小説『亜由美』第二部 亜由美シリーズ 第4部 (4/5)
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しょうがなかった。亜由美は立ち上がった。
学生たちが亜由美を見た。
突き刺さるような視線。いままでにない恥ずかしさだ。
簡単には取れない犬の首輪と南京錠。薄いTシャツの下には、下着を身につけていないことは明白だった。乳首がはっきり見て取れ、乳房に縄がかかっているのも薄々、わかる。
乳首にもヒモが食い込み、わざとらしく薄い布地を押し上げている。
ギリギリの部分でカットされたホットパンツ。
その腰の部分は肌に食い込んでいる股縄の一部が見えている。
ヘソの下の結び目が、そこから股間に縄が伸びていることを容易に想像させる。
そして素足。
「そうだ、君だ。先週、商店街で会ったね。覚えているかな? すぐそこの、学校の近くの商店街だ。君は缶ビールを持っていた」
事情を知らない学生たちはクスクスと笑っている。
「昼間にビールを飲むことの道徳性を議論するわけじゃないよ。もっと重要なこと。人間の本質に関わる問題だ。悪いけど、こっちに下りてきてくれないか。また五つ数えようか?」
亜由美は仕方がなく、席を立ち、階段を降りていった。
歩くたびにこすれる、腫れ上がった存在感を感じながら……。
淫らな汁が股間にあふれ、素足に伝っていく。学生たちの視線を感じないわけにはいかない。
「ありがとう。じゃ、これから君は、ぼくの講義のアシスタントになってもらおう。というのも、君はぼくの講義を履修していないよね?」
「はい」
「どうだ、君たち。ぼくの講義は人気がないというが、履修していない、こんなカワイイ女の子が熱心に来てくれているんだよ。すごいことじゃないか。みんな、亜由美に拍手」
男の学生の笑い声と、まばらな拍手が起こった。
「亜由美。君がここに立っているだけで、次回はもっとたくさんの学生がここに集まるだろう。そう思わないか?」
今度もまた、男の学生だけが笑った。
「その首輪はオシャレなのかな?」
「先生」と、前列の女子学生が立ち上がった。
「それって、セクハラじゃないでしょうか?」
「ありがとう。やっと誰かが言ってくれると思ったんだけど、助かった。言っておくが、ぼくと彼女との間には、個人的な関係は一切ない。先週、ぼくの講義に出て熱心にノートを取っていた。そして昼間、商店街で缶ビールを持って歩いていた。いったい、彼女は何者か。ぼくは調べた。驚いたことにぼくの講義を履修していないし、あれ以来、亜由美は、自分が履修している科目にもほとんど出ていないこともわかった。いったい、なにをしているんだろうか」
教授は意味ありげに間を長くとった。
「彼女自身から語ってもらう、という手もあるが、ここはまだ謎として残しておこう。人間、誰しも謎は持っているものだ。それよりもセクハラだ。セクハラが成立するための要件についてみんなは知っているかな? そう。セクハラは行為そのもので区別されるものではない。受けた人が『これはセクハラだ』と感じたときにセクハラになる。じゃあ、聞いてみよう。亜由美、これはセクハラかな?」
「違います」と亜由美は答えた。
「ほら、このマイクをつかいたまえ」
大きなハンドマイクを亜由美に渡した。それを男根のように両手で持った。
「違います」と亜由美の声が教室に響きわたった。その響きは、擦れて敏感な三つの器官を通して体内にフィードバックされ、それだけでもまたジーンと痺れるような快感になった。
なにかがビュッと噴き出して股縄を濡らしているのがわかる。
「そういうこと。だから、これはセクハラじゃない。だけど、道徳的にどうだろう。君、どうして、そんな格好なの。普通、人は犬の首輪はしない。それに、まだ四月だ。ここは夏のビーチじゃない。おへそを出して、ナマ足で、寒くないのかな。恥ずかしくはないの?」
「大丈夫です」
「誰かに強制されてるのかな? そういう格好をしなさい、と命じられているとか?」
剛介に命じられたことだが、そもそもは亜由美自身が、剛介に命じられることを望んだのだ。本当に望んでいたことかどうかは、いまとなってはもうわからないが……。
おそらく、こうなることを望んでいた自分がいたのである。
「いいえ。自分で、好きでやっています」
「女性から見ると、どうかな。こういうタイプの女性は? あんまり好きじゃない? それはなぜか?」
別の女子学生が立ち上がった。
「ふしだらで、淫らで、学生にあるまじき格好だからです。大学にふさわしくありません」
「そう。君はそう思うんだね。それは、つまり学生はこういう格好で大学に来てはいけない? だけど、夏になったら、君たちだってこんな格好をするんじゃないのかな?」
「夏は暑いから。それに、みんなもそういう格好をしているから。でも首輪はしません」
蔑むような笑い声が起こる。
「そうか。じゃ、いまはまだ春で、セーターやストッキングが欠かせないはずで、こんな格好をしている人はいない。だから、間違っていると。でも、彼女は好きでやっているんだよ」
「みっともない」と誰かがヤジを飛ばした。「売春婦!」
ドッと笑いが起こる。しばらく教室はざわついた。
「亜由美。君は売春婦なのかな?」
「ちがいます」
「売春婦ではないそうだ。売春は人類最古の商売なんて言われ方をするが、それが職業だとしたら、いまヤジを飛ばした学生は職業差別をしていることになるんじゃないか?」
すると男子学生が立ち上がり「女性は嫉妬しているだけだと思います」と発言した。
「嫉妬じゃありません」とすかさず女子。
「道徳的に常識的におかしいと言っているんです。おまけに妙なウワサも聞きますから。迷惑なんです」と女子学生が反論する。
「妙なウワサか。おもしろそうだね。ウワサは、誰しも興味があるからね。でも、この場ではウワサを議論するのはやめるよ。それよりも、君たちの思っている道徳や、常識はどうやって決められたのかな? 学校で教わったの? 親から? そしてそれをすべて鵜呑みにしているのだろうか。それとも、自分なりにアレンジしているのだろうか。だとしたら、その道徳の境界線はどこにあるんだろう。君たちの常識と非常識の境界線はどこにあるのかな?」
学生たちはお互いにいろいろなことを勝手に話しはじめた。
このあと、一時間以上、教授は、道徳と常識を誰がどうやって決めていくかについて講義をした。
その間、亜由美は壇上で晒し者とされていた。
講義が終わり、学生たちが出て行く中で、末土教授は亜由美に握手を求めた。亜由美は意味がわからなかったが、とりあえず応じた。
「君のおかげで講義がおもしろくなった。というか、ぼくのやる気に火がついた。あの日、商店街で君を見てピンと来たんだ。どうかな、少し時間をもらえる?」
「はい」
なんでも言うことを聞け、というのが剛介たちの命令だった。それに亜由美自身、興味があった。
屋外にあるカフェテラスで、末土教授は亜由美にロイヤルミルクティーを、自分はアメリカンコーヒーを前にして、これからの講義の内容と手伝ってほしいことを亜由美に熱心に語った。
要するに、学生を集めること。学生たちが自分たちの身近なこととして、哲学、道徳、宗教などを議論することを、教授は目指していた。
亜由美はその題材とされるのだった。
「なぜ、私なんですか?」
「君、サドの本は読んだのか?」
末土教授の声は一変した。講義のときのようなハイテンションな声ではなく、深く、静かな声だった。
「サド?」
「マルキ・ド・サドだよ。サディズムの語源となった」
「いえ」
「じゃ、マゾッホは? マゾヒズムの語源となった」
「いえ」
「読んでみなさい。君はとてもおもしろい題材だ。いまの境遇には自分から進んでなったのかな?」
「そうです」
自分のなにを知っているのだ、と亜由美は思う。
「あの日、君はお尻に管を入れて、手にした缶ビールから、ビールをポンプでお尻の中に入れていた。つまりビール浣腸だな」
見抜かれていた、というのか。
「君ぐらいの年齢の女性が、白昼堂々と自らそういうことをするのが私には奇異に思えた。だから調べたよ。君のマンション。あそこにはずいぶんとたくさんの男が出入りするね。みんなキャンパスで見かける顔だ。ゲー研の連中が多い。君がどういうことをしているのか、察しがついた。あとは簡単だ。ネットで調べて、海外の会員制の動画サイトで、亜由美、という名を見つけた。無料サンプルの動画は荒くて、顔もわからないから、しょうがなくクレジットカードで会員になった。HD画質ってのはスゴイものだね。ずいぶんと高かったが、それに見合った内容だった」
亜由美は、クリーム色のお茶を飲み込みながら、動じないフリをした。
「はじめて間もないサイトのようだが、動画の件数はとっても多くて、君は大活躍だね。商店街の、あの日の映像がないのが残念だけど……。動画の背景にはこの大学らしき建物もある。ぼくが使っているトイレによく似た光景もあった。男たちはすべて顔をぼかしているが、君はそのままの姿で写ってる。誰かに脅されているのかな?」
「違います。すべて、私が自分でやっているのです」
「バレたら、学校にはいられないよ」
「わかっています」
「それにしても、内容が過激だ。いや、この頃のAV事情はよく知らないのだが、かなり刺激が強い。だけど、君はまさにぼくの研究のテーマに関わるような生き方をしている。その会員制サイトの案内によれば、君を題材にしたゲームが作られるようだね。そしてそこでは、恥辱、陵辱の限りを実際に体験させられ、最終的に拷問にかけられるという。本気なの?」
「本気です」
「それは死ぬようなことじゃないよね。ちゃんと計算されているわけだろうね。演技、演出の世界だろう?」
それはどうだろう、と亜由美は思う。死ぬかもしれない。だから、不安であり、そして快楽なのではないか。
「いいよ、答えにくいことなんだね。ただ、君には自覚しておいてほしい。君はいま、苦痛と快楽という人間の本質的な自我に目覚めている。そしてそれは社会性や道徳性と個人の自由の間にあるどこかでなければ、実現できない。君は、自分の欲望のままに自由に生きようとすると、反社会的な行為に踏み込むことになる。そして、やり遂げるためには、自らの自由を放棄して、他人にすべてを委ねなければならない。この矛盾に気づいているかね? 自由を放棄する自由を人は有するのか。それは道徳的に許されることなのか。ここでは法律はあえて、考えていないけどね。法律よりも、より根源的、プリミティブな人間の本質というか……」
このような話になると末土教授のテンションは再び上がってくる。
講義のような話がしばらく続いた。
「君はぼくの拷問を受ける気はあるだろうか?」
「え?」
「ぼくだって葛藤しているのだ。わかってほしい。君を助けたい。しかし、君はぼくが命じてもやめないだろう。ここではやらないとしても、世界のどこかでやるだろう。お金を渡してもやめないだろう。君にとってお金はそれほどの価値はない。君は自分を拷問してくれる人を探して生きていくだろう。そこで考えた。ぼくは君をこれから毎回、講義で辱めようってね。もちろん、指一本触れないし、君になにかをしてもらおうとも思っていない。ただ、晒し者にする。それだけでも君は十分なんじゃないか? どうだろう?」
「はい」
亜由美は毎週、講義で自分が晒されて、恥ずかしい目にあうのだと思うと、じんわりと体が熱くなった。
「目がうるんできたね。やっぱりそうなんだな。そういうことなのか」
教授は少し落胆したようだった。
「とっても恥ずかしいですし、私はそれが……」
わかったと、手で亜由美を制する。
「毎回、講義には出て欲しい。もし君の姿が見えなくなったら、ぼくはすべてを大学やしかるべき機関に知らせて、公的に君を探すよ」
「わかりました」
「この意味、わかるよね? 行方不明になったり、どこかの海岸で死体になって発見されたり、君の体の一部を犬がくわえてくるなんてことは、ぼくは見たり聞いたりしたくない。毎週、ぼくの講義のときに、横に立っているんだ。約束できる?」
「できます」
「よろしい。では、また来週」
教授は、飄々と去って行った。
亜由美はしばらくそこにとどまった。
教授は自分のすべてを見ていた。知っていた。恥辱、陵辱の映像を見ていた。ほかにもたくさんの人たちが見ているだろう。
その上で、なおも、続けていくことができるのだろうか。続けていいのだろうか。
わからなかった。なにもかも、わからなくなっていた。
ただ、教授の言った言葉が耳に残っていた。
「君は自分を拷問してくれる人を探して生きていくだろう」
それが剛介なのか。それとも、別の人が待っているのだろうか。
苦手克服
亜由美は、カフェに一人残り、乳首と股間のうずきに耐えていた。かなりきつくなってきて、立ち上がって歩く勇気が持てずにいた。
「いたいた」
剛介と園田がやってきた。カメラを持った会員もいる。
「どうだった?」
亜由美は教授の申し出を一通り話した。
「よかったな、もうノートを取る必要もなしか。売れないから残念だな」
「いいじゃないか、明日の講義はノートが必要だよ。それに、ゲームづくりとアダルトサイトで稼いでいるんだから」と園田。
「まあね。なんとか、あの末土教授を引きずり込みたいな。あれは本当にドSなのかもしれないから」
「やさしい先生でした」
「ああ、もちろん、やさしいさ。しかしおまえの映像を見ているんだから、ちょっと普通じゃないかもね」
園田が、くしゃくしゃのメモ紙を広げた。
「今日はこれから、『カラオケ同好会』に参加してもらいます」
「カラオケ?」
亜由美は意外な単語に驚く。
「楽しい同好会だよ、亜由美はそこの一日会員をやるんだ」
「カラオケをするんでしょうか?」
「もちろん、場所はカラオケボックスだけどね。いろいろやってもらうことになるなあ」
剛介は笑みを浮かべている。
「その同好会、なんて呼ばれているか、知ってる?」
「さあ」
大学生活はまだ浅く、同好会活動を見渡すための時間さえ亜由美にはなかった。
「キモ男同好会って呼ばれてるんだよ。ウゲー」
園田がゲロを吐く真似をする。
「バカ、ばらしちゃおもしろくないだろう」
「いやあ、でも、覚悟してもらったほうがいいし……」
「まあ、そうだな。これからは、『亜由美の会』の会員以外に貸し出すことも増えるから、苦手な男とかなくしてほしいんだよね。商店街でのこと、覚えてるだろ?」
ねちねちとオヤジたちに嬲られたことを思い出す。あの経験があれば、たいがいのことには対応できるのではないか、と亜由美も思う。
園田がメモを亜由美に渡す。
「簡単なシナリオをメモっておいたんで、一応、行く前に飲み込んでおいて」
見ると、「キモキモ輪姦」と書いてある。人数は八人から十人とあった。場所はカラオケボックス。
モテない男たちばかりが吹きだまりのように集まっている同好会に、亜由美が新人会員、唯一の女子として入り、歌って踊って輪姦される、というのだ。しかもコスプレで。
「とりあえず三時間だが、さらに三時間。延長してもいいからね」
剛介がバッグをテーブルにあげた。
「この中に道具が入ってるから、自由にやつらに使わせて。やつらが使わないなら、亜由美が自分で使うんだ。全部、使いきるまで帰ってきちゃダメだから」
「誰も来ないんですか?」
「一応、外には何人か待機しているけど、カメラは部屋の中に五か所置いてあるし。その固定カメラだけで十分だろ。ちゃんとカメラ意識するんだぜ。誰かにカメラを持たせて突入するかもしれないし、会員もこの話を聞きつけて参加するかもね」
そして剛介が念を押す。
「相手がキモイってところがミソなんだから、イヤな顔をしろよ。ただ気分出してばかりいたんじゃ、ダメなんだからな」
これまでは、亜由美の素の反応だけでよかった。しかし回数を重ねてくると、亜由美は、生半可なことでは驚いたり脅えたりしなくなっていた。
がまんしすぎて、無表情になっているときもあり、あとで映像をチェックしていて、剛介自身、不満に感じることもあった。
「思い切り、感じたままに表に出すんだぜ」
「はい」
「じゃ、行こう」
「この格好でいいんですか?」
「もちろん」
自分の肉体を責めるための道具の入ったカバンを持たされて、亜由美は大学を出ると、学生はまず行かない古いスナックを改造したカラオケボックスへ向かった。
潰れかけているような店で、カラオケボックスといっても、大手のチェーンに比べるとかなり見劣りがする。
看板も設備も古く、価格はチェーンよりも高い。
色褪せた店に、亜由美は入った。剛介と園田は外にいる。
あとは一人でやらなければならない。
店のドアは二重になっており、内側をあけると、カラオケの音が響いてきた。
店側はすべてを承知しているようで、バイト風の若い男が、亜由美を奥の部屋に案内した。
五部屋しかなく、店全体が貸し切りなのだろうか。ほかに客はいない。一番大きな部屋に案内された。
そのドアを開けると、ガンガンと音が響いてくる。アニメの曲だ。
揚げ物と、甘ったるいソフトドリンクの匂いが混じっている。テーブルには、ポテトや唐揚げなど、揚げ物ばかり。そしてオレンジジュースやコーラが並ぶ。
「おー」
全員が、振り向き、亜由美を見る。
たじろぐほど、そのキモさはインパクトがあった。キャンパスで見かける顔ばかりだ。髪を振り乱して歌ったのか、太った男、ひょろひょろの男、小柄な男など、バラエティー豊かで妖怪人間の集まりのようにも見えた。ざっと八人。
演技の必要はない。亜由美はすぐに叫び、逃げ出したくなった。
「亜由美たーん」
誰かが叫ぶ。
「ほらほら、こっちに来て~、一緒に歌おー」
知らないアニメの歌を一緒に歌わされた。
「これ、なにが入ってるの?」
カバンの中身をソファにぶちまける男。
「うひょ、すごいじゃん」
男たちはその道具類に飛びつく。亜由美は中身を確認しなかったのだが、コスプレ用の水着、鼻フック、浣腸道具、ピンポン球スポンジのタンポンそして大量のコンドームとワセリンが入っていた。
生理中であることが、亜由美には不快感を増大させていた。吐きそうな気分になる。
「こういうの、亜由美ちゃん、趣味なの? 好きなの? やっちゃってもいいの?」
キモ男は、単純にしつこい。
その部分は商店街のオヤジたちにも似ていたが、ムッとするような若者の臭気がそこに加わる。
加齢臭以上に、そこには、口臭や体臭が渦巻き、さらに亜由美に対する性的な興奮からの分泌物が混ざる。
亜由美自身も生理中ということもあって、メス臭を発散しているかもしれなかった。
「じゃあ、新入会員、亜由美たんに歌ってもらおうかな」
「ただ歌うんじゃダメだから、服を脱ぎながら歌ってもらおうかな」
「そうだ、ストリップやって!」
リクエストをしていないが、軽快なアニメの曲がかかる。亜由美はうる覚えで、歌詞を見てもあまり歌えない。それでもマイクを持たされて、みんなの前で歌う。
「かわいい! 早く脱いで!」
「歌が終わる前に裸にならないと、お仕置きだよ!」
はやされて、もともとろくに服を着ていない亜由美は、Tシャツを脱いだ。
縛られた乳房、そして乳首。明らかに充血して色が変わっていた。
「うひょー、かわいいー」
ホットパンツを落とすと、男たちはさらに熱狂した。
股縄、そして肥大させられた陰核。愛らしい顔立ちとのギャップが大きく、男たちの妄想をかきたてるのだ。
しかも、不安な表情を見せながら、たどたどしく歌いながら、体をくねらせる。
服を着た男たちの前で、白い肌をさらしている亜由美。
しかもマーカーで文字が書かれ、鞭跡がまだ残っている。
虐待された手負いのウサギのように、脅え、男たちを見つめている。
歌っている間に、続々と男たちが部屋に入ってくる。最初の八人が二倍ぐらいに膨らんで、部屋は蒸し風呂のようになっていった。
歌いながら数えていくと、部屋の中に十七人も男がいた。剛介が言っていた八人から十人どころではない。
これから、彼らに犯されるのだ。そう思うと、歌など歌える心境ではなくなってきた。
舌なめずりして、目をギラギラさせた男たちは、いまにも飛びかかってきそうだ。
抑える手立てはない。
「ひゅー」
誰かが奇声を発すると、つぎつぎと男が亜由美を取りかこみ、その柔肌を無遠慮に触る。撫でる。つねる。引っ張る。
「あひー」
マイクを通して亜由美の悲鳴が部屋に響く。
それが男たちをさらに熱くさせる。
指先だけではない。やがて男たちは口で愛撫を始める。
臭い口が、亜由美の顔を襲う。舌がのびる。舐められ、キスをされ、口の中まで侵入される。
十七人もの男たちが一人の女に群がっていく。
ソファに亜由美が倒され、誰かが手足を持つ。
「いけー」
「きゃー」
彼らは容赦なく、亜由美の肌を舐める。そして噛む。このまま食いちぎられるのではないかと思うほど、乳房や尻、腿、腕などの柔らかな肉に、歯形をつけていく。
「助けてー」
絶叫しても、誰も助けに来ない。
べとべとになった亜由美に、誰かが鼻フックを取り付けていく。
「メス豚亜由美!」
興奮した男に、頬をビンタされた。
脳が揺れ、なにかが吹っ飛んでいくような気がした。
股縄が外される。もうダメだ、と亜由美は観念する。
「ほらほら、なに、黙ってるんだよ!」
二回、三回と頬を平手で叩かれ、鼻フックをぐいぐいと引き上げられ、股間の縄も引き上げられてめり込み、縄に挟まった陰核が潰されそうになる。
「いたーい」
亜由美は泣いた。
「やらせろよ。どうなんだよ、やらせるのかよ」
泣いているばかりで亜由美は返事ができない。怖すぎたのだ。
「おまえが頼むんだよ、おれたちの犯してくださいってさ」
「そうだ、そうしないと強姦になっちゃうからな」
男たちが亜由美から一歩、引いた。
「いつまで泣いてんだよ。ほら、どうして欲しいんだよ」
嗚咽しながら、亜由美はソファに座って、男たちを見渡した。
「どうか、亜由美をみなさんがお好きなだけ、存分に犯してください。めちゃくちゃにしてください。お願いします」
「ひょー」
ズボンを脱ごうとする男を、ほかの男が止める。
「いいか、言葉だけじゃダメなんだぜ。態度で示してくれないとな」
十七人の男たちが、いっせいにズボンを降ろした。
「ほら、お願いするなら、ちゃんとやれよ」
「はい」
「お礼は? やってほしいことをやらせてやるんだから、お礼をちゃんと言ってほしいな」
「すみませんでした。私、亜由美を犯していただきありがとうございます。お礼にみなさまのものをしゃぶらせていただきます」
「もの?」
「みなさまの、チンポをしゃぶらせてください」
「よし。やらせてやるよ」
亜由美は床にひざまずき、近くの男から口の中に含んでいった。
「よおし、いいぞ、次」
男たちはいまにも発射しそうになっていたが、がまんしているようだった。
亜由美は、最後までいかせるつもりで、むせるような臭いの男たちを、次々に舌と口で丁寧にしゃぶっていった。一人でも発射してくれれば、犯される回数が減るかもしれない。
キモイ男たちの荒い鼻息やうめき声が満ちてくる。
「がまんできねえ!」
股縄が外される。
「私、いま生理中ですから、アナルをお使いください」
亜由美は慌てて、コンドームとワセリンを用意する。
「いいじゃん、生理だって」
「そうだよ」
「あ、ダメ」
男たちに羽交い締めにされた亜由美は、股間をまさぐられて、そこから巨大なタンポンを引き抜かれてしまった。
「スゲエ、こんなの入れてるぜ」
「さすが、メス豚だな」
経血を吸って巨大に膨れあがったタンポンが男たちの間を巡回していく。
「恥ずかしいだろ? どうなんだよ」
「お願いです。捨ててください」
「それはどうかな。こういうの、集めている変態野郎もいるんじゃねえ?」
笑い声が起こる。
「そのスポンジのを入れてください」
「自分でやれよ」
許されて、亜由美は用意された道具の中から、スポンジタンポンを取り出し自ら自分の中へ入れていった。
ローションも塗る。彼らの方が、亜由美よりもはるかにやる気になっていた。まだ亜由美は十分な状態ではなかった。潤いが足りなくなることが恐ろしかった。
「行くぜ!」
それがちゃんと終わらないうちに、男たちは亜由美を床に押し倒した。
「よーく味わえよ」
最初の男が亜由美に入りこんだ。わざと正常位で、涎を垂らし、ときどき亜由美にキスを迫りながらぐいぐいと押し込んでいく。
「ほらほら、感じてるの、亜由美ちゃん」
気が遠くなりそうな恥ずかしさの中で、亜由美はこれまでになく犯されていることを自覚させられた。
いままでの剛介や『亜由美の会』のメンバーたちからの辱めとは、まったく違う感覚だった。
貸し出され、まるで恋人かのように抱かれているのだ。
飲精・飲尿・尿浣腸
「ハメ撮りしようぜ。どうだ」
「お願いします」
「だったら、おれ様に抱かれて少しはうれしそうな顔をしやがれって」
「ううう」
つらいが、亜由美は笑顔を作る。
「ピースサインがつきものだろうが」
いかにもうれしくてしょうがないような表情で、ケータイに顔を向けながら、写真を撮られる。
「おお、いく、いく」
男が達した。
「はい、次!」
十七人がみな亜由美を犯していく。なぜか口やアナルを使う者がいない。最初はどうしても性器でやりたい、と言うのだろうか。
全員がハメ撮りのツーショットを撮った。
一時間以上かけて、全員が欲望を遂げるまで、亜由美はべとべとになりながら床に横たわっていた。
いっきにこれだけの男たちの欲望のはけ口とされ、身体が釣り上げた小魚のようにビクビクと震えていた。
「お疲れ、メス豚ちゃん。元気をつけてよ。ミックスジュースを用意したぜ」
グラスに白い液体がたっぷり入っていた。彼らが避妊具から精液を絞り出したのだった。
「これぐらいで許されるとでも思ったの? まだまだ時間はタップリあるんだからさ」
それを飲み干せというのだ。
「いっき、いっき、いっき」
これまでも精液を飲んだが、それは流れの中で、夢中になって口にしていたのだ。あらためて、見世物のように飲まされたことはない。
半分ほどを口に入れた。十七人の精液が混ざり、その独特の粘りが口いっぱいに広がる。味はほとんどない。それがまた気持ちが悪い。喉の奥に引っかかって、なかなか飲み込めない。
「ほらほら、飲めないなら、なにかで薄めるよ」
「そうだ、ミックスにするよ」
「だけど、量はすっごく多くなる。これを飲み干したほうがいいと思うけどな」
薄めるという言葉に亜由美はすがりつく。
「お願いです。薄めていただけないでしょうか」
「あーあ、だけど、そうしたらすごく増えちゃうんだよ」
「お願いします」
「しょうがないな」
一人がズボンから男根を取り出し、ピッチャーに放尿した。
そのピッチャーからグラスに色のついた泡立つ液体が移され、かき混ぜられる。
「ほーら、少し薄まったよ。もっと薄くしようか?」
選択の余地はないのだ。
「あ、ありがとうございます。これでいただきます」
「そうなの?」
亜由美は必死になって、その液体を飲み干した。
「おお、いい飲みっぷりだなあ。ほらほら、かけつけ三杯だよ」
グラスにピッチャーから液体が足される。
「もうムリです」
「聞こえなーい」
飲め、飲め、飲めと激しいコールが起こる。
亜由美は二杯目を飲み干す。
「足りないんじゃない?」
「じゃ、おれも」
二人目がピッチャーに尿を足す。三人目、四人目と次々とピッチャーを満たしていく。
「そんなに飲めません……」
「いいんだよ、口から飲めなくても大丈夫だから」
浣腸道具を彼らは準備していた。その間にもピッチャーには液体が満たされていき、狭い部屋は異様なニオイに満ちてきた。
五リットルほど入るピッチャー二杯に、たっぷりと男たちの尿が溜まっていた。
「全部ってのはムリだろ」
「ムリです、絶対ムリです」
病院で三千CCの浣腸を試されたことがあった。それが上限だ。
「三回にわけてやろうか」
押さえつけられた亜由美のお尻に、管が入れられる。彼らはエネマシリンジを選んでいた。
「お願い、助けて」
誰かが曲をかけて歌い始めた。亜由美の声を聞く者などいない。
ぐいぐいと彼らの排泄物が亜由美の中に注がれていく。腸壁を押しあげ、染み込む。
泣き、わめいても、誰も助けてはくれない。剛介の姿もない。どこかで見ているのだろうか。だったら、助けてくれてもよさそうなのに……。
「よーし、こんぐらいで許してやるよ」
ピッチャーの半分以上を浣腸していた。
「ほら、トイレに行って来いよ」
亜由美は裸のまま、エネマシリンジを自分で持って部屋の外に出た。何人かがついてくる。
トイレは男女兼用が一つしかなかった。ドアを開けたまま、亜由美は彼らの方を向きながら排泄させられた。
「おお、すげえ勢いじゃん」
「恥ずかしい……」
いつ誰がくるかわからないと脅えていた。
「終わったのか」
「はい」
お尻を洗って拭いて、部屋に連れ戻される。
「じゃあ、残りを入れるよ!」
再びエネマシリンジで尿浣腸をされる。
トイレへ行こうとするが、亜由美は男たちにつかまって、外に出られない。
「もうちょっといいじゃん」
「がまんしないとさ」
そのうち、誰かが歌いはじめる。
「この曲が終わるまでダメ」
三リットル近い尿を入れられて、亜由美はもだえながら「出させて」とお願いをする。
「ダーメ。踊ってれば?」
「そうだ、踊れ、踊れ」
くるしそうに体をよじる亜由美をテーブルに立たせ、そこで音楽に合わせて踊れというのだ。
「ああ、出ちゃいます」
「がまんできなくなったら、そこにしろよ」
空になったピッチャーが足元に置かれる。
「できません……」
「ここなら、もっとよく見えるからさ」
「トイレに……」
「ダメダメ。ここでやれ」
がまんができなくなり、亜由美はピッチャーの上にしゃがみこんだ。
男たちが床に這うようにして覗き込む。
「丸見えだぜ」
「こぼれてきてるぞ」
なにを言われても、お腹の苦しみには耐えられない。亜由美はとうとう排泄をはじめた。
「すげえ、よく見える。丸見えだ」
「ケツ穴がでかいねえ」
排泄が終わると、三回目の浣腸が始まる。
「もう許してください、壊れちゃう……」
「なにを言ってるんだよ、大丈夫だよ」
ズズッと音を立てて、最後の一滴まで亜由美の中に入れられた。
「なんかつまんないから、これも入れちゃおう」
ピンポン球を入れようというのだ。
床に這わされて、お尻を持ち上げられ、逆立ちするようなかっこうになる。
「ほらほら、一つずつ入れちゃうよ」
一個、二個とピンポン球が押し込まれる。
「苦しいー」
亜由美が悲鳴を上げる。
「よーし、出していいぞ」
テーブルにのってから、排泄をしていく。ポン、ポンとボールが落ちると、喚声が上がる。
「いいね、おもしろいぜ」
お尻の穴が裂けていくような感触。あまりにも厳しい浣腸責めに亜由美はくたくたになっていた。
「捨ててこいよ」
命令されて、ピッチャーをトイレに持っていき、中身を捨てて、ピッチャーとピンポン球を洗って戻った。
「お帰り!」
亜由美が戻ると、男たちも全裸になっていた。
「これを着るんだ」
鼻フックをようやく許されたが、今度は水着を着せられる。ワセリンでお尻の穴をマッサージされる。
「いいねえ、おまちかねのアナルセックスだよ!」
十七人が、今度は次々と亜由美の爛れた肛門を犯していく。
「マジ、いいぜ」
「おう、ずーっと犯していたいぐらいだな」
「吸い付かれちゃってもうダメだ」
男たちは騒いでいるが、亜由美は声も出ない。
一巡するまで、長い長い肛虐が続いた。
「いやあ、今日は楽しいな。亜由美ちゃんのおかげだよ」
言葉は感謝していても、態度は正反対だった。
彼らの精液ドリンクを再び飲まされた。しかも、この段階ですでに五時間近くになっているのに、彼らは解放しようとしないのだ。
「味見は終わったけど、今度は亜由美ちゃんも楽しんでくれないとね」
「そうだよ。もっと楽しんでよ」
男たちは服を着て、飲み物や食べ物を注文した。
亜由美は水着のままだ。
「もう倒れそうです。お願いですから、助けてください」
亜由美は土下座した。
「じゃあ、ゲームをしようぜ。このゲームが終わったら帰っていいからさ」
男たちは単純なゲームを考案した。
亜由美は順番に、男たちを十回ずつ口で愛撫していく。その間に固くなった男には、亜由美自ら全身を使ってフィニッシュさせる。若いとはいえすでに二回発射している男たちなので、個人差が大きい。
「そうだなあ、三人いかせたら帰っていいよ。簡単だよね。たったの三人だからさ」
「わかりました」
さっそくとりかかろうとしたときだ。
「ただし、おれたちが勝手に固くなったときは、その間も自由に使わせてもらうからね」
「ええ!」
それではゲームでもなんでもない。男たちはずっとやり放題なのである。亜由美は、回復の遅い男を相手にしてなんとか最後までいかせなくてはならないだけで、素早く回復した男たちは、その間、自由に亜由美を犯していくのだ。
ガンガン鳴り響くカラオケの中で、亜由美は懸命に口を使って最初の男をなんとか勃起させようとした。
「亜由美ちゃん、おれ、でっかくなっちゃった」
背後からやってきた男が、亜由美の腰を持ち上げて、水着をずらし、アナルを貫く。
「あああ」
過敏になった粘膜を刺激されて、亜由美は力が抜けてしまう。
「ほらほら、口がおろそかになっているよ」
亜由美のアナルの感触がよほどいいのか、最初はそれほどでもなかった男のものが、お尻の中でより大きく、より固くなっていく。
それが激しく擦りつけられていくうちに、脳が溶け出していくような感覚に支配されて、亜由美は体が動かなくなってしまう。
その気持ちよさだけに埋まりたい、と思ってしまうのだ。
「やれよ」
頬をピシャッと叩かれて、再び口を動かすのだが、最初の一人が、まったく反応してくれない。
「ちくしょう、おれもだぜ」
お尻の方には三人も列ができている。
きりがないのではないか。
亜由美は亀頭だけではなく、陰茎、さらに袋まで口に含み、舌を使って愛撫し続ける。
二人目がアナルに入ってきたとき、ようやく口の中で反応があった。いけそうだった。
お願い、大きくなって。固くなって。
亜由美はそう願いながら、必死に愛撫を繰り返す。
「おお、いけそうだぞ」
とうとう一人目がきちんと勃起してくれた。
「よーし、じゃあ、前をいだたくか」
「ええ!」
「しょうがないだろう、ケツはふさがってるんだ」
座っていた男は体を寝かせるようにずらしていく。
「こんなの邪魔だな」
水着がビリビリッと破かれて、全裸にされる。
そして亜由美がコンドームを装着してやると、男は下から女陰に押し込んできた。
「あぅぅぅ」
「どうだ、サンドイッチ攻撃だぜ、ほらほら」
後ろと前を、ぐりぐりと責められて、亜由美は弾け飛びそうだった。
小さな苦痛に新たな苦痛が重なっていた。
二つの穴が一つになっていく。下半身が巨大な一つの器官になったような気がした。
その間に二人目がフィニッシュして、三人目になった。
「おおっ」
正面の男がとうとう終わってくれた。
「さあ、次だぜ」
休む間がない。
お尻に男根が刺さったまま、次の男の股間に顔を埋める。
コツがあるのだろうか。
亜由美は二人目を口で愛撫しながら考えた。けっきょく、さっきの男もある段階になって急激に勃起したのだ。だったら、この男もそうかもしれない。
がぶっと飲み込むように小さな陰茎を吸い込み、音をたててしゃぶりつくす。
カラオケがなければ、それはあまりにも淫らすぎる音だっただろう。
手応えがあって、男のものが固くなっていった。その間に、四人目が亜由美のアナルに果てていた。
ジーンと痺れているが、亜由美は必死だった。
五人目に犯されながら、もう一人を受けて入れていく。もしかしたら、今後もこういうことをされないと感じなくなっていくのではないか、という恐怖が頭をよぎる。
輪姦が当たり前になって、すべての穴をふさがれることでしか感じない女になってしまうかも……。
若いからいくらでも敏感に反応できるのに、ここまで激しい行為にさらされて、むしろ鈍感になっていくのではないか。
必死に全身を使っているうちに、お尻と膣の両方でほぼ同時に達してくれた。二人の男が亜由美を挟んで、硬直するように突き上げてきた。
「いいい!」
亜由美は叫んでいた。
絶頂感よりも、達成感が強かった。男たちが自分の体でいっている。それが悦びになった。
三人目に取りかかるときには、亜由美はもう迷いはなかった。
生まれてからずっとこれを仕事にしてきたかのように、熱心に口を使い、舌を動かし、淫らな音を立てて、三人目をさらに短時間に固くさせた。
アナルで八人の男を受け入れ、膣で三人をいかせた。
残りはわずか、六人だった。亜由美はゲームのことを忘れて、その男たちと二つの穴で交わった。
時間感覚もすっかりどこかへ吹っ飛んでしまい、ひたすら情熱的にセックスをし続けた。
三杯目の精液ドリンクを飲み干した。やり遂げた充実感からか、忘れられない味になりそうだった。
「おまえみたいな淫乱、手に負えないぜ」
最後には、男たちに裸のまま部屋から放り出された。あとから道具とバッグも投げられた。
ドアが閉じる前に、部屋から爆笑する男たちの声が聞こえてきた。
キモイと言われて、何年もガールフレンドもなく、お金を払うサービス以外で女性と接触したこともない男たちが、すっかり一人前の色男のような態度になっていた。
ドアが閉じ、亜由美はわれに返り、虚しさにとらわれていた。
ゴミのように捨てられたのだ。
結局はオナニーグッズのように用が済めば見向きもされなくなる女にすぎないのだろうか。
来訪者たち
固定されていたカメラの回収などが終わるまで、亜由美はカラオケ店の入り口で待たされた。
外は真っ暗になっていた。
「どうだった」
亜由美は返事ができず、剛介の胸に顔をうずめて泣いた。
「そうかそうか」
剛介はほくそ笑みながら、亜由美の頭を撫でてやる。
「そんなにうれしかったんだね。やってよかったな。苦手をつくると、これからもっとつらいからね。あらゆるチンポをしゃぶって、犯してもらって。そういうのがうれしくならないとね」
亜由美は声が出ず、ただうなずいた。
「今日はもっと驚くことがあるんだよ」
「なんでしょう」
すでに体力は使い果たしている。
早朝から講義を受けて、そして半日以上も犯され続けていたのだ。
「帰ってからのお楽しみだよ」
帰ることができるとわかっただけで、亜由美はホッとした。
きっと、なにかいいことが待っているに違いない。
剛介の用意したサプライズが、すべて自分に対するおそろしい罠だとは限らないのではないか。
珍しくタクシーでマンションまで帰った。
どうやら、剛介たちのカネ回りが急速によくなっているようだった。
それが自分の苦痛の代償だとしても、亜由美はそれを深く考えないようにしていた。
剛介たちが機嫌よくしていれば、それは亜由美にとってもいいことだと思うようにしていた。
マンションの部屋は明かりがついていた。人影が見える。
「じゃあ、今日はここで帰る。明日の朝も講義があるんだからがんばってくれよ」
「帰っちゃうんですか?」
「ああ」
「びっくりすることって?」
「部屋へ行けばわかるさ」
亜由美は一人で自分の部屋へ行き、鍵のかかっていないドアを開けた。
「ただいま」
一応、声をかけた。
狭い部屋だ。人がいるのはすぐわかった。男が二人いる。
「亜由美」
聞き慣れた声だった。
二人の兄が、そこにいた。
まずいと思い、逃げようとしたが、素早く手を取られて部屋に引きずり上げられた。
「亜由美!」
長男の武雄がいきなり平手で頬を叩いた。
玄関のすぐ横で、亜由美はぺったりと座り込んだ。
「おまえ、なにやってるんだ」
武雄は剛介より一つ上で、次男の勇二が剛介と同じ年だった。
「来い。話してみろよ」
亜由美は部屋の中央に引っ張られる。
膣もアナルも犯され続けてドロドロになっており、喉にはまだ精液の感触が残っていた。
全身から激しい性臭がしているはずだ。
こんな姿で兄たちに会うなんて……。
剛介はやさしいからタクシーを使ったのではない。できるだけ、汚れたままの亜由美を兄たちの前にさらすために急いだのだ。
勇二がバッグを開ける。
「なんだよ、これ」
床に使用済みの淫具がぶちまけられる。
亜由美は、わーっと泣き出した。
がらんとした部屋。
常設されたカメラ。ベランダには、犬小屋のような彼女のベッドが見えている。
「聞いてやるから、話せよ。泣いてたって、許さないぞ」
亜由美は、兄たちの目的がわからず、二人を見つめた。
「いいか」
武雄が言う。「まだおやじもおふくろも、このことは知らないんだ。おまえの話によっては、二人に知らせないわけにはいかないんだ」
「そうだ。剛介のやつがとんでもないことをして、おまえをメチャクチャにしたんだったら、訴える。おまえを汚した連中を全員、警察に突きだしてやる」
「そうだぞ。おにいちゃんたちは、亜由美の味方なんだ」
二人に見つめられ、亜由美はようやく自分を取りもどした。
「どうして、知ったんですか?」
「剛介だよ」と勇二が言う。「あいつが、写真や動画をおれに送ってきやがってさ。まさかおまえ、ネットで顔を隠しもせず、名前も亜由美のままで、あんなとんでもないことをしているとは……」
「見たんですか?」
「見たよ。信じられなかった」
「でも、それが私なんです」
亜由美はその一言ですべてが片づくと思った。勇気を出して言ったのだが、兄たちには通用しなかった。
「正直に言うんだよ。おまえを困らせたり、悲しませたくないんだ。なんとか、元の亜由美に戻したいんだよ」
「でも、知ってるんですよね、私がなにをしていたか」
「なにを言ってるんだ。何年もやっていたわけじゃないじゃない。この数日だけのことだろう。いまなら、いくらでも取り戻せるよ。昔に戻れるよ」
亜由美は顔を横に振った。
「おにいちゃん、ごめんなさい」
亜由美は正座して、頭を下げた。
昔に戻るなど、ムリに決まっている。それに兄たちが言うような清純な女は、亜由美がなりたい自分ではないのだ。
「おい、ウソだろ。剛介が言ったことがホントだって言うんじゃないよな!」
「剛介さんが、なにを言ったかは知りません。ただ、いまこうしている私が、私自身だっていうことなの。これがホントの姿なの。誰かに脅されたり、無理強いされているわけじゃないの」
虚しい。でも、言うしかないのだ。
「ふざけるな。どこに、こんなことを自分から進んでやる女がいるんだ!」
しだいに兄たちが苛立ってきているのがわかった。二人は立ち上がり、狭い部屋を行ったり来たりしている。
落ちるところまで落ちた妹の姿を認めたくないのだ。
いや、それだろうか。亜由美は敏感に二人の気持ちを読み取っていた。
妹がメス豚なのだ。誰とでも寝て、あらゆる恥ずかしいことも平気でしている。毎日裸で暮らし、生理中でも犯されている。そしてその姿を動画で撮影されネットで配信しているばかりか、ゲーム素材に使おうというのだ。
社会の非難、冷たい目が、自分たちにも向かうのではないかと恐れている。自分たちの就職や結婚など、これからの人生の汚点になると恐れているのではないか。
その恐れに二人はとらわれているのではないか。
「ごめんなさい。おにいちゃんたち。私、こういう子だったの。ずっと黙っていたけど、前からそうだったの。こうなることを望んでいたの。だから、この大学に入って剛介さんに会おうと思って……」
涙は乾いていた。冷静になっていた。
二人の怒りは収まらないだろう。もしかしたら、この場で殺されるかもしれない。
「証拠を見せろ」
武雄が言う。
「証拠って?」
「おまえが、自ら、こういうことをやっているんだってことだよ」
「もう見たんだよね?」
「違う! あんなものは、どうにでも加工できる。おれは生身のおまえから聞きたいんだ」
生身、という言葉に亜由美は違和感があった。
そして二人の股間を見て、理解した。
兄も剛介や『亜由美の会』の連中と同じ、男なのだ。彼らが苛立っているのは、そのせいなのだ。
妹を救い出すのか。それとも妹を……。
亜由美は覚悟を決めた。
服をすべて脱ぎ捨てた。体の落書きに兄たちが、目を向けている。
そして、たくさんの傷にも驚いている。
「こんな、ひどい……」
動画よりも実際の傷はもっと深く大きいことがわかってくれただろうか。
乳首も乳房も、無毛の股間も、そして犯され続けて飛び出したままの肛門も、すべて、兄たちが想像した以上に、ひどいに違いない。
それが、彼らの妹の実像なのだ。
「おまえはどうしたいんだ」
「私は、悲しいけど、もう誰の子でもなくて、勝手にさせてほしいと思っています」
「そんな」と憤る勇二を武雄が制する。
「それは、絶縁するってことなのか? おれたち家族と縁を切るつもりなのか?」
「必要なら、そうしてください」
武雄は絶句し、「なんてことだ」とつぶやいた。
「わかった。とにかく、今日のことは黙っておいてやろう。とてもおれたちからおやじたちには話せない。もし、絶縁することが望みなら、自分で親に言うんだ。おれたちは知らないからな」
「はい。それでいいです」
「なんだと、このやろう」
勇二は武雄をふりきって亜由美に殴りかかった。拳が顎に当たり、亜由美は床に倒れた。
大の字になっている亜由美の陰部が、二人を挑発する。
「もうおまえはおれたちの妹じゃないんだ。それでいいのか?」
「はい。私は、メス豚・亜由美です」
「誰とでもやるんだな」
「はい。誰とでも。いつでも、どこでも……」
「じゃあ、おれたちともか?」
亜由美は痺れている顎を手で抑えていた。兄妹ゲンカの記憶はない。少なくとも兄たちは手を出したことはなかった。
裏腹なようだが、亜由美は絶縁を決定づけたこのときに、むしろ兄たちを本当の兄妹なのだと実感した。
頬の痛みは、一生、大切に取っておきたかった。
「どうなんだよ。おれたちだって男なんだぜ」
あまり深くは考えたくなかった。なにもかも面倒臭く感じられた。
「はい。もう兄妹ではないのですから……」
武雄がズボンを降ろした。
かちかちに高くなった男根が反り返っていた。バッグからこぼれ落ちたコンドームを手にする。その一つを勇二に渡す。
「こいつはメス豚なんだ。だったら、犯してやろうじゃないか。本当にそれを望んでいるなら」
「あ、ああ、そうだな」
勇二もズボンを脱いだ。彼も固くなっていた。
二人は急いでコンドームをつける。
「くそっ!」
武雄が亜由美にのしかかった。
「こうしてやる!」
乱暴に挿入してきた。
亜由美は兄に殴られ続けているような気がしていた。この痛み、この苦しみは、覚えておこう。死ぬまで何度も振り返って味わおう。亜由美はそう感じていた。
武雄はごろりと横になり、亜由美の体を上にした。
「おまえはケツの穴をやれ!」
勇二は、亜由美の白い尻を手で割った。武雄がその足を持ってぱっくりと割り裂いた。
どす黒いアナルが、勇二の目に入った。そのすぐ下には武雄の男根をくわえた性器があった。
「ちくしょう!」
勇二は叫び、亜由美を犯した。
二人の兄にはさまれながら、亜由美は「はー、はー」と荒い吐息を漏らしていた。
カラオケでずっと犯されていたのに、再び、淫乱な血が沸騰してきたのだ。
二人はこの光景がカメラで撮影されていることを知っているのだろうか。
亜由美は笑い出したくなった。
尊敬し、とても敵わない相手だった兄たちが、いまは自分の肉体に夢中になっている。
怒りが根底にあったとしても、やっていることはほかの男と一緒だ。
「あ、ああ」
思わず声が漏れる。変態だ。これが異常なセックスなのだ。
亜由美は感じてくる自分を抑えることができなかった。
「い、いい。もっと、もっとめちゃくちゃにしてください。メス豚・亜由美をどうか、めちゃくちゃに……」
兄たちがさらに動きを強めた。
アナルの勇二が先に果てた。
亜由美から離れると、魂を抜かれたように床にへたりこんでいる。
亜由美は武雄の上で馬にでも乗るように自ら体を上下させた。
「ううう」
うめき声は武雄のものだった。そして、その手が亜由美の乳房を強く握り締めた。
「いくぅ」
亜由美は絶頂を感じた。
武雄も体を硬直させながら、ほとばしる。
余韻を楽しむことはなかった。
兄も弟も、自分の精をためこんだ避妊具を床に捨てて、慌ててズボンをはいた。
「二度と会わないぞ。いいんだな」
吐き捨てるように言うと、彼らは部屋を出ていった。
事が終わったあと、すべてをなかったことにしようとする男がいるらしい。
兄たち、いや、もう兄妹ではないが、武雄も勇二も同類なのだ、と亜由美は思った。
自分がしでかしたことを、忘れたいのかもしれない。
しばらく床に落ちたコンドームをながめていた。
涙がこみあげてきた。
とうとう、実の兄たちに犯された。しかも自分から誘って。
とんでもないメス豚。
兄たちに会うことはもうないだろう。
なんだか、愛しい。
亜由美はコンドームを拾いあげると、二つとも、口の中に入れた。
泣きながら、ゆっくりと味わいつくした。
パレード
早朝講義がある。
年老いた元気のない教授だった。
亜由美はぼんやりと講義を聞いていた。
末土教授とは違い、彼女は恥をかかされることもなく、後ろのほうで時間を過ごした。ただ、彼女を盗み見ている男たちがたくさんいたのは事実だ。
もう大学中に知れ渡っているのだろう。
きっと、昨日、カラオケでなにをしていたかも知っているだろう。
講義の内容をメールにして、剛介に送信する。
今朝、剛介は亜由美のためにスマートフォンを用意してくれた。直接、そこにメモを取ることができた。動画に撮ることもできるが、それでは時間の節約にならず、試験の役に立たない。試験に持ち込めるのはノートだけなのである。
メモからノートとしての体裁に整えて、それを送信すればよかった。
折り返しメールが来た。
「食堂にいる」
食堂には、何人かの会員と剛介がいた。
亜由美はこの数日の間に会員をいちいち確認しなくなっていた。
あ、いるな、と感じるようになっていた。
それだけで十分だった。
すでに昼食が用意されていた。ハンバーグ、ナポリタン、カレーライス。それを好きなだけ食べていいと言われた。
「ゆうべはすごかったな」
剛介とゲー研の園田が、亜由美の様子をうかがうように寄り添う。
少しは心配しているのだろうか。
カラオケ店の話ではない。部屋の中で起きたことが、すべてがモニターされていたのだから、兄たちとなにがあったのか、彼らは知っているのだ。
そのことを自分からは言い出すつもりはなかった。
無表情な亜由美に、男たちは黙ってしまった。
「これが次の指令なんだけどさ」
剛介が折り畳まれた紙をテーブルにのせる。
亜由美は食事をしながら、その紙をにらみつける。


