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安里咲2 · 第5部

安里咲2 第5部 (5/5)
前の話

ただ、なにかしら仕組まれた運命だとしても、末土教授の亜由美に対する拷問実験に参加してしまったことや、剛介たちに輪姦され奴隷にされたことを考えても、もしかしたら選択の余地はなかったのかもしれない。

どこかで同じ罠にかかり、いまのような状態になっていた気もする。

厳しい日々のおかげで、そうとしか考えられなくなっていた。

夫人がパンパンと手を叩いた。人々が注目する。マーコフが立ち上がり、夫人の横に並んだ。

「みなさま、本日はお集まりいただきありがとうございます」

夫人はわたしのために日本語で語り、マーコフがそれを通訳している。あの柔らかなトーンで知らない言葉を音楽のように語る彼。その響きを、こんな立場ではなく聞くことができていたら、どんなによかっただろう。

「ただいまから、安里咲がみなさまの席にご挨拶にうかがいます。どうぞ、かわいがってあげてくださいませ」

男がワゴンを押してきた。スープの入った大きな陶器のボウルが乗っている。夫人にうながされ、端から順番にセットされたテーブルのスープ皿に給仕させられた。

もちろんほぼ全員がお尻や恥部を触ったり、軽く叩いて感触を確かめようとした。乳房を握り潰されたりもした。

ひとり、スプーンの柄で秘肉をかきわけてきた男もいた。

「遠く日本からやって来ましたの。いかがでしょう。想像された通りかしら?」

マーコフが客の言葉を聞いて通訳する。

「想像以上にすばらしい肌の艶だ。若い。これだけの肉体を責めることができるなんて夢のようだ」

「安里咲。今日いらしたみなさまは、新しいスポンサーなのよ」

意味がわからなかった。

「これまではパルダ王国だけがスポンサーだったけど、もしあそこが手を引いたらまずいでしょう? だから別のスポンサーを見つけたわけね」

気が遠くなっていく。

「パルダ王国は不穏なウワサが耐えなくて、しばらく不安定になるかもしれないの」

だとすれば、留学させられた亜由美はどうなるのだろう。てっきり、わたしも同じ場所へ留学させられると思っていた。

「それにこちらのみなさまは、趣味もいいし、ここに参加するための金額もなかなかのものなのよ」

どうでもいいことに聞こえる。

こちらはスープを注ぐたびに、体を触られ、いたずらされても、文句を言わなかった。むしろ夫人に押されて自分から望んでいるような態度をさせられた。

最後に珠緒のところへ行かされた。彼女は、いきなり指をお尻の間に入れてきた。

こぼしそうになった。

「安里咲。こぼしてごらん。すごい罰をあげるわよ」

なんとか、皿に入れることができた。

「かわいい。わたしのものだったのに」

穴を探ってくる。

「敏感なんでしょ? あなたがいろんな人たちに、いろんな場所で犯されている映像を見せてもらったけど、ここがすごく感じちゃうのよね?」

爪が腫れている肛門を見つけ、その少し盛り上がったままになっている粘膜にゆっくりと突き刺さる。

「くぅぅぅ」

「感じるでしょ? お尻が大好きなんでしょ?」

とうとう爪が穴の中に入ってきた。

「いやらしいわ、安里咲。最後に会ったとき、あなたは本当にお嬢さんだったけど、もうそうじゃない」

引き抜いた指を、わたしの口に入れた。

「舐めて」

言われた通りにする。

「食後が楽しみだわ」

引き回されたあと、夫人が床を指さした。

「水を飲んでおきなさい」

大きなボウルに入れた水。床に置かれている。

「飲み方はわかるわね? 人間のように飲むわけにはいかないのよ」

這いつくばって、水を飲んだ。途中でやめようとしたが、夫人が「もっと」と言うので、苦しいが飲み続けた。

「じゃあ、次はみなさんの靴にキスをして歩きなさい。テーブルの下をね。向こう側で待ってるわ」

ジャラジャラと枷の鎖を鳴らしながら、テーブルの下に入る。珠緒が最初になる。その靴を両手で受けて、キスをする。見知らぬ男女の靴に、順番に唇をつけていく。蹴られたり、口の中に靴先を押し込まれたりもする。すべての靴にキスをしていく。女性のヒールで腹部を蹴られる。男の靴で手を踏まれる。

やっと長いテーブルを抜けたとき、そこに十字架が立っていた。

「みなさまが食事をされている間、少々、お騒がせします」と夫人が挨拶し、わたしをそこに拘束した。

両手を広げて金具に枷を留める。首輪も留められる。左足を根元に留める。だが、右足は右手の金具に取り付ける。股間を大きく広げたかっこうになる。

この十字架には仕掛けがあった。夫人が背後からハンドルを回すと、中ほどで折れて体が反り返る。背中とお尻が押されて、胸と股間を突き出すかっこうにされる。

「みなさま、しばらくこの娘の悲鳴をお楽しみくださいませ」

カチャカチャと食事の音が続く。給仕たちはスープを下げ、前菜を出し、ワインを注ぐ。

わたしを責めるマーコフの友人たちがやってきた。夫人は白いマスクをし、外科医の手術着のようなものを身につけた。恐ろしげな器具が並ぶワゴンが足元に置かれた。

先端の細いペンチのようなものを夫人が見せつける。

「お楽しみよ」

鼻の横にそれを押しつけた。後ろから男たちが頭を押さえ付ける。

「シリコンが肉にからまって痛いかもしれないけど、泣きわめいてもいいのよ。みなさん、楽しみにしているの。あなたのかわいい声をナマで楽しみたいわけ」

針金で貫かれた跡に、シリコン素材のピンのようなものが埋め込まれている。それを引き抜くのだ。

「ううううう」

「まだよ」

がっちり鼻のシリコンにペンチが食いついた。

「あぁぁぁぁ、いっ、いっ、いったぃぃぃぃ」

全身に力が入る。針金を通されたとき以上の痛み。治りかけた傷口を広げるように、ピンが引き抜かれていく。

「ひぃぃぃぃ」

みんなが、口へ肉を入れながら、もぐもぐと顎を動かしながら、グラスを手にしながら、わたしを見て楽しんでいる……。

「ひぎぃぃぃ!」

やっと一つ、引き抜かれた。わたしの体にはこのピンが、まだ九ヵ所埋め込まれている。

ほとんどの人たちは笑い声をあげ、悲鳴の真似をしておどけて見せたり、楽しげに食事をしているのだった。

奴隷の姿

まるで麻酔なしの生体解剖。

夫人はマスクで顔を隠しているが、その目はギラギラと輝いて悦びに満ちている。

鼻を貫いたシリコンが引き抜かれると、そこに金属のピンが通された。あまりの痛みに麻痺していたのか、冷たい金属が通っていく間、なにも感じなかった。

食事をしながら、日本からやってきた女子大生が悲鳴をあげて泣いている姿を見て楽しんでいる。夫人と同じ鬼の目をして、欲望をたぎらせている。もっと悲惨なことが起こることを期待している。そこに恐ろしいまでの深い絶望を感じた。

亜由美の拷問実験は、わずかな場面だけを見せられたのだが、あの映像が全世界の、ここにいるような人たちによって消費されたのだと思うと、これからのわたしの未来は、黒い縁取りの中にしかないように思える。

消費される肉体。

鼻のピンにU型の別の金具が取り付けられた。小鼻を縦断するピンにぶら下がる。顎に先端があたるほど大きい。

それを夫人は上下に動かした。

「うっ」

「大して痛くはないはずよ。あのシリコンには傷を癒やす薬が含まれていたはずだから」

それでもこの違和感は、痛みとしか表現できない。

頬のピンが抜かれる。そこの痛みより、夫人が指で頬を掴んでいる方が痛いぐらいだったが、いずれにせよポロポロ涙がこぼれてしまう。

頬に空いた穴にも金具が取り付けられた。内側と外側から挟むように。

「かわいいわ」

撫でるように傷口を触る。

直径一センチほどの押しピンのようなものが左右の頬に取り付けられた。

「あとでこれの意味がわかるわよ」

そんなもの知りたくはない。

次に乳房の下部を貫く、おそらくもっとも長いピンが引き抜かれていく。

「ぎひぃぃぃぃぃ」

「そんなに痛いはずないんだけどな」

「痛いんです、ホントです」

「それは残念。薬の効き目がいまいちだったのかしら。次の改善点ね」

「ああ、つらい」

次まで生きていられるだろうか。

「ひー、ひー」

両方の乳房からピンが引き抜かれていく間、暴れていたのだが、それが客たちにはおもしろいらしく、彼らは笑ったりなにかを大声で語り合っている。

「見ろよ、哀れだな」

「豚みたいに泣いてるわ、笑っちゃうわね」

「痛い目に遭うのが大好きなビッチなんだから、当然だよ」

「もっと痛めつけてやりたいわ」

そんな会話だろうか。

「これを入れますからね」

夫人は細長い金属の棒を二本持っていた。

「痛かったら、痛いって言っていいのよ」

「ぐぅぅう」

歯を食いしばる。二本の長い棒を入れられるのだが、そのときに夫人は慎重にやっているとは思うものの、新たな傷を内部に作っているのではないか。そのせいか、強烈な痛みに震えてしまう。言葉にならない。

「できた」

みおろすと、左右の乳房から、銀色の棒の先端がわずかに顔を出している。そこにキャップのような金具を取り付けた。

「安里咲の体、どんどん便利になっていくのよ」

知りたくない。聞きたくない。

股間。左右の丘に二つずつ埋め込まれたピン。思ったよりも痛みは感じない。そこにも金属の短い棒が通され、鼻と同じようにU型の金具がぶらさがる。性器の左右にそんなものが埋め込まれた。

普段、それほど意識しない体のパーツが、意識の先端になっていく。

フックのついたゴムベルトを金具につけてお尻をまわして反対側の金具に留めると、それだけで、性器が全開になってしまう。

「すごく濡れているじゃないの。おしっこ漏らしたかしら?」

そこを指ですくって、その指をしゃぶらされた。手袋のゴムの味しかしない。

「もう悲鳴も出ないの? つまらないわ。口を開けてごらん」

涙の向こうに恐ろしい夫人の目がある。

黙っていたら、鼻環を引っ張られた。

「うっ」

「口を開けて」

言われた通りにするしかない。

指が中に入ってくる。

「かわいいお人形さん」

男が短いタンブラーのような器具を持ってきた。

それを口に押し込まれる。底はない。外側に広がっていく筒なので、口が開いたままになる。夫人がなにかをしている。カチッカチッと音がして、頬の金具にそのタンブラーが取り付けられた。

お尻を男に叩かれた。

「痛いぃぃぃ!」

そう言ったつもりだったが、出てきた声は「あがー」といった、みっともない悲鳴だった。

「おまえの悲鳴が遠くまで届くわよ」

何発も続けて引っぱたかれて、何度もみっともない悲鳴を上げた。

噛んでみてわかったが、このタンブラーの歯があたる部分には硬質ゴムがついていて、しっかり噛みしめることができた。

「さあ、最後はこれよ」

乳房の下の棒に、プラスチックの板を取り付ける。その板を水平にすると、板の端についているチェーンを鼻環に引っ掛けた。

「みなさまに飲み物を提供するの。楽しい仕事でしょ?」

十字架から外しながら、両手を背中で組ませ、枷で拘束した。

給仕が胸のトレイに並べる食後のお酒を、客たちに配っていく。鎖を引きずりながら。

背後に男がいて腕の枷をしっかり掴んでいる。夫人が横にいて、乳房の具合などを見ながら、わたしを歩かせる。

食べ物と酒に上気した客たち。奴隷を間近に見て、さらに興奮し、なにごとかをわめいている。

「どうだ、楽しいか」

ツバを吐きかけた男もいた。

「もっといじめたいわ」

冷たく笑う女性もいた。

配り終えたとき、給仕たちがダンスフロアに続く扉を開けていく。

スポットライトのあたったきらびやかな広間が現れた。

拷問ショー

客たちは立ち上がって、広間へ移動していく。

最後にわたしも連れられていく。

「ぐうぅぅ」

思わず声が出てしまった。

そこには、恐ろしげな器具が設置されていたのだ。ギロチン台が高くそびえ、その横に鋭い鋲のついた鉄のイス。その隣には、女子寮で使われたさらし台よりも大きくて頑丈そうな見せしめの台があった。きっと屈強な男を鞭打つために作られたものだろう。

またブリキ製なのか古めかしい金だらいも置かれている。そこには巨大なブリキの浣腸器もある。

どの装置も大きすぎ、わたしから見れば、巨人たちの世界に紛れ込んだような気分がした。

「どう? 気に入った?」

夫人がわたしのお尻をぎゅっと握った。逃げたくなるが、背後の男が岩のように動かない。

客たちはスポットライトのあたった拷問器具のまわりに並んだイスに座り、酒やタバコ、葉巻を楽しんでいる。

「そこに跪くのよ」

タライの横に膝をついた。

客を代表してマーコフと珠緒がやってくる。

マーコフはなにか書類を手にしている。

「安里咲。おまえは罪深い女だ。認めるか?」

マーコフの言葉を珠緒が日本語で言う。

首を横に振るしかない。わたしにはなんの罪もない。

「そのような態度が、この厳粛な法廷を侮辱していることをわかっているのか?」

首を横に振り続ける。なにしろ、言葉が出ないのだ。

「わかっていないようね、安里咲。あなたはこれまで何人の男とやったの?」

首を振り続ける。すべて自分で望んだことではない。

「いろいろな人たちを、あなたの腐った体と腐った心で狂わせてきたんでしょう? それこそがあなたの罪なのよ」

意味がわからない。

「よって、その罪をつぐなうべく、安里咲の肉体を痛めつける刑を執行する」

マーコフが読み上げると、拍手と笑いが起きた。

茶番なのだ。自分たちの気分を盛り上げるための演出。

「どっちにしろ、安里咲はとっても悲しい目に遭うわね」と珠緒が微笑んだ。哀れみさえも、彼女には悦びなのだろう。

この装置を見る限り、最後にはギロチンで殺されてしまうのかもしれない。

なにをしてもムダなのだ。ここにいるのは、こうしたことに大金を払う人たち。

「そこに座るんだ」

座面、背、脚、肘掛け、つまりあらゆるところにトゲの埋め込まれているイス。そんなものに、進んで座る者はいない。

逃げたいとか言うわけではなく、とにかく嫌なので暴れるが、男たちがやってきて、三人がかりでイスに座らされてしまった。

「がああああ!」

お尻に突き刺さるトゲ。何百発の鞭に匹敵する。そのとたん、動けなくなってしまった。動けば動くほど、痛みが増すからだ。

夫人は男たちと楽しそうに革のベルトでわたしの体をイスに縛り付けた。

「もっと泣きなさい。痛いでしょう? あなたをその淫らな肉体から解放してあげるんだから。もっと泣きわめいていいのよ」

解放されることは、死ぬことなのだろうか。

鼻と乳房で支えているトレイに、給仕がスポンジケーキを置いた。夫人が乳房を持ち上げて、ケーキを乳房の真下にくるようにした。

その間に、給仕は客になにかを配っている。

夫人が男から受け取った銀の皿に目が向いてしまう。二十センチはある針が何十本もある。これまで受けてきた残酷な行為から、なにをするつもりかはわかる。だが、なぜケーキを。

「安里咲はまだ母乳が出ないから、これで代用するわ」

「がっ!」

針が乳房を上から貫いた。恨みをこめて夫人を見つめる。

「にらんだって、平気よ」

「ぐぅっ!」

ぐさぐさと乳房に針を突き刺していく。

「若いパンパンの乳房に針を突き刺す感触はホントにステキだわ」

乳房の下のスポンジケーキにまで達している。すべての針を左右の乳房に突き刺したところで、客を招く。客たちは手にフォークと皿を持っている。この連中は、このケーキを食べるのだ。

「ぐうううう!」

客はフォークで乳房を持ち上げて、その下にあるケーキを取っていく。わざとフォークは乳首にあたるようにしている。

「おまえの血のしたたるケーキってわけ」

客たちに行き渡ると、トレイが外された。針はそのままだ。

男たちが持ってきたのは、鉄の皿だ。そこには炭がのっている。赤く焼けた部分がちらちらと見えている。今度はそれを乳房に装着した。

「安里咲の淫らな肉体を焼き払いましょうね」

夫人はおおぶりの扇子をさっと開くと、風を送ってきた。

「がはっ」

暴れずにはいられない。針の先は炭にあたっている。夫人の送る風で炭が真っ赤になっていく。乳房を外と内から焼かれる……。

背中もお尻も腕も足も、イスのトゲで切り裂かれていくが、暴れる体を抑えることはできない。

こんなわたしを客たちは酒とわたしの血の味がついたケーキを口にしながら、楽しんでいる。男も女も。マーコフも珠緒も。

唇に血がついている。

「このままじゃ、安里咲のおっぱい、焼けてしまうわね」

「あがあがあ」

泣き叫んでも許されないのだろうか。

「火を消してもらいましょう」

男たちがイスごと持ち上げてタライの中に置いた。

「じゃ、どなたか、火消しに協力してもらいましょうか」

惨劇

男たちが並んで、タライの外からおしっこをかけてきた。うまく届けば、炭を消す効果がある。このパーティーの趣旨は明確で、マーコフたちの企てに参加している男たちは、みな日本ではあまり見られない長さのペニスを持っていた。だらりとしたままでも、勢いよく小便をすると、ちゃんと狙えば確実に乳房に当たる。

それなのに、彼らはじらすように、わざと外す。

針が突き通った柔らかな肉の塊が、生温かい汚水で濡れていく。

そのうち、小便はもっと上を狙ってくる。口に装着された漏斗。そこに入れば、そのまま喉に達する。顔にしぶきがかかる。

「があああ」

喉を直撃して、それがこぼれ、かろうじてトレイに落ちていく。ジューと炭に流れ、煙があがる。そのせいか、熱はかなり和らいでいった。しかし完全に消えたわけではない。夫人が相変わらず扇子で風を送るからだ。

「さあ、どっちが勝つかしら? 安里咲のおっぱいが丸焼けになれば、あとで切り分けて、みなさまといただかなくちゃね」

熱せられた針はかなりの温度になっている。

手袋をした夫人とマーコフが、その針を一本、抜いた。まるで竹串でオーブンの肉の火の通りを確認するかのように。

「まあ、かわいそうだわ。けっこう熱くなっちゃってるわ、みなさま、消すならお急ぎくださいませ」

男たちは一人ずつではなく、三人が三方から放尿してきた。消してくれる……。お願い、早く……。

それにつれて、口に浴びせられる量も増える。

「あぐぅぅ」

痛烈すぎる。

すきをみて、針を抜く夫人。

男たちのほぼ全員が、拷問係の男たちも含めて、わたしに小便を浴びせてきた。

ガクガクとした震えが止まらない。

「まあ、壊れそうね。大丈夫かしら、安里咲」

ちょっとしたショック状態だろうか。乳房が焼かれる恐怖は、これまでされてきた酷いことの中でももっとも恐ろしく、苦しい。痛み以上に、自分の体が壊されていくことに耐えられないのだ。

「みなさま、ちょっと休憩をしましょう」

小便まみれの乳房。その下のほとんど消えた炭を片付けてくれた。

「まあ、安里咲。よく耐えたじゃない?」

顔をザラザラの耐熱手袋で撫でられた。

「大丈夫よ、死にはしないから」

男たちに枷、ベルトを外されていく。夫人は白いシーツをわたしにかけた。それが血に染まっていく。どこから出た血であるかはわからない。全身から血が出ている。

似たようなことを商店街のバザーでやらされたが、それが子どもの遊びだったと思えるほど厳しい。

男たちが担架をもってきて、それに担がれて別室に運ばれた。

どうあっても、最後にはギロチンにかけられるのだから命はない。それまでに、いや、もうすぐ、精神がまいってしまうだろう。

強烈な痛みしか感じない乳房に苦しみながら、小さな部屋に連れ込まれた。冷たい風が流れている。

銀色のステンレスの台に寝かされた。それは診察台ではない。解剖台だ。

白衣の人たちが三人ほどいて、わたしの体にホースを近づける。細かな粒子ながらも、刺激性の強い液体を全身にかけられた。細かな泡となる薬剤を吹き付けられ、それが傷口に滲みる。

「がひぃぃぃぃ」

治療をするつもりなのか。それとも殺すつもりなのか。

髪も洗われる。

耳の中まで掃除され、爪を切られ、むだ毛を剃られる。死に化粧だろうか。だったら、口に突っ込まれたこの器具を外してほしい。

「飲みなさい」

夫人は白衣にマスクをしていた。スプーンでどろっとした液体を口の中に入れてきた。

勘違いかもしれないが、甘い。ごくりと飲み干していた。

「もっと」

喉、そして胃へと流れていくその液体は、カーッと中から熱くしてくれる。

「若いから回復も早いわ」

傷に薬を塗られた。冷たくて少しは落ち着く。だが、それは、もっといたぶるための準備に過ぎない。

「安心しなさい。このための特別の医療チームを用意したから、簡単にはリタイアさせないわよ。ほら、もう一口」

なにを飲まされているのかわからないが、スーッと痛みが減っていく。麻薬のようなものだろうか。だとしても、苦痛が遠くなっていくのは、ステキなことだった。

「ちょっと目をつむっていなさい」

治療が心地よい。乳房を触られ、傷に薬がつけられ、なにかを注射された。

「なにを笑っているの?」

串刺しにされた乳房に注射をする、というのが無意味なような気がして、笑ってしまったのだ。

目をつぶって想像すると、穴のあいた風船から水がぴゅーっと出てしまうような光景。薬を乳房に入れても、穴だらけだから……。

夢なのか、どうか。わからない。

わたしは商店街のバザー会場にいた。ゲー研の人たち。そして剛介が穏やかな笑顔を向けている。喜ばれている。祝福されている。あの、いやらしい商店街のオヤジたちまでもニコニコしている。

あそこに帰りたい……。なんでも進んでするから。どんなことでも自分からするから。ここは嫌。この部屋、この城、この国……。

どれぐらい、そうしていたのかわからない。体に力が入らず、宙を浮くように、暗い部屋へ入っていくような感じ。幽霊になったのか。

気がつくと、わたしは広間にいた。首と両手を、分厚い板で挟まれて、膝を床についている。

夢なのか。現実なのか。

「……しばらく、みなさまにご自由にお楽しみいただきましょう」

夫人の声がしている。

「食後の運動ですわね」

声が遠い。

「あぐぅ」

首と手が固定されているだけなのに、なにもできない。

何本もの手が下半身を触っている。

目の前に夫人がいる。手にはゴツゴツとした握り部分が目につく革の鞭。何本もの革が束ねられたバラ鞭だ。

「死なないうちに、楽しみましょうね。死んじゃったら、こんな楽しみはなくなっちゃうから……」

マーコフがやってくる。全裸だ。白い肌。筋肉質で、以前に見たときよりほっそり見える。やや年を取ったのだろうか。

相変わらず巨大なペニス。それを、器具が取り付けられた口に突っ込んでくる。

「げー」

喉にすぐ達するが、まだ半分以上残っている。マーコフは薄笑いを浮かべ、全部、飲み込ませようとしている。漏斗のような器具のおかげで、彼が噛まれる心配はなく、わたしは口を閉じることもできない。

それと同じぐらいの太くて長いものが、お尻に入ってくる……。左足を誰かが持ち上げているので、体が斜めになっている。

乳房を掴まれた。

「がああああ」

強烈な痛み。先ほどの責めの傷痕、火傷痕。せっかく落ち着いたのに、またぶりかえされている。

夫人を恨みのこもった目で見る。最初に乳房を痛めつけたのは、その後もずっと痛みが続くように。そして穴を使う間も支障のない部分だから。

マーコフとアヌスを貫くペニスの動きはバラバラだ。ただの肉の塊。彼らはそうとしか見ていない。

さらに深くマーコフが入れてきた。彼の下腹が鼻にあたる。

珠緒が「安里咲、上手になったじゃないの」と笑う。「そこまで呑み込めるなんて、その辺の娼婦だってムリだわ」

彼女も裸になっていた。少し痩せすぎなのではないか。お腹もぺったんこ。手足も細すぎる。乳房はそれほど大きくなく、肋骨が浮き上がっている。思ったほど魅力的ではない。

「まったくだ。安里咲がすっかりいい子になったな」

彼のものが食道まで入り込んでいる。不思議なことに、それはあの甘い液体のせいかもしれないが、思ったほど嘔吐感がない。彼に深く突き刺された。目尻に涙が浮かぶ。珠緒たちに誤解されたくないが、単なる反射的なものだ。

お尻を激しく突かれて、粘膜が熱くなっている。人が代わったのか、同じ人なのかわからないが、今度は性器に入り込んできた。ガツンと子宮を突き上げた。

「あぐぐぐ」

恥ずかしいが、奇妙な満足感。満ち足りている。穴を太いもので深々と貫かれることで、はじめて感じるなにか。

マーコフがゆっくりと引き抜く。完全に抜くと思わせて、激しく突き戻した。

喉が鳴る。

そこで感じるということがあるだろうか。ペニスを喉の奥で感じることが、性的な興奮になるなんて。

後ろで犯している人たちが次々とかわっていくのに、マーコフは口を独占している。

「飲ませてやろうか」

「そうしてあげてよ」と珠緒。マーコフにしなだれかかりながら、その骨ばったお尻をわたしの手に押しつけてきた。

「安里咲、やさしく撫でてよ」

彼女は股間を擦りつけてくる。

夫人が鞭を振り上げた。やらなければ、叩かれる。やらないでいたら、夫人は背中に鞭を当てた。

バシンと音が高い天井に反響した。

男も女も、裸になって再びダンスフロアに戻ってきている。

珠緒の性器を触る。うらやましいほど、傷ひとつなく、なめらかだ。しかし、クリトリスの包皮に小さな銀のリングがついていた。そのあたりを撫でた。

「マーコフ、お願い、欲しいの」

「安里咲に飲ませてからだ」

「違うの。先にちょうだい。だけど、わたしの中では出さないで」

「なるほど」

ざっと彼のペニスが喉を擦り上げて出ていった。

「ぐはっ」

大量の涎が出る。

珠緒が見せつけるように、股間を彼に押し当てている。身長差があるので、よじ登るようにして彼に抱かれ、突き上げられた。

「あん、あん、すごい」

子どもでもあやすように立ったまま、マーコフは珠緒の性器にペニスを深々と突き立てた。だが、根元まで入れているわけではない。

キスしながらのセックス。

それは親しい者同士の愛の光景にも見える。醜い肉欲しかないのに。

やがて珠緒の足を、女の液体が濡らしていく。

何人がわたしを犯して射精しているのかわからない。股間はベタベタになっているはずだ。ときおり夫人が背中を鞭で打つ。

「あがうっ」

その痛みが正気を保たせている。

「うれしい。ありがとう」

満足したらしい珠緒。そこから引き抜かれたペニスが、再びわたしの口に押し込まれた。

珠緒の味のするペニスを、わたしに食べさるつもりなのだ。

「あああああ」

息ができない。

彼の太く長いものが脈動し、膨らんだ。

射精しているのだ。喉の奥へ。

「うまいか?」

「おいしいはずよ。憧れの彼のザーメンだものね」

ごくりと飲んだ。彼の亀頭ごと飲み込む。

「おお、すごいな」

彼は笑いながらペニスを引いた。

頭をふりながら、夢中でそれをしゃぶった。

珠緒に見せつけるように。

「だめよ。これは私のものなの」

彼女がマーコフの腰に手を回して、引いた。

テラテラと光る彼のものがあった。まだうなだれているわけではない。

「みんなが温めてくれたらしいから、安里咲の穴を試したいんだよ、全部」

「えー、いやだわ」

ちょっと嫌な顔をする珠緒だが、マーコフは彼女を押しのけて、背後に消えていった。

「なんか、悔しいわ」

珠緒が陰部を押しつけてきた。鼻と唇にあたる。

彼のものが膣にめり込んできた。

「ふー」

そこに鞭が打ち込まれた。

「はー」

満足に呼吸もできない。彼がわたしの中で暴れている。せめて、それを快楽にしたいが、誰もそれを望んでいない。

「安里咲。飲みなさい」

珠緒は開いた口の中に尿をほとばしらせた。

「はがあああ」

むせて鼻から噴き出す。大量の尿。飲みたくないが、喉を通ってしまう。

「はははは」

彼が笑っていた。

鞭、鞭、鞭。

背中から肩にかけて、麻痺している。それでも夫人は鞭をやめない。

小便のしたたる陰部をわたしの手で拭いて、珠緒も鞭を掴んだ。

「安里咲。楽しいわね」

マーコフの太く長いものが、アヌスに入ってきた。

「いいぞ、こいつのケツ穴は!」

日本語で彼が叫び、続けて彼の国の言葉で叫ぶと、客たちがどっと喚声をあげていた。

まるで腕のように大きなものが、腸内の奥まで入り込み、激しく擦り上げていく。

そしていまでは二本の鞭が、背中を真っ赤に燃え上がらせていた。

わたしは向こうに見えるギロチンに憧れた。

こんなことが続くのなら、いっそ、あそこで終わりにしたい。早く、あの鋭い刃の下に横たわりたい。

「いくぞ」

彼がわたしの中に果てていく、かすかな快楽を拾い集めようとしたが、激しい鞭の痛みに妨害されてしまった。

「安里咲。まだ叩きたりないわ!」

夫人が絶叫していた。

「ええ、奥様。もっともっと、ぶちのめしてやりましょう」

珠緒も同調する。

マーコフが煽るような現地の言葉を叫んだ。

客たちの異様な喚声。それが高い天井に反射していた。

地獄の饗宴そのものだった。

ギロチン

見せしめの台に固定されたわたしを、彼らは鞭やパドルで打ちはじめた。

「があああ」

口に装着された器具のせいで、みっともない悲鳴しか出ない。

体の大きな彼ら、彼女らは、スポーツでもするかのように手加減をしない。日本から来た小さな娘をぶっ叩くことが、彼らの夢だったのだろうか。

「ぐうううう」

お尻の肉がちぎれ飛ぶのではないか。骨から肉だけ剥がれてしまうのではないか。

治療されたとはいえ、荊のイスでズタズタにされたお尻は、皮が剥け、血しぶきが飛んでいることだろう。

「みなさん、喜んでるわよ、あなたが泣くのを。精一杯、泣いてごらん」

殺されるのだとわかっていても、いまの痛みと、これからされるであろうことに怯えてしまう。

悲しいまでに惨めな生き物。

「ふがあ」

お尻の穴を広げられ、長い管が入れられた。見ることができなくても、なにをされるのかはわかる。

お腹の中にずっしりと重く冷たい液体が流れ込んできた。

なにも食べていないので糞便は出ないだろう。出るのは、精液だけだ。だが、大量浣腸による苦しみが減るわけではない。空っぽの腸を痛めつける刺激の強い液体のせいで、腸がうねうねともだえ苦しむ。

どれだけ入ってきているのかはわからないが、胃が持ち上げられ、「げー」と胃液を吐いた。

「ははははは」

みんなが期待していたことなのだろうか。こんなことを。

ゴボゴボと胃の奥からこみ上げてくるものがあり、それが喉から噴き出す。

「ヤー、ハハッ!」

彼らは大喜びで拍手喝采だ。

苦い薬液。彼らは逆流させた……。いま口から噴き出ているのは、お尻から入れられた浣腸液……。

ほのかに精液の味。

すーっと気が遠くなる。

そのあとにこみ上げてくるものが、お馴染みのニオイと味であることに突然、気付く。

なんということを。

彼らがお尻から入れている液体は浣腸液ではない。どこで集めたのかわからないが、さんざん飲まされた尿だ。

「安里咲。あなたの体、わたしたちのおしっこであふれているのよ。小便袋になったのよ」

珠緒が笑っている。大量に飲み食いした彼らの屎尿処理……。

ゴボゴボと泡立つ尿を口から吐き出しながら、しばらくオブジェのように、放置された。

おそらく写真や動画でも、この苦痛と絶望的な気持ちは表現できないだろう。浣腸されながら吐いているだけの絵。汚らしいだけの肉塊。

死んだあとも、ネットにそれが残るのだろう。そして人々は「そんなこと、実際にあるわけがないよね」と笑いながら楽しむ。

「もし、本当だったら、もう生きていないんじゃないの」

ようやくお尻から注がれる液体が止まり、管が引き抜かれた。ゾクゾクするほど長く腸内に入り込んだ管だった。腸を引き抜かれているような気がする。

「キヤー」と歓声がわく。

お腹の中から、いっきに液体がほとばしっている。ダンスのための床は汚物だらけになっていくだろう。それでも彼らは笑い、はしゃいでいる。

無邪気な子どものように。

裸になった彼らはわたしの排泄したものを浴びているのではないか。その想像は、当たっていた。

目の前にやってきた中年男は、濡れてテラテラと輝いていた。その半立ちのペニスが口に突っ込まれる。

三つの穴に、何本ものペニスを突っ込まれていく感覚は、すっかり馴染んでしまい、むしろ安心感さえある。なにしろ、彼らは犯している間だけはそれに夢中で、それ以上の酷いことはしないのだから。

穴が爛れ、ボロボロになったとしても、浣腸液を逆流させられたり、肉がちぎれるほど引っぱたかれるよりはマシに思える。

それでも、何巡目かわからないが、男たちが獣欲のラリーを終えたとき、いますぐ、このままギロチンの下に連れていってほしいと思うようになっていた。

ここからまた治療されて痛めつけられるぐらいなら、汚れたままでもいい。首をはねてくれれば一瞬で終わる。なにもかも。

口の中のカップが外れた。顎が外れたように麻痺している。

「今度はわたしたちを楽しませて」

女性たちが剥き出しの性器を顔に押し当てる。どうせ殺されるのなら、噛みついてやろうか。噛みつくなら珠緒か、夫人か。一度に二人はムリだから、どっちかになる。

だが、突然、目隠しをされた。

「ごめんね。見られたくないらしいわ」

夫人の声がする。客の要望だ。

そのせいで、口にしているものが誰のものかわからなくなった。日本語は珠緒と夫人しか発しない。それが聞こえるからと、いま口にしている性器の持ち主が彼女だとは決めつけにくい。

淫らな液を浴びせられ、小水を浴びせられ、次々と臭い女たちを満足させていく。その中に二人が入っている確信が持てない。

その理由はすぐにわかった。

「いくわよ、安里咲。これがやってみたかったの!」

背後で珠緒の声がし、固い棒がアヌスに入ってきた。

「きぃぃぃ」

太く長いペニスに広げられてきたのに、それは無慈悲な硬さと大きさで、肉を裂いてきたのだ。

「もっと泣くのよ、安里咲」

「ひぃぃぃぃ、痛いぃぃ」

クンニリングスをする余裕などないが、彼女たちは性器を押しつけてくる。

激しいピストンがはじまった。珠緒は股間に巨大なディルドをつけて、それを押し込み、男のように腰を振っているのだ。

マーコフがそこで快楽を得たことが許せないのかもしれない。

女たちが一通り満足したのか、目隠しが取られた。そこには、いまお尻に入れられているような、人間の腕ぐらいのディルドを股間に装着した夫人が立っていた。

「舐めなさい」

「うううう」

涙を流しながら、必死に口を開いて、そのゴツゴツとしたディルドを舐める。とても口には入らない。

こんなものを体の中に入れられている……。苦痛以上に、壊れていく自分が悲しい。

「珠緒さん、交替よ」

「ひぎぃぃぃぃ」

引き抜かれていくときの痛み。ピストンをしながら、かなり奥へ入れていたのだろう。

「まあ、すごいわ。ぱっくり開いてるわ。奥まで見えちゃうわね」と夫人。「だけど、わたしはこっちに入れてみたいの」

「あ、だめ! ムリです!」

拡張され続けてきたとはいえ、それは赤ん坊の頭ぐらい大きく感じられる。人間でいえば拳ではなく、膝がめり込んでくるようなものだ。

「くらいなさい、メス豚ちゃん」

「きぃぃぃぃぃ」

亀頭部分が膣をえぐり、めり込んだ。裂けたような気がした。

この痛みは部分的なものではない。下半身全体が麻痺したような鈍い痛みに覆われていて、膣を引きちぎろうとしているのだろうか。夫人は、その痛みしかもたらさない塊を、より深く押し込もうとしている。

「見て、安里咲」

珠緒が目の前にやってきた。

「きれいにしなさい」

お尻を裂いた凶器。恐ろしい形状のディルドだった。砲弾のような滑らかなものであってほしかったが、まったく違っていた。

それはクリスタルのような素材だった。小さい鋭角の面で構成された杭。透明なはずだが、血や粘液がべっとりとついている。

それを口に擦りつけてきた。

「舐めるのよ、安里咲。おまえのお尻の穴の血だよ。ゆっくり味わうの」

珠緒は驚くほど目を輝かせている。舐め取っていくと、ディルドはキラキラと輝き出す。彼女の目と一緒だ。

全体に暗いホールだからか、わずかな光に反射する目とクリスタルだけが、やけに美しい。それはこの世とは思えないほどで、痛みを忘れるほど心を奪われる。

「よし。きれいになったわね」

「うきっ」

膣からズボッと音を立てて、夫人がディルドを抜いた。

「ああぅぅぅぅん」

強烈だった。根こそぎ切り取られたような気がした。全身から力が抜けていく。それも一種の陶酔なのかもしれない。自分でもよくわからない。

ズタズタの体。引き裂かれた穴。奉仕するだけさせておいて、満足したのだろう。全員がわたしをいま、見放そうとしている。

「安里咲」

夫人が血まみれのディルドを見せつける。性器はえぐられ、潰されてしまった。だから、なにも感じなくなってしまったのではないか。

それでも、その器具を舌で舐めていく。クリスタルのような輝きはない。自分の体を責め、性器を破壊した道具。それをきれいにしていく。

残酷な人たちによって、わたしはここで殺される。これを舐め終えたら、きっとその時がくる。

「もういいわ」

半分も舐めていないが、夫人はその器具を外した。恐ろしいことに、反対側にはそこそこ大きなディルドがついており、夫人の中に入っていたのだ。珠緒もそうだったのだろうか。それが彼女をあんな目つきにさせたのだろうか。

男たちがやってきて、わたしを台から解放した。

まったく力が入らず、撒き散らした浣腸液と尿の中にへたりこんでしまった。

夫人は乗馬用の鞭を持ち、おごそかに言う。

「安里咲。おまえは罪深い淫らな体を持って生まれた。その不幸に免じて、われわれは罪を許してやろう」

マーコフがそれを通訳している。

「これ以上、淫らな体に翻弄されることのないように、おまえを肉体から自由にしてあげよう」

ああ、やっぱり。

屈強な男たちがわたしの腕を取る。抵抗する力はない。

「さあ、安里咲。天国か地獄かわからないけど、とにかく肉体のない世界へ行きなさい」

「許して。お願いです。どんなことでもします。なんでもします。それだけは……」

やっぱり死にたくない。

あれほど望んだ死が、いまは怖くなってしまった。

「まあ、これだけ苦しんだというのに、まだ、淫らなことがしたいというの?」

「はい。この卑しい肉体をぜひ、みなさんでオモチャにしてください。もっと厳しく扱ってください」

「安里咲。それはおまえの体が言わせているのよ。もう苦しむ必要はないのよ」

「いやです。お願いです。どうか、そんなことは……」

わめいても、ギロチンの下に首をのせ、上から板で押さえつけられた。

「気にすることはないさ。おれが最後までおまえを味わってやる」

マーコフがまたしても怒張したペニスを、夫人に痛めつけられた性器の中にねじ込んできた。

鈍い痛みしか感じなかった。

だが、客たちが喜びそうなことを叫んでいた。

「ああ、いいわ。お願い。いっぱいして。もっと激しく突いて。感じる。いっぱい感じるの。安里咲を殺さないで。お願い、殺さないで……」

エンディング

夫人が縄で手首を縛り、背中に回す。両手首を縛った。さらに痛めた乳房を縄で締め付けていく。足で体を踏みつけながら、血が止まるほどきつく縛られた。

膝だけで体を支える。首でも支えることになるが、苦しいので浮かせたい。それなのに、マーコフがぐいぐいと突いてくる。

「安里咲。このロープを持ちなさい」

手首にロープが押しつけられ、夫人が指を折り曲げて握らせる。

「しっかり持つのよ。放したら、上から大きな刃物が落ちてきて、あなたの首をはねるわ」

「いや、そんなの、いや!」

「ごめんね。ローションでべたべただけど」

とてつもなくすべりやすいロープ。

マーコフは尻に指を入れてきた。手刀のままズブリと入れてくる。同時に二つの穴を味わうつもりなのだ。

「安里咲、天国に行けるといいわね」

珠緒が笑っている。

「すごいぞ、安里咲。どこまで入っているか、おまえに見えないのは残念だ」

マーコフが日本語で叫んでいる。

お尻は裂けてしまっているようだ。

彼の手がこねるようにしながら腸内に入り込んできている。

「うあぁぁぁ」

お腹をまっすぐ切り裂くように筋肉質の腕が入り込んでいる。

そうしながら、ピストンもしている。

腹部の彼の手に圧迫されて性器は狭くなっている。そこにペニスを激しく擦りつけているのだ。

「いいぞ。どうだ。感じるか?」

強烈すぎる動き。下半身がバラバラになっていきそうだ。

「感じます。すごい。ステキです。お願い、これからもずっと安里咲で遊んでください……」

首をはねられる前に、体が分解するか、気が変になっていくだろうか。

「くうぅぅぅうん」

切ない声を上げてしまう。

「まあ、いきそうなの? いくなら早いほうがいいわね。けっこう刃が下がってきているわよ。首が胴体から離れたら、下半身のエクスタシーは伝わらないんじゃないかしら?」

夫人が笑う。

あまりにも重い断頭台の刃。手に力がはいらず、ずるっとロープが抜けていく。必死に掴もうとするが難しい。

「ゆっくり降ろしたら、刃がじわじわと首に食い込んで長く苦しむことになるわ。いっそ、手を放したら?」

珠緒は、諦めて手を放せと言う。死ねというのか。わたしがなにをしたというのか。

悔しい。涙が出そうで出ない。すっかり枯れてしまったようだ。

「死ぬ前に逝かせてくれるかもね。あなた、彼のことが好きだったんでしょ?」

もうそんな気持ちはない。珠緒に指摘されると、昔の自分に戻ったように、胸がキュッと苦しくなった。

「あああ、死にたくない。マーコフ様。大好きです。だから、お願いです。殺さないで」

あの頃のマーコフだったらどんなにいいか。あのときの自分だったら……。

ムリだ。

彼は二つの穴を同時に責めている。大きくなってしまったその部分が、否応なく、快楽らしきものを感じさせる。

「ほら、もう放しちゃったら?」

夫人の乗馬鞭が手の甲を叩く。ズルッとロープが抜けていく。

期待している客たちが悲鳴を上げる。

いま手を放したら、逝く前に首が飛ぶ。文字通り、逝くのだ。きっとまったく違うエクスタシーではないか。

「マーコフが射精したら許してあげてもいいわよ」と夫人。「だけど、彼も今日何回目かわからないから、どうかしらね。もっと締め付けてごらんなさいよ」

「そうよ、安里咲。彼を気持ちよくさせるのよ。そうしたら助かるかも……」と珠緒。

今度は珠緒がわたしの手に乗馬鞭をビシッとあてた。

「あっ」

またロープが……。

もはや、全身に力が入っている。それが彼を悦ばせることになるのかどうかは、わからない。

「はあ、ああ、ふあああん、死にたくない……」

悲鳴のようなため息。

そのとき、彼が腸内の腕を、かきむしるようにひねった。

「ふはあああ」

その苦痛と快楽にしばしば時を忘れた。このまま死ぬのか。それでもいいかもしれない。

「助けて。死にたくない」

しかし命乞いをしてしまう。

彼女たちに、情けないほど懇願しまくっていた。このまま殺されたほうがいいという強い気持ちが、いまはまったく残っていない。

快楽が苦痛の中に消えていくと同時に、ズルズルとロープが手をすり抜けて、首を押さえている枷を通して巨大なギロチンが下がってくるのがわかる。

「お願い、お願い、お願い!」

声もうまく出ない。

「もう、手を放しちゃったほうがいいわよ、その方が楽になれるわよ」

できない……。

そんなことは、できない……。

必死にすべりやすいロープを握ろうとするが、あまりにもきつく縛られて指先の感覚も失われている。

「あっ」

握ったつもりなのに、かなりの長さのロープがすり抜けていった。すると勢いのついた重い刃がすっと動いてくるのがわかる。

「きゃー」

もうだめだった。ロープを掴む力がない。手から、ロープが完全に放れていった。

シャーっとすべってくる音が聞こえた。

「あっ」

悲鳴を上げる間もなかった。ガツンと強烈な衝撃と音。

気がつくと、誰かがわたしの足首を持っていた。

これが死後なのか。

男女とも、服を着ていた。

明るい光の中、足首を縛られて、そのロープを引っ張られているのがわかる。

違う。これは現実。またしても、あのおぞましいまでの現実。

首は切れていなかった。

あのギロチンはインチキだったのだ。最初から刃はわたしの首を押さえつけていた枷にぶつかって止まるようにできていた。

いまは、そのギロチン台を使って、逆さに吊そうとしている。

痺れていた腕や手は、縛り方を変えて、背中で組むように拘束されていた。

飽くなき彼らの残虐な欲望。

まだ、責め足りないのだろうか。

「気がついたわね」と珠緒が、髪を掴んだ。その間にわたしは完全に逆さ吊りになっていた。

「おもしろかった? あの世はどうだった? 奇跡の生還だわね」

おもしろくなどない。

夫人は陰部、乳房の金属を外していた。再びシリコンを埋めるのだろうか。いまはなにもしない。ただ外してる。

「あら、気がついた? 地獄巡りはいかが? この世はホントに怖いわよね」

「そうよ、安里咲。死んだほうがよかったって思うわよ」

珠緒が、股間を顔に押しつけてきた。

「安里咲。あなたどんどんかわいくなっているのよ。わからないでしょ。みんなもうあなたに夢中なの」

小便臭い。

「みんなもっと安里咲と遊んであげたいの。今日の仕上げは鞭の競技会よ。安里咲をぶちのめしてあげる。採点は会員の重鎮が、当たった場所、傷の色、大きさ、深さ、そしておまえの悲鳴の五つで採点するの。試技は一人五発。上位三人で決勝戦になるわ。たっぷりと本格的な肉食系の人たちの鞭を味わいなさい」

おしっこを飲んだりする方がどれだけ楽か。体を引き裂かれる鞭の痛みに比べれば。

参加する男女十四人。珠緒もマーコフも入っている。夫人は採点側だ。

わたしが気絶している間に、彼らはシャワーを浴び、食事をし、着替えていた。

窓は開け放たれて、冷たい風が入ってきている。

床は掃除され、最初の頃に巻き戻されたようだ。

しかし、わたしはすっかりボロボロになっている。

「顔は守ってあげましょうね」

夫人が革のマスクをつけてくれた。息苦しく、臭い。そしてなにも見えなくなった。目の部分も塞がれているのだ。

「ぎゃー」

最初の一撃で、その手加減のない一本鞭に戦慄した。これまで受けたどんな鞭よりも厳しい。骨まで砕けそうだ。

どこに当たったのかさえ、しばらく判断できなかった。腰から腹部にかけて当たったようだ。そう思ったとたん、新たな鞭がうなりを上げて襲ってきた。

「きっ!」

声にならない。

現地の言葉が主となってしまい、なにがどうなっているのか、声を聞いてもわからない。日本語を話す者はいなくなった。

バシッ、バシッと肉体に打ち込まれる鞭。

しかし、その痛みはわたしが生きている証拠。気絶したくなるほどの苦痛だが、まだ死んではない。生きている。どんな姿になろうとも、わたしは生きている。

この競技が終われば、また次の仕打ちが始まるだろう。

それは永遠に続くのだ。

もしかしたら、日本に帰してくれるかもしれない。それとも、死ぬまでこの城につながれるのか。

いまは、それはどっちでもいい。

強烈な鞭を浴びながら、みんなの気が済むまでいたぶればいいと、開き直っている自分がいた。どうせ自由などない。ここにいても、日本に戻っても同じだ。

マーコフが、お尻と性器を蹂躙してくれたのだから、もうそれでいい。彼が満足したのかどうかはわからない。だけど、わたしは満足した。あのまま死んでもよかった。

まとまったことを考えられる状態ではないが、なぜか、奇妙な幸福に包まれていた。

もしかしたら、すべてを得たのはこのわたしなのではないか。この会場にいる者たちの中で、これ以上のものを得た人間はいないのではないか。

間違った考えだとしても、この狂った状況の中では、大した問題ではない。すべてが間違っているのだから。

「さあ、決勝の三人。もっと安里咲を泣かせてあげて!」と夫人が英語で叫んだ。

まだ終わっていなかった……。

血のニオイがしていた。真っ赤になっている自分の体を想像していた。ズタズタにされたら、しばらくは休ませてくれるだろうか。

妙なことを考えている自分がおかしく、笑い出しそうになったとき、決勝の鞭が浴びせられた。

「ぎゃん!」

もっと打って。強く、きつく。泣かせて。考えさせないで。狂わせて。ひたすらそう願っていた。

奥付

お読みいただき、ありがとうございました。

二〇一四年八月 第一版 二〇一六年十月 第二版著作権 あんぷらぐど(荒縄工房)荒縄工房の情報は下記サイトへ●ブログ「荒縄工房」

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