兄嫁は二十八歳 第七章 恥かしき悶姿 ~ 第八章 忌わしき牝獣 (4/5)
前の話 · 次の話
第七章 恥かしき悶姿
美登利にとって大樹の存在は悪魔にも等しかった。けれども大樹は、一家が顔を揃える朝や夜になると、平凡な若者に戻る。それが不思議でならなかった。
大樹は、兄嫁と二人きりになると豹変する。たとえ家のなかに志津江や梅子がいても、人の目が届かなければすぐ体に触ったり、ときには強引に唇を奪うようなこともある。だから美登利は、できる限り大樹と二人になる機会を作らなかった。梅子がかなりの料理作りの名人であるところから、美登利は夕食に出す手作り料理の先生になってもらい、常に一緒にいるように心がけた。
そんなある日、電話が鳴った。その日は早くから大樹は外出していたので、美登利は久しぶりにのんびり寛いでいた。
電話に出ると、いきなり受話器から奇妙な声が流れてきた。
「!?…………」
美登利は初め、いたずら電話かと思った。やがて、その声が美登利自身のものだと気づくと、腰を抜かさんばかりに驚いた。それはまぎれもなく、セックスの最中に美登利が放った、あられもない乱れ声であった。
「ハハハハハ。びっくりしただろう、お義姉さん」
テープが途中で切れ、代わって電話口に出たのは大樹だった。
「相談があるんだ。このテープの件で」
美登利は打ちひしがれて、指定された都心のホテルに出向いた。
ホテルが、いわゆるラブホテルでない一流ホテルだったので少しホッとしたものの、えてしてこういう場所では知り合いの人と出会う危険性もある。美登利は目立たない服装をして、用心深く大樹のいる部屋のドアをノックした。
腰にバスタオルを巻いただけの大樹が、笑顔で出迎えた。
この格好でもわかるように、大樹の目的は一つしかない。美登利としては、いそいそとホテルに来たのではないことを強調したかった。
「どういうつもりなの!?」
美登利は切り口上で言った。
「面白半分でやったのさ」
大樹の手が肩にかかった。美登利は強い力で振り払った。
大樹は備えつけの冷蔵庫からビールを出すと、二人分のグラスになみなみと注いだ。
「二人のために、乾杯」
もちろん、美登利は迎合しなかった。
「面白半分だって言うけど、脅迫以外のなにものでもないわ。私を破滅させたいの? 何もかもぶち壊してしまいたいの? それがあなたの目的なら、私はすべてを諦めて、百瀬家から去って行きます」
「違う。違うよ、お義姉さん」
大樹はあわてた。本当にそんなことをされたら、元も子もなくなってしまう。今は美登利の肉体が欲しいだけなのだ。
大樹はそのことを必死で説明した。
「ずいぶん自分勝手なのね」
美登利はようやく気持ちが落ち着いてきたのか、ポツリと呟いた。
「そうなんだ。自分でもよくわかっているよ。だから、いつも後になって、すまないことをしたって気持ちになるんだ。美登利さんが、二人の秘密にこだわってくれなければ、とてもうれしいんだけど」
「私は普通の人間よ。当たり前の感覚を持っている人が、義理の弟に抱かれて、どうしてこだわらないでいられるの? 私はそんな非常識な人間じゃないわ」
「だから、ぼくのわがままが、すべてを引き起こしたんだ。美登利さんには責任はないよ」
「でも、私は現実に抱かれたわ。それに、悲しいけど、女としての歓びまで感じてしまったわ」
「美登利さん……いや、お義姉さんはどうせ、あと何日もしないうちにアフリカへ行ってしまうんだ。ぼくは、それから先のことは諦める。せめてそれまでは、ぼくと楽しい時間を持って欲しい」
「私に、目をつぶれと言うのね」
「ブラジルから帰ってきて、アフリカへ行ってしまうまでの間は、夢を見ていると思って……その間のことは、お義姉さんの人生のなかにはなかったものと思ってよ」
大樹はベッドの下から小さなテープを取りだすと、美登利の前に置いた。
「ぼくは脅迫しているんじゃないんだ。頼んでいるんだよ。お願いしているんだ」
美登利はテープをハンドバッグにしまうと、窓辺に立った。薄いレースのカーテン越しに、新都心のビル群が霞んで見える。
この風景のように、幻みたいだと思えばいいんだわ……。
諦めとも妥協ともつかない気持ちが心のなかに生じたとき、背後から大樹に抱きすくめられ、首筋にキスされた。美登利はその腕のなかからすり抜けると、浴室に消えた。
大樹は、二人の関係が一番いい方向に進んでいるという確信を抱いた。そして大樹も浴室に向かった。
シャワーを浴びている美登利を真正面から見据え、抱き締めた。
美登利はまったく抵抗しなかった。さりとて抱き締めかえしてくるような素振りも見せない。
「お義姉さん、ありがとう」
「約束は守ってね」
「必ず守るよ」
二人の唇が合わさった。
美登利の陰阜が、力を得て大きくなったペニスに圧迫された。美登利は初めて自分の意志で、大樹のペニスを握った。すべてをこの時間のなかに埋没させてしまいたかった。何もかも忘れるには、ひたすら没頭するしかないと思った。
美登利は、自分の体に残っていた泡を肉棒になすりつけた。大樹の充足した声が耳の底に快く響いた。そのまま静かに手を動かす。
大樹はタイル張りの壁面に身をもたせかけて、熱い眼差しで美登利のすることを眺めた。美しい手だと思う。美しい手だからこそ、卑猥な光景によく似合う。
美登利は、大樹の下腹の薄い筋肉が、ピリピリと震えだすのを見ていた。両腿に力がこもり、ふくらはぎに緊張感が走る。
ああ、また出るんだわ……。
目がペニスの一点を見つめた。
「ああああっ、美登利さん!」
大樹の全身がピーンと突っぱった。
「いいわ。出していいのよ」
いつのまにか、ものわかりのいい、優しい兄嫁になっていた。そして、その時点で美登利の内面は、淫らなもので満たされていた。
それは表面には現われなかったものの、秘めたる女の構造に顕著に現われた。いま手にしている逞しいペニスを求めて、柔肉はひそかに生ぬるい愛液を分泌し、子宮はずりさがって、括約筋の収縮をうながした。
「あーっ、ああっ……」
大樹の全身に悪寒のような震えが走り、美登利の掴んでいるペニスがひときわ膨張して、ブルルルッと激しく痙攣した。そして美登利の期待通り、白いザーメンの塊りが宙に飛んだ。
美登利は心得たように、表皮をめいっぱい根元まで剥いた。極細の色とりどりの血管が一段と膨らんで、ツヤツヤの肉茎の表面に浮きあがる。美登利は次々と噴出する熱水を、まばたきもせずに見つめた。秘めたる部分が熱く疼いた。
すべてを出しつくすと、シャワーで綺麗に洗い清めた。
「お義姉さん、とってもよかったよ」
部屋で裸のまま向き合った二人は、冷えたビールを飲みながら、ときにはお互いの体をまさぐり合った。
美登利は、本当に大樹が約束を守ってくれるのなら、秘密の時間を共有するのも苦にならないだろうと考えはじめていた。夫に対して申しわけない気持ちはある。しかしこれは自分が望んだことではないのだ。夫の親族である義弟の理不尽さが招いたことであるのは疑いの余地がない。そのことが、美登利の気持ちを楽にさせた。
「あまり遅くなれないわ」
「わかってるさ」
大樹はビールを口移しに飲ませると、美登利の裸身をベッドに横たえた。
「お義姉さんが望んでいないことはわかってる。でも、ぼくは、こうしないではいられないんだ。わがままを許してね」
大樹は兄嫁の気分をほぐすように優しく耳もとで囁くと、いつ見ても見飽きることのない女体をしみじみと眺めた。ゆったりした乳房のわりに小さい乳首は、紅梅色に光って、早くも尖っている。大樹は、美登利が女としてすでに感じていることを見抜いていた。しかし、兄嫁が妥協した今、それをことさら口にする必要はない。障害もなしに快楽のときをすごせれば、それで充分であった。
乳首を吸い、乳房の感触を確かめるように愛撫すると、美登利の体がゆるやかにうねりはじめる。小さな喘ぎも聞きもらすまいと、耳をすまし、目を皿のように見開いて、大樹は微細な女体の変化を観賞した。
美登利は、今まで抵抗したり拒んだりしたのは、今日の日のためだったのではないかと思った。あの闘争がなかったなら、自分はただのセックス好きの淫乱な女でしかない。だが、兄嫁としての立場を守るために、せいいっぱいの努力をしたのは事実である。だからこそ、義弟の大樹は、自分のわがままがすべてを引き起こしてしまったのだと言ったのだ。
私はあくまでも犠牲者なの……。
美登利の内部に、ゆっくりと欲望の火がともった。嫌悪も後悔もない、純粋な性の欲求だった。
乳房から湧いた官能の熱い感情は、徐々に五体の隅々にまでひろがった。女肉の潤みは急速に増して、疼く肉唇は、そこを穿つ硬くて太いものを求めて震えた。全身が赤く染まり、肌は熱く燃えた。
大樹のガツガツしない態度に、何やらホッとしたものを感じる。
恥丘のふくらみに大樹の手がすっぽりかぶさると、美登利はわずかに腰をせりあげて、自分がもっと強い接触を求めていることをそれとなく伝えた。
指がぬるりと割れ目をくぐり、胎内に潜りこんできた。美登利の大きく開いた太腿が、またゆっくりと閉じた。狭小な膣口に埋まった中指が、窮屈な感じから逃れようと暴れた。潤滑油が豊富なので摩擦感はほとんどないのだが、くすぐられるような感触が、かえってたまらない気分にさせられる。
思わず唸りながら腰をくねらせると、大樹は優しく抜き差しをはじめた。たとえ望んでいたペニスではないにしろ、とにかく硬いものが肉路をくぐって内部を動きまわるので、快感はぐんぐんと上昇する。ハァハァと快く息が弾む。今までのように、何がなんでも拒もうという気持ちがないだけに、快感はことさら強いようにも思える。
大樹が体の位置を少しずつ時計の針の方向に回転させ、自分の下半身を美登利の顔前にまで運んだ。当然ながら、美登利の女陰を大樹はまともに見る格好になる。
美登利は剛毛を分けると、根元の部分を何度も握り直した。五本の指先からあまった肉茎の一部と亀頭が小気味よくひくついている。二つのボールをおさめた袋にキスすると、そのおかえしとばかりに、長い割れ目に分厚い舌がゾロリと這った。頭の片隅に罪の意識がちらついたが、湧き立つ性感と、燃えるような欲望の前には、その影も薄くはかないものとなった。
いつもより疼きが深く強い。それにともなって、噴きだす媚液も量が多かった。それを舌先ですくわれると、ひとりでに腰が跳ね、さらに多量の蜜が流れた。
美登利も負けじと雁首を咥え、茎をしゃぶった。次第に濃い味の粘液が先端からしとどに溢れでた。
それは夫の匂いとは違っていた。美登利にとって新鮮な味であることは確かだった。
相互愛撫は、二人のこれまでのわだかまりを氷解させていった。その分、二人は熱中し、お互いに相手をもっと気持ちよくしてやろうという努力を惜しまなかった。
大樹は、兄嫁の吐きだす愛の蜜を、音をたてて吸った。そうすることによって、奉仕する歓びをさらに膨らませた。時折り大樹は、ちらつくアヌスにも興味を示した。
美しい兄嫁にも、普通の人と同じような器官がついているのが不思議だった。大きく切れこんだクレヴァスの前と後ろは雄大で、だからこそ膨張したペニスも入るし、赤ん坊だって産むことができるのだと、大樹は妙なところで感心し、女体の偉大さに畏敬の念さえ抱くのだった。
そして、女体が男の指一つ、舌一つの動きで狂乱の舞を演じるのだから、若い大樹には面白くてならない。大樹はじっくりと観察しながら、女の秘所を愛撫した。
忍とは似ているようで似ていない女陰の動きに目を細めつつ、丁寧に指と舌を使うと、それまで大樹の下腹部に、同じように愛撫の手を差しのべていた美登利の動きが、ハタと中断することがある。そんなとき大樹は、男より女のほうがずっと感じ方が深いのだと、しみじみ思った。
とうとう美登利は、完全な受け身にまわってしまった。膨れあがった欲望には勝てないようだった。
美登利は身悶えしながら、目の前でエレクトし、いななく長大な砲身を虚ろに見ていた。
早くこれを!……
ペニスを押しこんでもらいたくてうずうずしたが、さすがに結婚生活六年余だけのことはある。股間にペニスが挿入されるまでの楽しいプロセスも捨て難い。どうせ最終的には入れてくれることがわかっているから、少し苛々しながらも、その瞬間を待つのも悪くないと思った。
女の秘部を長時間責められて狂ったようになった末、あの太くて硬いペニスが入ってくるときのことを想像すると、甘美な期待のあまり、ついつい深い吐息が出てしまう。下唇からも熱い愛液がドクドクッと溢れでるのがわかった。
「そろそろハメようか」
大樹のいやらしい言葉が体の内に芽生えた淫らな情感をくすぐる。すぐに体が正直に反応し、柔肉が痙攣したり、愛液が分泌したりする。そうした女のいやらしい実体を男の目の前にさらすのは、死んでしまいたいほど恥ずかしいくせに、反面、そんな姿をもっともっと見てもらいたいようにも思う。不思議な感情の狭間にありながら、美登利は迫りくる最後のときを待った。
「あなたのいいようにして」
実際、美登利は性急に合体しなくても、合体までのときめくような時間をもっと持ってもいいと思った。
「そう。じゃあ、好きにさせてもらうよ」
熱い息が大きく開いた秘口にかかった。美登利の全身が、次に来るものを期待してわななく。生温かいざらついた舌は、思いがけないところを狙った。アヌスの窪みを這ったのだ。
「あふっ……ハーン……」
息をつめて身構えると、舌は裂け目の縁をなぞったあげくに、膣口にズブリと突き立った。
甘美な快感に歓びの露が溢れた。大樹への憎しみを捨て去ったことで、美登利の身も心も、以前よりずっと敏感になっていた。
「ああっ、いいわァ……」
思わず口を突いた言葉だったが、美登利はあまりにも率直すぎたのではないかと顔を赤らめ、反省した。
「本気で感じてくれるなんて、ぼく、うれしいよ」
大樹も本心を、なんのてらいもなく口に出した。
「さっきの約束……」
「え?」
「アフリカへ行くまでの夢と思っていいのね。あとは忘れるって約束してくれるわね」
「ああ、そのことなら必ず守るよ。ぼくは兄貴が大好きだし、お義姉さんも大好きだから。今だって、夢を見ているつもりでいるんだよ」
その純情めいた言葉が、美登利を肉欲の世界に引っ張りこんだ。
大樹はまた姿勢を変えて、美登利の腰の下に枕を当てがうと、M字型に開いた太腿の間に腹這いとなった。
いつも額に垂れている長い髪の毛の一部が、内腿に触れた。それだけでもう、美登利の高揚した体は鋭く反応する。
指先が熱く潤んだ秘唇を左右にひろげた。膣奥に冷たい空気が流れこんだような気がした。
「みんな見える……上から下まで、全部見えてるよ」
幼児がはしゃぐように、大樹の言葉は弾んでいた。
あああ、もっと見て! 裏側までよく見てちょうだい!……
美登利は被虐的な悦びに浸って、さらに大きく両脚を開いた。
大樹は協力的な兄嫁に感謝した。膣内部の複雑な肉片の重なる様子が、さながら顕微鏡で覗いているようによく見える。露にまみれて光っている中央の窪みは、小水をほとばしらせるホールに違いない。
月面のクレーターを思わせる肉路の、狙いをつけた窪みに舌先を押しつけた。
「わっ……ああーン……」
その瞬間の女体のひきつりは、クリトリスを責めたときの反応によく似ていた。
「どうしたの? どこを舐めたの?」
くぐもった美登利の声に、大樹はどう答えていいものやら迷った。
「ねえ……どこなの?」
返事の代わりに大樹は、もう一度、舌先で小水が出る穴をチロリと掃いた。
「あっ……ああああ……」
腰がガクガクンッと大波のように揺れた。
「感じるの?」
聞かずにはいられない。
「ええ、ちょっと痛いけど……ねえ、どこを舐めたの?」
「多分……」
大樹はいったん言葉を切ってから、おもむろに言った。
「おしっこが出る穴だと思うよ」
美登利は無言だった。真実を知らされた以上、そこをもっと舐めてほしいとは言えない。
だが心得たもので、大樹は指先でぬるつく陰唇の縁をつまむと、めいっぱいひろげ、長い舌先で同じ個所をツンツンと突いた。その部分があまりにも小さいので、舌を這わせたり押しつけたりすることはできない。舌先でチロチロ掃くのがやっとであった。だからこそ、効果が一段とあがったのかもしれない。
突き刺すような痛みにも似た快感は、克也からも与えられたことのないものだった。大きく息を弾ませながら、美登利は五体を泳がせた。
大樹も思わぬ収穫に有頂天になった。
女の体ってどうなってるんだ!?……
若くて経験も浅い大樹がそう思ったのも当然である。こうなると持ち前の好奇心が頭をもたげてくる。何もかも知りたいという欲求が強く湧いた。
大樹の興味は、後ろの穴に向けられた。人間の体のなかでもっとも汚れた部分からは快感は生まれるのだろうか。肛門性交という言葉を知ってはいても、二人にとって快感があるのかどうかもわからない。
少なくとも、男の自分にはある。女はどうか。あの狭い部分に男の勃起したペニスが入るのさえ不思議なのに、快感まであるとは考えにくい。もしかすると、肛門性交の快感とは、女を奴隷並みに扱うことによるサディスチックな歓びのことなのかもしれない。大樹の結論はその程度の、あやふやなものだった。
でも……でも……。
アヌスに対する疑問はいくらでも湧いてくる。
「大樹さん……傷つけたりしちゃいやよ」
そのとき、美登利がポツリと呟いた。こういう不測の事態に追いこまれてから、美登利が大樹の名を呼んだのは初めてだった。美登利はそれだけ気を許していた。それは、秘密の共有者となったことを自ら認めたことを意味していた。
「お義姉さん、ぼく、入れたくなっちゃったよ」
大樹は、年上の女に甘える自分をはっきりと感じていた。そして、それはいい気分のものだった。
「好きにしなさい」
美登利の声は優しかった。
「お義姉さんもしたくならないんじゃ、いやだ」
「そりゃあ……」
美登利にとって、次に発する言葉は、きわめて重要なひとことだった。
「……私だって普通の女ですもの。いろいろされたんだもの、したくないといったら嘘になるわ」
やはり直接的な言い方はできない。婉曲な表現で、美登利は自分の本心を打ち明けた。
大樹は満足した。少なくとも兄嫁は自分の川岸にまでたどり着いてくれたと思う。これまでは、いくら体を自由にしても、心は対岸の遠い場所にあった。
大樹は慈しむように女陰を愛撫した。歓びを与えることが自分の歓びなのだ。
大樹の痒いところに手の届くような責め方は、美登利を次第に悩乱の淵へと追いつめていった。美登利は今や、欲望を満たしたいと願うただの女になっていた。
「なんだかいつもと違うの……変よ。どうしよう。ねえ、怖いみたい……私、どうにかなってしまうわ」
大樹は兄嫁の体に没頭した。強制的に抱いた今までのセックスは、今日のための前哨戦にすぎないと思った。
この日を待っていたんだ……。
大樹は自分の高まる欲求をコントロールした。兄嫁を狂喜させようという大前提があるから、大して困難なことではなかった。幼児が一番美味しいケーキを最後まで残しておくように、大樹もまた、自分の歓喜の爆発を最後の最後までとっておくことにした。
美登利は、自分の性に対する欲望の深さに驚いたものの、もはやそれをセーブすることは不可能なところまで追いつめられていた。夫の克也から与えられる歓びとはひと味もふた味も違う快感に、最初のうちこそ戸惑いを覚えたものの、体がすぐに馴染んでしまうと、美登利は最大級の歓びを得たいと痛切に思うようになった。真実の女の性は、決して愛してはいない相手であるにせよ、男の逞しいペニスを求めて妖しく疼いた。美登利の脳裏にあるのは、自分の牝肉を貫くペニスの幻影だけであった。
乳房が大きく張りだし、乳暈から突出した乳首は大粒の真珠さながらに、ツヤツヤと輝きを放つほど膨張した。無意識のうちに、美登利の指先はそこに戯れていた。
自分の指が、まるで心得顔の男の指のように躍って、次々と快感を引きだした。大樹にまかせっきりの下腹部は、それ自体が溶けてしまうかと思うほど熱く火照り、すべての粘膜は嬉々として蠢いた。
男の舌と指は小さな女陰の隅から隅をくまなく走りまわり、その反応の強弱を確かめながら、巧みに快感を掘り起こしていった。それは大樹が女の体に詳しいからというわけではなく、ただひたむきな熱心さがそういう結果をもたらしたのだった。
「あああっ、もう駄目よ」
美登利は弱々しく呟いた。駄目という言葉の意味を解しかねた大樹は、秘液を流しつづける美登利の淫裂から、ベトベトに濡れた顔をあげた。
「駄目って?」
「もうイキそうなの」
半ば泣いている声を耳にした大樹は、内心で快哉を叫んだ。
とうとうやった……。
そういう思いが強い。
「ぼくもだよ、お義姉さん」
大樹は我慢の限界を口にし、思わずクリトリスにむしゃぶりついていった。
「ひいーッ!……駄目……本当にイッちゃうわ!」
美登利が腰をひねって乳房を波打たせた。
「入れてェ……入れて欲しいの」
その言葉を発するときの美登利は、いかにも恥ずかしそうだった。
大樹の歓びは倍加した。目頭が自然と熱くなっていた。
どうしてこんなときに涙なんか……。
大樹はいそいそと中腰にかまえた。枕を腰の下に敷いたままの美登利の下腹部は、「へ」の字型に大きくせりだしていたから、飛びでたクリトリスからアヌスの皺まで、すべてが一目で見渡せた。
ペニスをあてがうと、それが儀式のはじまりのように、大樹は丸味を帯びた亀頭で淫裂を優しく入念に擦った。フーン……フーン……という美登利の心地よさそうな喘ぎがなんとも快い。ジュクジュクと湧く淫水から、強い女の匂いがたちのぼる。
「いいわァ……いいわァ……とってもいいの」
単調な言葉であったが、それゆえに、かえって美登利の快楽の深さを物語っていた。
大樹は熱い目で、自分の行為に対する兄嫁の反応を眺めた。幸せという実感が全身を包んだ。
「あああっ、あなた!」
美登利がとても堪えきれないという風情で大樹の腰に両手をまわし、脚と脚を絡ませて強く引きつけた。豊かな潤滑油の助けを借りて、極限にまで膨張した若者の肉棒は、一気にズルッと胎内を突き刺した。
「あーっ、あーっ、あーっ……」
下から美登利が腰を弾ませ、五体を「へ」の字に軋ませて躍動した。本能的に、大樹がそれに合わせて大腰小腰を使った。淫水と粘膜が微妙な音を作りだす。
「して、して、もっとして! あああっ、いいの。たまらないわ。そうよ! 奥に……もっときつく……イッちゃいそう……ほら、こんなに……してェ……イキたい……イキそうなの! もっと……あっ、あっ、ハーン」
美登利の口からもれる悩ましい喘ぎは、まさしく挑発の声にほかならなかった。ここを先途とばかりに、大樹は全力をつくして抜き差しを繰りかえした。
「うっ、うううう……」
美登利の体が弓なりに反りかえった。肉棒が万力のような力でめいっぱい絞りあげられた。
「かけて! 今よ。いっぱいかけて!!」
満を持していたペニスの先端が開くと、胎内はたちまち男の熱水で満たされた。第二、第三とつづく噴射で、美登利は新たな快感の渦に呑みこまれ、とうとう意識を失った。
次第に体から力が抜けていくのを意識しながら、大樹は男としての自信がフツフツと湧きあがってくるのを、はっきりと感じとっていた。
第八章 忌わしき牝獣
大樹と美登利の残り少ない愛欲の日々は、すさまじいまでの貪欲なセックスの連続であった。二人はお手伝いの梅子の目を盗んでは抱き合い、それが日常の生活の一部となった。
ただ、いくら妥協したとはいえ、美登利は姑や夫のいる夕食の席で大樹と顔を合わせると、ひそかに心の痛みを感ぜずにはいられなかった。夜ごと克也に求められると、美登利は以前とは明らかに変貌し、夫を驚かせると同時に、こよなく歓ばせたりもした。
以前にもまして、美登利は感じやすい女になっていたし、激しい積極的な女にもなっていた。この変化は、夫たる者にとっては大いにうれしいことでもあった。
弟との不倫について何ひとつ知らない克也に対する、美登利のせめてもの償いの気持ちが、そうさせたのかもしれない。
大樹にも、変化は当然のように現われた。そのことを誰よりも敏感に嗅ぎとったのは、忍だった。
初めの頃、大樹との交際に本気でなかった感のある忍ではあったが、何度か肌を合わせるうちに、大樹の急速なテクニックの進歩を見抜いた。この世代にありがちな、単なる遊びのつもりであったつき合いに、忍は本気でのめりこんでいった。二十一歳という年齢が、いつまでも遊び感覚ではいられないという、大人への脱皮に目覚めさせたのかもしれない。
忍は大樹に対して、愛を感じはじめていた。それには、大樹には知られたくない大きな問題をクリアしなければならなかった。
忍はひそかに悩んでいた。その忍の微妙な心身上の変わりようを、敏感に感じとった人物がいた。忍より一年下の女子大生、草野杏里だった。
忍は、同じ大学なのにわざわざ杏里が手紙で、『是非会いたい』といってきたことに、大いなる警戒心を抱いた。呼びだされた場所は杏里のマンションである。手紙の文面が簡単だっただけに、かえって無気味だった。
長者丸の閑静な場所に建つマンションの前に立った忍は、威圧感に目のくらむ思いがした。最上階の大きなスペースを占有している杏里は、地方の県会議長を父に持つわがまま娘だったが、忍には従順そのものだった。それには深いワケがあったのだが……。
エレベーターをおりて杏里の部屋のドアの前に立った忍は、何度か大きく深呼吸をした。かつて愛と親しみをこめて何度も訪れたときの気持ちとは、まったく違った気分である。
ドアチャイムを押すと、まるでずっとドアの向こう側に立っていたかのように、杏里がすぐにドアを開けた。
「こんにちは」
いつもの目の色と違う……と思いながら、忍は自然に言った。
「来てくれないのかと思いました」
杏里の声にいつもの明るさがない。表情もどこかかたかった。
「どうぞ」
杏里は先に立ってダイニングキッチンを素通りし、一番奥の勉強部屋兼ベッドルームへ忍を案内した。整頓されたベッドの上には、二枚のネグリジェが無造作に置かれている。
「ちょっと暗いわね。明るくして」
忍の要請に杏里は尖った声で答えた。
「いやっ……私、ずっと泣いていたから、瞼が腫れぼったいの。目も赤いわ」
「悲しいことでもあったの?」
さりげなさを装って、忍が聞いた。
杏里がまともに忍を見たのは、このときが初めてだった。
「…………」
杏里はいきなり忍の胸にすがりついた。
「どうして最近、私を避けるんです!」
早くも涙声になっていた。
忍は、なぜ杏里が呼びだしをかけたか、この時点ではっきりと悟った。
彼女は何か気づいたのかもしれないわ……。
気づかれたとしたら、今の段階では百瀬大樹のことしかない。
「そりゃあ……いろいろあるのよ。そろそろ就職活動もはじめないといけないし……売り手市場だというけれど、テレビ界には就職希望者が殺到してるわ。特に私の希望するアナウンス部門は、数人の採用に何千人もの人が応募してるんですもの。うかうかしていられないの」
「それはわかってます。じゃあ、せめて今日はゆっくりしていってくださるのね」
忍は内心ホッとした。大樹のことを口に出さないところをみると、大樹の存在について何も知らないのかもしれないと思った。だが、甘い考えは危険だ。
忍は卒業の前に、杏里との過去については、きれいさっぱり清算するつもりでいた。また、そうでなければ将来マスコミの世界に身を投じた場合、どこでどんな形でスキャンダルとして噴きでてくるかもしれない。
「ねえ……私たちのことだけど……」
忍はきっぱりしたことを言うつもりで、言葉を探した。せっかくの機会だから、今ここで性的な関係を断固として断ちきることを宣言したほうがいいかもしれない。だが、忍の意図を読んだのか、一歩早く杏里が機先を制した。
「今日は何も聞きたくありません。ともかく、私とできるだけ長い時間いてください」
忍のブラウスのボタンに、杏里の長い指が絡みついた。一度はそれを制しかけた忍だったが、杏里がどの程度のことを知っているかを探るために、あえてされるがままになって、じっとしていた。
それを承諾と受けとったのか、杏里はいそいそとボタンをはずすと、ブラウスを脱がし、ブラジャーをはずした。
乳房の谷間に顔を埋めながら、まるで親を慕う小犬のように、クンクンと鼻を鳴らして匂いを嗅いでいる。
私たち、蜜月時代もあったんだわ……。
忍は、杏里が入学してきた頃のことを甘い感傷に浸りながら思いだしていた。
春の大学野球のリーグ戦を見た帰り、優勝に酔った学生の大半は繁華街に繰りだした。そのとき、大衆酒場の同じテーブルに座ったのが、忍と杏里だった。
大学に入学した初めての年に優勝したことで、新入生たちは雰囲気に呑まれ、飲めない酒を飲んでいるうちに、前後不覚になる者が続出した。草野杏里もそのうちの一人であった。
同じ女子学生のよしみで、忍は杏里をマンションにまで送りとどけた。今いるこの部屋である。
その頃、ある男との間に亀裂を生じていた忍は、男性不信に陥っていた。それに、久しく肌を合わせていない淋しさもあった。忍は半ば眠りかけている杏里に、つい愛撫の手を伸ばしてしまった。
その日限りのつもりだったのが、思わぬ杏里の反応で、とうとう今までつづいてしまったのである。
宝塚歌劇に憧れていたという杏里には、もともと女に対する愛の素質が秘められていたのかもしれない。
「おねえさま、私のも脱がせて……」
杏里は忍からすべての衣服を剥ぎ取ると、その豊かな胸もとにキスしながら訴えた。忍は、現在の自分のことについて、杏里がどの程度まで知っているかを探るつもりだった。杏里をとことん歓ばせて、その段階で聞きだそうという魂胆を胸に秘め、杏里の望むままにタンクトップを頭から引き抜いた。
まだ少女の面影を残している杏里の体は、女子の体操選手のように硬質な感じがするものの、愛撫の反応は驚くほど鋭い。
杏里ははじめからブラジャーをしていなかった。乳首は小さいながらももう尖っている。これからの忍との愛のひとときを想像しただけで、勃起してしまったのである。
キュロットスカートを足もとから脱がせると、まるで細紐のようなパンティをはいていた。
「大胆なパンティね」
鼠蹊部を指先で撫でた忍は、杏里の恥毛の一部が、レザーでカットされているのに気づいた。ざらつきが強く感じられる。
「剃ったの?」
「ええ……水着が極端なハイレグなの。はみだすとみっともないでしょう」
「でも、あなたのあそこの毛、そう多くないじゃない」
忍は、切れこんだ縁から人差し指をそっと差しこんだ。淡くはかない茂みが触れる。それを通り越し、指先はぬめっとした肉唇をめくった。もうベットリと濡れている。
「あなた……私が来る前に、ひとりでしてたんじゃない?」
この言葉に、杏里は真っ赤になって小さくうなずいた。
「だって……淋しくてたまらなかったの。おねえさまのことを思いだしていたら、どうしても我慢できなくなっちゃって……」
「クセになるわよ」
「だって、それを教えたのはおねえさまじゃない」
「…………」
確かに杏里の言う通りなのだ。「私がいないときには私のことを思いだしながらこうするのよ」と、忍はいつぞや、ご丁寧にも杏里に指の使い方をしっかりと教えてやったのだ。嘘か本当か知らないが、それまで杏里はオナニーをしたことがないと言っていた。そういうウブなところに、遊び馴れていた忍が興味を抱いたのも事実である。
教えこむ……当時の忍には、杏里は格好のオモチャだった。だから、杏里から今になって一方的に逃げようとするのは、自分勝手すぎると非難されても仕方がない部分もある。
忍は、食いこみそうなパンティの中心を、そっと指先で掃いた。杏里はそれだけでふらついた。すぐさま薄い布地に、ぬるついた愛液が滲んだ。それをスースーと撫でる。
「いやっ、ちゃんといじって……早く脱がせて」
もどかしそうな杏里の声を聞きながら、忍は、いつ大樹のことを持ちだそうかと考えた。
せっかちになることもないわ……。
忍は立ったままの杏里の足もとに座りこむようにしてパンティを脱がせた。
「指でいじっていただけ?」
「…………」
杏里が返事しないところをみると、きっと何か特殊なものを使っていたに違いない。それを聞きだすのも、そして相手が恥ずかしがりながら答えるのも、いってみれば快楽を深めるための前戯なのだ。
忍も、杏里も、それを百も承知している。
「ね、ちゃんと答えるのよ。黙っているなら、何もしてあげないわ」
「いやっ! して、してェ」
「じゃあ、正直に告白するのね。さあ、隠さずに言いなさい」
杏里は内心、ゾクゾクしていた。どうせ言わなければならないことなのだが、それを口にするまでのプロセスが、杏里には震えるほど楽しい。
「ベッドの下を見て」
「何があるの?」
「だから……見て」
二人は絡み合うようにして、ベッドサイドに近寄った。
忍はマットの下に手を入れた。硬いものが当たった。それを無造作に引っ張りだした。
「!?…………」
思わず目を剥いた。サランラップを幾重にも巻きつけた大根である。それを二十センチほどの大きさのペニスの形に作ってある。
「何よ、これ……アレがあるじゃないの」
忍がアレと言ったのは、二人でよく使うシリコン製の擬似ペニスのことであった。
「痛いでしょうが。こんなに硬いのを使ったりしちゃ……」
「いじめたかったの」
「え!?」
「だって、私のアソコ、やたらにおねえさまを恋しがるんですもの。だからいじめてやったの」
「傷つかなかった?」
「ふふふ……」
「何よ。急に笑ったりして、変な子」
「痛いには痛いけど、とても気持ちよかったわ」
「まあ……」
呆れながらも、忍はハタとあることを思いついた。
「それはつまり、あなたの体もそろそろ本格的に男を欲しがっているということなのよ。きっとそうだわ」
「いやっ、いやよ! 私、おねえさまだけでいい。ねえ、愛して! 今日は死にそうになるまで愛して!」
杏里が体をぶつけてきたので、二人は抱き合ったままベッドに崩れ落ちた。裸のままの二人は唇を貪り合いながら、お互いの乳房と乳房、女の敏感なふくらみとふくらみを擦りつけた。
細い少年のような体の杏里は、恥骨が大きく張りだしている。それを武器にして、忍のクリトリスとその周辺を入念に摩擦した。
忍の快楽曲線は急カーブを描いて上昇した。すっかり溺れてしまおうという気になっていた。こうなると忍は歯止めがきかない。
「いいわぁ……とてもいいの」
嗚咽まじりの声が終わらないうちに、乳房が強い力で吸われた。杏里の体が、忍より首ひとつ分だけずりさがって、乳房には顔が貼りついていた。
杏里はいつもなら受身にまわるのに、今日に限って積極的だった。忍は立場が逆転したことに戸惑いながらも、今受けている享楽の愛撫を拒むことはできなかった。
杏里の膝は、ピタリと忍の膣口に当てがわれていた。杏里が膝頭でこねるようにして、忍の股間を刺激した。
「ああっ、あああああ……ハーン……」
忍はいつしか、相手が杏里でなく、男であるような錯覚に陥っていた。あまりにも甘美な快感に呑みこまれて、おびただしい量の愛液を垂れ流した。
杏里は、ぬるついた膝頭を巧みに使った。強弱のリズムをつけて揉みこむと、ヌルヌルの量はますます多くなる。
「おねえさま、どう?」
「いいわ! たまらないの……ああ、どうしたの? どうしてこんなに上手なの?」
杏里は、嫉妬がそうさせたことを知っていた。絶対に忍を手放したくない気持ちが杏里を駆りたてた。
忍の態度の急変に気づいたのは、最近のことである。学内でも美しい容姿を誇る忍には、幾多の男たちが寄ってくる。だが、女の目から見て、忍が本気でそれらの連中を相手にしていないことはよくわかっていた。
おねえさまは私ひとりのもの……。
たとえ気まぐれに忍が男たちといっときの快楽の場を持ったとしても、杏里はいつも悠然とかまえていた。
ところが女の勘で、明らかに異変が起きたことに気づいたのである。
杏里は用心深く忍の動向を見守った。ところが、学年も違うし受ける授業も専門課程と教養課程の差があるから、一日中、見張ることはできない。とうとう杏里は、本職の興信所を利用した。そしてついに、忍が百瀬大樹という同級生とただならぬ関係にあることを突きとめた。それも、遊びで肌を合わせるだけではなく、忍のほうがかなり熱をあげていることまで調べあげたのである。
杏里はそれを忍に言うべきかどうか迷っていた。できることなら穏便に、二人の仲を復活させたい。こじれたりしたら、修復は不可能なような気がした。
若いだけに杏里は迷い抜いた。
「ああああ……」
忍が、杏里の嫉妬まじりの愛撫に悩ましい声をあげて身をよじった。
さらに杏里がずりさがった。乳房から離れたくなかったが、その分、下腹部を攻めることで帳消しにした。
忍の股間を間近に見た杏里は、果肉が以前よりもはるかに女っぽく練れているような気がした。紅鮭色も鮮やかな柔肉は、艶っぽく息づいていた。割れ目を指先でひろげた。奥に溜まっていた濃厚な蜜が、トロリと外に向かって溢れでた。
それを舌ですくった。心なしか、粘り気も味も以前のように淡白ではなく、しつこい気がする。
男のせいだわ……。
そう思うと、頭にカーッと血が昇った。男の醜悪な太いペニスがここを突き刺す場面を想像すると、ヘドを吐きそうになる。舌をすぼめて挿入した。ぬめりが多いので、先端の部分で陰唇をかき分けながら、胎内に潜ってゆく。
「ああっ、あああーッ!」
忍が悩ましく腰を漕ぐ。
男に合わせて、きっとこんなふうにしているに違いないわ……。
杏里はますます嫉妬にかられて舐めまくった。濃い媚液を恥ずかしげもなく流している忍が憎らしい。
杏里はマットの下から、さっきの大根ペニスを取りだした。それをいきなり割れ目に押しこんだ。
「うわわわッ!」
忍は硬い異物が侵入したことに仰天した。しかしそれもほんの一瞬で、おびただしい溶液を浴びせて大根を歓迎すると、まるで男とセックスするように腰を躍動させた。
忍の行為は、ますます杏里を苛立たせた。杏里の脳裏に、ペニスを女陰に咥え、乱れに乱れてよがり泣く忍の姿が、鮮烈に浮かびあがった。杏里は乱暴に抜き差しを繰りかえした。腹立たしい思いが強くなるにつれて、抽送のスピードが速まった。
それはかえって、より強烈な快感を忍にもたらした。
「ああっ、イキそう!」
忍が大きく弓なりに反って、恥丘を持ちあげた。大根をくるんだサランラップはぐずぐずに濡れていた。
「イクわ!……イッちゃう!」
眉根に深い皺を寄せて忍が叫んだとき、杏里は手にした大根ペニスを深々と突き立てた。
子宮口がひしゃげ、膣壁が摩擦されると、括約筋がキュンッと締まった。手にした大根が抜けなくなるのではないかと思ったくらい、締めつけは強かった。ようやく痙攣がおさまり、裸身が平たくなるのを、杏里は複雑な思いで見つめた。男に抱かれてオルガスムスを迎えるときは、もっと狂ったようになるのではないか。
杏里が手を離すと、割れ目に突き立っていた手製ペニスは、ゆっくりと抜け落ちた。その後から、トロトロと流れでた愛液を吸引しながら、杏里は嗚咽した。なぜ急に悲しくなったのか、自分でもよくわからない。
忍は体が平静さを取り戻すと、今度は私がしてあげる番だわとばかり、半身を起こした。座ったまま、杏里の涙に濡れた顔に近づいた。
涙を目尻からすべて吸い取り、ゆっくりとあお向けにする。
ねえ、あなたは百瀬大樹のことを、どれくらい知ってるの?……
問いかけてみたいが、ひょっとしたら何も知らないということも有り得る。そうだとしたら、よけいな質問はとんだヤブヘビということになる。
忍はベッドの隅に転がっている杏里の手造りペニスを見て、カーッと赤くなった。あんなもので感じてしまう体が愛おしい。一瞬、大樹の面影が浮かんだが、すぐに消えた。
忍は勝手知ったるベッドの下の引き出しを開けて、いつも使用しているシリコンのペニスを取りだした。輪ゴムをいくつか巻きつけ、その上に手際よくコンドームをかぶせて、段差を作った。ちょうど俵がナワでくびられているのに似ている。
杏里が忍の仕事を、ポーッとした顔で見ている。
杏里は、さっきの忍の激しい反応を見ていただけで、股間を洪水さながらに濡らしていた。嫉妬の感情が複雑に影響していたことは否めない。
忍はこれ見よがしに、コンドームで包んだ擬似ペニスをペロペロと舐めた。
「あああ……」
呻いた杏里が、淫らがましく左右に脚を開き、指先で陰唇をひろげた。膣の奥でキラキラと露玉が光る。
すぐに忍が、硬い擬似ペニスの先で女肉の狭間をソフトに掃く。二枚貝の触手のような陰唇の裾が、ぬめぬめと動いて咥えこもうとする。それは杏里の意志とはかかわりなく、下腹部が独立して勝手にやっていることだった。
忍は次に、大きく飛びだしたクリトリスを指でこねた。二カ所を同時に攻められて、杏里は狂ったように身悶えした。
「押してェ……もういやっ! ちゃんと奥に入れてェ!」
「フフフ……このくらいでいいかしら?」
忍はニヤニヤしながら半分ほど押しこんだ。陰唇がプアーッと膨らんで、隙間からトロトロと淫水がこぼれた。
「もっとよ……全部、奥までみんな入れてェ!」
切なそうに訴える杏里の要望通りに、忍は手にした硬い異物を根元まで押しこんだ。
「当たるわ! 当たってる!!」
圧迫された子宮口の周辺から、はじけるような快感が火花となって飛んだ。
忍はすぐに、亀頭を形どったくびれの部分まで引き抜いた。
「いやっ……いやァッ!」
抜かれることを拒むように、杏里が忍の手首を掴んだ。
「入れて欲しい?」
「して!」
忍はまたまた最深部まで突っこむと、ピタリとはまった膣口を軸にシリコンのペニスをスリコギのようにぐるぐるとまわした。膣口が前後左右に大きく歪んだ。
「きついわァ……ああっ、きついの……」
「痛いのならやめてもいいのよ」
「違う! いいの……でも、いつもと違うわ……ああっ……あああ……」
本物のセックスのように、杏里は激しく腰をローリングさせた。しかも自分の手で、剥き身のように赤く飛びだしたクリトリスを一生懸命にこねている。
噴きこぼれる淫水の量が一挙に多くなると、なんともいえない独特の性臭があたり一面に漂った。
忍はタイミングを測って質問を浴びせた。
「あなた、私を疑っているわね」
杏里の動きが緩やかになった。だが返事はない。
忍の手のスピードが速まった。杏里を襲う快感はぐんぐん上昇した。
「怒って聞いてるんじゃないの。そりゃあ、あなたも知ってるように、私にはいろいろなつき合いがあるわ」
さりげない話の最中にも、忍はいっときたりとも手を休めない。
「疑っているのは、あなたの目を見ればわかるわ。私たちのおつき合い、とても長いものねえ……どう? 当たっているでしょう」
忍の口調は、穏やかななかにも、どこかに凛としたところがある。しかも、性感をあおりたてる手は動きっぱなしであった。
「私……知ってるの」
いかにも切なげに杏里は告白した。
「おねえさまが、百瀬さんていう人と関係してるってこと……」
だが、興信所で調べたとはおくびにも出さない。もしそんなことを告白して忍からソッポを向かれたら、という恐れがあるからだ。
「仕方ないのよ」
忍は内心、やっぱり知っていたんだ……と舌打ちしたい気持ちだったが、さりげなさを装い、前よりもいっそう愛撫の手を激しくした。
杏里の体が、嵐の海原にもまれる小舟さながらに揺れた。女陰が噴きだす快液は、途絶えることがない。
「心配しないでね。いつどんなときだって、あなたを忘れたことなんかないんだから」
初めにあった疑念が完全に消えたわけではない。けれども執拗に快楽を与えられたことによって、杏里の気持ちは自然と和んだ。
「おねえさま……好きっ……大好きよっ!」
両手にひろげた指の爪でバリバリとシーツをかきむしりながら、杏里は求愛の言葉を口にする。
「ねえ、剃ってもいい?」
忍が唐突に聞いた。
「え!?」
「あなたの可愛らしいプッシーを見ていたら、剃ってみたくなったの。ほら、これを全部剃ったら、もっともっと可愛くなるわ」
忍はアブノーマルな秘密を持つことで、二人の絆がもっと深くなるというニュアンスをこめて言った。身も心も快楽の波の上でふわついていた杏里は、恥ずかしいという思いと同時に、とてもうれしくも感じた。
「おねえさま、剃ってェ」
膣口から太いシリコンが引き抜かれると、奥に溜まっていた淫水がドッと噴きこぼれた。
「いっぱい出したのねえ……フフフ」
忍は男のスペルマを思いだしながら、そのときに言うのと同じ言葉を吐いた。
「だってェ……だってェ……」
杏里が顔だけでなく、全身を朱に染めて大袈裟なゼスチャーで恥ずかしがってみせる。
忍は、これでひとまずは大樹のことを杏里の頭から追い払えたと、ホッとした。
「ねえ、バスルームに行こうよ」
「ええ…」
立ちあがった杏里の内腿に、膣から溢れた愛液が滴った。忍はそのとき、初めて生理を迎えた学校六年生の当時を思いだしていた。
色が違うだけ……。
実際には、経血と愛液はまったく別のものだ。けれども今の忍には、女になりかける証しである経血と、女として熟して膣からもらす愛液が、どちらも生々しい女の一面を見せるという点で、似たものに思えた。
バスルームに入る前に、忍は黒革の腰ベルトを装着した。それには黒光りした擬似ペニスがついている。さっきまで使用していたシリコン製のものとは違って、怒張したペニスそのままに、ゴツゴツと血管状のものが浮きでている精巧な代物である。
それを見ただけで、杏里はフラフラとめまいを覚えていた。それが自分の疼く柔肉をかき分けて、グサッと入ってくる強烈な感覚を思うと、もうひとりでに秘めたる部分が妖しく震えだしてしまう。
「おねえさま。ほんとに全部剃ってしまうの?」
わかっていることをわざわざ聞くのは、やはり言葉の遊びを杏里自身が楽しんでいることにほかならない。
「ええ、そうよ。赤ちゃんのようにツルツルにしてあげる」
忍も言葉の遊びだと承知しているから、わざと強調して言ってのけた。
「ああ、どうしよう」
「どうもこうもないわ。脚を思いっきり開いて」
「はい……これでいい?」
すべてを知りつくしている相手の前でも、秘部をさらけだすのには抵抗がある。片手で恥丘を隠しながら、杏里は少しずつ両脚の間隔をひろげていった。
忍は邪険にその手を払い、無造作に泡をなすりつけた。無造作のようでいて、実は巧妙に指先を蠢かした。
クリトリスを圧迫された杏里は、短く呻いてブルルンッと腰を震わせた。
「あっ、動いちゃ駄目……怪我しちゃうわよ」
忍は、女性専門の簡便剃刀を、そこだけ余分な肉を盛りつけたような陰阜にあてがった。
サーッと杏里の全身に緊張感が走った。剃刀を引くと、淡い恥毛帯の一部が、新雪の上にできた新しいスロープのように、白く露出した。
「あああっ……」
嬌声とも溜め息ともつかない声をあげて、杏里はトクトクと淫水を垂れ流した。新たな興奮が杏里を襲った。
忍は、露わになったクリトリスに刃先を近づけた。
「これ、切り落としたら、どうなってしまうのかしら?」
「あああっ、おねえさま……」
小刻みにクリトリスが震えている。
慎重な手さばきで、忍は残りのすべての恥毛を剃り落としてしまった。
二人は、そこだけひときわ白いヴィーナスの丘を、熱い目で見つめた。
「私とおねえさまだけしか知らない秘密なのね」
感きわまったように杏里が言うと、もう待ちきれないとばかりに、杏里は黒い擬似ペニスを握り締めた。その目は熱く潤み、早く入れてと無言のうちに訴えていた。
「後ろを向いて!」
突然、忍の言葉が男っぽく変調した。
「は、はい……」
震え声で返事をし、杏里はバスタブの縁に両肘をつくと、忍にヒップを向けて突きだした。
「ふふふ……黒い毛が一本もないから、赤い色が目立つわね」
「赤い?」
「オマ×コの肉や肛門のことよ」
「ひどいわ。おねえさまァ」
杏里は決して非難しているのではなかった。むしろ、うれしくて体の震えがとまらないほどだった。汚い言葉に杏里は明らかに感じていた。
腫れぼったくめくれかえった粘膜の奥は、しとどに愛液で濡れ、柔肉全体がまるで呼吸しているように蠢動を繰りかえしていた。
忍は擬似ペニスを、パックリ開いた陰唇の奥にいきなり押しこんだ。
女だけが知る摩擦感と、切り裂かれる瞬間の痺れに杏里は酔いしれ、「ヒイヒイ」と露骨なよがり声をあげて悶え狂った。
忍は、自分がそうされることを望みながら、男さながらに抽送した。女のよがり声を聞くうちに、忍は大樹の太くて長大なペニスを思いだしていた。腰をめまぐるしく漕ぎながら、忍もまた割れ目から淫水を滴らせた。
「ああっ、くるわ……おねえさま、もっとして!……そう……あああっ、きちゃう……して、して! イクわ、イク……イク、イクイクゥ--ッ!!」
杏里の声は、忍の潜在的な欲望の声でもあった。忍は痛切に、したいと思った。杏里の声を遠くに聞きながら、忍はひたすら腰を打ちつけるのだった。


