中でも楓花だけだろう。
しかもその男子たちに、凛々子の恥ずかしいGカップ乳房を見せつけろと楓花は命じて行った。
凛々子の性癖を知っている楓花の、ちょっとしたイタズラということなのかもしれないが、万が一襲ってきたりしたらどうするつもりなのだ。柚花と楓花が更衣室へと退場している今、プールデッキに居る二十数人の中で、女は凛々子ただひとりなのだ。
楓花の同級生だとすれば、全員大学三年生だろうか。
多少大人びて見える子や、逆に学生くらいにしか見えない子も居るが、どっちにしても男の子として、もっとも女の体に興味津々の年頃だろう。
親友が更衣室へと戻されてしまった今、いつまでもそこに突っ立っているわけにもいかず、「ま、仕方がないか」とちいさな声で呟いて、凛々子は通路から明るく強い陽射しが照りつけるプールサイドへとようやく一歩を踏み出した。
長方形のプールの一方の長い辺だけではなく、短い辺の片側、そして、今凛々子が出てきた更衣室への通路に通じた出入口の両側にもデッキチェアが置かれ、男子は全部でやはり二十人近く居た。その様子からどうやら全員が、楓花の「仕込み」の男子たちということのようだ。
プールのふちをゆっくりと時計の針と逆方向に歩き始める。
集団心理がどう働くかはわからないが、最初は見る方だって恥ずかしいというか、照れくさいはずだ。
だが四十以上の目は、その全てが凛々子の動きを、いや凛々子の乳房を追っているのが、はっきりと認識出来る。
照れている様子など全くと言っていいほどなかった。
だが、自分の胸に視線が集まるのは、まともに服を着ていようと水着であろうといつものことだ。
堂々と歩け。凛々子は自分をそう励ました。
見たければ見ればいいのだ。どうせ、ビキニは見てもらうための水着でもある。
見て。
わたしの、おっぱい。
Gカップもあって、みんなのお友達の楓花ちゃんよりも大きいでしょ。
小走りになって、大きく揺らして見せつけたいというこみ上げて来た欲望をかろうじて押さえて、胸を張って歩く。
そう。女には「見られたい願望」が誰しも少しはある。
恥ずかしいというのは、その裏返しで、決して凛々子のような性癖を持った女だけの特有なものではないのだ。
堂々としていれば、逆にそうマジマジとは見られないのではないか、そう思ったのは、凛々子の予測違いで、男の子たちはますますギラギラした視線を一点いや二点に集中してくる。
「おねーさん、かっこいい」
「すげーおっぱい。触らせてー」
「腰のひらひらも取って見せてくれよ」
「おっぱい、おっぱい」
口笛や指笛を鳴らしてくる子も含め、誰一人全く臆することなく、年上の凛々子に無遠慮な視線と言葉をぶつけてくる。
マリンブルーを基調に白とピンクで大きめの花柄をあしらったビキニの上下に、同じデザインのふんわりした素材のパレオを腰に巻いた凛々子は、年下の男の子たちに囃し立てられながら、背筋を伸ばして姿勢よくプールサイドを歩き、先程楓花が立っていたパラソルの下まで来た。
見られることが大好きだ。
恥ずかしい。
おっぱい。
学校の高学年の頃から同級生の女子の中でもっとも成長が早く、コンプレックスと羞恥の源泉だった凛々子の乳房。
このおっぱいのせいで、マゾになった。凛々子は自身でもそう認識している。
女子大に合格して、二年間、マゾとして奴隷としての調教を受け続けたことで、凛々子は自分のその見られたい願望、露出願望を前向きに肯定できるようになっていた。いや、肯定している自分を認めてあげることが出来るようになった、と言った方がいいかもしれない。
でも、数を頼みにギラギラとした視線を向けてくるとはいえ、見物人は所詮はまだ大学生のガキンチョたちだ。歩きながらチラチラと様子を見たことで、この男の子たちが、楓花の同級生あるいはそれよりも若い後輩たち、つまりは二十一歳以下の「子供」だとわかってしまった。
大人の男に、お前マゾだなあ。恥ずかしいおっぱいしてるなあ。そういう目で見て欲しいし言ってほしい。
二年間で蓄積した凛々子のマゾとしての感情であった。
年下の男の子に対して恋愛感情の可能性や性的興味がないことに、この二年で気づいてしまっているのだ。それだけ大人の男たちに見られ、調教されて来たという経験値は大きかった。
だが、ただひとりだけ気になる年下の男の子が居る。
でもその子は多分この場に混じっているということはないであろうという確信もあった。なぜなら、その男の子というのが、柚花や楓花の弟だからだ。
太陽
君や
陽花
ちゃんまで楓花が呼んでいる筈はないと思えたし、男女の双子であるにも関わらず、こちらがやきもちを焼きたくなるくらいに仲のいい二人のうち、片方だけつまり太陽だけがこの場に居たりはしないと思う。
男子だけである以上、陽花が居ないのは確実なのだ。
それに。
太陽がもしこの中に居たならば、他ならぬ凛々子自身がその存在に気づかぬわけはない、と思うからだ。
「凛々子さーん、スライダー行くよぉ」
更衣室への出入り口スペースから、戻ってきた楓花が凛々子に大きな声をあげる。
その様子からは、どちらが姉でどちらが妹かわからない小柄な柚花が、身体を縮めるようにして楓花の前に立っていた。
先程の紺の地味な競泳水着から、鮮やかな蛍光グリーンの、しかも胸も腰もその肌を覆う部分の布がかなり少なめのビキニに着替えさせられていた。
ブラは、胸の前でねじりのあるチューブトップだ。
「柚花、かっこいいじゃん」
柚花の耳に届くはずもないが、凛々子は励ますように呟いた。
楓花は、姉のマゾ的な気質についてもう何年も前から気がついていたという。
露出度が高くて目立つ水着を用意し、臆する柚花にあのような露出度の高い水着を着るように強制出来るのも、この世に楓花以外には居まい。柚花のある意味ウィークポイントがすぐ下の妹の、自分とは対象的に発展的で活発な楓花なのだった。
いや、もうひとりそれを柚花に命じることが出来る人間が居るかもしれない。
もし、居るとしたらそれは、自分だ。
楓花は妹として、凛々子は親友として柚花のことが大好きだからだ。
凛々子が立っている場所のプールを挟んだ正面に、ホテルプールとしては珍しいのかもしれないウォータースライダーがある。
ホテルの謳い文句では、滑り出しの位置が十八メートルの高さにあるという遊園地のプール並の本格的なものだ。
しかも、宿泊者限定というルールの他に、プールそのものには二十一歳未満入場不可という制限がついている、まさに大人のための「滑り台」なのだ。
宿泊者限定というルールは、柚花も楓花もあっさりと破ってみせているが、年齢制限の方はどうなのだろうか。まあ少なくとも今は大学生以上、いや凛々子と柚花以外の全員が大学生そのものという状況だ。
パラソルの下で、右の腰の結び目を
解
くと、青いパレオはハラリと凛々子の身体から離れ、一枚の大きな布になった。
ちょうど男の子の半分以上は、柚花と楓花を見ていて、凛々子への注目は少なめだった。
スライダーかぁ、大丈夫かしら、と胸の内で呟く。
楓花のビキニを見て布面積が少ないと思ったものの、自分のビキニとて同じなのだ。ブラトップはそれなりに凛々子のGカップの乳房をホールドしてはいるが、ボトムの方はお尻はほとんど丸出しで、前の部分も肝心なところをかろうじて隠しているに過ぎない。
そしてもうひとつ。
ブラトップはパッドを、ビキニパンツも本来はあった内側の白い布を外してあるのだ。
マリンブルーやピンクの花弁の色の部分が透けることはないだろうが、それなりに白い部分を配してあるデザインで、そこは濡れると確実に透けて、凛々子の肌を晒すことになる。
水着を着用する場合、という凛々子の「ご主人様」の妻、大河原美奈子からの直々の指示で、持っている水着全て同じような細工をしてある。
それでも今回は、柚花と普通にプールで泳いだりダラダラしたりという午後のひとときを楽しもうと思っていただけなので、もっとも透ける部分の少ないものを着けてはいる。
軽い露出気分が楽しめればラッキー、くらいの気持ちはもともとあった。
だが、年下の子たちとはいえ、こんなに多くの男の視線に晒されることになるとは。
そんなことを思ったせいか、乳首が硬く尖ってきたのも意識せざるを得ない。肝心な部分が透けて見えてしまうかもということ以上に、ビキニの下で乳首が勃っているのが男子たちにわかってしまうのではないか。それはやはり強烈に恥ずかしい。
恥ずかしいと思うと、乳首はますます硬さを増し、あて布のないビキニパンツの内側も潤み出してしまう。
事態はどんどん「悪化」するばかりだ。
雨の六本木交差点を傘もささずに、ノーブラで白いシャツ一枚を透け透けにして歩かされた経験から二年、それを皮切りに場数だけはそれなりに踏んだと自分でも思う凛々子は、小さく息を吸って、そして吐き出すと、柚花と楓花の姉妹を追ってビーチパラソルの下を出た。
柚花は楓花に手を引かれ、プールサイドを反対側のウォータスライダーの登り口に向かって歩いて行く。
姉の柚花は後ろから見ても、楓花の肩の少し上くらいの背丈だ。ぷりぷりとよく動くふたつのお尻がデッキチェアの男子たちの視線を集めている。
お尻の大きさでも楓花が姉に勝っている。
しかも楓花はビキニパンツはほぼTバックのものをつけているため、その白いお尻の山の大半が丸出しだった。
男子たちは、席から移動してはいけないとでも言われているのか、誰一人その視線以外の動きを見せない。したがって、広いプールの水の中には相変わらず誰もおらず、プールサイドを歩いていくのがいいか、それとも思いきって水に飛び込んで泳いで反対側まで行くのがいいか、凛々子は迷った。
バシャーーッ、という音をたてて今プールに飛び込めば、その視線はすべて凛々子に集まるだろう。
水着も濡れて、透けるところは透ける。
だが、飛び込んだ後に背泳ぎで泳ぐわけにはいかない。
年下であれ男には違いない連中にこの際だから「見せつけたい」。
見られるとしたらやはりおっぱいだ。パンツを脱いで最も恥ずかしいところを見てもらえるわけではないのだ。
おっぱい見て。
できれば若いおちんちん…おちんぽ勃起させて。
凛々子は小走りに前を行くふたりを追った。
水に入って透けているのが、楓花にみつかると確実に見咎められてからかわれるだろう、というのもあった。
楓花は知っているのだ。
凛々子が強度のマゾで、露出に興奮する体質であることを。
それを柚花の前で言われるのは、恥ずかしい。
「透けちゃってるよ、凛々子さん」
そのひと言だけで、逝ってしまうかもしれない。
そんなことを半分思いながら、半分は男たちの視線を受け止めて走り続けた。
青地の中に映えているピンクの花が歪むほどに、胸は大きく上下している。
五メートルほど後ろまで追いついたところで、ようやく凛々子は走るのを止めて、ふたりの速度に合わせて歩くことにした。
少し息がはずんでるせいで、おっぱいはやっぱり揺れている。
凛々子がひとりでプールサイドに出てきたときに囃し立てた男の子たちは、今度はじっと三人の女の歩く姿をひと言も発さずに見守っている。
長方形の二十メートルプールの先に、人ひとり通るのがやっとの通路があり、それを挟んで横幅が大プールの半分くらい、長さは二メートル程度の、スライダー用の着水プールがある。
見上げると、一度屋外にまで飛び出す構造になっているらしいスライダーの筒は、複雑にループを描いて、最後はこの着水プールに向かって筒ではなくすべり台の形状で、六〜七メートルほどの結構な急斜面を一気に滑り降りてくるようになっている。
下から見上げると曲がりくねっているループの部分の床面は透明で、今は空の青色がスライダー越しに見える。これはこの位置からは、滑っている人のお尻がいい感じで視姦出来てしまいそうだ。二十一歳未満入場禁止の大人のプールとして面目躍如ということなのだろうか。まあ女の子のお尻が滑って来るとは限らないわけだが。
何れにしても、今は誰も滑り降りてくるものはおらず、直線部分の斜面をちょろちょろと水だけが流れ落ちてきているだけだが、ここを滑り降りてくる様子はプールサイド三辺どこからでもよく見えそうだ。
着水プールの脇を通りすぎて裏手に回ると、ここから先は男の子たちの視線は遮られている。さらにスライダーの複雑な曲線の下を通っていくと階段があり、既に登り始めている柚花と楓花の姿は、二十段ほどで折れ曲がっているその先に行っていて見えなかった。
「高級ホテルだからって、やっぱ階段よね」
と、凛々子は小さく声に出して言った。
十八メートルといえば、ビル何階分かしらと思いながらゆっくりと階段を上がりはじめる。
二年前の夏に夕立の中を傘もささずに六本木交差点を三周、濡れてスケスケになった乳房丸見えの状態で歩かされた後に、SMホテルまで三十分近くかけて歩き、さらにそこでまっ裸にされて、ホテルの階段を六階まで上がらされた時のことを思い出した。
泣くほど恥ずかしいことをされたい、その願望が初めて叶った日のことだ。
「オッパイ」
学校五年生の時に男の子たちの間でそんなあだ名がついたほど、他の女子よりも早く成長し、それ故に幼い頃から男の子にからかわれ、羞恥とコンプレックスの源泉であり続けた凛々子の乳房。その裏側でまるで乳房の成長に合わせるように育ってしまった凛々子のマゾ性。恥ずかしければ恥ずかしいと思うほど性的な疼きを高めるマゾの凛々子にとって、ふたつの丸いおっぱいは「奴隷」としてのシンボルであり続けている。
ビキニをつけているとはいえ、あのスロープを滑り降りるときには、プールサイドの男の子たち全員の視線を浴びることになるだろう。
最初の羞恥のミッションから場数も踏んでいる凛々子は、むしろビキニを毟り取って男の子たちに生の裸の乳房を見せつけながら滑り落ちたいという衝動すら感じる。
視線を下げると、階段を一段また一段と上る間も、Gカップの乳房が揺れている。スカイブルーのビキニは、谷間を強調し胸をさらに大きく見せている。
「こんな大きいおっぱいで、こんなに綺麗なんて」
と、美奈子奥様や先輩奴隷のゆかりにべた褒めされる、「乳房の形と乳輪と乳首のバランスが最高」のおっぱいを皆様に見ていただき、そこに視線を感じることであっという間に濡れ濡れになってしまう毛のないパイパンの性器…おまんこも、大勢のあの男子たちに視姦されてみたい。
新宿のあのホテルの最上階でのショーで、足を広げ手で性器を拡げてピンク色の内部まで丸見えにしたところを大きなモニターにドアップで映された時のことまで突然思い出し、太陽の光が熱く照りつけるあのスロープを全裸で開脚して滑り降りることまで妄想してしまう。
足を大きく開いて、両手でおまんこ拡げて滑り降りたらどんなに恥ずかしいだろうかと。
「凛々子ねーさま」
何度か折り返しをしながら登ってきた途中の踊り場に、真紅のビキニの楓花がひとりで待っていた。
「あら、柚花は」
「アネは、さっさと上がっていったよ」
楓花は四つ年上の姉の柚花を、本人に向かってもアネと呼んだり、あるいはユウカと呼び捨てにしたりする。
更衣室で外してきたのか、サングラスを外した楓花は、キラキラした目で凛々子を見た。凛々子が踊り場まで昇りきって並ぶと、少し意味ありげに笑う。真っ白い歯が覗いて、眩いばかりの二十一歳の口元に思わず吸い寄せられてキスをしたい、そんな気持ちになる。
これまで凛々子の部屋にやってきた楓花に「チューしてっ」とせがまれて、ごくごく軽く口唇をくっつけあうような、そんなキスをしたことが何度かあった。
だが今日の楓花は、いつもより毅然としている風にも見え、キスをせがんでくるなどという様子もなく、凛々子は少しだけ失望感を味わった。
「待っててくれたのね」
なのにちょっとそっけないのね、という次の言葉はもちろん飲み込む。
返事の代わりにまたにっこり笑って見せた楓花と、今度は肩を並べてまた階段を上りはじめる。
「あのね、いま一時四十五分じゃない」
楓花は腕に巻いている、女の子が、ましてや細身の女子大生がつけるにしてはあきらかにごつい印象がある、男物のダイバーウォッチを凛々子に見せながら言った。
時計の長針はあと十五分弱で午後二時というところだ。
「実はね、ここのスライダーって水流を変えられるようになってんのね。で、二時きっかりになったら、通称ビキニ剥ぎスライダーって言うんだけど、水の量を増やして流れも早くしてくれることになってるの。さっき頼んできたから」
ビキニ剥ぎ。その言葉に先程からの妄想を読み取られたようで、ドキドキしてしまう。
楓花は、凛々子のそういう秘密も充分に知っているからだ。
「まあ、本当はもちろん元気な男子用の高速スライダーなんだけど、ビキニの女の子が行くと面白いようにブラが外れたり、下手するとパンツのヒモまで解けて取れちゃうの」
柚花をチューブトップのビキニに着替えさせたのは、単に際どいビキニを着せて彼女のM心を満たしてやろうという程度のことではないらしい。
「で、私はさ。ほら見物人がみんな同級生だから、生のおっぱい見せるわけいかないから、その前に降りちゃうけど、アネには言ってないからさ。二番目は凛々子さんが降りて、アネ三番目にしてさ、もちろん凛々子ねーさまも二時過ぎてからね。で、ユウカのビキニは間違いなく取れておっぱい丸出しになるから。うまくいったら横紐も外れてパンツも脱げるかも。アネの願望叶えてあげたくて、男の子こんなに集めて貸し切りにしたんだから、凛々子ねーさまも協力よろしくデス」
プールのフロントの対応でも凛々子たちに対して貸し切りなどという気配はまるで感じなかったが、やはり一条家でこの時間帯、占有していたのだ。まあ、柚花は知らなかったということなのだろうが。
「凛々子さんも、当然そのおっぱいくらいはサービスしてよね。みんな楽しみにしてるから。ま、パンツは手で押さえてアソコ丸出しまではしなくていいからさ」
先程の凛々子の空想を、楓花は知っているかのように言われて、話を柚花の方に逸らさざるを得なくなってしまう。
「それにしてもよくチューブトップなんて、柚花に着るの承知させたわね」
「着てみたいに決まってるし、それに私たちのおっぱいじゃあんなのつけられないじゃない。ショップだって、AカップからCカップまでしか売ってなかったもの、コチチ用なのよ、アレって」
「そう本人にも言ったの」
「言った」
小乳とはひどい言いようだ。
柚花もCカップとはいえお椀型のとてもきれいで形の良い乳房をしている。今日の更衣室では、すでにあの競泳水着をワンピースの下に着てきていたが、一緒に温泉旅行に行ったりもして、柚花の裸を目にする機会はこれまでにも何度かあったのだ。
「ユウカも何回かここに来てるけど、多分高速水流のことは知らないと思うから、滑り降りるまでは絶対に内緒ね」
柚花の方はこれまでスライダーにはあまり興味がなかったのだろうか。
「かわいいいっ。いい、全然いいよ、柚花ちゃん」
お世辞でも何でもなく、派手なチューブトップとハイレグパンツの蛍光グリーンのビキニが、柚花によく似合っていた。
「じゃ、齢の若い順ってことで」
ダイバーウォッチを再び確認して、楓花が言う。
「なにそれ、失礼ね楓花ちゃん。普通、上がってきた、並んだ順でしょう」
「いいからいいから」
なんでも姉に対して決めつけて行動する真ん中の妹の言動には慣れっこの柚花が、ちょっとだけ怒ったふりをするが、楓花の思惑通りまんまと楓花、凛々子、柚花の順で滑ることに決まった。
「じゃ、先行くね」
スタートの場所にはちゃんと自分たちと同じくらいの年頃の女の子の係員が居た。
カラフルな色使いのストライプのビキニの上に、ピンク色のパーカーを着ている。
「さすがね」
「うん。後はうまいことよろしくデス」
スタンバイした楓花のところへ行き、今の様子を確認すると、水はちょろちょろと流れている程度で、まあごく一般的なスライダーと変わらないか、むしろ少ないほうかもしれない。
水の量もそうだが、スライダーは、座った状態で滑るか仰向けに寝た状態で滑るかによって、スピード感は全く違う。感じ方というよりも、実際に接地面が増えたほうがスピードは出るためだが、体感は速度以上だ。
「じゃ、いってきまーす」
後ろの柚花にも聞こえる声で楓花は言うと、お尻を少し進めて斜面に出るところで身体を横たえあっという間にカーブしている筒の中へと消えていった。出発してすぐに座った体勢では通れない筒があるため、必ずスピードの出る横臥での滑走をするしかないようだ。どんな進路になっているかは、外側からもだいたい下までの形状はわかるものの、それでも初回から寝て滑るのは結構怖い。だが、今更そんなことを言っても始まらないのだ。
そして、凛々子の目の前で、スライダーの両横から出てきて流れ落ちて行っている水の勢いが、目に見えてはっきりと変わった。
十四時になって、予定通り「ビキニ剥ぎ」という凶暴な牙を剥いたというわけだろう。
「前の人が下で着水したらここのランプが変わりますので、それまでもうちょっと待ってくださいね。メガネや貴金属は外して下さい。危険ですから途中で態勢を変えて座ろうとしたり、うつ伏せになったりしないでください」
水流の変化については、気づいているのかいないのか、係の女の子はそれには全く触れずに注意事項だけを淡々と言った。ビキニは危険なので胸は押さえて、くらい言うのかと思ったがそれもなかった。
「はい、どうぞ」
ランプが信号機のように赤から青に変わって女の子に促される。
水は最初に座る位置の少し下、斜めにスロープが始まる両サイドから、じゃぶじゃぶと先を急ぐように落ちていっている。これを見ても何度かここを使ったことのある柚花は、いつもと違うと気が付かないものなのだろうか。
「滑り出したら、危ないですからすぐ仰向けになってくださいね」
どん。
心のなかで言って、台に上がる時に両手で掴んでいたサイドの部分を漕ぐようにして、手を離し、滑りだしたお尻を意識しながら、横になる。
身体を斜面にあっという間に取られ、顔の上に淡いブルーの天井が見えて、それほど急な斜面ではないものの、下を流れる水の勢いに乗ってどんどん加速していき、右に曲がったと思ったらすぐ左だ。
座って滑れば、およそ次にどんなカーブが来るか目に見えてわかるが、横臥していてはそれもない。
東京ディズニーランドにスペースマウンテンという、宇宙を模した暗闇の中をいくジェットコースターがあるが、あれの一番前に乗って突然右に左にガクンと振られる、その感覚に似ていた。
いずれにしても、斜面と水流に身を任せていくしかないのだ。
何回か右に左に急角度で振られた後、目の前がパッと明るくなった。スライダーの形状が筒状ではなくなり、カプセルの中を滑り降りるという状態から、曲がりくねったすべり台に変わったのだった。
そしてそこから一段階斜度が変わったのがはっきりとわかり、身体もまたしても右に振られ、左に振られたと思ったらすぐにまた右と、振り落とされんばかりになりながらどんどん加速していくのがわかる。
「あ」
普通に身体の横にまっすぐ伸ばしていた手で、慌ててビキニパンツを押さえる。楓花の言葉を思い出したからだ。
だが次の瞬間の急カーブで、「きゃっ」と声を出す間もなく凛々子のビキニトップの青色が顔の上を突然通過して行った。
取れるにしてもホックが外れて、それを慌てて抑えているうちにパンツが脱げそうになって、そっちに気を取られたら肩紐が抜けてしまって…などという段階をなんとなく想像していた凛々子には、一瞬でブラが外れて吹っ飛んでしまったのは、まるで想定外の出来事だった。
な、なんで…。
あごを引いて目線をやると、凛々子の乳房の山は当然ふたつとも剥き出しで、滑り落ちていく勢いでこちら側に少し歪な形になっているが、双の乳首は勃起してその存在を主張していた。
な、生の裸のおっぱいを男の子たちに見られるのだ。
と思った瞬間に、これまで左右どちらかに身体を捉えていたGが突然なくなった。
ついに直線部分になったのだ。
目を閉じたいのを必死でこらえて、プールサイドを…。
居ない。いくつか目に入った白いデッキチェアは、そこにさっきまで居た大学生の男の子たちではなく、白い格子の椅子そのものが見えるだけだった。
と、次の瞬間、ジャパーン。
着水プールの底に向けて、スライダーから一気に放り出されお尻がそのままガクンと落ちしずんでいく。
足をつけて、半ば必死で立ち上がって水面に顔を出すと、水は腰のあたりまでしかなかった。
「きゃーーっ」
何故か一瞬忘れていたことを思い出したのだった。
乳房が、おっぱいが丸出しだということを。
パチパチパチ。
「わーーっ」
「おーーっ」
「すげーーーっ」
えっ。
「きゃーーーーっ」
慌てて手で両乳を抱いて隠したものの、数秒間とはいえ完全に丸出しの乳房を晒してしまった。
目の前に楓花が居たのは想定内だが、なんと着水プールに十人近く、そしてその向こうのプールのこちら側で残り全員の男子たちが、凛々子に、いや凛々子のおっぱいに熱い視線を注いでいたのだった。
「ふ、楓花ちゃん…」
「凛々子ねーさんの、おっぱいサイコー」
楓花が言うと、おーーっ、という声とともに、男の子たちが拍手をする。
それでもすぐに、男の子のひとりがプール備え付けの白いバスタオルを手に寄って来てくれた。
「お、ビキニも来たぞ」
十秒以上遅れて、外れたブラトップが流れて来たというので、「ありがと」
と、タオルを差し出してくれた子にお礼を言いながら振り向く。
ただの布切れとなった水色のビキニは、ブラの内側を上にして流れ落ちてきていた。
「ブラを取った人、おねーさんからキスもらえるよ」
という、楓花の囃し立てに、近くに居た数人がわっと凛々子の外れた水着を取りにバシャバシャと水の中を走る。
それを手にしたのは、走り寄った中では一番背の高い男の子だった。
「ブラの内側のおねーさんのおっぱいの匂い嗅いでみてぇ」
楓花がさらに追い打ちをかけるように言う。
「や、やめてーー」
慌てて凛々子が声を張り上げて、左手のタオルで乳房を隠しながら、水着を手にした男の子に右手を伸ばすが、集団のボス的存在であることがあきらかな楓花の言葉を彼が実行しないわけはなかった。
もちろん、水の中を流れて来たのだから、「おっぱいの匂い」なんてするわけないと思ったのだが「おーー、ミルクのいい匂いだー」
背の高い男の子は本当に鼻をブラの内側に埋めるようにして言ってのけた。
「はい、返すときチューしてもらってね」
当然ほっぺを出してくるかと思いきや、まるで自分の女にするかのように、近寄って来てかがんだ彼は、直前まで右手に持ったブラの匂いをかぐふりをしながら、左手で凛々子の顔を引き寄せ、いきなり凛々子の口唇に柔らかいくちびるを押しつけてきた。
一瞬のことだったし、舌を入れられたわけでもないが、しっかりと口唇と口唇が重なったキスをしてしまったのだった。
「やったー、ついに凛々子さんの生おっぱい見て、キスもしちゃったぜー」
え。
「た、太陽
君」
スラリとしたその彼は、なんと柚花たちの弟、男女の双子の片割れ、一条太陽だった。
絶対居るはずがない、スライダーに上る前に確かに目でも確認したはずだが、実際に今口唇を押し付けてきたのは、柚花と楓花の弟に間違いなかった。
「タイヨウ、やったねーー」
プールサイドから、イエローのかなり際どいビキニトップに黄色と赤のパレオを腰に巻いた女の子、一条陽花が凛々子の顔を見て右手を振ってよこした。
まだ二十一歳ながら、背は長女をとっくに追い越し、凛々子と同じかむしろ少し陽花の方が高いくらいだ。しかも胸の膨らみは既に三姉妹の中でこの陽花が一番豊かで、陽花自身もそれをよく姉たちに自慢しているのを凛々子も何度も耳にしている。
「ひゃっ」
そばから離れない太陽にもう一度顔を引き寄せられてチュッと口唇を当てられ、しかもその短いキスから顔を離す瞬間、大学一年生の太陽が、タオル越しとはいえ、凛々子の左の乳房を一瞬揉んだため、凛々子はびっくりしてプールの中で飛び退った。
「こらっ」
さすがに、ふたつ上の姉の楓花が弟を叱る。
太陽が凛々子に少々熱い視線を送ってきていたのはこれまでもあったし、凛々子自身も年下の男の子には興味がないと自身では思いつつも、なんとなくこの子だけは別格という気持ちもある。だが、こんな直接的な行動を取ってくるとは思いもよらないことだった。
プールで水着、当然男の子たちは全員上半身は裸だし、凛々子もバスタオルの下は同じ。そんな開放的な雰囲気が、二十一歳の男の子を大胆にさせたのだろうか。
びっくりはしたものの、決して悪い気はしていない自分を凛々子は自覚していた。
次の瞬間だった。
「きゃーーーっ、見ないでー」
スライダーの直線部分を女が、それも真っ裸の女、柚花が滑ってきた。
しかも叫んだものだから、一斉に全員の視線を集めてしまった。
横になっていても形よくこんもりと盛り上がっているCカップの乳房も、股間の黒い陰毛も丸見えだ。
ドッボーン。
派手な音を立てて、裸身がそのまま水中に頭まで一度沈む。
「どぅあに、これーーっ」
水から顔を出した瞬間に柚花が言った。
頭が真っ白になって不用意にまっすく立ち上がってしまった凛々子と違い、柚花は顔だけ水面に出しただけだ。
水中では、左手で乳房もガードしている。
「パンツが先に来たぞー」
今度は楓花か何かを言う前に、何人かの男の子たちがじゃばじゃばと水中で蛍光グリーンのパンティに群がる。
「フトハル」
太陽のことを普段から時々そう呼ぶのは、双子の陽花だ。自分の名前が「陽」の字をハルと読ませる以上は、双子の弟太陽もそれに習うべきであるという、陽花の勝手な言い分に負けじと、太陽も「ヨウカ」と呼び返すのを聞いたこともあるが、この時は陽花の目的に気づいて、片手をあげただけで、ようやく太陽は凛々子のそばを離れた。
その太陽に向かって陽花がタオルを投げて寄越したが、あとちょっとで届かずにワインレッドのタオルが水面に一度浮かんだ。凛々子が胸を隠している白いタオルよりも一回り小さいビーチタオルが、弟の手から柚花に渡されるが「な、なんで陽花ちゃんや太陽君まで居るのよ。ていうか、な、なんで」
こんなにたくさんみんなプールにいきなり入っているのよ、ということだろう。
「うちのおねーちゃんのおっぱい見れたひとぉ」
はーーーい、とほぼ全員が声に出して、そして手をあげた。
「おねえちゃんのビキニ、ブラもパンティも欲しい人持って帰っていいわよぉ」
「いやーーっ。や、やめてーーー。出られなくなっちゃう」
柚花の悲痛な叫びは、「あ、やっとブラも来たぞ」
という声に呼応した、うわーーっとそれに群がる男子たちの歓声にかき消された。
二
凛々子
護国寺マンション自室
ポロロン
♬
。
可愛い電子音は、スマートフォンのLINEにメールが届いたという音だ。
この便利だと言って大人気のチャット用のソフトを、凛々子は親友である一条柚花の妹、まだ大学生の一条楓花とだけ繋いでいる。
従って、この着信音が鳴った場合は、楓花がメッセージを送ってきたということなのだった。
「夜、ラインするね。きっと面白いもの見せてあげられる。スマホよりパソコンのほうがいいよ」
凛々子と柚花がそろってビキニ剥ぎスライダーの餌食になり、「おっぱいポロリ」、柚花に至っては女の子の大事なところの毛の生え具合まで楓花の友達の大学三年生の男子たちに晒した挙句、「おねえちゃん、取り敢えずプールから出ちゃいなよ」
と、プールサイドに居た下の妹の陽花に言われた柚花は、ワインレッドのタオルで胸から陰毛までを隠した状態でようやく立ち上がり、男どもがひしめきあう着水プールから脱出した。
だが、当然その際に隠すことの出来ないかわいいお尻を、プールの中に居た全員の男の子たちに見せることになってしまったのだった。
凛々子が受け取ったのは大きいバスタオルだったので、巻きつければ胸もお尻もなんとか隠せてはいたが、柚花のそれは小さすぎて前を隠すので精一杯だったからだ。
もちろんまだプールの中に居た凛々子も、そのくりくりした柚花のかわいいお尻をしっかりと見た。凛々子でさえ、わーっと思ったのだから、大半はまだ自分の家族の中に居る女、母親や姉や妹などの尻しか見たことのないであろう男子大学生たちのボルテージは大変なものがあった。
「おねーさんももう一回、そのデカパイ見せてよ」
「おしえてくださーい、何カップですかー」
などと、柚花がプールから出てしまうと、再び彼らの興味と興奮した目は凛々子に注がれたが、ワイワイと盛り上がる男の子たちに、楓花がパンパンと手を叩き、「はい、みんなご苦労様。もう帰っていいよ」
と、宴の終焉を告げた。
「えーーっ」
と抗議の声をあげながらも、もともとそういう段取りでも言いつけられていたか、大学生たちは次々にプールを出ると、更衣室に続く通路へと消えて行った。
もちろんその際も、楓花のビキニの胸はもちろん、凛々子のバスタオルの上端からはみ出している胸の谷間も、デッキチェアでようやく大きい白のバスタオルを先ほどのワインレッドのタオルの上から巻いた柚花のことも、その下の妹の陽花の二十一歳にしてFカップの胸元も、挨拶で頭を下げるという名目の元、チラチラと見ていったのはご愛嬌だろう。
ビキニのブラを付け直した凛々子と、楓花、陽花、太陽の四人はその後もプールあそびを楽しみ、白い大きなバスタオルを全裸に巻いた状態で、更衣室に着替えに行っちゃダメと言われた柚花は、陽花が持ち込んできていた文庫本をデッキチェアで読みながら、時々プールの中の親友と妹弟たちを眺めていた。
水流を元の穏やかなものに戻して貰ったスライダーもさらに二度やったし、水に出たり入ったりしながら、どうやら夜まで一条家で貸し切っている高級ホテルプールを存分に楽しむことが出来た。
陽花も太陽も先程、姉の裸だけではなく凛々子のGカップの生乳房を見たことも、太陽にいたっては年上の姉の親友にキスもして、タオル越しとはいえ乳揉みまでしたことなど、すっかり忘れたように、そのことをおくびにも出さない。
内布を外してある凛々子のビキニトップは、乳首の存在を隠しきれず、水着の上からでもはっきりわかる状態で、見ないようにしていながら、ついチラチラと視線が胸に来てしまう太陽が可愛かった。
「おねーちゃん、家族しかいないんだから、すっぽんぽんでもう一回スライダーしたら」
と、楓花だけはまた無理難題を言ったが、さすがに柚花もそれには応じなかった。
家族だけとは言っても、スライダーの係員も居れば、念のためのプールの監視員の子も居る以上は、いくら楓花には言いなりになってしまう柚花とて、恥ずかしくて無理だったのだろう。
その後は、なんとプールサイドで軽いイタリアンの夕食まで出て、凛々子はスパークリングワインを、柚花はトロピカルカクテルを、他の若い三人には見た目だけは全く柚花のものと変わらない、トロピカルドリンクのアルコール抜きバージョンが供された。
ホテルのレストランが提供する新鮮なお魚のカルパッチョも、生ハムもアヒージョもステーキも海老のオリーブオイル焼きも、そしてタラバガニのスパゲッティをはじめとする三色のパスタもその全部が美味しかった。
食べ盛りの男の子の太陽が居たし、楓花も陽花もよく食べてよく喋ってよく笑った。何度か一条家にお呼ばれしてこの家族と一緒に食事をしているが、本当にこの姉弟は仲が良くて、普段は家族団らんから離れてひとり暮らしの凛々子にとっては、とても心が安らぐひとときだ。柚花と親友になれたことに、そして家族の中に招いて自然に振る舞ってくれる姉弟たちに感謝で一杯だ。
スライダーでのハプニングがあったとはいえ、いやそのハプニングだって、凛々子は当然ときめいたわけだが、特に姉弟の盛り上げ役でもある楓花には驚かされることばかりで、それでも誰もわだかまりもなく居られるのは、この次女の一種の才能なのかもしれない。
最後まで裸にバスタオル巻きだった柚花は、「ビキニ剥ぎ」がその楓花のイタズラだとわかっているのかどうか、少なくともわざわざビキニを着せられて、それが二十人の男子大学生の前で無惨にも剥ぎ取られ、真っ裸で七メートルの直線コースを滑り降りる羽目になったというのに、妹を咎めるような素振りはまったく見せず、食事中も終始にこやかに妹たちのはしゃぐのを見守っていた。
楓花が柚花のアルコール入りのドリンクと自分のノンアルコールのそれとをこっそり交換したことも、見て見ぬふりというか、「メッ」という表情をして見せただけで、駄目だとは言わない。
そんな風に四人の姉弟に長姉の親友が入った晩餐は二時間近くかけて続いたが、夏の空がまだ明るさを保っているうちに、四人で凛々子をホテルから歩いて十五分ほどのJR石川町の駅まで送ってくれたのだった。
楓花の、夜になったら面白いものを見せられる発言は、改札で別れ際にわざわざ寄ってきて耳打ちされたものだ。
このところ週に一回は凛々子の部屋にやって来る楓花は、凛々子がマッキントッシュのデスクトップパソコンiMacを机の上に置いていることをよく知っている。
スマホを手にすることなく、凛々子は直接スリープ状態にしておいたマッキントッシュをマウスを動かすことで起動して、ラインのアプリを立ち上げた。
『凛々子さん、起きてる?』
さきほど楓花が送ってきたメッセージが表示される。
はい、というお気に入りのラインスタンプを送った後、『起きてるわよ』
とタイピングする。
『案の定、はじめてるわぁ』
これだけで、凛々子は誰が何を始めたのか想像がついた。
続いて楓花が送ってきたのは、比較的長いアドレスのURLだ。
クリックしてみる。
『パスワードは、taiyoutohananoie』
立ち上がったブラウザーの中央に、黒い動画の画面が出て、その真ん中にパスワードを要求するテキストボックスが表示されている。
送られて来たパスワードを
「太陽と花の家かぁ。ある意味まんまじゃないの」
とひとり言を呟いて、マウスを使って入力ラインへとコピペする。
「えっ」
理系女子大生 奴隷凛々子 episode2 一瞬の夏 【奴隷・雨宮凛々子】 第1部分 (1/5)
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