BDSMのパドリングは、パートナーをパドルで打つプレイを指す。スパンキングの一種である。英語のpaddlingは本来、犬かきのような動作も指すので、通じない場合がある。成人のSMでは、広い打面で尻を叩き、大きな打撃音と熱を残す道具として使われる。鞭ほど切れず、平手より音が大きい。ロールプレイの罰として置かれることが多く、純然たる痛みだけを追うというより、打音と儀式で場面を作る。
木製と皮製
木製パドルは、取っ手付きの木の板がほとんどである。取っ手は一体化し、西洋の俎板にも似る。板面は四角が一般的で、楕円のヘアブラシ型もある。取っ手が短いものが多いが、板面より取っ手が長いものもある。板面に穴を開け、風切り音で恐怖を煽る型もある。皮製パドルは、スパンキングラケットなどの名でアダルトショップに並ぶ。鞭のような柄の先に、大きめの皮の板が付いている。ある程度柔らかくしなる。合成皮革やラバー製もある。打撃はソフトで、初心者向けとされる。
打ち方と、打つ部位
大きく音を立てることが要点で、純粋な苦痛よりロールプレイとして使う。固い板で打ち抜くと痛みが強く、音がこもる。当たった瞬間にその位置で止める、あるいは軽く引くと、音が立つ。打つ部位は尻に限る。皮製でも打面が広いため、尻以外は思わぬ事故につながる。腰骨、尾骨、腎臓のあたりを外し、厚い筋肉の乗った尻だけを狙うのが安全側だ。前戯として性感を高めるために入れるなら、回数と間隔を見て熱を逃がす。
欧米の体罰史と、成人のロールプレイ
欧米では19世紀末から20世紀初頭にかけ、教育の場で体罰が容認されていた。外傷を残しにくい懲戒として、尻への打撃が選ばれた。家庭では平手が使われ、学校では道具が使われた。打撃音を大きくすること、打つ側の手が痛くならないことなど、いくつかの理由が挙げられる。教室や講堂に備えられたスパンキングパドルは、教育者の権威の象徴でもあった。この制度は歴史上の体罰であり、児童を性的対象にする話ではない。ただし、罰と羞恥が結びついた文化的イメージは残りやすく、成人の合意プレイが学校懲戒の場面を借りることがある。経験の有無にかかわらず、欧米ではパドルのスパンキングが単なる苦痛以上のものとして認知されやすい、とされる。
日本ではその文化的背景が薄いため、単なる道具の違いと見られがちだ。打撃音の違いを説明し、羞恥を言語化する工夫が要る。いずれにせよ、成人同士の前戯として性感を高めるために行う。かつて学校名や校章を彫ったパドルがあったとされる経緯から、支配側の名前を刻印する楽しみ方もある。皮製の表面に鋲を打ってディスプレイ用にするのもその範疇だ。実際に打つと危険すぎる。木の俎板型、穴あきの風切り、柔らかい皮のラケット。音を立て、尻だけを打ち、歴史の体罰イメージは成人のロールプレイに借りる——それがBDSMのパドリングである。











