『奴隷市』(どれいいち)は2012年の日本ポルノ映画である。監督は愛染恭子、主演は麻美ゆま。原作は団鬼六の官能小説『旅路の果て 倒錯一代女』。温泉旅館の女将が「奴隷市」に足を踏み入れ、SMの快楽に沈んでいく話だ。団鬼六の倒錯と愛染の演出、麻美の緊縛初挑戦が一本に重なっている。市という場で女将が値踏みされ、売買され、責められる側へ落ちていく過程そのものが、本作の芯である。
あらすじとキャスト
温泉旅館を切り盛りする女将(麻美ゆま)は、奴隷市への参加をきっかけにSMへ目覚める。市という場そのものがプレイであり、旅館の女将という表の顔が剥がれていくのが見どころだ。落札され、一定の時間、買い主の責めを受ける——団鬼六が繰り返し書いてきた「倒錯一代」の型を、2010年代のポルノ映画に移した形である。共演は新納敏正、川瀬陽太、ほたる、高橋みほ。女将を取り巻く男たちと、同じ場に並ぶ女たちが、市の熱を作る。
麻美ゆま三度目の愛染恭子作品
麻美が愛染恭子の監督作に主演するのは、『新釈・四畳半襖の下張り』(2010年)、『阿部定 最後の七日間』(2011年)に続く三本目である。四畳半と阿部定の系譜の先に、団鬼六の奴隷市を置いたことになる。本作で彼女は初めて緊縛プレイに臨んだ。AVのトップ女優が、愛染のカメラの前で初めて縄を受ける——その一点が、公開時の売りでもあった。団鬼六原作、愛染演出、初縄。日本SM映画の系譜としては、この三点が『奴隷市』の位置を決めている。女将が市に出品され、快楽の虜になる筋は、原作『旅路の果て 倒錯一代女』の題が示すとおり、一度落ちた女が戻らない話である。2012年のピンク/ポルノ興行のなかで、団鬼六の名と愛染の監督名、麻美の初縄を同時に出せる作品は多くなかった。











