ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌 第七章 忘れじの蜜 (7/7)
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第七章 忘れじの蜜
1
温泉旅行から二週間が過ぎ。
智は、日々平穏を妻と共に過ごせることに、何よりの喜びを見出していた。
(咲美は今日も朝、営業の仕事に出る僕を笑顔で送り出してくれた)それから娘の智美を幼稚園へと送り届け、炊事以外の家事を朝の内に片づけて、昼前にはパートタイマーとしてスーパーストアに出勤する。
(一日中動き通しで、なのに笑顔絶やさぬ妻の頑張りに報いたい一心で、僕も身を粉にして働く)彼女が一度出て行ってしまう前と、何ら変わらない平穏で、平凡な日々。当たり前に感じていたそれこそが掛け替えのないものだったと、今なら自信をもって言える。
それもこれも、禁忌の妄執に起因する騒動があったればこそだと、日が経つにつれて、前向きに捉えることもできるようになっていた。
旅行後の二、三日は気まずく、あまり夫婦間での会話もない時間が続いた。それを思うと余計に、夫婦つつがなく過ごせる幸せを実感する。
温泉旅行は思わぬ副産物も生んだ。夜、ベッドで咲美に時々悪戯っぽく尋ねるのが、この上ない昂奮剤として作用したのだ。
「怒んないで、答えてくれる?」
「うっ、うん、なぁに?」
妻はいつも決まって冒頭、躊躇いがちだ。また例の話かと呆れつつも、その後に訪れる我が身の変調を自覚しているだけに、早々に羞恥で頬を染めているのが常だった。
「旅行の夜、あいつの部屋で明け方までずっと寝てたって。本当に本当?」
すでに定型句となった台詞を、今宵も夫の唇が紡げば。
「もうっ、またそれ? ほんとに酔い潰れて寝てたんだからねっ」
妻もまた、お決まりの返答。そして決まってもじもじと裸身を摺り寄せてくる。
彼女の嘘ににじむ気遣いが、嫉妬と愛情を同時に揺り立てるのも、お決まりだ。咲美を求める気持ちが天井知らずに高まり、愛撫とピストンにも熱が入る。
咲美も、羞恥を煽られて、平素以上の乱れぶりを披露する。忌まわしい記憶を忘れさせてと請うように、夜毎熱烈に夫を求めてくれた。
結果的に夜の営みの回数は増え、密度も上がり。「そろそろもう一子」なんて話も飛び出すほど、夫婦仲は良好を保っている。互いの愛情を再認識し合えた分、より絆が深まったといっても過言ではない。
その一方で、一人になれる時間があると、藪沼より譲り受けたあのDVDを再視聴せずにはいられなかった。
(これを観ることで、僕は咲美を失う恐怖を忘れずにいられる。より強く咲美に恋い焦がれる男で在り続けられる)一夜だけの過ち、という安心感があればこそ。歪な恍惚に耽る時間は、妻と実際に睦む時とは別種の悦びを孕む。
(このままで、いい。これで)
よそとは少し違うが、自分たちなりの幸せの形を、ようやく手に入れられた。妄執に、一番良い形で折り合いをつけられたのだ。それはもう二度と揺るぐことはないと、思っていた。
2
日曜日の朝。
「じゃあ、行ってくるね」
「いってきまーす」
実家に向かう妻と娘を、パジャマ姿で送り出す。本来は親子三人で伺うはずだったのだが、風邪を引いてしまい、急きょ一人で留守番することになってしまった。
「ちゃんと寝てなきゃダメだよ。……夕方には戻るから」
さっきまで「やっぱり実家行きは取りやめて、看病した方がよくない?」と気遣ってくれていた妻。彼女の念押しに頷きながら、愛されている実感を噛み締める。
「大丈夫だって。子供じゃないんだから」
──すぐに元気になって、また明日から君と智美のために頑張るから。
照れ臭くて言い出せない台詞の代わりに、眼差しと微笑に恋慕を乗せて伝えた。
「うん。じゃあ」
頷く咲美も、安堵したような笑顔で応じる。
「じゃあっ」
母を真似る娘の仕草が愛おしい。
大切な二人が、玄関から去り、最寄り駅の方向へ歩いていく。その背を見送りながら、熱のせいではない温みが心身を満たすのを自覚した。
咲美の実家までは、電車を使っても片道一時間ほど。
(咲美のご両親、智美に会うといつもべったりで、なかなか離さないからな)その溺愛ぶりを鑑みるに、咲美は夕方には戻ると言ったが、きっと引き留められるだろう。もしかすると夕飯を食べてくることになるかもしれない。
(いや、咲美は)
帰ってきてくれる。約束を違えるのを厭う性格であるし、それに──。
(今晩も、約束してるもんな)
排卵周期を確かめた上での、約束だ。智美に弟か妹を、と以前藪沼の細君──桂子が口にしたことがあったが、それが現実となれば、家族の今後はより明るい。確固たる絆がまた一つ増えることで、睦まじき日々をより楽しく過ごせる。
確信を得て戻った我が家は、一人きりではあったが、暖かかった。
まだ妻と娘の痕跡が多々残る室内を見渡し、歩む間も。看病してくれていた妻の匂いが濃く残る寝室のベッドに入る際も。一縷の不安もなく、ただただ胸に詰め込んだ幸せに浸っていられた。
──昼。物音がした気がして玄関に出る。誰もいなかったが、ポストの蓋が持ち上がっているのに気づき、中を確かめた。
出てきたのは、茶色い包み。触れると、ろくに梱包もしてないようで、中身の硬い感触がダイレクトに伝わった。これが引っかかって、ポストの蓋が閉まらずにいたのだ。包みの表面に書かれた宛名は「浅岡智様」。
「僕宛……? 誰から……」
表裏、目を走らせるも、差出人の表記はなかった。そもそも、まだ郵便局員が配達に来る時間でもない。一抹の不安が、黒い影となって胸に差しこむ。
手中の硬い感触。茶色の包み。いずれも、例のディスクを受け取った際と同じだ。
急速に募る胸の疼きを押し殺して、一目散に書斎へと走る。そのさなかに破り開けた包みの中身は──DVDの収まったプラケース。ディスクも、ケースも、やはり前回と同じ品物だった。疑念が、九割がた確信に変わる。
(どういう、ことだ
!?
)
発熱によるダルさなど、気にもならなくなっていた。悪寒に震えた背を厭いつつ書斎に駆けこみ、もたつく手指でなんとかノートパソコンの電源を入れる。そして、逸る心拍が堪えきれずに吐息となって次々漏れる中、新たなDVDを挿入した。
すぐに動画再生ソフトが立ち上がり、映像が開始される、その、内容は──。
3
木調のテラスに設えられた檜作りの桶。その内になみなみ溜まった湯が、湯気を立てている。見覚えのある光景だった。
二週間前に泊まった宿の、各室に備えつけられていた小露天風呂だ。まだ記憶に新しいだけに、すぐわかった。
(僕に洗い流してと約束して藪沼の部屋に向かった咲美は、結局四時過ぎに戻ってきて、それから一人でこの小露天風呂に入った……)裏切られた、というのではないが、安堵に切なさが勝ったのを今でも覚えている。二週間前の夜の感情が、記憶と共に再来して、改めて苛んでくる。
「咲美……」
見つめる先の画面には、当然のごとく愛しき妻が映し出されていた。
画面中央、手前に映る風呂桶のすぐ先に正面を向いて座っている。風呂桶と同じ檜作りの椅子に腰を下ろしている彼女が、やはり檜作りの手桶に注いだ湯を自ずから広げた股へとかけ流している。
そこまでなら、あられもない妻の姿勢と股座に目を奪われつつも、ただ身を清めているだけなのだと、良心的解釈をすることもできた。
『ん……っ、ぅ、んんっ……』
しかし、彼女の口唇は悶えとも、いきみともつかぬ響きを漏らしている。その響きに合わせて、自身の手指で開いた膣口より覗く粘膜──三度の性交を経て赤みの増した粘膜を、穿っていた。
『早く……掻き出さないと……』
膣内から掻き出すもの。選択肢は多くなく、中でもっとも可能性の高い選択に、前のDVDを記憶するほど観ているだけに、即座に行き当たる。
『このままじゃ、智の顔……見れない……』
続けざまの言葉に続いて、妻の唇が小さく『んっ』と喘ぎを発した。それと同時に、穿っていた指が抜き出される、指に絡みついて出てきた液体は、白く濁っていた。咲美の愛液とは濃度の違う、その液体を見て、得たくもなかった確信を得る。
(やっぱり、そういう、ことなのか……)
咲美は、藪沼によって膣内に注がれた精液を掻き出しているのだ。
つまり、今観ている映像は、前回受け取ったDVDと同夜に録画されたもの。
咲美が藪沼に膣内射精されたのが三時四十分頃で、部屋から出てきたのが四時過ぎ。前回DVDで確認済みの時刻状況とも合致する。事後の二十分弱の余白は、ここで、小露天風呂で費やされていたのだ。
(僕に合わす顔がないからと……こんなにもなりふり構わず……マ○コを穿って)奴に隠し撮りされているなどとは思いもせずに。まして、その痴態が夫の目に触れることになるなどとは、想像もできずに。映像の中の妻は、恥ずかしがり屋の平素からは想像もつかぬ痴態を曝している。一心不乱に割れ目に添わせた手指を蠢かすさまが、憐憫を誘うのと同時に、平素とのギャップでひと際淫猥に映る。
『智……ごめん。ごめん、ねぇっ』
正面から隠しカメラに収められ続ける咲美の、今にも泣きだしそうな表情と声音に、夫への愛情が強くにじんでいた。それもまた哀切を誘う。
(なのに、僕は……っ)
すでにズボンとトランクスを下ろして、右手で己が肉竿を握り締めている。否応のない期待を抱き、早鐘のごとく鳴る心臓を、心地よいとさえ思っていた。
『ン……ッ、出てっ、早くっ、出て、よ……ぉっン、ンは、ぁ……っ』
咲美の右手人差し指と中指が、根元まで膣内に埋まる。そうして内部を穿り回したのちに抜け出てきた指には、もう先ほどの白い濁り汁は絡みついていない。幾度指を突き入れ、穿っても、腰を揺すり、喘ぎながら角度を変えて試しても、結果は同じ。
指の届く範囲を穿り終え、咲美の股下には湯に溶けた種汁が溜まっている。映像を見始めてからだけでも、相当の量が掻き出されていた。なのに、まだ膣内にへばりついている感覚があるのか、咲美の指は止まるどころか、どんどん忙しく、雑な動きになっていく。彼女の焦燥と嘆きが痛いほどに伝わった。
「どれだけ奥で……どれだけの量をっ……」
──藪沼の逸物は、咲美の指よりもずっと長いのだから、さもありなん。
冷酷な現実が頭の隅をかすめ、それに炙られた肉の竿が卑しく滾る。
奴のモノのサイズと、それを目一杯突き入れて放精していた時の至福の表情。二つ同時に思い出してしまい、また一段と嫉妬が、嫉妬に由来する歪な昂揚が自慰中の肉竿に注がれた。
画面内では、湯船に給水口から延々と勢いよく新しい湯が注ぐ。その際に響き渡るけたたましい水音と、咲美が膣洗浄に集中しているという状況が、侵入者の接近を易々許す伏線だと、わかってしまえたがために。
「咲美、ごめん。ごめんよっ……僕は……っ、ぅはっあ、あぁっ」
自ずと擦り立てる肉の竿の内に、被虐的な喜悦が奔り轟く。早々に鈴口より染みこぼれた我慢汁が潤滑油の役割を果たし、摩擦の速度が見る間に上がる。ニチャニチャと浅ましい音色を響かせながら、仰ぎ見た映像の中の妻もまた、懸命に膣を穿り回し、いやらしい水音を奏で続けていた。そのさまは、ただひたすらに美しく、愛おしい。
──それなのに。
和室とテラスを隔てるカーテンと大窓が、揃って開け放たれる音が聞こえた途端に、ひと際肉の竿がしなってみせた。その内に痛切な、忘れじの恍惚が再来してしまう。
『きゃああっ』
狭くはないが、決して広くもない小露天風呂スぺースで、扉に背を向け座っていたために、あまりにもあっさりと咲美は男の接近を許してしまった。男の獣欲に彩られたえびす顔を仰ぎ見て、咲美が悲鳴を上げる。
しかし、彼女の目が男の股間へと一直線に注いだのを、物言わぬカメラが鮮明に捉えていた。
『はは、どうにも収まらなくてね。すまないけど、もう一発。お願いできるかな』
室内で脱ぎ捨ててきたのか、すでに全裸の藪沼が、悪びれもせず言ってのける。
『も、もう時間がっ……待ってる夫に不審がられますからっ』
咲美は拒絶の意思を露わにした。しかしその物言いは、「時間さえあれば、やぶさかでない」という意味合いであるようにしか聞こえない。
事実、未だ妻の視線は、藪沼の猛々しく屹立した肉砲身に釘づけで、洗浄中の膣に添わせた手は、無意識になのかどうなのか、割れ目を指で開いた状態で止まっていた。
奴に散々擦られたために赤みを増した粘膜を覗かせながら、椅子の上の尻を小さく揺すり。やはり震えている左右の膝を摺り合わせた状態で、けれど決して脚を閉じることなく、割れ目を男に見せつけ続けている。藪沼に劣らぬ貪欲さで、咲美の肉体が無言の催促をしている──。
『手短に済ますから大丈夫っ。ほら、アサオカちゃんのマ○コも、都合よく準備万端みたいだし』
相手の状態を察した藪沼の行動は、小太りの体型の主とは思えぬほどに迅速だった。両手で咲美を背後から、豊乳を揉みながら抱き起こしたかと思うと、間髪容れずに蜜壺へと指を滑らす。
『ひあっ……や、やめてっ。今はダっ、んッ! あぁッ』
慣れた手つきで膣口を撫で擦られたのみならず。半勃起状態だったクリトリスをも捏ねくられ、瞬く間に咲美の身体から力が抜ける。抵抗する言葉も、掻き消えんばかりの弱々しさとなり、ほぼ形だけのものと成り果ててしまった。
「せっかくだし温泉旅行の思い出に、お湯に浸かりながらしようか」
藪沼に背を抱かれたまま、湯船の中へと導かれた咲美が、立ったままで尻に肉棒を摺りつけられている。ご丁寧にカメラに正面を向かされた格好で、今まさに他人棒を挿入されようとしていた。刺激に耐えきれず悶えながら、諦めと期待。相反する二つの感情を表情に浮かべた愛妻は、抵抗も見せずにただその瞬間を待っている。
(……昨日までは。いや、今日このDVDを観るまでは)前回のDVDに収められたものがすべてだと、思っていた。藪沼は編集したと言っていたが、それはあくまでいらぬ部分を切り落とし、繋いだだけなのだと、前回の最後に収められていた三度目の性交で、終わったのだと思っていた。わずか二十分ほどで、四度目があったなどとは、思いもしなかった。
──まったく想像しなかったわけじゃないだろ?
もう一人の自分が、囁きかけてくる。
──咲美の新たな痴態を拝める日が来ないものかと、思っていただろう?
「……ッッ
!!
やめ、ろっ……やめろっ!」
内なる己の欲望と、画面に映る藪沼、双方に向けて叫ぶ。風邪による掠れ声はあまりに弱々しい。それがそのまま己の理性の脆さであるように思えてしまった、その結果。理性と欲望とのせめぎ合いは、後者の勝利に終わった。
心の主導権を握った欲望が、瞬く間に増大する。
(ああ、今日も、また……)
理性が勝ったことなど、一度としてありはしない。だがせめぎ合いそのものが、歪な恍惚のこの上なきエッセンスとなるのだ。理解しているからこそ、毎度飽くことなく通過儀礼と化している。
さらに今は、新たなDVDという新要素が昂揚の上塗りをしてくれてもいた。新鮮な怒りと嫉妬が、制止を請うほどに煮沸する。久方ぶりの、眩暈と吐き気が付随する苛烈な衝動に、抗えない。抗おうとも思わなかった。
『それじゃ入れるよ』
短く告げた男に対し、咲美もまた抗わなかった。時間の無駄だと諦めているのか。
──奴の逸物を一目見た瞬間から、与えられた悦びがぶり返してるのさ。咲美は堪えきれない。散々繰り返して観たから、知ってるだろ?
(……そうだとしても)
先ほど咲美の見せた、夫への思慕がある限り。夫の側からの思慕もまた、尽きはしない。ままならぬ身体を持て余す彼女を、浅ましいとも思わなかった。
(僕だって、浅ましい肉欲に呑まれているのだから)歪な形であっても、愛情には違いないと信じているから。他者の手によって喘ぐ妻の姿が嫉妬を煽るほどに、愛しさも募る。
『んあッッ、ンッ、ン───ッッ!』
藪沼の手に掴まれた咲美の尻肉が、喜々と弾む。引き寄せられるがままに逸物を呑んだ秘裂が、奥に溜まる種汁ではなく、湯と蜜汁とをひり落とす。
先だっての藪沼の言葉の通り、種汁を掻き出すために穿られていた膣内は、ほぐれきり、とろみも増しているのだろう。牡肉を受け入れるにあたって最高の環境を整えて待ちわびていた女陰に根元まであっさりと押しこめて、藪沼がみっともない嬌声を上げた。
『うはぁぁ、あったけぇぇっ』
湯と蜜と、性的昂揚によって火照り盛った膣内の温みに浸る男の、だらしなく蕩けた面と上ずり声が、心底羨ましい。羨ましいがゆえに、ひと際の焦燥感と対抗心が芽生え、肉の竿を扱く手が止まらなくなる。
『僕が出した精子だ。責任持って掻き出してあげなくちゃ、ねっ!』
『んひぃッ! やあぁ奥っ、強いのダメっ、ンッ、ンンッ! ンン───ッ!』
出っ腹ごとぶつかった藪沼の腰が、咲美の尻肉をたわむほど打ち据えた。連続で何度も、何度も。繰り返される素早い抜き差しに、潤みほぐれている膣肉もまた、最高の対応を見せる。
貫かれるたびに蜜を漏らす。引き抜かれる肉棒を追ってすがりつき吸着している膣襞肉を、他人棒を貪欲に欲するさまを、まざまざ見せつけた。
藪沼は責任持って精子を掻き出すと言ったが、実際に穿りだされているのは咲美の恥部。欲深き膣襞肉と歓喜の証である蜜汁ばかり。
藪沼の腰使い、素早い突き入れの直後に腰を回すさまが、膣の奥にへばりついている種汁をかえって摺りこまんとしているように、智の目には映った。
『ほりゃっ、ほりゃあっ! ははっ、さすがにしぶといっ』
それは、果たして奥にへばりつく精子のことであろうか。それとも、この期に及んで嬌声を堪えようと歯を食い縛る咲美に向けての台詞だろうか。
判断ができぬうちに、咲美に変化が訪れる。
『……っふ! うぅ……っ、ンンッ! ふぐぅっ、んぅ……ひあっあああ!』
まず、噛み締められていた唇が内より染み出た唾液でぬるつき、上唇が滑ることで食い縛りが解けた。唾液がたっぷり溜まった、見るからに温そうな口内の、サーモンピンクの粘膜が覗いたのも束の間。枷のなくなった口唇より、止め処なくよだれが漏れ溢れた。我慢を重ねた分甲高く轟く嬌声に乗って、唾の粒が飛散する。
声のリズムに合わせ、咲美の下腹部も波打つ。
『いいよ、いいよぉっ。やっぱりアサオカちゃんのマ○コの締めつけ最っ高っ!』
藪沼が、咲美の下腹の震えと膣の締まりが連動していることをわざわざ声に出して知らしめた。隠し撮りの張本人である彼の男は、絶えず画面外の視聴者を刺激する。
『僕が経験してきたマ○コの中でも飛びっきりの! 相性の良さだよ! とろみも締まりも温さもっ、どれをとっても僕好みの、最高のマ○コだッッ!』
『ひやっ! ひっ、あぁっぐぅっ、言っ、わないでっ、そんなことっ、言われたら、あ、あた、っひぃっあっああ───っ!』
藪沼の臆面もない台詞に照れさせられたのも束の間。激しく突き上げられ、前のめりの乳房を揺らされた咲美が、嘶いた。ぎゅっと股を閉じ、きっと膣も懸命に絞り締めた状態で、より藪沼との摩擦を楽しもうと躍起になっている。
(時間がないから……。戸の外で僕が待ってると、知っていて。待ってる僕の気持ちを察してくれてもいるから……だからっ)どれほど肉の欲に溺れていても、愛妻の胸内から夫への思慕が消え去ることはない。それだけは、前回のDVD映像全編、そして今回のDVDをここまで観てきて、揺るぎなく信じられる。
だが、それだけにより哀しい。
『そらっ! おっ、ほォォッ! いいっ! アサオカちゃんのマ○コっ、繋がるたび素直になってくねぇッ。こんなにも相性最高なんだからッ、仕方ないよねぇッ、僕が手放したくなくなっちゃうのもッ、しょうがないッ! そう、思わないかいッ!』
連続で膣壺を突き貫き、優悦に浸った男が盛りも露わに吠え立てる。
『ひゃぁぅっ、あうっ、ぅんんっ! い、言わないでって、ひゃうっ、あっああっひやあああっ、思わないっ、ですっ、絶対っ、思わないぃっ』
拒む言葉が藪沼の腰振るリズムに乗って弾む。同じく奴の突きこみに合わせたリズムで打ちつけられる牝尻が喜々と震え続けているのが、はっきりと視認できた。
ピストンのたびにブポブポと、蜜汁の攪拌される音色が轟く。その音の大きさが、咲美の昂りを何よりも表していた。藪沼の逸物のもたらす快楽を手放したくないのだと、言葉よりも雄弁に示している。
『旦那さんには内緒にするっ、約束するよ! だからお願いっ』
内緒、約束。その二言を告げる間は激しさを保った男のピストンが、お願いと乞う段になって急速にペースダウンした。
『いっ……』
──嫌、やめないで。そう言い募りかけた咲美の口唇がすんでで思いとどまり、再び食い縛られた。さすがに三度も同じ手は食わぬと、多少なりとも耐性のついた心身に言い聞かせているのか。
『一度きりって……約束です……』
後ろの男を振り返り、きっと睨みつける瞳には、彼女なりの矜持が詰まっている。夫への思慕が、彼女を支えているのは間違いない。
だが、その夫は。
(咲美……そうだ、耐えてくれ。耐えて、耐えて……その果てに)卑しき願望と期待を抱いて、自慰の手を速める。
「あんたもっ! この程度じゃ……ないんだろっ
!?
」
かつて自信満々に咲美を満足させると言い放ってみせた藪沼に向けて、湧き出るまま挑発的な言葉をぶちまけた。
『お願いっ!』
期待に応えるように、奴の口元は笑んでいる。それを観てなお肉竿を扱く手に熱ををこめた矢先に、画面上で新たな展開があった。
悠長なペースはそのままに、いったん腰を引いての強烈なピストンが、蜜濡れた膣壺へと見舞われる。
『ひゃうっ
!!
』
『絶対内緒にするからっ!』
『あっ、あっ、あぁっ!』
二、三、四──そして絶え間なく。回を重ねるごとに速度を上げた突きこみが、焦れだしていた膣穴を容赦なく穿つ。
『うんと言わなくていいっ、ただ、頷いてくれるだけでいいからっ』
囁きながら上体を倒した藪沼が、咲美の背に覆い被さった。
当たり前に咲美の胸元へと回った奴の両手指が、これ見よがしに蠢いて、左右それぞれの乳房、夫の手には余るサイズの膨らみをしっかり抱き締め、揉み捏ねる。
『いやぁっんっ、ア……はぁっ、は、あぁっ どうっ、してぇっ……?』
ジンとした疼きに見舞われ通しの乳首をなぜ攻めてくれぬのか。そう、目で訴えかけた咲美に、にんまりと応じ。乳輪を指腹で摺り愛でながら、藪沼は腰の速度を一段と上げた。
『もう一度だけでいいんだよ、アサオカちゃん、お願いっ!』
それと同時に、再度の懇願をする。
『はんッあッンッ、でっ、も、そんっ、なあああっ、だめっ、だめ、だめぇぇッ!』
激しい突きこみを浴びせられるたび、湯を掻き分けて前へ前へと歩む咲美。隠しカメラに接近する彼女の乳房が、藪沼の手指にギュッと抱き留められているさまも。悩ましくも艶めかしい美貌が、快楽によって歪んでいるさまも。峻烈に夫の眼に焼きつき、痛切な衝撃が心臓と肉竿を撃ち抜いた。
『はぁぁんんっ! はぁっ、はぁ、はーっ……ぁひィィッ!?』
とうとう風呂桶のふちにたどり着き、堪らず両手をついた愛妻の、目一杯に勃起した左右の乳頭が、捏ね繰り回されている。股の焦れの解消と共に意識外に追いやろうとしていた胸の疼きが、瞬間的に膨張し、妻の矜持をも呑みこんで──。
『イきたくないのっ!』
腰振りと、乳首弄りの手を緩めることなく紡がれた藪沼の問いかけに、咲美は、ただフルフルと首を横に振る。イきたくないわけではない、との意思表示。夫のモノでない肉棒によって果てたいのだと伝える際、カメラにより接近した妻の表情は、浅ましくも蕩けきっていた。それが底抜けに淫靡で、愛おしく。
(咲美を愛してる、から……誰にも奪われたくないんだ。だからっ……! 藪沼に開花させられてゆく咲美を、もっと観たい。これからも……ずっと)夫として剥き出してやれなかった数多の顔を、他人の手で露わにさせられてゆく妻。彼女の内にまだ見ぬ顔が隠されているのなら、すべて観たい。愛しき人のすべてを、他人の手が介在する形であっても知りたいと願った。
画面越しに慕情を訴える他ない己と、画面内で濃厚に交わる男女。藪沼を恨み、羨みながら、その藪沼に貫かれて喘ぐ咲美により熱のこもった思慕を注ぐ。歪な形と知れども離れられない、忘れじの蜜の味を、自慰摩擦による甘く切ない痺れと共に噛み締めた。
『あっ、やっ、あああっ、イッ、やはぁっあっあひぃああッ!』
画面では、先に焦れの解消された膣穴が、また繰り返し突き上げられて甘美に酔いしれている。角度的に結合部は視認できなかったが、喜々と震え跳ねる妻の熟れ尻が、事態をつぶさに知らせてくれた。
捏ね繰り回されている乳首も、左右競るようにぷっくりと、藪沼の手中で勃起し、愛でられるがまま、喜悦に戦慄いている。それが律動のたび隠しカメラの方に迫り出してきて、忌み嫌う男の手に甘え摺りつくさまを鮮明に見せつけた。
誰の手であろうと、性感を高めさせられた女体は卑しく呼応する。いかに貞操観念が強かろうと、本能的な飢えには抗えるものではないのだ。咲美は、決して例外などではなかった。
(それでも……それでもっ、僕は……!)
彼女のすべてを知りたいと願う。愛しい妻の醜い部分を覗けた瞬間の暗い喜びを、視聴しながら扱く肉竿に宿る卑しい悦びを、生涯手放せないだろう。
『イきたいならOKしてっ。でないと……』
言葉尻を待つことなく、藪沼の手と腰の動きが止まった。
焦らされた末にやっと悦を満喫し始めたところだった女の尻と背が、即座に切なさを訴える。
『……ッ、そ、んな……卑怯っ……ですっ、うぅ……ふっ、うぅ……ッッ……!』
いったん高まってしまった感度が、刺激がやんだからといって鎮まるはずもない。欲をかかずにいられぬ女の性と、悦に呑まれて崩れかけの妻の矜持。いずれが勝利を収めるか──考えるまでもない。
わずか一分弱の煩悶の末に、咲美の口唇が、夫の期待した通りの答えを紡ぎだす。
『……ぜっ、絶対に、内緒にして……くれ、ますか……』
意地悪く追いこむ男を睨み責めるのではなく、逃げ道を用意してくれたことに感謝するように媚びた上目遣いと上ずり声を捧げ、彼女は許諾の意思を示した。
『も、もちろんさぁ! 絶対秘密にするっ!』
さも予想外だったというように、藪沼が奇声を上げる。その下手な演技に気づいていたのかどうか。仮に気づいていたとしても、胸と股間の訴えに屈してしまった咲美に、刺激再来の機会を逃すという選択肢はなかっただろう。
『あと一回だけでいいんだっ! だから、会ってくれるねっ!』
ぐっと腰を押しこみながら、乳輪を指腹でなぞり、男が念押しする。それによりわずかの迷いすら断ち切られた愛妻が、より一層甘えた声音で男にすがった。
『んぁッ! ああ……は、ぅんんっ……一回、だけ……?』
本当に一度だけか、と問い質すつもりだったのか。
一度だけしか会ってくれないの? と、拗ね甘える思惑を秘めていたのか。
おそらくは両方の意味合いがこめられていたのだと思う。
「あぁ……っ、ぁ……っ、咲、美ィィッ……」
愛しき女が、肉の欲に引きずりこまれてゆく。それをこそ極上の蜜と受け止めて、卑しき夫の肉竿が悦びの脈を打ち放つ。堆積し続けた悦は軒並み弾丸となって竿の突端へと装填され、発射の時を喜々と待ちわびている。
(もうじきだ。もう、すぐっ……)
みじめで愛しい絶頂に耽溺できる。できれば、いや、必ず、咲美と共に果ててみせる。そうして得る恍惚が至福であると、すでに身をもって知っているから。
『いっ、一回……きりです……ね?』
映像の中の妻が、再び夫の嫉妬を煽る言葉を紡いだ。本当にそれだけでいいのかと問う疑問調の響きを吐くさなかに、彼女の腰が自ずからうねりを強める。
『うんっ! もちろんだよっ! 約束絶対に守るからっ、ありがとう! ありがとうアサオカちゃんっ!!』
おそらくあえて『もっと欲しいのか』とは問わなかった藪沼の腰も、咲美の求めに応ずるべく、一足飛びに元の調子を取り戻していった。
『ひぁあああんっ、はひっ、あっひあっあっあああああ───っ!』
激しく突き上げられた咲美の背が、幾度ものけ反り、小さな悦波に襲われていることを示す。背の震えがそのまま膣の締まるリズムであろうと想像すると、間断ない快感を甘受している藪沼への憎しみも天井知らずに強まった。
──咲美は、再度の密会に応じていたのだ。
前のDVDの内容だけ観て、一度きりの過ちで終わったのだと安堵していた己のピエロぶりを、自嘲せずにいられない。
(そんな僕に気づかせないように、咲美はいつも通りに振る舞って……)妻の気遣いが、みじめさを引き立てる。それを糧として喜々としなった肉竿を、離さぬよう握り締め、懸命に扱き上げてゆく。
画面内で肉欲に陶酔している女と、日常を楚々と生きる妻。そのどちらもが紛れもなく愛しい咲美の一部であるというのなら、彼女が今後どれほど痴態醜態を曝そうと、愛情は揺らがない。
「咲美、っ……愛、してる。誰よりも僕がっ、愛してるよっ……!」
自慰しながら愛を叫ぶ。性欲盛んな学生でもそうそうしないであろう、剥き出しの情愛をぶちまける行為に、没頭する。
画面上で肉悦に溺れゆく妻と競うように。その妻の胎内で果てるべく、性欲最優先で腰を振るい続ける男に対抗するように。自慰の摩擦と、それに伴い肉竿の内を巡る切ない痺れが、加速度的に高まっていく。
『いい? 気持ちいいかいっ、アサオカちゃんっ』
藪沼の問いかけに、咲美がコクコクと繰り返し頷いている。
『言葉に出して言ってっ!』
『ぁひぃっ! い、いいっ、ですっ、気持ちイイッ!』
強く膣の上壁を摺り上げられて、瞬く間に口を割った彼女に、もはや妻の矜持は欠片もない。妻という肩書を外して、ただの女に戻った彼女は、乳頭を藪沼に抓られても喜々と喘ぐほど、身の昂りに溶け堕ちていた。
『どこがっ、どこがいいっ? ちゃんと教えてっ! でないと……』
奴は、ほんの少し腰の速度を緩めただけだ。
『む、胸っ……ちくびっ、お……股ぁぁっひぃンッ! 全部ッ、いいのおォッ!』
なのに刺激の遮断に怯える女の心が過剰反応し、あまりにもあっけなく要求に屈する。与えられる快楽に溺れきった女体が、より強い刺激を欲して自ずから忙しのない、淫猥極まりない動きを披露した。
『今日はこれで最後だからっ! だからまた一緒にっ、イこうよっ』
吠えた藪沼の肉棒を、フリフリ揺らぐ牝尻が根元まで食み呑んで、さらに回転と揺れ、そして締めつけを浴びせ、歓待する。
お返しとばかりに、藪沼の指腹が、咲美の左右乳首を磨り潰し、続けて、乳輪に沈むほど押し潰す。
目配せにより互いの意思を確かめた男女が、相手のより感じる部位を探り、愛で合いながら、高みへと駆け上ってゆく。
咲美がついに藪沼と、夫婦の営みの時同様のレベルで心を通じ合っている。
『はぁぁ……あっぐうう……っあは、あァァァァッ!』
獣のごとき鳴き声を発し続ける咲美の乳房に、奴の指が食い入り、無残にもひしゃげさせられていた。
(僕には、できない)
愛する妻が痛みに呻くさまを見たくないと思うから。ゆえに、決して成せぬこと。
それを今、目の前で他人が施している。焦らしに焦らされ感度が高止まりしている状況だからこそ引き出せた、痛みの先にある快感を、咲美が初めて味わわされている。それも、誰よりも忌み嫌っていた男の手によって──。
「くっ……うぅぅぅ!」
悔しさが、敗北感が募り積もる。そうすれば咲美が快楽を得るとわかっても、やはり彼女の泣き顔を見たくないがためになせないであろう己の不甲斐なさに、腹が立つ。
しかしそれこそが、今身の内に奔り巡る歪な悦の根幹であり、糧であるということも、重々理解している。切なさと恍惚が入り混じる悦波を浴び続けた肉竿が、いよいよ限界へのカウントダウンを、忙しく重たい脈動という形で刻み始めていた。
「咲美と、一緒に……っ、僕がっ、咲美をっ!」
実際に咲美を果てさせるのは藪沼だ。それでも同時に果てることで、疑似的でしかなくとも咲美と至福の時を共有したい。
『出すよっ、出すよぉぉっ』
前回注いだ種汁を掻き出す。そんな当初の建前をかなぐり捨て、獣欲漲らせた男が吠え立てた。悦楽の只中にある咲美も、当たり前に受け入れ、ただただ尻を振る。
『は、ひぁぁぁっ! はひ、ぃいいっ! ぁあっ、早くっ、はやっくううう!』
扉の前で待つ夫のことを慮ったのか。
(もう一秒も待てない、早く欲しいと……股座をヒクヒクさせて……っ)カメラの位置の都合上、相変わらず結合部は視認できない。けれど、彼女の腰振りに合わせてけたたましくなる三つの音色──盛大に波打つ湯の音と、男女の肉のぶつかる音、そして嬌声──が、想像を肯定する。
『ごめん、なさいっ、智……あた、ひぃぃっ、またイッちゃう……よぉっ』
「……咲ッ、っく、うぅぅ、っ……!」
悦の高みに上り詰める寸前にあっても、妻の胸内には夫への思慕が居残っていた。
喜びに心満たされ、ゆえにつきまとう哀しさにも衝き動かされ、肉竿を強く、折れるほどに握り締める。
『っふ、おおおお! イけっ、咲美ィィィイッ
!!
』
同時に藪沼が、膣壺に肉砲身を、根元まで一気にうずめた。
『んひッ……いぃああああああ─────ッッ
!!
』
尻がたわみ潰れるほど強烈な一撃を見舞われた女の膝から下がガクガク揺れ、甲高い──周囲をまったく顧みない嬌声が迸る。
舌を突き出し、よだれと汗と、他人棒を呑み食んだ膣唇から潮まで漏らし散らして、絶頂を極めた咲美。その、ぐるりと裏返る眼差し、締まらない口唇。底抜けに浅ましく、無様で──とことん愛おしい。
「はぅッッ! は、あぁぁlっ、ああっ、はーっ、は、ぁぁぁっ!」
妻の媚態に魅入られたまま、夫の肉竿もまた自慰の果ての吐精、妻と同時の絶頂にこぎつけた。情けなさと共にこみ上げた甘露な衝動に抗うことなく、痙攣する肉の竿をなお扱き、噴き上がった種汁は、今日一発目とあって濃く、擦る手指と、床にべっとりとへばりつく。
『おっ、おぉぉぉっ! ふーっ、っふぅぅ、そうだっ、搾り取れ……っ』
咲美の背に覆い被さる男の腰が、ぐっと押しこまれた状態で固まり、小刻みな痙攣を放っている。
男の腰の震えは下肢にも伝わり、すぐ前方の咲美の脚と擦れ合う。その微細な衝撃にすら、最高潮の性感を炙られて、男女双方が荒い息遣いを整える間もなく喘ぎ。
肉悦の極みを少しでも長引かせたい。切なる想いを、目と目で意思疎通し、共有して、隙間なく寄り添った互いの腰を摺りつけ合っていた。
『ふぅっ、う、あぁぁ……は、ひぁっ、ン……まだ、出て……るぅぅぅ』
咲美のたわんだままヒクつく尻、潮に濡れて震える内腿、波打つ腹、藪沼の手に抱かれて甘えるように摺りついている乳房。何より、うっとりと惚けた声音が、藪沼が二度目の膣内射精に至った事実を執拗に知らしめる。
「……ァ……ぁぁ……ッ
!
~~~……ッッ」
注ぐ男のみならず、受け入れた女もまた喜悦に打ち震えているのだと理解した途端に、夫の手中で肉竿が再度爆発した。そのまま悦波は引くことなく高止まりし、扱き立てるたびにビグビグと卑しき脈動が打ち鳴らされる。濃度の高い白濁汁が、噴水がごとく高々と射出され、弧を描いた後。己が手と、床に飛散、付着した。
自慰射精に付随する空しさが吹き荒れる中。反比例するように、胸の高鳴りが増長の一途を辿る。
(もっと、観たい。これからも……!)
一度きりの過ちで片づくものと思って、否、思おうとしていた。己をまやかすための方便であったと、痛切に思い知る。
『ふぁ……っ、あぁ……あ……っ、ひぁ……まだ……出て、るぅぅ』
風呂桶の縁にもたれるように伏せた咲美の、か細く、その分切々と響く涙声が、哀しくも愛おしい。
『ふっぉぉ……っ、あぁ、やっぱいいねぇ。本イキマ○コに搾り取ってもらうの……最っ……高ッ!』
咲美の尻肉を、跡がつくほどきつく抱いた藪沼が、惚けた顔で吐き連ねる台詞の一言一句に、妬み、恨み、羨み──歪の恍惚の糧が滾々と湧く。
奴が押しつける腰と、受け止める咲美の腰。
番
いのごとく共鳴し、揃って絶頂の悦波を堪能する姿から、目が離せない。
前回と違い、二人の結合部から太腿側へと白濁の汁が漏れ滴ることはなかった。さすがに四度目の射精とあって、藪沼の種汁の量が目減りしたのか。
(でなければ、それだけ奥で……また、咲美の一番奥で……っ)伏せた咲美の上体が、藪沼の腰の震えに従って、カメラのある正面方向にずり上がる。掴まれたままの彼女の尻が、未だ喜々と悶え、奴の腰に摺りつき続けてもいる。その、欲深くも愛しい姿と、『ン……ッ、あ……はぁぁぁぁぁ……っ』
心底から嬉しげな、囁きめいた喘ぎが、事実を雄弁に物語っていた。
藪沼は、衰え知らずの肉凶器を延々と咲美の膣内で脈打たせている。未だ種汁を放ち続けている。前回のようにこぼれ溢れないのは、藪沼の種汁の量が減ったというよりも、むしろ──。
(咲美が、こぼしたくないと、性器を引き締めてる……から)夫の想像を肯定するように、藪沼がまた『搾り取ってくれるの、すごく嬉しい』と、腹立たしいほどにすっきりとした、えびす顔で告げる。
『ふぅ~。それじゃ……さすがに旦那さんも待ちわびてるだろうし』
心行くまで女陰の絞りを堪能しておきながら、しれっと咲美に夫の存在を思い出させようとする、その嫌らしさ。ニタッと下卑た笑みをこぼす藪沼の思惑に、奴の顔を振り返り見た咲美も、すぐ気づき。そして藪沼の狙い通りに、羞恥した。
(あぁ。そう、だ……咲美は、恥ずかしがる、ほどに……)長く太い肉棒が股から抜き取られる間も、俯いて小さく喘いでいた妻の口唇が、雁が引き出された瞬間に『ああっ』とひと際切なく嘶く。
藪沼が、まだ汁滴る亀頭をこれ見よがしに振りながら風呂を出る。それに視線を追いすがらせた愛妻の、喉がごくりと鳴った。
女の心の移ろいを見透かしたようにほくそ笑んだ藪沼が、咲美の横っ面に、ぴたぴたと、まだ彼女の汁と温みがたっぷりと絡まった肉筒を押し当てて。
『あとは、竿に残ってる分をアサオカちゃんのおっぱいで搾り出してもらって、それで今夜は終い。次に会える日が決まったら、連絡するよ』
悠然と告げる。その間も頬に摺りつく肉幹に、咲美の視線は釘づけのまま。堪らず己の口唇を舐る舌も、涙に潤む眼差しも、性器でぶたれるたび赤みを増す頬も。すべてが物欲しげな、牝の様相を呈していた。
これで終わりにしたくない、と──咲美は、切に願っていたのだ。
『ほら、アサオカちゃんも風呂から出て。僕の足元に跪くんだ』
従順に応じ、体勢を整えた咲美は──命令されるまでもなく、差し出した胸の谷間を、脇を締めることで強調してみせた。その深い谷間へと、我が物顔で藪沼の逸物が、嵌まりこんでゆく。
下から突き上がり、谷間に亀頭が飛び出すまでの一部始終。右側面から隠し撮りされている愛妻と間男の後戯に興ずるさまを、血走った眼で凝視する。
『おぉ……ぅはぁ。いいぞぉ……そう、上下に、乳でチンコをしゃぶるようにっ』
男が、だらしなく開いた口よりよだれと、亀頭からは半透明の汁をこぼしながら、腰を振る。競るように咲美の乳房の上下運動も回転を増し。
『っふ、ぅ……ぁ、んっ、やぁ……乳首、だめぇっ……あっあぁ、んっ、んんっ』
折に触れて乳首を捏ねられ、時には自ら亀頭通過のタイミングを見計らい擦りつけもする、より摩擦を愉しむべく乳圧を強め、男を悦ばせる、女。
いずれも、ひたすらに快楽を追求する、映像の中の男女。確かにこの時、心まで一つになっていただろう、藪沼と咲美。二人は視線と肌を摺り寄せ合い、繋がる心身を再度の高みへと駆け上らせてゆく。
肉棒に付着していた蜜汁と、藪沼自身がひり落とした我慢汁。咲美のこぼした唾液も混ぜて形成された潤滑油が、逸物が抜き差しされるたび、泡立ちながら乳谷に溢れ、卑しい音色を響かせる。
柔らかな咲美の乳房が、また藪沼に好き放題揉まれ、歪にひしゃげさせられながらも喜悦に溺れて、より盛んに摩擦愛撫に興じだす。
『んんっ……ちゅ、うぅぅっ……ぁ、や、ぁぁんっ……』
最大限乳谷を突き上がった逸物の亀頭に、項垂れ待ち構えていた女の口唇が吸着する。引き留めるように強く、頬をすぼめ啜った末に、願い叶わず乳谷へと戻っていく逸物を愛しげに見送り。口内に残った絞り汁を啜り飲む妻の表情は、この上なく幸福そうに、夫の目には映った。
『あぁ、きた、きたっ、次っ、ずり上がったら出るっ、からねっ、思いっきり締め上げててよォッ!』
『は、ひィぃッ……ンンッッ』
真下から突き上がった藪沼の腰が、咲美の乳房を打ち据える、バチュンッという音が轟く。その残響が鳴り響く中、白濁色の種汁が迸る。残り汁という表現通り、量も、勢いも過去四発より衰えたそれは、弧を描き、待ち構える咲美の鼻梁へと着弾した。
『んぁっ……あ……か、髪はやめて……すぐに取れない、から……』
(咲美……君は……)
藪沼の精液に鼻筋から下を狙い撃ちされ、ドロドロと滴るそれを舐り取っては口内に運び、飲み下しながら。なお、夫に性交の痕跡を見咎められるのを恐れている。いかなる時も、どこまでも「浅岡智の妻」であることを忘れないでいてくれる、愛しき人。
「くぅ……っ、あァ……!」
慕情に憑かれた肉竿が、ろくに擦ってもいないのにまた、手中で跳ね盛り、画面内の男に負けじと白濁の汁を吐精した。
──咲美への愛が尽きぬ限り、この悦びもまた失せはしない。
切々と漲り続ける慕情を胸に抱き、目を見開いて前を向く。視線の行き着く先で、三十分足らずの映像が終幕に差し掛かっている。
『先っぽ吸って。全部吸い出して』
男のイヤらしい囁きと。
『ふぁ……っぢゅ』
応ずる女の、啜り、飲む音の響き。そして男を陶然と見つめる、上目遣い。精液と唾液の混合汁によって濡れ輝く唇の、この上なき艶めかしさ。
すべて余さず傍観者たる夫の心に刻みつけて、映像は終了した。
4
「あ。智。もう夕ご飯できてるよ」
午後八時を過ぎてようやく階下に降りてきた夫を、少しむくれて、けれど柔らかな雰囲気を纏って出迎える妻。その様子は、いつもと何ら変わりない。
だが、映像の中で浅ましく淫らに腰を振り立てていたのもまた、紛れもない彼女自身。愛しき妻、咲美の一面に違いないのだ。
「ごめん。ずっと寝てて……」
三度繰り返して三度自慰射精した映像が瞬時に瞼裏にフラッシュバックし、思わず股間が猛りかける。咳きこむふりをしてわずかに前屈みとなり、結果的に妻の顔との距離が縮まった。
「うん。顔色もよくなってる。どれどれ? 熱も……下がってるみたいね」
届きやすくなった夫の額に手を添えて、咲美が顔を綻ばす。そのさまが堪らなく愛しさを駆り立てる一方で、同じ口がこれからどのような嘘をつくのか。想像すると切なさに胸が締めつけられた。同時に、期待に起因する高鳴りもけたたましさを増す。
「そうだ。
明々後日
、水曜日だけどさ。外で飯、一緒に食わない? 智美も連れてさ」
「……どうしたの、急に?」
問い質す咲美の表情に、表向き変化はみられない。
だが、恋人として、さらには夫として人生を共にした十年が、彼女の平静の理由を見出してしまう。大学時代、共にシナリオ研究サークルに所属した咲美も、当然心得ているはずなのだ。
──嘘は堂々とつき通したほうが、ばれにくい。
「うん。僕の快気祝いってことで。どうかな」
より咲美が断りづらい理由をつけて、再度彼女の顔色を窺った。少しの変化も見逃さぬつもりで、愛しい妻の顔をじっと凝視する。
「うー、ごめんっ。明々後日は、大学の友達と久しぶりに会う約束してるんだ」
咲美は申し訳なさげに、いつもの彼女のそぶりを損なうことなく、瞳を揺らがせもせず──嘘をついた。
彼女は知らないのだ。夫が今日届いた映像に心奪われ、歪な妄執の深層に踏み入る決意を固めたことも。映像を観終えてすぐ、届け主たる藪沼に電話をかけたことも。奴の定めた次の密会日が明々後日であると聞き出してあることも。その密会の算段に、夫が一枚噛むと決めたことも。何一つ。
(本当に……?)
勘のよいところがあり、誰より夫の心情の理解に長けた愛妻。彼女は本当に、気づいていないのだろうか。
「……ひょっとして、怒ってる?」
こちらの内情を窺うように見つめてくる視線をまともに受け止められず、つい顔を逸らしてしまった。
「……せっかく豪勢なディナーご馳走しようと思ったのにな」
拗ねた口振りを、慌てて取り繕ったと受け取られなかったろうか。まっすぐに注ぐ妻の視線に何もかも見透かされているようで、不安が膨らむ。それでも、再び歩みだした卑しき妄執を突き詰める道程を、踏みとどまろうとは思わない。
セックスに持ちこんで以降の手並みは称賛に価しても、性欲優先で動きがちな藪沼に下準備のすべてを一任するのは危険だ。藪沼の暴走に歯止めをかける監視役を果たしつつ、状況を整えるのに一枚噛む。
(万全を期しながら、より僕の妄想に沿う形での、咲美と藪沼の密会を実現させる)「もう。そういうことは早く言ってよ。損したぁ。……ね、来週じゃだめかな?」
茶目っ気交じりに応答する最愛の人の、すべてを知りたいと思うから。
(僕では剥き出せない部分も含めて、すべてを──)夫の寝取られ願望を「愛するがゆえの熱情である」と看過した上で、「愛を確かめるため」と藪沼に抱かれることを選んだ妻。その後二週間、幾度となく交わした夜の営みで、夫が藪沼との一夜を持ち出すたび、恥悦にまどろんでいた咲美。
仮に彼女が今後も、夫の底なしの妄執を許容してくれるつもりでいるのならば。
(歪であっても、これが僕らなりの愛し合い方と、受け入れてくれる……なら)夫が妻の嘘を看過するのと、理由を同じくするということだ。──希望的観測に依りすぎていると理解しつつ、その可能性を信じると決めた。
心を決めた以上、告げておくべき言葉がある。
「……こんな僕だけど、これからもずっと君と一緒にいたいと思ってる」
胸にひしめくすべての想いの根幹を、素直に伝えた。
「ちょ、ちょっと智? どうしたの急に……」
「きゅうに~」
目を丸くして、あんぐり開けた口を手で押さえ、それから遅れること数十秒。照れを色濃くした咲美。リビングから顔を見せるなり、母親を真似てはしゃぐ智美。
愛しい家族と、歪な想いを抱えたまま、これからも。
「だめ、かな」
願うように問いかける。
意図を探るように見つめてくる彼女の視線を、しかと受け止めた。そうして三十秒も待っただろうか。
「……あたしも、智と同じ気持ち」
映像の中で藪沼の逸物にむしゃぶりついていた口唇が、ことさら恥じらいながら応じてくれる。
「そっちがもう嫌だって言っても、離す気はありませんよーだっ」
また茶目っ気を交えて照れをごまかそうとするのが、恥ずかしがりの彼女らしくて、自然と夫の口元にも笑みが咲いた。
べっと突き出された彼女の舌先が藪沼の精液を啜り味わったと思うと、堪らなく悔しく、より愛しい。
「ありがとう」
想いの丈をこめた素直な感謝が、より彼女を照れ困らせることになるとわかっていても、捧げずにいられない。
──これからも、ずっと、歪んだ情愛の供として君を欲する。
(そう願わずにいられない、こんな僕を愛してくれて、ありがとう……)「も、もうっ。急に真顔でそゆこと言うと、照れるから……。ほら、冷めないうちに夕ご飯、食べよ?」
「おなかすいたー」
火照る頬を両手で押さえ、背を向けた愛妻がリビングへと小走りに駆け戻る。ぱたぱたと響くスリッパの音を、我が子の小さな背が追った。
「ああ。今行くよ」
溢れる愛と、尽きぬ欲熱。終生を共にする二つを抱き締めて、最愛の家族の待つ食卓へ向かう。その足取りは、躍る心を表したように軽やかだった。
ヤブヌマ 侵食されゆく妻の蜜肌 第七章 忘れじの蜜 (7/7)
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