叔母は家庭教師 第二章 絵里子の体内に潜む悪魔 ~ 第四章 叔母が教える〝大人の手ほどき〟 · 1 (2/6)
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第二章 絵里子の体内に潜む悪魔
大学の校庭に暴走族が大挙して押しかけてくるという突発的な事件のために、授業が打ち切りになったのは正午である。
全校生徒はすぐに帰宅を命じられたが、敏行は、いいチャンスが到来したと、内心わくわくしながら、白金台にある叔母のマンションに向かった。
敏行の汗ばんだてのひらには、叔母のマンションのスペアキーが握られている。これは、不定期に絵里子が家庭教師をしてくれるので、あらかじめ彼女から預かっているのだ。週に二回が基準だが、なにしろ新進気鋭の若い大学講師なので、マスコミなどに登場する機会が多く、絵里子と若い甥の間にはきちんとした取り決めがない。大抵は前日の夜かその日の朝に絵里子から電話がかかってきて、マンションで勉強を教わるというパターンである。
二十一歳しか年が違わないので、二人は姉弟と間違われることがある。そんなとき、叔母である絵里子はとてもうれしそうな顔をする。けれども、うれしい思いは、口にこそ出さないが、甥である敏行のほうがずっと強かった。
本当のお姉さんだったらどんなに素敵だろうな…‥。
敏行は何度、二人が姉弟であることを想定して勝手なシナリオを作り、頭のなかで自分好みのストーリーを展開させていったことだろう。
昨夜も今朝も、絵里子からは連絡もない。つまり、今日という日は絵里子宅では個人授業がない。
叔母さんは忙しくて、家を空けているにちがいない……。
敏行はそう推測した。授業は早々と打ち切りになったし、こっそり留守宅にあがって、前から興味を抱いていた叔母の下着類をじっくり観察してやろうともくろんだ。
国立自然教育園近くに来ると、新緑の向こうにマンションが見えた。レンガ色のどっしりした建物である。叔母の他にどういう人たちが住んでいるのかわからないが、大きいわりには、いつもシーンと静かである。
敏行が絵里子の下着に興味を抱いたのは、ほんのちょっとしたきっかけからだった。それも、つい先日のことだった。
その日は朝からジメジメと雨の降る、いやな天気だった。絵里子のところで個人授業のある日だったので、敏行は約束の時間にマンションへ行った。
大学から帰ったばかりの絵里子は、ちょうど入浴中だった。絵里子がバスルームから出てきたとき、体にはバスタオルだけが巻きつけてあった。
敏行は目のやり場に困った。テーブルにコーヒーセットを用意して、叔母のために熱い飲み物を出そうとした。そのとき、ポットとおぼしき容器を傾けたが、湯が出てこない。
蓋を開けてびっくりした。女性の下着、とくにパンティを専門に乾かす特種な乾燥器であった。
「これ、なんだよ?」
掴みだしたものをひろげて絶句した。ほとんどがレースでできているパンティである。「あら……敏ちゃんたら……」
叔母は少し赤くなって走り寄ると、冗談めかして軽く睨み、それを取りあげた。
敏行は妙にドキドキした。
こんな薄いものをはいているなんて……。
そのときから、絵里子の下着が気になって仕方がないのだ。
今日は、目安をつけてあるベッドルームのクロゼットから調べて見るつもりだ。万一、途中で叔母が帰ってきたら、「ちょっと近くに来たから」とかなんとか適当に言いわけをすればよい。
小さいときから敏行は、叔母は自分の味方だという意識を強く持っている。母が厳しく叱責したりすると、すぐに絵里子がかばってくれた。敏行もまたそれを期待して、絵里子の胸のなかに飛びこんでいったものだ。
敏行は聳え立つマンションの裏側にまわった。格別な意味があったわけではない。なんとなくひとめぐりしてから入るつもりだった。
大きな藤棚の下から、敏行は首を折るようにして見あげた。そのとき、敏行は妙なものを見た。屋上の高いフェンスを、一人の男が乗り越えようとしている。
なんだ
!?
……
そう思う間もなかった。男はそのまま空中に飛んだ。まるでスローモーションフィルムのひとコマを見ているようであった。
男の体がスーッと糸をひくように落下して、一度、大木の枝にぶつかってから、ドスンと地上に落ちた。まだ若い。敏行と同年輩か。若い男は藤棚の向こうに倒れて、口から血を吐いていた。
夢かと思いたかったが、決して夢ではない。男と一緒にファーッと落ちてきたものが、藤棚に引っかかってから、ポトリと敏行の前に落ちた。
あっ! と声をあげるところだった。キャビネ型の一枚の写真と日記帳である。写真に写っているのは、絵里子と、地上に倒れている若い男だった。いかにも仲睦まじげに肩を並べている。。
敏行は咄嗟にあたりを見まわした。本能的に写真と日記帳を手にしていた。そして、パッと建物の陰に引っこんだ。
しばらくして、建物のどこかで窓の開く音がした。何やら叫んでいる。あちこちの窓が開いた。敏行は住居者たちの窓から死角になっているところにひっこんでいるから、その存在に気づく者は誰もいない。
敏行はそっと表にまわりかけて、もう一度建物を見あげた。あちこちの開いた窓の一つに、絵里子の部屋の窓もあった。
そこでまた、敏行は我が目を疑った。ベランダから下を見ているのは絵里子である。その後ろに立っているのは、まぎれもなく父の政司だった。
なぜ、お父さんが?……なぜ
!?
なぜなんだ?……
めまいを起こしそうになりながら、敏行は表通りへ出た。救急車のサイレンが聞こえてきた。
どこをどう歩いたのか記憶にない。気がつくと、白金台から広尾へ抜ける人通りのほとんどない大通りを歩いていた。
なだらかな坂がつづいている。その途中に、洒落た白い建物があり、喫茶店の看板が立っている。敏行はそこへ入ってココアを注文すると、密かに持ち帰った写真と日記帳をひろげた。
写真には日付が入っている。ちょうど一カ月前だ。自動シャッターで撮ったらしく、若い男の手にはセパレート・シャッターが握られている。
折り曲げてある日記のページの部分に視線を走らせた。途中まで読んで敏行は、心のなかで大きく、ウソだ! と叫んだ。
店のなかでは、それ以上読む気がしなかった。わけもなく体が震えてくる。
よほど深刻な表情をしていたのだろう。女店員が二人、敏行のほうをチラチラ見て、何やら囁き合っていた。
敏行はめまいを起こしそうになるのをかろうじて堪え、外に出た。広尾の家まで遠くない。しかし、歩くのがひどく億劫だったのでタクシーを拾って帰った。
母は不在だった。敏行は自分の部屋へ閉じこもると内鍵をかけて、自殺した男が持っていた写真と日記帳を取りだした。
頭のなかが混乱している。
さっきは読み間違えたのかもしれない。いや、そうに違いない……。
敏行はもう一度、折り曲げたページの部分を、一つ一つ字句を拾いながら慎重に読みはじめた。
バンザイ
!!
とうとうやった! オレはとうとうやったのだ。大学なんかクソくらえだ。一年や二年、留学が延びたからって、なんだっていうんだ。オレはそんなものよりもっともっと貴重なものを手に入れたのだ。
相原絵里子、二十八歳。きっと本物の女神だって、こんなに美しくないだろう。彼女のように優しくはないと思う。
半年間の勉強の成果はどれほどのものかわからないが、絵里子先生をオレのものにしたのは、まぎれもない事実なのだ。
前から、先生はオレに対してすごく優しく接してくれた。顔を触れ合わんばかりにして、オレの疑問に答えてくれた。ときにはあの白魚のような手をオレの肩や膝の上に置いて、家庭教師の役目を百パーセントまっとうしてくれた。オレはそんなとき、何度、先生の胸のなかに飛びこんでいこうと思ったことか。
オレは先生のすべてを好きになってしまった。物腰、話しぶり、匂い……。
邪悪の心が芽生えたのは、いつ頃だったろう。
先生と姦りたい!
ああ、なんて不埒なことを考えたんだろう。でも、もうそれを誰もとめることはできない。絵里子先生と一つベッドで寝る。これ以上、非現実なことが世のなかにあるだろうか。でもオレはその非現実なことを現実にしてみたい。どんな努力だって惜しまないつもりだった。
それが……それが……まったくひょんなことから、先生はオレのものになったのだ。もっと噛み砕いて俗な言葉で言えば、先生は今日、オレとセックスをしたのだ。嘘じゃない。本当だ。信じてくれ。
こんな輝かしい日のことを、永久に書きとどめておかない手はない。これから書くことは本当にあったのだ。
ああ、何から書けばいいのだろう。どんな描写からスタートすれば、みんなは真実として受けとってくれるだろう。
今日の六時、オレは約束通り、フランス語のレッスンを受けるために、絵里子先生のマンションへ行った。
ちょうど婦人雑誌の女性記者が帰るところだった。授業はすぐにはじまった。オレの苦手な文法だったが、先生の巧みな指導と解説で、よく理解できたような気がした。例題を出されたが、珍しくオレはそれをすらすらとやってのけた。
先生は「よくできました」と言って、オレの額にキスをした。オレは真っ赤になった。同時にペニスが一挙に膨張した。
「さあ、今日はこれで終わりにしましょう」
先生はそう言ってから、「おなかが空いているなら一緒に食事をしよう」と言ってくれた。願ってもない誘いにオレはのった。
「その前に、ちょっとだけシャワーを浴びたいの」
先生はそう言って浴室へ入っていった。
先生がシャワーを使う音が、かすかに聞こえてくる。オレはその音を聞きながら、とてつもなくでかくなっているペニスを引っぱりだした。こんなにも切ない気持でペニスを見つめたのは、生まれて初めてだ。
ああ、先生としたい!……
痛切にそう思った。
ソファの背もたれに、先生のストッキングがあった。オレはそれをペニスに巻きつけて目を閉じた。ざらついた感じを、オレは先生のオマンコの肉襞だと思い、ゆっくりと右手を動かした。
二、三度擦っただけで、熱いものがはじけそうになったが、オレは根気よく頑張った。先生ともっとしていたい……。そんな気持ちで必然に自分自身をコントロールし、頭のなかに美しい絵里子先生の裸を想像したのだ。
しかし、いくらコントロールしても、堪えきれるものではない。時間にしてほんの一分か二分だと思う。ペニスが一気にピリピリと震えだした。
「絵里子先生!」
オレは思わず叫んでいた。
そのとき、ガタッと物音がした。振り向いたら、部屋着のようなガウンをまとった絵里子先生が立っていた。
あっと思ったが、もう遅い。膨れきったペニスの先から、白い精液があちこちに飛び散った。とてもとめることなんかできるものではない。
すべての精液が出つくすと、オレはあわててペニスをしまった。
泣きたかった。死にたかった。
先生がゆっくりと近づいてきた。大好きな絵里子先生に、オレは死刑判定にも等しい師弟関係の解除を宣告されるかもしれない。明日から来るな……。
だが、絵里子先生の口から飛びだした言葉は、まさに青天の霹靂ともいえるものだった。
「あなた、いつもそんな格好で千摺りかいているの?」
オレは脳天をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。ズボンの前に、だらしなく白濁した液体が付着していたのも気づかなかった。血が逆流した。
先生の世にも美しい口から飛びだした汚い言葉――オレは五体が震えるほど興奮した。
「出しなさい! あなたのペニス……」
凛とした声だった。
オレは呆然と立ちつくしていた。出せと言われたからといって、恥ずかしげもなく簡単にさらしたりはできない。
「どうしたの? 出せないの? 恥ずかしいことを平気でやるくせに」
先生はそう言うと、ズボンのベルトをゆるめ、パンツと一緒に引きおろしてしまった。オレは拒まなかった。むしろゾクゾクしていた。一番みっともない秘密の姿を見られたのだからと、なかば開き直った気持ちもあった。
精液の残滓が未練そうに先端から垂れた。するといきなり、先生はペニスを掴んだのだ。柔軟度を確かめるように、指先でふわふわと揉んでいる。
先生の美しい指先と醜悪なペニスの対比に、オレは酔った。縮みかけたペニスが、たちまちグーンと膨らんだ。素晴らしい回復力だった。
「ああ……」
先生はびっくりしたように呻き、今度は五本の指でしっかりと握りしめてくれた。
呻いたのはオレも同じだった。
「先生、もっとちゃんと触って」
唸るように言うと、先生は「仕方のない人ね」と呟き、ゆっくりと擦ってくれた。
オレは夢中で力んだ。両脚を突っ張り、全身を固くして気張った。ペニスが痺れ、頭のなかが爆発しそうにガンガンと鳴った。
第二の発射はすぐにやってきた。
「で、出そうだよ、先生」
オレがひきつったような声をあげると、両脚の間にひざまずいていた先生が、横に飛びのいた。その瞬間、オレは出した直後なのに多量のザーメンをほとばしらせてしまった。
精液がピュッ、ピュッ……と勢いよく飛ぶのを、先生は顔を紅潮させながらじっと見つめていた。
「たくさん出すのねェ」
すぐに先生はティッシユペーパーで白い汚れを拭きとってくれた。
オレは、先生がひざまずいたままフロアに飛び散った精液の始末をしてくれるのを見ているうちに、またしても勃然ときざしてきた。どこにそんな力が残っているのか、不思議でならない。二度も出したのに、先生の揺れ動く後ろ姿とヒップを見ていうちに、姦るという感情をどうしてもコントロールできなくなってしまったのだ。
目の前に美しい悪魔がいる
!!
……オレをそそのかした途方もない美しい悪魔が
!!
……
オレは頭に血がのぼっていたのだと思う。やにわに先生に抱きついていった。
当然、反撃されるものと思っていた。罵倒されると思っていた。ところが、「あわてないで。ちゃんとさせてあげるから」と言ったのだ。「させてあげる」と言ったのだ。
先生はベッドルームへオレを誘った。淡いピンクで統一されたその部屋は、世界中のどんな金持ちの寝室よりも素晴らしいものだった。
ガウンを脱いだ絵里子先生は、ほとんど紐といっていいほど小さな面積のスキャンティだけしか身に着けていなかった。それもピンク色。
オレは絵里子先生の手で、身に着けているものをすべて脱がされてしまった。目の前でブルンッ、ブルンッと揺れる二つの隆起を見ているときのオレの気持ちを、誰がわかってくれるだろう。小さなサクランボのような乳首からは、なんともいえない甘い香りが漂ってくるようだった。少ししゃくれあがった乳房は、まるでつきたての餅のように白くふくよかで、そこからなだらかに下腹へのびるラインは、ヴィーナスもその存在が薄れてしまうほど美しかった。
「フフフ、また大きくしてるのね」
先生の声は、優しくて艶があった。
オレは羞恥心をかなぐり捨てて、堂々と膨れきったペニスをさらけだした。見せつけることに、ワクワクするような歓びを感じていたのだ。
「少しは落ち着いた?」
先生の声にオレは大きくうなずき、乳房にくらいついた。あお向けに倒れた先生の乳房は、少しも崩れずに原型をとどめていた。
「女は優しくされるのが好きなの。ガツガツすると嫌われるわよ」
「はい」
オレはこんなにも素直になれる自分自身が不思議でならなかった。惚れた弱み……そう、オレはずっとずっと前から、絵里子先生に惚れていたにちがいない。
絵里子先生のオッパイはすごくたっぷりして、柔らかかった。そのくせ軽く指で押しただけで、ゴムマリのようにはねかえってくる。オレは夢見心地で、てのひらに包み、乳首をチュウチュウと音をたてて吸った。
絵里子先生は慈愛のこもった目でオレを見つめていた。オレはしあわせを実感した。至福とは、まさにこの瞬間のことをいうのだろうと思った。
「あなた、いつも誰のことを想像して、千摺りかいてるの?」
またオレはビクッとした。千摺り――絵里子先生の口から出る言葉は、オレに狂的な勇気を与えずにおかなかった。なんと素敵な響きだろう。オレはもっと聞きたかった。
オレもかなり露悪的になっていた。
「千摺りかくときは……」
わざと強調して言った。
「……絵里子先生のことだけ考えてます」
実際、その通りだったのだ。
「まあ、光栄ねえ」
いつのまにか絵里子先生の顔は、薄紅をさしたように染まっていた。目を閉じてうっとりしている。
「先生、下のほう……見てもいい?」
ますます声はうわずっていた。
「好きにしなさい」
オレは半身を起こして、腰のほうにズリさがった。絵里子先生は気配を察して両脚をゆっくりと開いた。わずかばかりの布地の端から、短い黒い毛がのぞいている。
オレは中風のように手を震わせて、布地の上から中心を触った。
なぜだかわからない。涙が滲んできた。身にあまる感激が、オレを涙もろい感傷的な男にさせたのかもしれない。
股間の中心はしっとりと潤っているようだった。ふんわりと恥毛が薄いシルキータッチの布地を持ちあげている。中指をそっと押した。絵里子先生の腰が、ほんのわずかだがピクッと震動して持ちあがった。
この下に絵里子先生の一番大切なアレがある……。
先生のオマ×コをまともに見る光栄にあずかる人間は、広い世間に何人いるのだろう。
オレは痛いほど勃起しているペニスを見た。見事に復活している。先生のオマ×コに入ることが許されるなら、どんなに回数をこなしても、決して疲れることはないだろうと思った。
「何してるの?」
絵里子先生のくぐもった声が、オレに勇気を与え、欲望に火をつけてくれた。
腰骨に引っかかっているスキャンティの縁に手をかけると、絵里子先生はスーッと腰を持ちあげ、脱がせるのに協力してくれた。オレはこのとき、ひょっとして絵里子先生もオレを好きなのではないかと考えた。そして、その考えはすぐに、絶対にそうに違いないという確信に変わった。
だってそうじゃないか。好きだという感情があるからこそ、すべてを許してくれると考えるのが妥当だと思うのだ。
体じゅうが突きあげられるような歓びに襲われた。年の差なんてまったく関係ない。もしかしたら結婚という事態にだって発展しないとも限らない。
絵里子さんがオレの花嫁さんになる
!!
……こんな素晴らしいことが、この世のなかであるだろうか。ありっこない。断言する。
オレは未来の花嫁候補のスキャンティを、神に祈るような気持ちで引きおろした。
次第に露わになる黒い茂みの、なんと神秘的に見えたことか。
オレははっきりと見た。恥毛の一本一本のそよぐような生え方や、艶を含んだしっとりとした輝きを。食べてしまいたい。絵里子先生のすべてを食べてしまいたい。そうすれば先生は永遠にオレのものになる。
だが、この美味しい肉体と歓びをわかちあうためには、そんなことをすればまったく無意味になってしまう。絵里子先生はこの地上に存在してこそ、その価値を認められるのだ。そしてそれを所有できる唯一の幸せな男が、このオレということになる。
絵里子先生の体は、どんな言葉をもってしても、その美しさを正確に言い表わすことはできないだろう。神様が作ってくれた女体という芸術品のなかでも、際立った存在だとしか言えない。
太腿の圧倒的な曲線と量感。腰を中心にした豊潤さに較べて、長い手や脚のなんと細くてしなやかなことか。こんもりと膨らんだ中心の丘を彩る恥毛の繊細な翳り。その下に隠された強烈な女の部分を思うと、そのまま気を失ってしまいそうな恍惚感にくるまれてしまった。
「先生、綺麗だよ……食べてしまいたい」
平凡な語句しか浮かばない。でも言わずにはいられなかった。
「さあ、どうぞ……お食べなさい」
絵里子先生はそう応えた。
そのあとのことは秘密にしておきたい。誰にも教えずに、そっとオレの日記帳に書き留めておくなら、絵里子先生だって許してくれるだろう。
先生は自分から両脚をゆっくりと開いてくれただけでなく、しなやかな指先で、女の秘密の扉をめくって、秘奥を見せてくれたのだ!!
綺麗な露が、複雑な肉の一枚一枚を覆っていた。割れた肉の縁どりに生えた短い毛が、オレの劣情を刺激するかのように地肌にへばりつき、ぽっくりと腫れた粘膜は充血してかすかに震えている。
「さあ、お食べなさい」
オレは正直のところ、どうしていいものやら戸惑った。すると絵里子先生は、両方の人差し指で淡い茂みをくしけずって、小さな肉芽を露出させた。女性経験の少ないオレだって、その小さな突起がなんであるか、よくわかる。
「これ、わかるわね」
「はい……ク、クリトリス……」
「そう、これをお食べなさい」
「え
!?
」
「舐めるの。そっと優しく……いいわね」
オレは催眠術師にあやつられたように、両脚の間に這いつくばり、長い舌先を突きだした。そのクリトリスには匂いがあった。天上に咲く蓮の花のような匂いがあっただけでなく、そこに舌を這わしたとき、甘酸っぱい味が口のなかにひろがった。
「あっ……ああ……」
絵里子先生の鈴を振ったようないい声を聞くと、オレは無上の幸福感に侵りながら、あの小さな豆粒を頂上から裾、そして裾まわりと、順を追って丁寧に舐めまわした。
愛らしい肉のふくらみは、オレの唾液と彼女自身の吐きだした甘美な蜜で、ぐしょぐしょに濡れそぼった。それはオレの顔も同じことだった。ベタベタになりながら、オレは先生がもういいと言うまで舐めるつもりだった。
「ああ、いい気持ちよ……もっとして……ああ、あああ、いいーッ」
先生の腰全体が切なそうに揺らめいて、まるでセックスしているように淫らに突きだされる。そのたびに口を圧迫されたオレは、息苦しくして死にそうになったが、このまま死ねたら、それこそ天の果報者だろうと思った。
「あなた、我慢できる?」
絵里子先生が喘ぎ喘ぎ言った。割れ目を見ると、そこはまるで小水をもらしたように洪水になっていた。
「我慢て……どんな?」
「今、入れても、長持ちする?」
絵里子先生はそこまで考えていたのだ。オレが合体することを許してくれたのだ。
しかし、二度も出していながら、オレのわがままなペニスは、早くも透明の汁をタラタラと流していた。
「自信がない」と言うと、絵里子先生は「もう一度出してからにしましょう」と言って、オレのペニスを握ると、いきなり強い力で陰茎の包皮を思いきり根元近くまで剥いてしまった。体じゅうに痺れが走った。
絵里子先生はペニスを剥きながら、もう一方の手で亀頭をくるみ、右や左にひねった。痛いけれども、たまらなく気持ちよかった。たちまち体の内部から鋭い感覚が突きあげてきたと思ったら、亀頭の先端が、まるで花が咲いたようにパッと開き、そこから熱いスペルマが噴出した。
絵里子先生はそれをてのひらで覆ってこぼれないように受けとめると、なんともいえないうれしそうな表情をして乳房になすりつけはじめたではないか。ああ、なんという美しい悪魔の姿だろう。
「さあ、今度は少し長持ちするはずね」
うっとりと言いながら、絵里子先生はザーメンで濡れた乳房を、白い細い指でゆっくりと揉みたてた。
オレは魅せられたように見つめ、再び絵里子先生の股間を舐めまわした。
「私、あなたの荒っぽい千摺りを見て、ひどく興奮しちゃったみたい」
先生の歌うような呟きを聞くと、もうオレの分身はむっくりと起きあがっていた。奇跡としか言いようがない回復力は、オレ自身も信じられなかったほどだ。
「先生、見て! オレの千摺りを見てくれよ
!!
」
叫びながら中腰になると、オレは見せつける歓びに震えながら右手を激しく使った。 するとどうだ。先生もまた右手の指でクリトリスをいじりはじめたではないか。
「出しちゃ駄目よ。出すのは私のなか……いいわね」
絵里子先生はぽってり膨らんだオマ×コをひろげると、中指をスッポリと膣のなかへ送りこみ、ゆるゆると抜き差しをはじめた。
「ああ……こんなふうにしてくださるわね」
「はい、やります…… オレ、頑張る」
ペニスはかちかちに硬くなっていたけれど、痺れてしまって、感覚がなくなっていた。時折り尿道を刺すような疼きが走り抜けたが、それにはもう、わずかしか精液が残っていないときに生ずる痛みにそっくりだった。
「出そうなの?」
オレの悲痛な表情を見て、絵里子先生は心配そうな顔をした。
「大丈夫……絶対に大丈夫」
絵里子先生が自分の手で両脚をかかえこみ、オマンコ全体を見せつけるようなポーズをとった。美しい裂け目は、このときばかりは悪魔の口のように見えた。
だが、ためらいはない。オレは太いペニスをオマンコに押しこんだ。柔らかい肉がペニスをくるみながら、まるで蓑虫のように、もごもごと蠢く。絵里子先生は頭をもたげて、オレのペニスが突き刺さった自分自身の割れ目を、まるで蕩けるような表情で眺めている。
「先生、見て……ほら、見てよ」
オレはゆっくりゆっくりペニスを引きあげた。先生の愛液でぬらぬらになったペニスが、粘膜をめくりながら亀頭近くまで抜けでてくる。
「抜かないで……ああ、もっとよく見せてェ」
しきりに先生が身悶えた。オレは感激と興奮でワクワクしながら、今度はググッと押す。
なんて見事な合体なんだろう。二人の性器はぴたりと密着し、絡まり合った恥毛の間から押しだされた粘液が、じんわりと滲みでてきた。
見られる歓びに浸りながら、オレは同じ動きを何度も繰りかえした。
「ああ、いい気持ち……あなたのでっかい魔羅のお蔭で、こんなにいい気持ちになれるんだわ……ああ、もっとして。ね……」
「もちろんですよ、先生」
オレは体じゅうに自信がみなぎるのをはっきりと感じた。オレは意識的に次第に抜き差しのスピードを速めていった。
グジャッ……ズボズボ……変な音がするたびに、先生は小さく「いやっ」とか、「どうしよう」とか言いながら、両手で顔を覆う。その仕草のなんと可愛いかったことか。
「ああ、きそうよ! きそう……」
突然、絵里子先生が黄色い声をあげた。眉根に皺を寄せ、美しい唇の端を噛んでいた。オレはこのときとばかりに腰をドスドスとぶつけた。
「いいわ、それ、いいの! あああ、お願いよ、何か言って! は、早く言って!!」
「何を言うの、先生……どんなことを言えばいいの?」
うろたえながら問いかえした。
「言って! あああ、イキそうよ! オマンコがいい気持ち! 言って!!
汚い言葉をたくさん言って
!!
」
思ってもみなかった絵里子先生の言葉に、オレのペニスは一挙に爆発寸前にまで膨れあがった。そして、あのなんともいやらしい女性器を表わす四文字の俗称こそ絵里子先生の望んでいたものと気づいたオレは、声高らかに叫んでいた。
「先生のオマンコがあんまりいいから、オレも出ちゃいそうだ……先生、出していい!?」
「出して! いっぱい出して
!!
いっぱい子宮にかけて……ああ、いくわ……もう駄目。ほら、して!!
して……いくわ……いく……いく、いく、いくーッ!!
」
すさまじい絵里子先生の叫び声は、オレのペニスの安定弁を一挙に取りはずす効果があった。ピーッとペニスの芯に鮮烈な電流が通ったと思ったら、オレは四度目の噴射を先生の膣肉の奥めがけてぶちまけていた。
「うわわわわ!」
柔らかい真綿のような締めつけが急速に万力のように変化した。
千切れるかと思った、オレは絶叫した。どんなに気持ちいいかを叫んでいた。その声に絵里子先生の甲高い声が重なるのをオレは遠去かる意識のなかではっきりと聞いていた。
* *
日記の持ち主の名前はなかったが、白金台の絵里子のマンションの屋上から飛びおりた、若い男のものであることは間違いない。あの若い男はおそらく、絵里子が大学の他にも通っている、フランス語の専門学校の生徒だろう。日付はないが、何ヵ月も前に書いたものではなさそうだ。
敏行は次のページをめくった。
* *
あれは夢だったのか。絵里子先生は以前の先生に戻ってしまった。時折りかかってくる電話の主とは、どういう関係なのだろう。親しそうにしている。オレが部屋にいるのに、わざと甘い声を出してしゃべっている。オレの気持ちをまったく無視して、まるで恋人同士のように。
相手はいったい何者なのだ。「おにいさん」と電話で呼びかけた気がするが、まさか兄妹ではないだろう。オレの聞き間違いかもしれない。でも、オレ以上に親しくしているのはまぎれもない。
畜生!……ああ、先生、オレを見捨てないでください!
* *
次をめくった。
『まったく無視される』
次には、ただ『無視』としか書かれていない。あとはすべて空白のままだ。
敏行には、おにいさんという言葉に心当りがあった。
日記の持ち主である若者が屋上から身を投げたとき、いくつかのマンションの窓が開き、住人たちが階下をのぞいた。そのとき、絵里子の部屋のベランダから下を見たのは、住人である絵里子と、父の政司だった。
思いもかけない場所での父の姿に敏行は不審を抱いた。用があって来たという様子ではない。ガウン姿が何よりもそれを物語っている。
いったい二人はどんな関係なのか? 絵里子叔母さんの正体は何なのだろう?……
日記に書かれてあることが、真実かどうか判断がつかない。しかし、死ぬという最後の手段をとった日記の持ち主が、まったくいい加減なことを書くとは思われない。
でも……本当に絵里子叔母さんは、死んだ若者が書き遺したように、淫らな美しい悪魔なんだろうか?……
敏行は胸をかきむしって煩悶した。そして、愛してやまない絵里子の実体を知るために、あることを実行に移そうと考えつき、思わず慄然とするのだった。
第三章 絵里子は淫らな叔母?
屋上から飛びおりて死んだ若者は、普段からフランス語専門学校の仲間たちに、一人で都会に暮らし、勉強漬けの毎日がいかに虚しいものかと話していたこともあって、勉強ノイローゼによる自殺と報じられた。
絵里子の住んでいるマンションが死に場所だったこともあって、絵里子も事情聴取をされたが、特に問題が起きたわけではない。けれども、もしも若者の持っていた日記帳と写真が司直やマスコミの手に渡ったならば、事態はそう簡単におさまらなかったはずだ。その場に居合わせた敏行の咄嗟の判断は、事件の本質をうやむやにしてしまうと同時に、絵里子にとって幸運だったわけだ。
しかし敏行は、事件によって、今まで知り得なかった若い叔母、絵里子の陰の部分を知っただけでなく、性的な興味も強く抱くようになった。
本当に日記に書いてあるような淫らなことを、叔母さんは口にしたりやったりしているのだろうか?……
それを知りたい、と敏行は思った。父の存在も気になって仕方がない。死んだ若者と叔母。父と叔母。その図式のなかに、自分と叔母が入っていけないわけがないという気がした。
絵里子の実体を知るためには、直接ぶつかることである。それも、言葉で問い詰めるのではなく、体で……。だから失敗は許されない。
けれども、日記に書き遺してあるように、叔母が美しい悪魔であったなら、どう対処すべきなのか?……
敏行は、同じクラスの仲間から、不眠症を理由に睡眠薬をもらい受けた。一包みがごく少量の粉薬のところをみると、かなり強いらしい。その友人の両親は医者だったので、敏行のもっともらしい申し出を、快く承知してくれたのである。
必要量以上に服用しないことという忠告は、無視された。一回につき一袋というのを、倍の量に包み変えた。
絵里子のマンションへ行ったのは、あの忌まわしい事件の十日後のことだった。その間、絵里子から連絡がなかったのは、彼女自身も人知れずショックを受けていたからにちがいない。
父は以前と少しも変わらなかった。ということは、絵里子と死んだ若者の繋がりを、まったく知らないということになる。
政司、美佐江、敏行の三人家族は、表面上はとても幸せそうな一家に見えた。しかし、何も知らないのは母の美佐江だけであり、政司は義妹と密通し、息子の敏行は、父と叔母の秘密の関係をほぼ掌握していたことになる。
その日、敏行は約束の時間よりも早くマンションへ行った。絵里子が戻ってくるまでに、少しでも裏の部分をのぞいておきたかったからだ。
きちんと整理された3LDKの部屋のすべてに明かりを点けた敏行は、まるで刑事のようにあちこちを点検した。とりわけ興味を持ったのは、ベッドルームである。ベッドルームに入るなり、あっと思った。それまで敏行は、ベッドルームに入ったことがなかった。
室内は淡いピンクで統一されていた。日記に書き記されていた通りである。ベッドはゆったりしたダブルで、傍らに大きなフロアスタンドがある。それにもスイッチを入れた。ベッドの上が急に華やかになった。
敏行はフワフワのベッドに引っくりかえった。そして絵里子の裸を想像した。小さい頃、絵里子に抱かれて風呂に入った記憶がある。
いつ頃まで一緒に入っただろうか?……十一という年齢差を考えると、学校に入学する頃までは一緒だったような気がする。
とすると……。敏行は指折り数えた。絵里子は大学生ということになる。
その頃、絵里子は実家を離れて、敏行たちと一つ屋根の下で暮らしていたから、敏行の記憶はおそらく間違いない。だが、肝心な胸や下腹部の翳りについてはまったく記憶がない。
敏行はいつのまにか勃起していた。うつ伏せになると、羽毛布団から甘い匂いが立ち昇って、鼻腔をくすぐる。布団に硬くなった一物を押しつけた。
絵里子叔母さんと寝たい!……
痛切にそう思った。
そのとき、不意にドアが開いた。うつ伏せになっていた敏行は、顔を見られていないのをいいことに、すぐに目を閉じて眠ったふりをした。
「あらまあ……」
足音が近づいてきて、すぐ頭の近くでとまった。ミステア・デ・ロシャスの、ほのかな香りに敏行は酔った。
絵里子がかがみこむ気配がした。瞼の向こうに翳りがさした。敏行はウーンと呻いてから、ぼんやりと目を開けた。絵里子の顔が目の前にある。
「そんなに眠いのなら、勉強はあとにしましょうか」
無断でベッドルームに入ったから、とがめられるかと思った。しかし、甥がベッドルームに入ることなどなんとも思っていないように、絵里子は優しく敏行の顔をのぞきこみ、長い指で髪の毛をまさぐっている。
「うん、ちょっとだけ眠いけど……もう大丈夫」
「そう。それじゃ私がシャワーを使う間に、熱いコーヒーでも作ってくれないかしら」
「わかった。いいよ」
絵里子がバスルームに消えると、敏行は言われた通りのことをやった。コーヒーに薬を入れるかどうか迷ったが、結局は入れなかった。勉強が終わったら夕食をとることになるだろう。そのとき、絵里子は必ずといっていいほどブランデーを飲む。
敏行は棚からブランデーの瓶を取りだして睡眠薬を投入し、シェーカーのように振った。ブランデーの量が多かったら、飲む直前にグラスに入れるつもりだったが、少ないので瓶のなかに混ぜたのである。これは神の助けのような気がした。これくらいの残量なら、三杯か四杯で空になる。つまり今夜中に飲める量だ。おそらく、あとに証拠は残らないはずだ。
絵里子はバスルームから出ると、シルクのナイティ姿で現われた。小さい頃から姉弟のようにしてすごしてきた甥だから、男を意識してガードを固めたりしない。
敏行はあらかじめ、「夕食はここで食べるよ」と言うと、絵里子はうなずいただけだった。
勉強は二時間ほどで終わった。叔母の発散する甘い匂いに包まれて勉強できることに、敏行は大きな幸せを感じた。
「ぼくね、成績があがったよ」
母に言うよりもっと甘い声で告げると、ニッコリ微笑んだ絵里子は、外国映画に出てくるような仕草で敏行の額にキスをした。
絵里子は料理の名人である。インスタントが多かったが、それを感じさせない作り方をする。しかも作業が早い。敏行はもっぱらテーブルの支度と、ブランデーの用意をした。睡眠薬で濁っていないか心配になったが、グラスに入れて見た限りでは杞憂のようである。
絵里子が敏行の家に電話をした。電話に出たのは姉の美佐江だ。
「これから敏ちゃんと一緒に食事なの。もしかすると泊めるかもしれないわ」
敏行は叔母の一方的な宣言を、ワクワクしながら聞いていた。
今までに何度か泊まったことがある。しかし、大抵は絵里子の両親、つまり祖父母が泊まりに来たときで、一人で泊まったことはない。お互いの家が白金台と広尾という遠くないところにあるからだ。
明日が日曜なのが幸運だった。だから今夜は絵里子も泊める気になったのだろう。
「ねえ、敏ちゃん……叔母さん、あなたを不良にしちゃおうかな?」
「?…………」
意味を解しかねた敏行は、フォークを持つ手をとめて怪訝そうに絵里子を見た。
「私だけ飲んでもつまらないもの。敏ちゃんも甘いワインなら飲めるでしょう」
敏行は心のなかに睡眠薬のことが引っかかって、妙にドキドキしていた矢先だったので、すぐに大きくうなずいた。
「実は、ぼくも飲みたかったんだ」
「まあ、悪い子ね」
「だって、叔母さんと一緒だと、楽しいんだもの」
絵里子はうれしそうに笑いながら、「ますます悪い子ね」と額を小突いた。
食事中、絵里子はよくしゃべった。気のおけない甥と一緒なので、久々にリラックスしているようであった。
しかし話し相手になっている敏行のほうは複雑だ。目の前の叔母が、死んだ若者と抱き合っている姿がダブってくる。そして父の姿も……。信じたくないが、どう考えても現実なのだろう。
敏行は飲みなれないワインを、さも美味そうに飲んだ。そうすることで叔母の気持ちをよりリラックスさせようという考えがあった。
ピクルスを口に運びながら、絵里子がフワーッと小さな欠伸をした。目がいかにも眠そうである。しかし、絵里子の意識のなかには、眠いという要素はない。まだ九時になったばかりであった。口数が極端に少なくなった。
敏行は犯罪者の心理になっていた。美しい獲物を前にした誘惑者は、ひょっとしたら今の自分のように、楽しい気分を味わっているのではないかと思った。これは魅力ある心理状態だった。
敏行がサイドテーブルの上にある小型テレビのスイッチを入れた。画面にお笑いタレントのくだらないコントが映しだされたので、すぐにチャンネルを切り換えた。深刻なドラマを見るうちに、絵里子がうとうとしはじめた。
「叔母さん……先に寝ていいよ。眠そうだもの」
「そうね……」
舌足らずな返事をすると、絵里子はノロノロと立ちあがった。
敏行は肩を貸した。こんな体験は今まで一度もなかった。
絵里子はリハビリをする患者のような足取りでベッドルームへ入ると、ひとことも言わずにガウンを放り投げ、ベッドに転がった。膝までのシルクのナイティは太腿のあたりまでまくれあがっていたが、もう目のほうが閉じてしまっている。
軽い羽毛布団を掛けながら、敏行は軽く絵里子の肩を揺さぶった。かすかに寝息が聞こえた。
あの日記には叔母のことを、美しい悪魔と書いてあったが、今、敏行は、自分が悪魔になっていると思った。
こんな気持ちでいられるなんて、悪魔になるのも悪くない……。
敏行ははやる心を抑えてベッドルームを出た。そしてもう一度ワインを飲んだ。自分がこんなにも落ち着いていられるのは、ワインのせいだと思ったからである。
ふわっとした心地よさが若者を包みこんだ。初陣に心はやる昔の若武者も、きっとこんなには落ち着いていられなかっただろう。
敏行はほとんど空になっていたブランデーの瓶を水道の蛇口まで運び、きれいに洗い流した。そして叔母が用意してくれたパジャマに着替えた。
不思議な気がした。重大な事態に直面しているのに、どうしてこれほど落ち着いていられるのだろう?……
原因は、死んだフランス語学校の生徒の日記にあった。日記に書かれていたことを、事実としてとらえているのなら、絵里子は性欲を貪るただの淫蕩な女でしかない。それをどこかで否定しながら、また反面では、本当のこととして敏行は受け入れていた。だから、以前に抱いていた絵里子の神秘性が薄れていた。ただの女--そう思うと恐怖心はあまり感じない。
体のなかで血が騒ぎだした。興奮というより、単なるアルコールのせいだった。
敏行は大きく深呼吸すると、再び叔母のいるベッドルームへ向かった。
ドアノブに手をかけたとき、初めて怖いという感情が敏行をとらえた。
父が訪ねて来るのではないか?……いつも帰りの遅い父なら、そういう事態が起きないとは限らない。ひょっとして、叔母は起きているのではないかとも思った。
万一の場合を考えて、忍びこむという行為をとがめられないために、敏行はわざと音をたてて乱暴にドアを開けた。
ベッドで絵里子は、さっき寝入ったときと寸分違わぬ格好で眠りつづけていた。
「叔母さん?」
普通に声をかけた。まったく反応はない。そのままつかつかと歩み寄って、ベッドに腰かけた。ダブルだから余裕がある。
素顔の絵里子の肌は少女のように滑らかで白い。投げだされている片手は、まるでバレーダンサーが踊っているように見えた。敏行はその手に触れた。ピクリともしない。
手を握りしめ、さらに万歳でもするように頭のほうへずらした。隠れていた腋の下が丸見えになる。そこに顔を近づけた。清潔なソープの匂いがする。指先でなぞった。腋の部分は、普通の肌よりもしっとりと湿っているようだった。
窪んだ腋窩に頬を押しつけてから、なぞるようにキスをした。相変わらず絵里子は死んだように動かない。少し心配になった敏行は、鼻先に耳を近づけると、呼吸を確かめ、ホッとした。
理知的な唇を舌で舐めてみた。そのとき急に、体を突きあげるような欲求が襲い、敏行は激しく勃起した。
羽毛の掛布団をソロリとめくる。ナイティに包まれた豊かな胸が目の前にあった。襟もとの隙間から谷間がのぞける。可愛らしいボタンが、胸のところから膝のあたりまで、広い間隔で六個ついていた。
敏行は思いきって掛布団を取り払ってしまった。絵里子はほんの少し片脚を動かしただけで、まだ当分は起きそうにもなかった。膝あたりまでしかないナイティは、太腿近くまでまくれあがっている。白い内腿の一部を見ただけで、敏行の体の血がざわめいた。
敏行は六個のボタンを、ゆっくり上からはずしていった。絵里子の体じゅうから、甘い官能の匂いが立ち昇っているかのようだった。ナイティを左右に開くと、匂いはさらに強く敏行の鼻腔に入りこんだ。
雪山のスロープを思わせる乳房の稜線は、敏行の瞳に鮮烈に映った。夢でないことを確かめるために、何度も目を擦った。間近に顔を寄せると、細かい皮膚の穴の一つ一つがはっきりと見え、金色に輝く産毛までが観察できた。
叔母は家庭教師 第二章 絵里子の体内に潜む悪魔 ~ 第四章 叔母が教える〝大人の手ほどき〟 · 1 (2/6)
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