『団鬼六 縄化粧』(だんおにろく なわげしょう)は、1978年12月2日公開の日本映画である。主演は谷ナオミ、監督は西村昭五郎。夫との性生活に不満を抱える団地の主婦が、画家夫婦の営みを覗き見る形で縄とペットプレイへ入る。日活系SM映画に多い監禁や威圧ではなく、日常生活のなかで双方が合意した趣味としてのSMを描いた点が、当時としても異色だった。
案内状から始まる夫婦のSM
平凡な主婦・石野加奈子のもとへ、画家を夫に持つ友人・滝田友江から案内状が届く。数日後、絵画展で久しぶりに再会した友江は、見せたいものがあると自宅へ誘う。加奈子が滝田家を訪れると、半裸の友江が夫・伊作に縄で縛られる。初めて見る緊縛に加奈子は唖然とするが、興味は残る。真面目一方の夫・英一郎を連れて再び訪れると、今度は伊作が飼い主、友江が犬に扮したプレイが始まる。興奮のまま帰宅した石野夫妻は、その夜みずから飼い主と犬を真似て、新しい営みを見つける。目覚めた二人は再び滝田家へ行き、下着姿で夜通しSMの快楽に溺れる。
谷ナオミの主婦と、画家夫婦の犬
加奈子(谷ナオミ)は結婚五年目、団地住まいの専業主婦。子供はおらず、英一郎が出社したあとは暇を持て余す。夫は愛しているが、新婚当時より夜の営みに消極的で、セックスレス気味の不満がある。友江(中島葵)は伊作のSM風の絵を理解し、モデルにもなる。夫婦で以前からプレイしており、犬に扮するときは首輪をしているあいだ言葉を話さず、犬の動きを徹底する。英一郎(山田克朗)は東大卒のエリートで、会社では次長になったばかり。仕事に重きを置く真面目さだが、滝田家のプレイを見て眠っていた欲求が起きる。伊作(高橋明)は画家。題材に行き詰まったあとSM風の絵でスランプを脱し、夫婦のSMを「夫婦生活のバリエーションの一つ」と語る。自宅にはジャーマン・シェパードらしき雄犬を飼う。助手のゆめこ(日夏たより)は美大生で伊作の弟子。プレイの準備を手伝い、友江が犬のときは自分のベルトをムチ代わりに床を叩いて命令し、場を盛り上げる。
原作は『肉体の賭け』
監督は西村昭五郎、脚本はいどあきお、原作は団鬼六「肉体の賭け」。製作は結城良煕、撮影は前田米造、美術は徳田博、照明は熊谷秀夫、編集は西村豊治、助監督は伊藤秀裕。谷ナオミは団鬼六作品の顔であり、本作でも主婦が縄に目覚める役を担う。監禁ものが多いSM映画のなかで、案内状と絵画展と団地の夜から入る合意の趣味としてSMを撮ったことが、1978年のこの一本の位置である。ペットプレイの首輪と、画家の持論と、セックスレスの主婦——日常の隙間に縄化粧を置いた作品だ。










