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毛皮のヴィーナス:ポランスキーとアイヴズの舞台映画

ロマン・ポランスキーが撮った2013年のフランス映画『毛皮のヴィーナス』(原題 La Vénus à la fourrure)はブラック・コメディである。ドイツ語圏の作家レーオポルト・フォン・ザッハー=マゾッホの背徳小説を舞台化しようとしている台本作家と、ヒロイン、ワンダ役のオーディションに現れた謎の女性とのやり取りを、二人芝居の密室で描く。原作がマゾヒズムの語源になった契約と毛皮の物語である以上、映画もまた、役を読むうちに支配と服従が入れ替わる心理劇になる。

台本作家トマ・ノヴァチェクは、主人公ワンダ役のオーディションの翌日、どの女優も期待に添わなかったため劇場を去る準備をしている。そこへワンダ・ジュルダンという無名の女優が、酔って遅れて到着する。ワンダは「ワンダ役の読み合わせをしましょう」と提案する。トマが驚いたことには、彼女は役への深い理解を示し、すべてのセリフをそらんじていた。読み合わせが進むにつれ、トマの好意は強迫観念になる。選ぶ側だった男は言葉を奪われ、小説のゼヴェリーンと同じ位置へ落ちる。女優が作家を教育し、役の主従を逆転させる。毛皮を羽織ったヴィーナスは舞台衣裳であると同時に、部屋の中で権力がどちらへ傾くかの合図でもある。

小説と舞台から、オーディション室へ

ポランスキー版は、小説でゼヴェリーンがワンダを「教育」し契約に署名させた構図をそのまま復刻しない。役をそらんでいた女優の側から教育が始まる。セリフの応酬がそのまま鞭と契約の代用になり、言語が主従を決める。酔って遅れた女がいちばん役を理解している——その逆転が、毛皮を羽織る合図になる。

原作舞台はアメリカの劇作家デイヴィッド・アイヴズが2011年11月に発表して評判になったものだ。翌年のトニー賞では最優秀戯曲賞候補となり、ニーナ・アリアンダが主演女優賞を獲得した。フランス初演は2014年、ジェレミー・リップマン演出、マリー・ジランとニコラ・ブリアンソン主演でトリスタン・ベルナール劇場、モリエール賞Molières 2015で作品賞と主演女優賞を獲った。映画は小説と舞台の両方を踏まえつつ、オーディション室という一つの空間に閉じ、劇場の権力と寝室の契約を同じ部屋で入れ替える。

キャストと受賞

ワンダ・ジュルダンをエマニュエル・セニエ、トマ・ノヴァチェクをマチュー・アマルリックが演じる。アマルリックのトマは最初、選ぶ側の男として上から女優を見るが、読み合わせが進むほど言葉を奪われる。セニエはポランスキーの妻でもあり、役のワンダが台本のワンダを飲み込み、作家を調教していく過程が、監督と女優の力関係の外側にも滲む。関連映画として1969年の『毛皮のビーナス』がある。同じ原題の系譜でも、ポランスキー版は拷問や毛皮の見せ場より、オーディション室の言語的な主従を撮っている。

映画は2013年の第66回カンヌ国際映画祭で5月25日に特別上映され、11月にフランスで劇場公開された。2014年1月発表の第39回セザール賞では監督賞を受賞し、作品賞、主演女優賞、主演男優賞、脚色賞、音楽賞、録音賞にノミネートされた。マゾッホの毛皮と契約を、現代の劇場の力関係に移し替えた点が評価された。

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