「さっき娘の話が出ましたけど、彼女が生まれる十ヶ月ほど前、今から六年ほど前に、一度黒人さんのお相手をさせられたことがあります」
沙織の両の乳首は相変わらず硬くしこっていた。
「あん」
と、時々甘やかな声をあげる。時に痛いほど強く、またその弾力を愉しむようにやわやわと乳房を揉み続けた。
「その頃の旦那様にね、させられたんです、ひどいことを」
強めの揉み方の時により甘い声を出すので、さらに力を入れてみる。
「ああ、おっぱい気持ちいいです。強く揉まれるといたたまれない気持ちになるんです」
沙織はますます濡れた目で山浦を見た。そういえばあの彩乃も同じような言葉を口にしたな、と山浦は思いつつ、「それで」
と、続きを促した。
「私の一番危険な日に、赤ちゃんできちゃう可能性の高い日をわざわざ選んで、そのおちんぽのすごく大きい黒人さんとやらせたんです、中出しで。その黒人さんと旦那さんとで交互にしながら二人とも…。ただ、その黒人さんの一回目はお口に出されたんですね。それまで経験のないような凄い量のザーメンでした。もしそれが、もしその一回目もおまんこでしたら、私が産んでいたのは、きっと半分黒人のハーフの子だったと思います」
衝撃的な話だった。
「旦那様が一回、黒人さんにはその後二度おまんこ出しされましたけど…運良く出来たのはあの通り日本人の娘、旦那の娘でした」
だが、サディストとしての何かを
擽
るものはあった。
その証拠に男根にしっかりと力が蘇ってきている。もちろん沙織の乳房の感触と、話しながらも悶えて乳揉みに感じているその様子の相乗効果ではあるが。
「まあ、そんなことがあって、娘が生まれる前にその旦那とは別れてしまったんですけどね。こんなサディスト様には二度と出会えないとか思って結婚したんですけど。だからってまさか自分の妻をロシアンルーレットの的にかけるとは」
沙織には別に今となっては辛い思い出というわけでもないのか、うふふと笑いながら言う。話の合間に沙織は山浦のものに口を寄せてくる。若い頃ならともかく、最近は二度などということはなかったので、さすがいい女は違うと思いつつも、だからと言って三度は難しいだろうから、この二度目で色々愉しまなくてはならぬなどとつい思ってしまう。
「先生」
「ん」
「次、お浣腸してくださいませ。あまりお好きじゃなさそうとは聞いてますけど」
倶楽部に入会させてもらって、最初の女二人には確かにやっていない。それをすることで、どちらかというと時間は冗長になるし、そもそも過去にSMクラブの女たちにやってみてそれは楽しいプレイでもなんでもなかったのだった。
「仕事」として浣腸されるということに慣れた女たち、排泄を見せるのもどちらかというとそれで時間が経過すればラッキーなどと考えている女の、そんな行為を見てどこが楽しいのか、とSMクラブのプレイメニューを見てはよくそう思うようになってもいた。
先日は、このホテルの彩乃の部屋で、その用意だけしたにはしたが、その時も結果的にはやらなかった。彩乃自身から「アイドルタレントの自然排便をお見せします」と申し出てきたからだ。
「準備は、あちらにしてありますので入れるのだけお風呂場で。それからまたたっぷりご奉仕させていただきますわ。時間もいくらでもありますし。それにうちの会員様には、浣腸してちょっと我慢の真似事だけさせて排泄を見て楽しむなんて方はいらっしゃいませんのよ。女が限界までとことん苦しむのを見て楽しむのが浣腸の醍醐味だと皆さんおっしゃいますわ。苦しくて御奉仕がもし疎かになるようなことがあったら、それはそれでキツイお仕置きをなさればいいだけのことですから」
通っていたSMクラブでは、特にハードなことをする客と位置づけられていた筈の山浦だが、ここの会員たちはやはり規格外のことを平然としているようで、山浦のS心、サディスティックな芯の部分にある欲望を充分に擽られる。
それを見透かしたように沙織は続けた。
「先生、今までご自分の奴隷さんをお持ちになったことは」
「いや、ないな。独身だが仕事柄、後腐れがあったりは面倒なので、SMクラブ通いをしていた」
そのことは、君塚にリサーチされていて、事前に調べられたことは決して面白いことではなかったものの、結果的にはここに招待もされ、仕事に至ってはびっくりするくらいのものを紹介してもらっている。
「普通のクラブのお嬢さんですと、やはり色々遠慮しなくてはいけないこともおありだったのでしょうね。先生のお相手をさせていただいた前の二人は、二人とも先生のことすごく優しい方って言っておりましたわ。でも、うちではそれは手ぬるいってことでもありますから、これからは…うっ」
乳房にかけられた山浦の握力に言葉が途切れた沙織だが、自分の挑発にちゃんと山浦が答えたことに満足そうににっこりと笑った。
「よほどの覚悟がある。それは君だけではなく、ここの女たち共通のものだと」
「はい。その通り、仰るとおりです。うちはSMプレイをしていただくところではなく、会員様が貴重なお時間を割いて、私達女を奴隷としてお買い上げいただき、日頃のストレスをひと時忘れて遊んでいただくところです。この会員様の大切なお時間、私たちは、絶対的な支配者に対する完全な奴隷という立場だと、全員がわきまえております」
沙織はそう言いながら、立ち上がってスリップの裾を持つと大きく捲り上げて首から抜いて、裸になる。
「ほう」
思わず感嘆の声が出るほど、見事なヌードだった。
乳房から腰にかけてのラインの完璧さに対して、脚を閉じているのに、剃毛または脱毛しているのであろうツルツルの丘に、一筋の割れ目の上部が覗いているのも、なんとも淫らな眺めだ。
「四つん這いで行きなさい」
山浦の命令に、即座に沙織が反応して手をついて、バスルームのあるのであろう扉に向けて這い始める。
背後から見る尻の眺めも最高だ。
この完璧な女が、もっと徹底的に嬲れと自ら口にするのだから凄い話だった。
バスルームの床の真ん中には、波々と液体を満たした洗面器が置かれ、少し大きめの浣腸器のポンプが限界まで引かれ、つまりその中にも既に液体が満たされた状態で準備されていた。
「浣腸といえば、グリセリンの水溶液というのが定番ですけど、私は食塩水でしていただく方が多いのです。奴隷から選べる立場ではありませんが。そして最後に…」
四つん這いのままで振り向くことなく沙織が言う。
洗面器の隣に、小さな瓶が置いてあった。
「なんだこれは」
「ニオイ、嗅いでみてくださいますか」
言われて、その小瓶を手にする。まるで調味料入れのような瓶で、蓋を取るとかなりの刺激臭だ。
「酢…酢か」
「はい、お酢ですわ。会員の皆様、使うの結構お好きですのよ。SM小説の中とかにも出てくるらしいのですが、ただとてもじゃありませんけど、大量浣腸とかには向きません。それは流石にファンタジーの中だけのお話で、実際にされるとわかりますが、少量でもとんでもなく効いて、女を地獄の苦しみに追い落とすことが出来ます」
山浦に対して尻を向けたまま話す沙織だったが、視線を感じて見上げると、正面の壁のミラー越しに山浦の手の中の酢が入っているという瓶を見つめている。
「中には、奴隷に初めてすることはまず自分で試せなんてことを口にするやつもおるが…」
「うふふ。ここではそんな配慮は必要ありませんわ。女で試せばいいのです。どのくらい苦しむかは。ただいきなり大量にやって、病院送りにしては、台無しですし、限界というものは下から測って行くほうが、長く楽しんでいただけると思いますわ」
「それで、ここからどのくらい入れるのだ」
「それひと瓶、全部お願いします」
沢山入れたら地獄の苦しみだと言っておいて、用意してあるものは全部使えという、やはり凄い女だ。
まずは、既に塩水が入っているという浣腸器を手にする。
それを見た沙織が四つん這いのまま肩を、乳房がバスルームの床についてしまうのも厭わず低くして、尻だけを高く掲げる浣腸を受ける体勢を自ら取った。
二百の目盛りギリギリまで吸い上げてあるそれを、肛門に突き立てた浣腸器で一気に注入する。
「ううぅ。き、きつい。厳しいお浣腸ですわ」
「もう一本くらいこのまま入れるか」
「は、はい」
再び食塩水を吸い上げる。
部屋に戻ったら、その部分もじっくり検分するつもりだが、四つん這いで少々尻を突き出しても、肛門の下に覗く沙織の性器は、まだその全容を見せてはおらず、一筋の線が少し複雑に入り組んで、薄い二枚のラビアが僅かに見えているだけだ。従って、沙織がそこをどの程度濡らしているかはわからない。
二本目を再び一気に注入し終えたところで、豊かにその重みを露わにして風呂場の床をなめている乳房に手を伸ばして、乳首の尖り具合で沙織の興奮度合いを確認する。
座っている時とは違う乳房の重量感を手のひらに感じつつ、凝りきった乳首をぎゅっと摘んだ。
「あ、あん。い、入れてください。お酢のきつーい浣腸で沙織をお仕置きして下さい」
山浦は小瓶を手に取り、蓋を外すと、とぷとぷと洗面器に半分近く残っている液体の中に注ぐ。
ツーンとした強烈な匂いがバスルームに充満した。
「どのくらい我慢出来るんだ」
「えっ。あ、あ。出来るだけ短めでお願いします。お酢のお浣腸は本当に辛いんです」
「十五分とかか」
「え。あ、あそうか。前のふたりにしていないからご説明していないのですね」
「ん。何がだ」
「うちでは、お浣腸責めは、お薬が例えどのようなものであっても、最低三十分の我慢、三十分は苦しむところをお見せするというのが、基本のルールになってるんです。ですから三十分よりも長い時間で先生がお決め下さい」
手にした浣腸器に、酢と食塩の入った液体をシリンダーの目盛り一杯まで吸い上げる。
「ほう。流石だなあ。だが、中には排泄を見るために浣腸して女のそういうシーンを見て早く愉しみたいという客も居るのではないのかね」
「うっ…う、も…もう少し。お、お酢浣腸はもう少しゆっくり入れ…、じゃ、じゃないと…。は、はい。でもうちの会員様は大抵浣腸と言えば女が苦しむのを見るため。そうじゃなくて出すところを見ることが優先の場合は…、その場合は自然排便…または下剤を使用した強制排便が…。恥ずかしさもその方がひとしおですし…。うっ、も、も…く、苦し…お腹…」
そこまで即効性があるのだろうか。沙織は最初の二本と酢を入れてからの一本ではまるで違う反応を示した。
「徹底してるというわけだ。確かにそういや」
山浦は、彩乃が自ら申し出て浣腸なしでの排便ショーを見せたことを思い出していた。その強烈すぎるシーンは今でも山浦の目に焼き付いていたし、ポラロイドの写真として、女としての羞恥の極みの瞬間が自分の手元に今もあっていつでも見られるのだった。
「あ。でもあの子は違いますよ。彩乃さん。か、彼女はむしろ彼女に課せられたルールを破って先生にお見せしたんです。先生ご覧になりましたでしょう。彩乃さんがうんち出すところ。お浣腸なしで」
「あ、ああ」
そんなことまでこの女は知っているのか。
「あれ…。あ、そ、その前に…も、もう一本。もう一本、お願い致します」
既に相当の苦しみに耐えているのが様子からも明らかだが、沙織は四本目の注入を望んだ。
山浦は再び液体を吸い上げる。ちゅちゅちゅーっと最後は水が少なくなった時独特の空気も一緒に吸い込む音がした。
「あ、彩乃さんはお浣腸もNGなんです。ましてや自然排便だなんて…」
「ん。でも部屋にはそれ用のバケツが置いてあって、彩の便器とか書いてあったぞ確か」
「そ、それは本当の彼女の所有者様がお使いになる時のためかと。所有者様はきついお浣腸もそして多分それなしでの排便もお命じになられますから…」
「そ、そうか。でも俺はあの子に排泄を見たいなどと言った覚えもないぞ」
「そ…それは」
沙織が何かを言いよどむ。
後に聞いたことだが、沙織の言ったことはどうやら事実のようだった。もっとも彩乃は倶楽部で直接客を取ってるわけではなく、山浦相手の時も本当に特別なケースだったようで、しかもそんな時に山浦はさらに特別なことをしてしまったらしかった。
「そのせいで、先生のせいで彩乃ちゃんは、相当ひどいお仕置きを」
あの日の別れ際、彩乃からはまた次もあるような言われ方をしたのだが、その一回を最後に二度と彼女に会うことはなかったし、もちろん倶楽部のカタログにも載っていない。
「俺の…せい、と言われてもな」
山浦は苦笑するほかなかった。
山浦が命じたわけではないのだ。もちろん強要したわけでもない。彩乃の方から浣腸するよりも、浣腸せずにちゃんとするところ見せるから、写真も撮ってくれと言われたのだ。
「そ、そのようですわね。だから彩乃さんは余計叱られた…。せ、先生、ではまたあちらのお部屋に」
そう言いつつ、沙織は目線で壁際の棚を指してきた。
そこには赤い犬の首輪に鎖がつけられ、無造作に置かれていた。いやもちろん沙織が準備しておいたのだろうが。
「こ、こんなに辛いお尻、お尻の穴にも、出した後で先生のおちんぽ様ちゃんとお入れ下さいませね。沙織、お尻の穴でも、うんと先生をおもてなしさせていただきますわ」
沙織の望みどおり、犬の首輪をつけてやり、今度は山浦が先に立って、鎖を引いてバスルームを出る。
「うっうっ」
と、既に沙織は相当苦しいのだろう。顔を歪め、手足の動きを時々止めながら四つん這いで続いた。
「今一度ご奉仕いたしますか。それとも鞭でおっぱい打って、お尻の苦しみを少し紛らわせていただけますか」
沙織の声は掠れていた。
「酢の浣腸というのは、やはりそんなにきついもんかね」
「は、はい。お尻の穴の中がねじ切れそうになって、もちろんそれでもお尻を締めておかないと時々吹き出しそうになったりもしますし、とってもつらいです」
「そうか。そんな状況の時になんだが、まだじっくり見せてもらってなかったのでな。見せてもらおうか。もうすぐ学校に上がるという女の子を生んだという女の部分を。女の穴を」
山浦は笑いながら告げる。
「あ、は、はい。大変失礼いたしました」
「台に上がれ」
そのためにこそ用意してあるのだろう。ソファシートの前のテーブルというよりも台は、山浦がソファに座った時のほぼ目の位置まで高さのあるものだった。
台の後ろに回って沙織が上がってくる。
その途中で、首輪に繋がっていて、その反対側を今も山浦が握っている鎖がピンと伸びきり、沙織はトーンの違ううめき声を上げた。
「申し訳ありません。女のお道具は真っ先にお見せしてご検分いただくのが奴隷のお作法でございました。これが弓削沙織の穴、おまんこの穴でございます。どうぞ中までじっくりとお確かめ下さり、いつでもご自由にお使いください」
尻をついて、立膝をした沙織が両手でそこをくつろげる。
指で拡げなければ一筋の線で、二十五歳にして少女のような性器だが、拡げた内部の粘膜は赤く充血し、たっぷりとした露を湛えていた。
肛門を締め付けていなければいけないせいなのか、それとも肛門内部での蠕動が伝わるのか、内側の複雑で細かい襞が妖しく蠢いている。
「漏らすんじゃないぞ」
「は、はいっ」
山浦は無造作に右手の中指を女の穴に突き入れた。
「こんなに、濡らして」
男にとっては、女がここまで濡らしているのは、なんだかんだ言っても嬉しいものだが、と少し冷静に山浦は思う。
溢れんばかりの露が山浦の指をしっかりと濡らす。そして、じんわりとその指先全体を締め付けながら奥へと誘い、ぷっくりとした感触の場所へと導いてくる。
そしてその間も、その指の動きに呼応した沙織のうめき声あえぎ声が、山浦を存分に楽しませてくれた。
行き当たった場所の前庭にあたる部分そして、その天井部分を指の先で少し擦り立ててみる。
「あ、あーーーん。や、やめて…や、やめてくださいぃ」
沙織が屈服の声を上げる。女の性器の中の急所のひとつであるが、その感度は千差万別だろう。沙織の感度は抜群のようだった。
「だ、だめー。そんなにしたらおまんこいっちゃいます。が、我慢出来なくなっちゃう。お尻もお尻も、や…やめ」
沙織は、目を閉じて、歯を食いしばっている。
「お、おかしくなっちゃう。先生、浣腸してない時ならいくらでも沙織をこうしていじめて下さい。で、でも、でもでも今はダメー駄目ですぅ」
沙織の懇願は懇願として聞き置いて、つまりは無視をして、山浦は爪の先から指の腹を駆使して、沙織のそこを撫でては擦り、擦ってはそろりと撫でるといった感じで責め立てた。
「い、い、いぐぅーーー、おまんこ逝きますぅ。せ、先生、は、離れて、も」
「おい、まだ十五分だ。三十分には半分だぞ」
「いゃーーーっ」
山浦は右手で性器を責めつつ、左手に持っていたリードをようやく手放し、その手で沙織の大きな右の乳房全体を包んで揉みたててみる。
やはり最高の感触、「至高の乳だ」と改めて思う。
「先生、せめてせめて、おっぱい噛んでくださぃぃ」
言われて、左の乳首に口を寄せて、噛み付いてやる代わりに、思い切り吸い立ててやる。
「あ、あ、だめー。それだめーーっ」
左手で右の乳房を揉み潰しつつ、左の乳首にようやく歯を立てる。性器の中の指も休ませることはなかった。
「せ、先生。い、いま、今おちんぽ様ください。沙織の、子持ちの元人妻沙織のおまんこ、お浣腸されて我慢させていただいて苦しんでる沙織の、おまんこを楽しまれてくださいぃ」
言いながら沙織は腰を少しずらして、台のふちギリギリに来ると、上体を後ろに倒して台に横たわり、手でそれぞれの足首を持って左右に拡げる。乳房こそその一連の動きの中で解放したが、山浦の指は性器の中に没入したままでだった。
指先で膣内部の天井部分をもう一度擦りたてると、沙織は顔を歪めてさらに悶える。
「おちんぽ。おちんぽ様、おちんぽ様入れて」
焦らすように、いや焦らしながらゆっくりと指を抜いていく。最後、にゅるんと指が抜けると、横になったことでさらに淫らなポーズになった沙織の性器と、ひくつく肛門が山浦の目を惹きつける。
「おまんこにおちんぽ…。先生の立派なおちんぽ様でオマンコして下さい」
沙織の本気の懇願の目に頷いてやりながらも、山浦はその内部の苦痛にひくついている小さな蕾の誘惑に勝てなかった。
「いやあ、そ、そっちじゃないっ。し…死んじゃうぅ」
先端を没入させるのに少し苦労はしたが、そちらの穴も随分と慣らされているのであろう。沙織の肛門はそこから先は、山浦の巨根を根元まで一気に受け入れた。
「く、くぅぅっ。う、動かさないで。少しだけ待って」
酢を入れた食塩水で浣腸しているそこは、独特の刺激で、男根の先端にチリチリと痛みに近いようなものまで感じたが、そんなことは言ってられなかった。動かすまでもなく、沙織は強烈に締め付けてくる。
眉根を寄せて耐えている表情もまたエロティックだ。
こめかみに汗をかいている。
酢の入った浣腸はやはり相当に辛いのであろう。脂汗だ。
浣腸してから二十分ほどが経過していて、既に限界を超えていてもおかしくない。
「ちょうど栓になってよかろう」
ぎゅっと閉じていた目をようやく開いて、沙織が山浦を見て小さく頷く。
その目にも涙が少し滲んでいた。
「動かして下さい。でも、でもまだ逝かないで。後でおまんこもしてください。それから沙織のおっぱいでもご奉仕させて」
後で考えても何故だろうと思う。
この日山浦は結局、鞭を使わなかった。
これを称して手ぬるいとまたなるのだろうか、と思ったが、肛門性交を機にさらに淫らさを増した沙織に、ひたすら翻弄され続けたせいかもしれない。
一度射精していなければ、即座にぶちまけてしまったであろうと思ったが、苦痛に歪む顔を見ながらの余裕を持った狭い穴への抽迭は、鞭をふるう時の支配感と似た独特の満足感をもたらしてくれた。
注入から三十分が経過し、既に限界は完全に超えていると判断していた山浦はあっさりと沙織の狭い穴から撤退し、トイレでの排泄を許可した。
この部屋にもまたポラロイドカメラが用意されており、その場所を教えた沙織は、排便の瞬間を撮影するように促した。
「お待ちしていますので」
もう這って行くのは無理そうだった。お腹を手で押さえながらよたよたとバスルームへ歩く。
強烈な酢の匂いの混じった独特の空間で、山浦はその瞬間の沙織の顔、そして乳房から上のバストアップばかりを十枚撮影した。
システム上、連射というわけにはいかなかったが、それでもあっという間に装着されていた印画紙を使い終えていた。
尻から壮絶な音をさせながらも、カメラを向けると沙織はしっかりと顔を上げてこちらを見た。悲しそうな表情がまたたまらなく唆る。
「それでもグリセリンよりは、食塩水の方が出した後は楽なんですよ」
そんなことを言いながら、ふたたび口奉仕を三十分以上。そして待望のパイズリでも慣れた動作で男根をそのふたつの膨らみに挟んで擦りたてた。
最中に時折せがんでくるキスもまた山浦を陶酔させた。
「中に出して、沙織のおまんこに先生のザーメンいっぱい下さい」
体位を四つん這いから途中正常位、そして屈曲位と変えて、だがそこでは全部で十分ほどが限界であった。察した沙織が、中出しをせがむ。
「い、イクぅーーー。おまんこ逝っちゃう、ザーメン出して沙織の中に。沙織のおまんこにたくさん下さいぃ」
浣腸を我慢している時と似たような表情で沙織が絶頂に達した。
せがまれるままに締め付けてくる沙織の内部に放ちながらも、沙織の襞の中を抜き挿しして、その瞬間の快感を存分に味わった。
山浦の身支度を手伝い終えると、沙織もまた着てきたオフホワイトのスリップを身にまとう。
「優しい先生。今夜のお礼にちょっとした別の目の保養をお見せしますわ」
部屋を出て廊下を歩き、エレベーターを途中で一度乗り換えて、二十五階で降りる。
こんな場所をスリップ一枚の美女に腕を取られて歩くというのもまた格別な思いがした。
「ここは、一般のお客さんも居るフロアじゃないのかね」
「ええ、まあ」
乳房がうっすらと透けたスリップ一枚の沙織を気遣ったが、誰に会うこともなく、沙織の目的の部屋に辿り着いた。
いつの間にか手にしていた白い名刺大のカードを沙織がセンサーに当てると、カチリと鍵が開く音がした。
「どうぞ、お入りになって」
君塚が上の階で使っていた部屋と似たような造りの部屋だったが、飾り付けられているいくつかの花などで女性らしい部屋という雰囲気を醸している。あまりホテルの部屋という気がしないのは、彩乃同様この部屋に住んでいるためだろうか。もっとも彩乃の部屋は居宅というよりも調教の部屋そのもので、ある意味生活感はまるでなかったわけだが。
「こちらです」
音をできるだけ立てないようにして沙織が寝室の扉を開く。
深夜三時。沙織がベッドサイドの小さな灯りのスイッチを入れる。
大きなベッドには、二十一歳の童顔の娘と、低い枕でその美樹に顔をくっつけるようにして沙織の娘、まだ二十一歳だという少女がすやすやと寝息をたてて眠っていた。
ベッドに近づいていった沙織が、そっとふたりが肩までかぶっていたケットを引き剥がす。
美樹はまばゆいばかりの白い肌を見せて、裸で眠っていた。パンティひとつ身に着けていないすっ裸だ。乃里子のほうは、白いタオル地のパジャマを着ている。
「美樹ちゃん、いっつもスッポンポンで寝るんです。別に命令とかじゃなくって、習慣みたいです、小さい頃からの」
山浦の耳元に沙織が囁く。
大きくはないが形の良い乳房の上にピンク色の乳首がちょこんと乗っかっている。既に男に吸われているのだろうか。十代にしては少し大きめの乳首に見える。それでも乳輪はほどよい大きさで、外周が淡くグラデーションになって乳房の丸みに溶け込んでいた。
「ママのおっぱいは実に素晴らしいが、これはこれでなかなか綺麗なおっぱいだ」
二人を起こさないように、山浦も小さな声で言う。
「あら。わたし美樹ちゃんのママじゃありませんよ」
沙織はその美しい顔いっぱいの笑顔を見せた。
一九九〇年十二月 ホテル会長室
「お陰様で、懸案事項のひとつが片付いた。ありがたいよ、先生」
「実際に来ているのは若い者のようですが、子会社の社長たちの評判もまずまずですから、私もホッとしています。ボスの方も上手いこと取り込めましたしね。Sだったのは、こちらには都合よかったですな」
「ところで先生。さっきの話だがあの男の奥さんの方は、あの娘が自分の旦那の子供だと知ってるのかね」
「いえ。それを知ってるのは彼女を産んだ母親と彼。そして私と会長、多分それだけです。奥さんの方は全く想像もしていないかもしれません。結構父親の面影もあるように私には思えるんですがね。もちろんあの娘自身も知りません」
「先生を父親かも知れんと思ってる節があるわなあ、あれは」
「でしょうね。敢えて私も肯定も否定もしておりませんしね。でも本人の口から問い質そうとしたことはありませんけどね」
「彼女のまわりでは唯一彼女を裸にしようとしない男なんだろうしなぁ。勘違いも無理はないということか」
「あの娘と初めて会ったのは、母親の離婚の時で、まだ学校四年生とかでしたかね。本人もお姉ちゃんお兄ちゃんとは父親が違うと知ったばかりというタイミングでしたし」
「で、本人は納得しているとして、その肝心の本物の父親の方はどうなんだ」
「いえいえ
寧
ろその父親のほうから何とかしてくれと言ってきた話なので」
「彼も、梅田の組長も先生の…」
「はい、学校のラグビー部の二年先輩ですね。彼らもお互いに利用し合ってきて持ちつ持たれつで来たんだと思いますが」
「それでも自分の女を差し出すのはよしとしても、その女の産んだ子が自分の娘だと知ってはさすがに放ってはおけないというわけか」
「どちらであっても、結局は女の地獄みたいなところであることに変わりはないかもしれんのにですな」
「まあヤクザよりはマシに見えるということだろう。どっちにしても全てにおいて一番恩恵に預かったのは我々ということか…。でもまあ、そろそろこちらとしても」
「ええ。潮時でしょうかね」
一九九一年十二月 梅田組組長私邸
絵を描いたのは弁護士の君塚だった。
その後ろで君塚を操っているのは、新宿エスタブリッシュメントホテルオーナーにして三田村コンツェルンの総帥三田村勇輔だろう。
正確には三田村が総監督で、君塚は名脚本家といったところか。
そのふたりを除いて、今回の件の全容を知っているのは、多分自分だけだろう。
しかし自分もその君塚が描いた物語のピースのひとつ、図らずも舞台に上げられてしまった女優の一人でもある。
この物語は決して失敗してはいけないし、最も失敗が許されない立場だからこそ、その全てを知らされることになったのだ。
榎本佐和子はそう理解していた。
一九九一年の年の瀬。
一般家庭の多くが、紅白歌合戦を見ながら、そろそろ年越しそばでも啜ろうかという時刻に、梅田組私邸の玄関に立ち、インターホンを押したところだった。
「いらっしゃい、お忙しいのに悪いわね。忘年会を兼ねた祝賀会だけど、今回の件は貴女の存在がなければ実現もしなかったことだし、組長が是非にも佐和子新社長を呼べと言ってきかなくてね。本当にわざわざ来てくれてありがとう」
組長夫人の美絵が、他の女に頭を下げるなど、滅多にあることではないだろう。
年越しの時間を組長に跨って過ごすのか、それとも今は頭を下げているがこの自分よりひとつ年上の中年女の股間を舐めさせられつつ新年を迎えることになるのか、車の中では憂鬱な思いもしていたが、こうなれば自分も楽しむまでだ、と佐和子は自身を叱咤激励する。
元号が昭和から平成に変わった一九八九年年末の大納会で、株価は史上最高値の日経平均の終値をつけて取引を終えたが、それをバブル絶頂の最後の象徴として、日本中を熱狂させた好景気はそこから急坂を転げ落ちるような崩壊ぶりを見せつける。
土地神話を盲信し、火傷を負った者も続出していた。
もちろん反動による極端な景気の低迷がそれに追い打ちをかける。
中澤プロダクションの社長中澤は、株と不動産投資によって大きな損害を抱え、会社はこの夏、事実上の倒産をしていた。
バブル末期になって、望月彩乃という若い娘の売り出しに成功し、急に羽振りが良くなったことが、逆に中澤に深手を負わす結果となってしまった。
中澤は失踪した。
人気絶頂の時だったにも関わらず、中澤プロダクションの稼ぎ頭の彩乃が、その半月ほど前のこの年八月に電撃引退を発表。国の官僚組織の中枢にいて、誰でもその名をニュースなどで聞いたことがあるという、政府高官と結婚したというのもプロダクションの今後にさらに暗雲をもたらした。
それも中澤の失踪の要因のひとつだろうと、芸能マスコミは書いている。
もっとも、中澤は彩乃のその豪華な結婚式の日にはそんな素振りも全く見せず、関係者には、川越純子を従えて普通に挨拶回りもしていた。
その結婚式を中継したテレビ局からその報酬が支払われる日の前日までは、全くいつも通りで、逃亡を企てている素振りなど、全く周りの誰にも気づかせることはなかったのだった。
そんなこともあって、中澤の関係者の間では、結婚式中継報酬という莫大な金銭目当ての誘拐なのではないか、とまで噂された。
仕事上裏社会との付き合いもないわけではないと、誰もが知っていたからでもある。
殺されて埋められただろうという、話までも出ていた。
だが、中澤は海外に潜伏している。
佐和子はそれを把握していた。
事務所のマネージャーとしてではなく、中澤の妻として、そして三田村コンツェルンいや裏の倶楽部まで含むエスタブリッシュメントホテルグループのひとつの手駒としてだ。
もし中澤が梅田組に拉致誘拐されているようであれば、自分とて恐ろしくてこんな場所に今立っていられないだろう。
芸名望月彩乃、本名中澤彩は中澤と佐和子の娘だった。
それを知っている人間は、芸能界にはほとんど居ない。
三人の関係はあくまで、プロダクションの社長とチーフマネージャー、そしてその所属タレントという形を前面に押し出してきたからだ。
玄関を開けると、例によって独特の匂いが充満していた。
「あ、あれ。じゅ…純子さん。純子さんなの…」
何故、という言葉は飲み込んだ。
最近、ここの玄関を入る時にはまた今日もかもと思う。
よく玄関内の広いホールに、北条瑠美子、純子の親友でありさらには純子の兄の元妻でもある女が、首と手をギロチン台のようなものに固定されて、口や性器、そして肛門を若い梅田組組員の性欲処理に供させられていたからだ。
毎回ひと晩にこなさなければならないノルマ、組員を射精させるべき数が決められ、終わるまではずっとその不安定な体勢で男根を女の三つの穴に受け入れ続ける、という瑠美子を何度も目にしていた。
だが、今夜はその奇妙な器具が二台並べられ、ひとつにはいつもの通り瑠美子が、そしてもうひとつには、本来ならば今日のパーティーの主役のひとりであってもおかしくない川越純子がそこに繋がれ、口と性器を若い男根に突かれているのだった。
何故。
疑問符と同時に、何か冷たいものが佐和子の背中に走った。
だが、バレている筈はない。何かが発覚していれば、大晦日の今日という日とてこんなにのんびりはしていないだろう。
社長の失踪という事態も受け、中澤プロダクションが事実上倒産し、プロダクション所属の演歌歌手、川越純子とそのマネージャーだった佐和子はアプリコットプロというところに移籍していた。
このアプリコットプロという会社と中澤プロダクションは、アプリコットプロ一番の売れ筋で、葵依という苗字がなくて名前だけを芸名にしているタレントを、中澤プロで実際のマネージメントを代行していたり、そのマネージャーとして佐和子のアシスタントのような形で出向社員を受け入れていたりと、以前から浅からぬ縁があった。
また表向きのことだけではなく、エスタブリッシュメントホテルのエンターテイメント部門への人材の提供について、中澤プロダクションが長年に渡り橋渡し的な役割もしている。
ようは、エスタブリッシュメントホテルの高層階に存在している秘密クラブに女を提供するにあたって、中澤がアプリコットプロとの仲介的役割を果たしていたのである。
もちろん、アプリコットプロを運営しているのは、梅田組そのもので、社長も当初は梅田美絵、組長夫人が就任していた。
長らくソープランドの経営なども含めて、女で商売をしてきた梅田組には、独特のルートとノウハウがあった。それを生かし、美しくてしかもマゾであるという女を、中澤という窓口を介してエスタブリッシュメント倶楽部に提供してきたのだった。
そんな関係もあり、梅田組が中澤を拉致して殺すなどということはまず有り得ないのだった。梅田組にとっては中澤は使える男で、他に替わりはいなかったからだ。
佐和子が純子たちの向こう側の壁を見ると、いつものノルマと達成数を表す数字が二段になり、その上に「本日、川越純子初提供。使用は班長以上限定。肛門禁止」という但し書きも貼ってあった。
君塚の描いたシナリオ通りに、そろそろこの状況、秋に美絵と交代してアプリコットプロの社長に祭り上げられているというこの現状から脱しないと、いつかは自分もこのふたりの同年代の女たちと同じ運命になるかもしれない、そんな気がして背筋がぞっとする佐和子だった。
夫である中澤と梅田組の組長、そして純子の兄川越龍平は、大学ラグビーでひとつ釜の飯を食べた仲だった。なおかつ、三田村コンツェルンの顧問をしている君塚弁護士もその同じラグビー部で、中澤達が四年の時に二年生でチームに居たと聞いている。
ただ、その君塚がこれまで中澤を頼りにし、梅田組との仲介役に立てていたということを同じ先輩後輩でありながら、梅田組長は知らないようだ。
そして、もう一人。
今、目の前で若い組員の性欲処理のために、裸で女の穴を提供させられているふたりの同世代の女達の、片や兄、片や元夫である川越龍平については、どこで何をしているのかさえわかっていないらしい。
佐和子が知っているのはそんな程度のことだ。
もちろん、佐和子が中澤と実は夫婦であるということも、梅田組に知られてはいない。
アプリコットプロの所属タレントとして中澤プロダクションが実質マネージメントを請け負っていた者は葵依の他にも数人居た。
だが、純子とともに、中澤プロの表の現場を実質的に仕切っていた佐和子が移籍して来たために、彼らタレントの表の芸能活動に関しては何も問題は起きなかった。
むしろ、より円滑になっただろう。
若い組員が、瑠美子の背後からひとり、純子には口と性器をひとりずつが犯していたが、純子の背後の組員が、おーしっと言いながら後ろに下がった。
射精した直後とはっきりわかる、先端に精液がまとわりついた状態の若い男根が、弾けるように純子の性器から抜かれた。それでもそれはまだ天を向いている。
男がよけると、純子の尻の中央にはガムテープが貼られているのが見えた。肛門使用禁止ということを、それによって示しているのだろう。
女たちの左右一杯に開いた足の下にはいつものように大きな洗面器が置かれ、そこに性器や瑠美子は肛門からも、垂れ落ちた精液がすでにそれぞれかなりの量となって溜まっていた。
ふたりとも呼吸により僅かに膨らんだり引き締まったりしている腹部、胃袋にもすでに大量の精液を飲み込んでもいる筈だ。
ヤクザとわかっているとはいえ、恐ろしい世界だと、佐和子は改めて身震いする思いだ。
中澤が居なくなり、エスタブリッシュメント倶楽部からのショーなどの仕事の依頼もなくなったこともあって、エスタブリッシュメントホテルの一室に住んでいた純子を、ホテルから梅田組本部隣接の組長「公邸」に移すよう進言したのも佐和子だった。
しかし組長も、その時点でプロダクション社長だった妻の美絵も反対意見だった。中澤が消えた今、なんとか倶楽部との関係を保ちたいという思いがあったためだ。
そのためには純子が倶楽部の母艦ともいえるエスタブリッシュメントホテルに住んでいることは好都合に思えたのだろう。
決め手となったのは、ホテルから中澤プロダクションへの請求書だった。
一泊五万円。
部屋代だけで月百五十万。レストランでの飲食費等を入れると二百万近い請求書を見て、ようやくホテルから出すことを決断したのだった。
「二階で組長や葵依やそら、それに女たちがお待ちかねよ」
美絵が半ばあっけに取られて見ている佐和子を促す。
梅田組長が饗宴を催すのにお気に入りのバスルームへいきなり案内されるのではないかと懸念したが、通されたのはリビングで、まさに文字通り普通のパーティーの真っ最中だった。
細長いテーブルの短い方の主席に三人。
梅田組長と中央に葵依、美絵がその隣の席に座った。
背後の壁に、「写真集、ミリオンセラーおめでとう」と大きく書かれている。
テーブルの左右にはズラリと梅田組の幹部夫人たちが座っている。佐和子も既にその大半と顔見知りだった。
組長の目の前の席だけが一席空いていて、佐和子はそこに座らされる。
バブル崩壊の影響を直接受けるような無理な投資をしていたわけではなかったが、梅田組もそしてその傘下のアプリコットプロも、当初じわじわとその影響を受け続けていた。
川越純子をホテルから退出させざるを得なかったのも、それに係る固定費の負担は小さくないと思えたからだろう。純子が歌手としてそれに見合う稼ぎをしてくれるとは思えなかったし、ホテルにある倶楽部側との関係では中澤が居ない今、相手のどこが窓口になっていたかすらわからず、移籍前には中澤の元には入っていた筈のその収入もなくなっていた。
純子の給料と称して中澤が梅田に支払っていた額は月五十万円で、これとは別に諸手当と称する純子の「使用料」が支払われていたので、その上に月に二百万円近いホテル代を中澤が支払っていたと考えると、純子の裏の仕事でも相当の収入があった筈なのだがと梅田は佐和子にぼやいた。
「少なくとも、わたしはその件には百パーセントノータッチで全くわかりません」と佐和子は答えていた。
「会社自体最近は、純子さんだけではなく、彩乃さんが相当稼いでいましたから」
と、ひと言付け加えることも忘れずにだ。
実際に娘は、タレント望月彩乃としての表の芸能活動での稼ぎもさることながら、時折の裏仕事でもかなりの報酬を中澤の元にもたらしていた筈だった。
何れにせよ、佐和子は本当に会社の金銭面についての詳しいことは知らなかったし、彩乃のブレイクとともに雇った税理士ならある程度のことがわかるのだろうが、そのことを梅田に告げるつもりも毛頭ない。
そしてその代わりに梅田の元に移籍した佐和子が提案したのが、歌手・川越純子のヌード写真集を発売することだった。
この年の一月に、写真家の大御所が有名女優を使った日本で表向きに売られるものとしては初めての写真集を出して大ヒットをしていた。
ヘアヌード写真集だ。
裏本と呼ばれるもっと過激なもの、性器まで描写したものが密かに流通こそしていたが、それまでは書店で正式に書籍として売られるものに、性器のヘアが写っているものは日本ではなかったのだ。
どのような経緯でそれが発売出来たのかは兎も角、それを機に「ヘアヌード」という言葉がひとり歩きして、この年も何冊か同様のヒット商品が出ていた。
「白蘭の静けさ」という大ヒットを出して以降、特にヒット曲に恵まれず、紅白に出た一流歌手という座はとっくに揺らいでいるが、裸になるならば、それも流行りのヘア出し写真ならば、そこそこの売上が認められると踏んだ、いくつかの出版社がすぐに食いついてきた。
その彼らの誰も、純子が既に一部のお金持ちには乳房やヘアはおろか、そのヘアまで剃り落とした性器や肛門まで露骨に見せつけている裏の仕事をしているとは思いもよらぬだろうから、新鮮な企画という判断をしたのだろう。
そこで、移籍してその時点ではアプリコットプロのチーフプロデューサーという立場になっていた佐和子が提案したのはより大胆な案だった。
「写真集のミリオン達成と榎本佐和子新社長の今年の素晴らしいご活躍に、そして新年の梅田組のさらなる発展と繁栄にっ、カンパーイっ」
美絵が席に戻り、佐和子が来たことで、改めて組の幹部夫人の一人が立ち上がり、乾杯の音頭が取られる。
「早速、始めろ」
組長の梅田が、指示をするとすぐに音楽が鳴り出し、真ん中の席の葵依が立ち上がり、ドレスの後ろに自らの手を回しファスナーを下ろしはじめた。
葵依が芸能界にデビューしたのは一昨年の春だった。
バブルで潤う梅田組の強力なバックアップもあり、ドラマの準主演デビューから主演映画へと順調なスタートを切っていた。
その後も、可憐な容姿と演技力という本人の技量も認められ、女優としての人気は高値安定している。
「葵依」という名前だけの芸名の秘密が明かされたのも、その写真集の発売の当日だった。
その日は、厳重な緘口令が引かれて事前に漏れることのなかった全国紙各紙の全面広告によってスタートした。
川越純子・葵依の二人によるヘアヌード写真集発売のニュースが、朝のワイドショーの話題を総ざらいしたのは当然のことだった。
そしてもっとも近しいテレビ局に二人を出演させる。
それぞれ単体でも商売になる。特に人気絶頂の葵依については、単体でこそ写真集の価値があるのではないかという、そんなごもっともな疑問に答えるためだ。
目論見通り、その日の昼に駅のスタンドなどに並んだ夕刊紙やユーモラスな「嘘つき」でならす同じく昼に発行される「スポーツ新聞」のトップページを総なめした。
「女優の葵依、あの川越純子の姪だった。本名は川越葵依。叔母と姪揃っての過激ヘアヌード写真集発売の衝撃」といった具合にだ。
元々は中澤プロとアプリコットプロという別々のプロダクション所属で、かたや演歌歌手、もうひとりはアイドル女優路線。その血縁関係が初めて明かされたのだ。
榎本佐和子プロデューサーによって、純子のアプリコットプロへの移籍とほぼ同時に仕掛けられたこの企画は一大ヒットとなり、初版三十万部はその日のうちに売り切れとなる書店が続出した。
全国紙朝刊にスリップ一枚の純子と葵依の写真集の表紙が載ったことは、その強い衝撃度故に、批判を浴びる可能性もあったが、まるで社会現象のように受け入れられた。
各テレビ局へも周到に根回しをして、好意的な意見のコメンテーターしか登場しなかったことも大きかっただろう。
増版を重ねた写真集は年をまたがずに、百万部のベストセラーになってアプリコットプロに、つまりは梅田組に莫大な収益をもたらしたのだった。
パンティ一枚になった裸足の葵依がテーブルに上がる。そのために組幹部夫人たちが向き合うテーブルの中央はまるで花道のように最初から何も置かれていない。
「その後やはり行方は知れんのか」
佐和子はわかっていたが、敢えてとぼけて答える。
「中澤ですか。社長からの連絡はまったく…」
「違う違う、こうなればもうあの男のことはどうでもいい。美樹じゃ、美樹」
「美樹ちゃん…」
佐和子は眉根を寄せて憂鬱そうな顔をしてみせる。
目の前で、葵依がパンティに両手をかけた。
そのオーソドックスなストリップショーを見ているのは、梅田が佐和子と話し込んでしまうと、女ばかりということになる。ただ一人、一番末席に座っている葵依の実の弟、マネージャーの川越そらを除いてはだ。
「美樹ちゃんは、中澤と同行しているものと思われますが、やはり…」
北条美樹は中澤とともに、成田をマニラ空港に向けて出国していた。
飛ぶ鳥を落とす勢いの写真週刊誌が、素人カメラマンから提供を受けたとして、サングラスをかけた中澤と美樹が腕を組んでマニラ空港に降り立つところをセンセーショナルな記事をつけて発表したのは十二月に入ってからだった。
「失踪芸能プロ社長、マニラ空港に十代美少女と。女連れ逃避行か」
という具合にだ。
それが失踪直後であるというのが、現像された写真に打ち出されているオレンジ色の日付表示からわかる。
一緒に居る白い目線をつけられた若い娘が、美樹だとわかったのはもちろん関係者だけで、記事の中でも単に十代と思われる美少女としか触れられていない。
だが当然その関係者という中には梅田組長も含まれていた。
ただ、その後のふたりの目的地がフィリピン国内なのか、そこから先第三国へ出国しているのか、足取りは杳としてわかっていなかった。その中澤プロの所属ということになっていた川越純子の移籍後の成功と復活劇により、倒産したプロダクションの社長のことなど芸能マスコミからは既に過去の存在になっており、中澤のこと自体がテレビなどで話題になったのは、ほんの一瞬だった。
それよりも、各局とも中澤が育てた純子とそしてその姪葵依ペアのヘアヌード写真集に話題がすぐに切り替わり、結果的には本の広告になったのだった。
「いったいいつからなんじゃ。姉の葵依と違って芸能人になりたがっていたわけでもない。何処にあの男との接点があったというのじゃ」
これまでに何度も梅田が佐和子を問い詰め、嘆いた言葉が繰り返される。
「せっかく処女のまま、ケツの穴であんあん言うまでに育てたというのに」
相当悔しいのか、地団駄でも踏みそうな勢いだ。
梅田の男根は決してすごく大きいというわけではないが、いくつか真珠を埋め込んでゴツゴツとしている。実際に性器に入れられると、そのゴツゴツが堪らない刺激だということを身をもって佐和子も知っているが、美樹がそれを騎乗位で肛門に受け入れ、自ら腰を振って嬌声をあげている場面を何回か見てもいた。
処女のままで、美しい少女の肛門だけを先に開発してきた梅田にとって、突然姿を消した二十一歳の娘があまりに惜しいのだろうというのはわかる気がした。
「なんとか取り戻せないものか。写真本の成功で、暫くは組もプロダクションも安泰だ、お前さんのお陰でな。この金を使ってより大きな捜索網に出来ぬものか。こうなればもう中澤など殺してしまってもいいのだ。長い長い付き合いとはいえ、最後の最後に裏切りおって。いや、もし万一美樹の処女を奪ってなどいようものなら、目の前で八つ裂きにしてくれよう」
珍しくヤクザの親分みたいな、いやヤクザの親分らしい言葉を吐いた夫に美絵が笑いながら言う。
「あらあら、あんな小娘に随分とご執心だこと。そんなもの、とっくにやられて穴開けられてますよ。男と女。まして手に手を取り合っての逃亡劇だ。どっかに隠れててやることといったらオマンコしかないさ。いくらあんたがお尻好きの女に育てたっていったって、あの子だって女だ。ちんぽ、おまんこに入れてほしいに決まってるもの。誰もそれを咎めたり検査したりする相手が居なくなったんだからね」
やはり夫の言動が気に入らないのだろうか。美絵の言葉は辛辣だった。
全裸になった葵依がゆっくりゆっくりとテーブルの中央を歩いて行き、一番端のそらのところまで行き手を差し伸べて、そらをテーブルに上げる。


