本文へ移動Skip to content跳到正文跳到正文
日本と世界のBDSM映像アーカイブThe BDSM video archive — Japan & beyond日本与全球 BDSM 影像资料库日本與全球 BDSM 影像資料庫
ブログBlog博客部落格

フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ:2015年のSM契約映画

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(Fifty Shades of Grey)は、2015年のアメリカ合衆国の官能恋愛映画である。監督はサム・テイラー=ジョンソン、脚本はケリー・マーセル。原作はE・L・ジェイムズが2011年に著した同名小説。女子大生アナスタシア・スティールをダコタ・ジョンソン、サドとマゾの関係を結ぶ若き実業家クリスチャン・グレイをジェイミー・ドーナンが演じる。2015年2月11日に第65回ベルリン国際映画祭で封切られ、2日後の2月13日、ユニバーサル・ピクチャーズとフォーカス・フィーチャーズによって全米公開された。否定的なレビューを数多く受けながら、全世界で5億7000万ドルを超える興行収入を記録した。第36回ゴールデンラズベリー賞では『ファンタスティック・フォー』とともに2015年の最低作品賞を受賞した一方、エリー・ゴールディングの Love Me Like You Do はゴールデングローブ賞主題歌賞にノミネートされた。三部作の第1作であり、続編は『フィフティ・シェイズ・ダーカー』(2017年)、『フィフティ・シェイズ・フリード』(2018年)である。

インタビュー、契約、プレイルーム

21歳のアナスタシア・スティールは、ワシントン州立大学で英文学を専攻する女子大生である。体調を崩したルームメイト、ケイトの代わりに、27歳の大金持ちの企業家クリスチャン・グレイのもとへ、大学新聞のインタビューに行く。シアトルの仕事場「グレイ・ハウス」での面会に成功する。後日、彼女が働くホームセンターへ顔を出し、撮影のあとコーヒーに誘うが、「自分はアナにふさわしい男ではない」と店を後にする。卒業試験を終えた日、トーマス・ハーディの初版二冊(うち一冊は『ダーバヴィル家のテス』)と直筆のカードが届く。カードは、危険だから近づかないでほしいと分からせるため、『テス』から引用したフレーズをあえて書いたものだった。アナはバーで酔って彼に電話し、本を返したいと告げる。クリスチャンはバーへ向かうが、そのとき彼女はすでに気を失っていた。翌朝、アナはグレイが宿泊しているホテルの一室で目を覚ます。

その夜から二人は付き合いだすが、クリスチャンはやがて、情事に関する秘密保持契約書へサインするよう要求しだす。内容は、彼の命令にアナはしたがわねばならないという、「支配者と奴隷」の関係を認めるものだった。アナはサインに抵抗を感じるとともに、ずっと処女であったことを告白する。連れて行かれるまま「プレイルーム」に足を踏み入れる。SMプレイ用の家具と用具が整った空間であり、話が終わったあと、室内で二人は一線を越える。やがてアナはクリスチャンの母親とも会い、いったいどれほど多くの女性とこんな関係をもっているのか詰問する。翌日以降、クリスチャンは新車や新品のノートパソコンをアナに与える。両親と夕食を共にした際、翌日ジョージアの母親へ会いにシアトルを去ると言い、自分は一方的な関係以上の恋愛を求めていると告げ、彼を落胆させる。ジョージアで図らずも再会する。実は彼がプライベートジェットを用意した張本人だったが、デートの途中で急用ができ、シアトルへ戻る。渋々認めながらも中途半端な態度をとる彼にしびれをきらしたアナは、契約に違反したらどんな「お仕置き」をするのか実際にやってみてほしいと持ちかける。彼は彼女の尻を鞭でひっぱいてみせる。動揺と、つねに自己中心的な態度への嫌気が重なり、アナは別れを告げる。小説と同じく、契約書の先にあるのは合意ではなく、ベルトと鞭の実演と、返される贈り物である。

アナスタシア・スティールはダコタ・ジョンソン。クリスチャン・グレイはジェイミー・ドーナン。ケイトはエロイーズ・マンフォードで、クリスチャンの兄エリオット(ルーク・グライムス)と付き合っている。カーラはジェニファー・イーリー、アナの母。グレースはマーシャ・ゲイ・ハーデン、養母。ホセはヴィクター・ラサック。ミアはリタ・オラ。ジェイソンはマックス・マーティーニ。レイ・スティールはカラム・キース・レニー。キャリック・グレイはアンドリュー・エアリー。ボブ・アダムスはディラン・ニール。ポール・クレイトンはアンソニー・コネクニー。レイチェル・スカーステンはアンドレア、クリスチャンの秘書。

四社の競争とキャスティング

2013年初頭までに、三部作の映画化権を複数のハリウッドスタジオが狙っていた。最終的にユニバーサルとフォーカス・フィーチャーズが2013年3月に取得した。原作者ジェイムズはマイケル・デ・ルカとダナ・ブルネッティを起用した。脚本は当初ブレット・イーストン・エリス案があったが、採用されたのはケリー・マーセルである。テイラー=ジョンソンは登場人物の個性をはっきりさせるためパトリック・マーバーの手も借り、ユニバーサル側はスクリプトドクターにマーク・ボンバック、衣装にマーク・ブリッジスを置いた。エンターテインメント・ウィークリーによれば、推定製作費は約4000万ドルだった。2013年5月、ジョー・ライトはスケジュールで消え、パティ・ジェンキンス、ビル・コンドン、ベネット・ミラー、スティーヴン・ソダーバーグが候補に挙がる。2013年6月、ジェイムズはサム・テイラー=ジョンソンを監督に任命すると発表した。ジョンソンは収録にあたって200万ドルを投資したとされる。着想源は『ナインハーフ』『ラストタンゴ・イン・パリ』『アデル、ブルーは熱い色』である。2017年6月のインタビューでジョンソンは、原作者との共同作業が困難だったと述べ、シリーズから足を洗った。

エリスによれば、ジェイムズはロバート・パティンソンがグレイ役に最もふさわしいと考えていた。しかし『トワイライト』映画の共演を本作でもさせるのは奇妙であるとも感じていた。イアン・サマーホルダーとチェイス・クロフォードは以前からグレイ役に興味を寄せていた。2013年9月2日、ジェイムズはグレイ役にチャーリー・ハナム、アナ役にダコタ・ジョンソンを選んだと表明する。アナ役の他候補はアリシア・ヴィキャンデル、イモージェン・プーツ、エリザベス・オルセン、シェイリーン・ウッドリー、フェリシティ・ジョーンズ。エミリア・クラークはオファーを受けたが、ヌードになれないという理由で拒否された。監督は志願してきた女優たちに、イングマール・ベルイマン『仮面/ペルソナ』の独白を朗読させたりもした。グレイ役についてスタジオは最初ライアン・ゴズリングがふさわしいと考えたが、彼は興味を示さなかった。ギャレット・ヘドランドは性格が合わないとして却下。スティーブン・アメルはおもしろそうだとは思わなかったと述べている。ハナムは当初辞退し、会議を経て再考した。2013年10月12日、ユニバーサルはハナムが『サンズ・オブ・アナーキー』の出演スケジュールとの不一致で脱退したと発表。アレクサンダー・スカルスガルド、ジェイミー・ドーナン、テオ・ジェームズらが代役候補となり、10月23日、最終的にドーナンが選抜された。

撮影はバンクーバー。ロケ地はギャスタウン。グレイのビルは Bentall 5。ワシントン州立大学のシーンはブリティッシュコロンビア大学、ホテルは Fairmont Hotel Vancouver、一部は North Shore Studios。公式には2014年1月21日に収録終了、一部の撮り直しは同年10月13日の週に同じくバンクーバーで行われた。プロジェクト名は「The Adventures of Max and Banks」。クレジットされていない脚本のマーク・ボンバックは、これほど機密性の高いプロジェクトに加わったことは一度もない、セットはロックダウンされていた、と語った。2018年に亡くなった編集技師アン・V・コーツが手がけた生涯最後の作品でもある。

事前に用意されていたもう一つのエンディングは、アナとクリスチャンの回想である。アナがアパートですすり泣いている一方、クリスチャンは雨にぬれながら外を走る。家に帰った彼は、アナからもらった贈答品を、「これがわたしに幸せなときを思い出させてくれました。アナ」という短い手紙とともに見つける。公開版は別れで閉じ、未公開のほうは贈り物が残る。

予告編、R指定、各国の禁止

最初のシングルはザ・ウィークエンドの Earned It(2014年12月24日)。次がエリー・ゴールディングの Love Me like You Do(2015年1月7日)で、ビルボードホット100で3位以内に入った。1月27日にはシーアの Salted Wound。当初は2014年8月1日公開と発表されていたが、2013年11月、バレンタインデーに合わせ2015年2月13日へ押し戻される。2014年1月25日、ユニバーサルは「Mr. Grey will see you now」と書かれたポスターを米国内五か所に掲示した。7月24日、性的描写をカットした予告編が朝の番組で流れ、無修正版は同日インターネットで公開。予告編ではビヨンセの Crazy in Love の新バージョンが使われ、Boots が作曲と編曲を担当した。ウェブ公開から一週間で3640万再生。12月中旬には9300万回。公開初週、各種チャンネルを通して1億回以上。YouTubeだけでは2015年2月までに1億9300万回、やがて3億2900万回以上。ニック・カーポウは、「このキャンペーンは、人びとに映画を観る許可を与えることになりました」と述べている。契約と鞭の映画を、バレンタインの許可として売った。

2015年1月5日、アメリカ映画協会は「せりふを含む、きわめて性的な内容、及び一部の異常な行動や生々しいヌード、言葉」を理由にR指定とした。オーストラリアはMA15+。イギリスは18歳未満視聴非推奨。カナダでは複数州が18A、ケベックは16+。フランスはR12と緩かった。レバノンはNC-21。マレーシアは「不自然」かつ「加虐的」として許可しなかった。会長は「もはや映画というよりもポルノ」と述べた。インドネシア、ケニア、ロシアの北コーカサス、アラブ首長国連邦、パプアニューギニア、カンボジア、インドなどでも検閲の対象となった。ナイジェリアでは一週間だけ公開されたあと許可を取り下げた。中国公開はユニバーサルが許可しなかった。フィリピンとジンバブエは修正版。ベトナムでは約20分カットされ、アナがベルトで叩かれるシーンはことごとくスキップされている。ノートルダム大学教授トーマス・ウィリアムズは、バレンタインデー公開を「キリスト教の殉教者をたたえる日にこんな性的な映画を公開するというユニバーサルの皮肉」と呼んだ。

5億6970万ドルと、支持率24%

北米で1億6620万ドル、その他の国で4億350万ドル、世界規模では予算4000万ドルに対し5億6970万ドル。2015年当時、女性監督作品としては『マンマ・ミーア!』『カンフー・パンダ2』『ワンダーウーマン』に次ぐ4番目の高収入で、劇場公開終了時には史上四番目のR指定高収益作品となった。Deadline.com は純利益を2億5655万ドルと計算している。美加では2月12日に2830館、翌日3646館で『キングスマン』と同時公開。史上最多のR指定公開劇場数だった。公開初日は3646館で3020万ドル、3日間で総合8510万ドルの1位。客層の女性比率は公開当日82%、バレンタインデー68%。しかし2週目週末は73.9%減の2225万ドル。海外初回は58カ国1億5600万ドル、58カ国中54カ国で1位。最大の初回は英愛マルタ。日本は初回682万ドルで総合5位、翌週には10位圏外。ハリウッド・リポーターは失敗の理由として、原作日本語版の発売遅れ、公開時期の悪さ、R-15規制による再編集でセックスシーンにぼかしがかかったことを挙げた。

Rotten Tomatoesは282件で支持率24%、平均4.20/10。「紙媒体の作品よりも創造性に富んでいるが、映像媒体としての満足度は低い」。Metacriticは46人で46/100。公開週末の観客調査は平均「C+」。USAトゥデイのClaudia Puigは台詞とテンポと演技を貶し、ガーディアンのピーター・ブラッドショーは5つ星中1つ、「映画史上最も純粋に、上品かつソフトコアなサドマゾヒズムの描写」と書いた。ニューヨーク・タイムズのA・O・スコットは「ひどい」と言いつつ、もだえたりくすくす笑ったりしながら見るのにはましな映画かもしれない、と書いた。デイリー・テレグラフのRobbie Collinは好意的だった。

2012年6月、Smash Pictures は三部作のポルノ版を撮る意向を表明した。2012年11月、ユニバーサルが提訴し、法廷外和解で Smash Pictures は制作とプロモーションの中止に同意した。二次創作から生まれた小説が、二次創作のポルノを裁判で止めた。2015年4月、ユニバーサルは『フィフティ・シェイズ・ダーカー』を2017年2月10日、『フィフティ・シェイズ・フリード』を2018年2月9日に公開すると発表した。サム・テイラー=ジョンソンは続編に戻らなかった。ジェームズ・フォーリーが監督候補に挙がり、両作品がバック・トゥ・バックで撮られると発表された。2016年1月29日にはスピンオフ版『Fifty Shades of Black』が北米公開。マーロン・ウェイアンズがグレイ役。契約書とプレイルームを売った第1作は、ラズベリーと5億ドルと、パロディのグレイを同時に残した。

BDSM → BDSM作品 → BDSM映画