貴美子は脅迫電話を受けたときから、人生に絶望のようなものを感じていた。得体の知れない恐怖におののいて、なす術を知らなかった。それほど貴美子は、人生というものに無知というか、世間知らずのところがあった。
短大を出た年の六月に望まれてすぐ結婚したが、すでにそのとき妊娠六カ月になっていた。つまり貴美子は二十一歳で真弓を産んだのだ。そんな貴美子が、夫が急死した後で、矢崎と肉体関係になったのは、ひとえに矢崎の強引さと、自身の体の内部にふつふつと湧いた、切ない性的欲望のなさしめるところであった。そして、三十五歳の熟れた肉体は、いったん火がつくとそれに溺れこんでしまった。
世間の荒波に揉まれた経験のない貴美子は、脅迫電話にどう対処していいかわからなかった。自分はともかく、一人娘の真弓にまで危害が加えられるのではないか、将来に傷がつくのではないか、と恐れた。
ところが、いざ脅迫の主に会ってみると、およそ脅迫という言葉がふさわしくない、まだあどけなさの残る少年ではないか。非道な要求はされまいと思うと、気が楽になった。もちろん相手の少年が何者かわからないが、第一印象として、とんでもないワルという感じはまったくしない。むしろ表情といい物腰といい、どことなく育ちのよさからくる品のようなものを感じる。
ただ、少年の下腹部で屹立しているものには畏敬の念を抱かずにはいられなかった。それは形も大きさも見事のひとことにつきた。
いくらか落ち着きを取り戻した貴美子は、少年の目的が何かをすぐに理解した。
私が警察に通報したり、まわりの者にしゃべらない限り、この子は案外おとなしいかもしれないわ……。
だからといって、子供の言いなりになっていいものだろうか。そこに、三十五歳の女の分別と計算が働いた。
「離してください……」
そんな言葉がなんの意味も持たないのを一番よく知っているのは、他ならぬ貴美子自身であった。にもかかわらず彼女は、同じ言葉を繰りかえした。そして、自分がとても矛盾していることに気づいて赤面した。そんな言葉を吐きながら、しっかりと男の象徴を握りしめているのだ。あわててペニスから手を離し、正紀の体を押しかえした。
二人の体が離れたことで、今度は怒張の全容が目の前にさらされた。そして、貴美子の豊かに張った乳房や、黒々とした茂みまでが、少年の視界に入ってしまった。
「綺麗な体をしているね」
大人びた言葉がかえって不自然だった。
この子は無理している……。
そんな目で見る余裕が、貴美子の内部に生まれつつあった。少年の手が乳房をスッポリ包みこんで、ぐるぐると揉みはじめた。貴美子は愛撫されている感覚よりも、むしろ、赤ん坊が乳房を求めてまさぐる感じを思いだしていた。
その時点では、まだ快感などなかった。だから落ち着いて相手を観察する余裕があった。年齢は真弓とそれほど違わないような気がした。
それにしても、なんと立派な分身だろうか。少年のものとはとても思えない巨大なペニスは、その存在を誇示するようにコツンコツンと、太腿のあたりに触れる。
「ね、また握って」
少年の声には、幾分の甘えがあった。
「できないわ……そんなこと」
気持ちとは別のことを、口が勝手にしゃべっていた。
「頼むよ。女の人に触ってもらうと、とても気持ちいいんだもの……ねえ」
もっといろいろ言わせたい気になっていた。
「どうして私がそんなことをしなければいけないの……いやです」
「頼むったら……自分でやるよりずっといいんだ」
貴美子の体のなかで、疼くものがあった。
「自分でやるって……オナニーのことね。あなたオナニーをしょっちゅうしてるの?」
そう聞きながら、貴美子は胸が高鳴るのを感じた。血がざわめく。
「だって……そうするしかないじゃないか。ねっ、やってったら!」
少年の苛立った声は、むしろ貴美子の耳に快かった。
「やっぱりできないわ」
声がかすれた。
「こうやって……」
正紀は貴美子の手を、もう一度ペニスに押しつけた。それだけなのに、貴美子の指は開いて、しっかりと少年の肉棒を握りしめた。
ほらやった……本当はそうしたくてたまらないくせに……。
正紀は、自分の芝居がうまくはまったことに満足した。しかし、芝居をここで終わらせるわけにはいかない。もっとつづけて、女がどんな反応を見せるか試したかった。
「これでいいの?」
貴美子の声は、前よりも重く湿っていた。
「そう……ね、それを擦って……」
貴美子はドキンッとした。生理になったとき、亡くなった夫がよく要求したものである。少年はそれと同じことを望んでいる。
「擦るって……こうやるの?」
貴美子の手がゆっくりと表皮を擦った。
チェッ、よく知ってるくせに、とぼけちゃってさ……。
正紀は必要以上に大きく呻いて、乳房を握っている手に力をこめた。貴美子は何も言わなかった。正紀は薄目を開けて、貴美子の表情を盗み見た。貴美子は自分の手もとを凝視していた。顔が、酒でも飲んだように赤い。目が泣いたように潤んでいた。
「ああっ、ああっ……気持ちいいよォ」
演技で声をあげるうちに、実際に正紀の快感はぐんぐん上昇していった。
「そんなに……いいの?」
声をつまらせながら、貴美子は聞いた。
「いい……とってもいいっ……自分でするよりずっといいよっ!」
正紀は気張った。もう芝居ではなかった。女に真実を知らせることは、快感をいやがうえにも高めた。
「そんなに自分でするの? 毎日オナニーしてるのね?」
「するよ……毎日……」
擦る手にスピードが加わっていた。
正紀はこらえるだけこらえた末に、いきなりバルブを解き放った。その瞬間を、正紀は大きく目を開けて見た。
貴美子は不意をつかれた形になった。手のなかでぐんぐん膨張する肉棒の力強さに圧倒され、気もそぞろになっていたとき、突然てのひらがはじかれるような衝撃を受けた。次の瞬間、ローズ色に輝く亀頭の先口から、パッと白濁した液体が自分の顔面めがけて飛んできたのである。
避ける間などなかった。精液弾の第一撃は、貴美子の唇を直撃した。目もくらむような匂いが、鼻のなかに入りこんだ。思わず顔をそむけ、肉棒から手を離した。肉棒は大きく脈打ちながら、第二、第三と噴出をつづけ、貴美子のバストや下腹は栗の花の匂いがする精液でドロドロに汚れてしまった。
貴美子は呆然と立ちつくした。正紀は息を荒げながら、バスタブの縁に腰をおろした。
「びっくりしたわ……こんなにいっぱい出すんですもの……」
貴美子の声は、興奮で干からびていた。
「ねえ、こっちに来て」
正紀のトロンとした目に魅せられたように、貴美子は少年の目の前に歩み寄った。体に付着したものは、いつのまにか冷んやりしていた。正紀はそれをてのひらにまぶして、貴美子の体に塗りたくった。
汚されていく自分自身を見つめているうちに、貴美子はひどく高揚していくのを感じた。目に見えない部分の柔肉が、いつしか熱く湿り、複雑な肉襞がひとりでに細かく震えていた。
「あっ、こんなに硬くなった……」
正紀はわざともの珍しそうな声を出して、乳首を引っぱった。
乳暈から飛びでた乳首に、痛みと疼きが同時に走り抜けた。少年の指が乳首を離れて、ゆっくりと茂みのほうへズリさがった。
貴美子は言うべき言葉がなかった。今になって拒む言葉を口にしても、どんな効果があるのだろう。空々しいだけではないか。ただ、今の状態をこのまま甘受するわけにはいかなかった。
戸惑いと混乱のさなかにあったとき、茂みのなかを、少年の指がまさぐりはじめた。甘美な疼きが、すぐに生じた。腰を引こうという意志があったが、ぬるついた部分に指が這いまわると、もう腰が砕けそうに震え、さらに強い接触を求めて少年の指に押しつけていた。
「濡れている……トロトロに濡れている」
正紀は指先を巧妙に蠢かせた。貴美子の腰が開いた。女が何を求めているか、正紀にはもうよくわかっていた。
「ねえ、どうしてこんなにヌルヌルになってしまうの?」
正紀は無知を装って聞いた。貴美子がなんと答えるか、楽しみだった。
「ねえ、どうしてなのさ」
指を突起に押し当てた。
貴美子が返事の代わりに、ふらふらっと壁面に寄りかかって、切なげに呻いた。
「ねえ、教えて……」
正紀は指先を引き抜いて、目の前で絡んだ糸の引き具合を見るように、二本の指を離したり閉じたりした。
「そんなことしないで……」
貴美子は顔だけでなく、全身を朱に染めて少年の指を手のなかに包んだ。自分でも、愛液の濃さに驚いた。まるで糊をまぶしたようである。
「ねえ、女の人ってみんなこんなになっちゃうの?」
正紀はわくわくしていた。無邪気を装って聞くのは楽しかった。もう一度、指を女の股間に押しこんだ。貴美子はなんの抵抗もなく受け入れた。待ち望んでいたようで、正紀はおかしくてならなかった。硬く大きい肉芽をつまむと、貴美子は下腹部全体を正紀の顔のほうに突きだし、ハアハアと息を荒げた。
「気持ちいいの?」
女の顔が曖昧にうなずき、か細い声を出した。
「そ、そんなことをすれば、女は誰だって濡れてしまうわ」
「ここも大きくなっている……」
正紀は楽しくてたまらないような声をあげ、肉の突起をいじくりまわした。貴美子が同調して腰を振った。
もう二人は脅迫する者とされる者の間柄ではなかった。少なくともこの時間だけは、同じ目的を持った男と女だった。
「ほら、ぼく、また大きくなっちゃった」
少年のあどけない声を耳にした貴美子は、誘われるように視線を落とした。
「ああ……」
知らぬ間に驚嘆の声がもれた。バスタブの縁に腰をおろした正紀の両腿の付け根から、そこだけ不釣り合いな肉棒が天を睨んでいた。毒々しいまでに表皮に浮きでた血管は、貴美子の官能を波立たせ、秘肉に強烈な刺激を与えた。
貴美子の恥肉の淫らな反応を正紀の指は敏感に察知した。おびただしい量の快液が、まるで小水のように正紀の指に浴びせられた。正紀はそのまま押しこんだ。
「あっ……あああーん……」
正紀の両肩に掴まりながら、貴美子はブルブルと震えた。強い快感を必死にこらえている表情は、美しく紅潮していた。熟く潤んだ膣肉に包まれた指は、初めのうちこそ窮屈な感じがして動かしにくかったが、馴れてくると、ざらつく膣襞をこそぐように刺激した。
「ああっ、駄目、そんな……あああ、どうしよう……」
腰がいやらしく揺さぶられる。
さあ、もっと楽しみなよ……。
正紀は貴美子を見あげながら、心のなかでそうつぶやいていた。
それにしても矢崎のやつ……。
社会科主任の矢崎が、こんなふうにして貴美子を歓ばせているのかと思うと、正紀は急に腹立たしい思いに駆られた。矢崎は多分、四十歳をすぎているだろう。謹厳実直そうな顔をして、油断ならない男だと思う。
「もう駄目……勘忍して……あっ……抜いてちょうだい……」
これ以上少年の好きにさせたら、狂態をさらしてしまいそうだった。本気で貴美子は腰を引こうとした。
正紀は女の腰を左手でかかえこんで引きつけ、胎内におさまっている右手の指を鉤型に曲げて、ちょっと意地悪なくらい強引にごりごりとかきまわした。思わぬ攻撃に、貴美子はけたたましいよがり声をあげて、一気に最後まで突っ走ってしまった。
「イクわ……イクッ、イクッ……イクーッ
!!
」
正確な時を刻むように、貴美子はほとんど一秒間隔ではっきりと区切って叫び、全身を痙攣させた。
正紀は貴美子がどういう状態に陥ったのか、よくわかっていた。膣肉に締めつけられた指に、どこからともなく湧いた生温かい溶液が、たてつづけに浴びせられる。
貴美子は秘肉に指を挟みつけたまま、いつまでも立ちつくしていた。正紀にとっての本格的な戯れは、ようやくこれからはじまろうとしていた。
【第五章 脅迫と倒錯に咽ぶ淑女】
貴美子は浴室から、屠場に引かれる牛のように部屋へ連れ戻された。
貴美子は屈辱にまみれていた。なにしろ相手は、まだ年端もいかない子供である。自分の娘といくつも変わらないだろう。その少年を相手にして、指だけで気をやらされてしまったのだ。
少年は平然としている。それだけによけい恥ずかしかった。しかも、正紀は恥毛を引っぱって貴美子を部屋に連れ戻したのである。まるでオモチャ扱いするように。それに抗議する気力も、今の貴美子にはなかった。「女の人って、指だけであんなになっちゃうんだね」などとからかい半分に言われれば、なおさらである。
「さてと」
素っ裸のまま、正紀は添えもののように置かれた椅子に腰かけた。
貴美子は両手を重ねて恥部を隠し、何を考えているのかわからない無気味な少年を見ていた。立っているのが苦痛だった。
そんな貴美子の落ち着かない姿を、正紀は自信たっぷりな表情で見つめた。
時折り、貴美子は反発するような視線を向けたが、すぐに眉をひそめて、あらぬほうを向いてしまう。こんな子供にどうして、と思うのだが、自分に負い目がある以上、どうしても太刀打ちできない。
「もう充分でしょう……帰してください」
「とんでもない!」
正紀は即座に拒絶した。
「ぼく、まだ満足なんかしてないよ。ほら」
下腹部から突きでた肉棒を握った正紀は、女の視線に勃起したペニスをさらすことに快感を覚えながら、ゆっくりと擦りはじめた。貴美子はいったんは目をそむけたものの、すぐにまた視線を戻して、怖い顔をして正紀を睨みつけた。そうするのが年上の女の当然の義務であるかのように。
「毎日こんなことをすると、しまいにはクセになるって聞いたけど、本当なの?」
そう貴美子にわざとらしく質問しながら、相変わらず手は動かしたままである。
その手に握られている猛々しいこわばりと少年の表情が、あまりにも不釣り合いなので、貴美子は自分の目にしているものが現実ではなく、何か夢のなかの世界のように思われてならなかった。しかし、現実の感覚が彼女の恥ずかしい女の構造を微妙に震わせた。
自分の意志でそれを抑制できないのが口惜しい。アッと思ったときには、粘膜を押し分けるようにして、内部に溜まった濃厚な蜜が溢れだしていた。
内腿に光ったものがスーッと伝わると、正紀はめざとくそれを見つけて、手の動きをとめた。
「ねえ、こっちへ来なよ。ここへ」
彼は自分の太腿の上をペタペタと叩いた。
「そんなこと……」
いやよ、と言うつもりだったのに、勝手に足が向いていた。ただ、女のしたたかさで「何をするつもりなの?」と聞いていた。
「向き合ってはめっこするのさ」
正紀がこともなげに言ったとき、貴美子の体もそれを歓迎するかのように震えた。はめっこという子供言葉の持ついやらしさに、貴美子は身も心も淫らに反応した。
「さあ、乗って」
正紀がうながすと、もじもじしながらも貴美子は両脚をひろげて太腿の上に乗った。ガニ股のような自分の姿が、正紀の後ろにある壁面の鏡に映った。貴美子は食い入るようにそれを見た。
「入れさせてよ……ねえ、早く入れさせて」
正紀の切羽つまった声を聞いたとき、貴美子は自分に主導権があると思った。
しかし、正紀はすべてを計算していた。この部屋にいる限り、自分の思うままに振る舞うつもりだった。だから、そのときその場の気分で思いつくままのことを女に要求した。
貴美子が腰を調整するように動かすと、割れ目のぬるついた部分に怒張の先がスポッとはまりこんだ。
二人は同じようなよがり声を出して気張り、より深い密着度を求めて腰を寄せ合った。
「ああっ、いい……」
貴美子は自分の真実の声に驚いた。
少年の肩越しに、自分の顔が鏡に映しだされている。ふしだらにも淫ら色に陶酔しきった表情。それが自分の顔なのだと思うと、貴美子は強烈に挑発された。矢崎がいつか言った「イクときのあなたの表情は最高だよ」という言葉を思いだし、それをいま見たいと思った。
「鏡を見てるんだね」
貴美子の乳首を胸板で擦りながら、正紀が言った。
わかっていたんだわ。この子には敵わない……。
「だって見えるんですもの」
貴美子は正直に言った。
「ぼくも見たい」
正紀は甘えた声を出した。それが年上の女に対して効果的だということがわかっていた。
「そんな、見るだなんて……」
貴美子の湿った声は、もう同意しているも同じだった。
「見たい。二人でセックスしているところを見たいよ!」
「無理よ。ここでは……」
貴美子は腰を使ってしまいそうだった。少年の要求していることを実現させてみたい気持ちも、心のどこかに抱いている。鏡で見ながらセックスするというのは矢崎もよく望んだし、貴美子自身も、自分がセックスに次第に溺れていく姿を見るのは、悪い気がしなかった。
膣内におさまっているこわばりが、何もしないのに跳ねるように動いていた。それだけでも充分なのに、相手が動き、自分が応える、二人の淫らな狂態を鏡が映しだすのを観賞すれば、性の饗宴はいつ果てるともなくつづいてしまいそうな気がした。
「今度はぼくが見たい!」
「無理よ」
「椅子の位置を逆にすればいい」
確かにその通りなのだが、そうなると貴美子は見る楽しみを失う。それに、正紀の膝の上に乗ったまま体を動かすのは、動きが制限されて無理だった。椅子がギシギシと軋んだ音をたてるのも気になる。
「そんなに見たいの?」
「見たい!」
「しようのない人ね……」
貴美子は正紀から離れた。充実した逞しい肉棒が、窮屈な股間から抜けてしまうのは惜しかったが、それをうわまわる素敵な楽しみがすぐに再開されると思うと、期待と興奮で恥ずかしい柔肉が嬉々としてはずんだ。膣肉にどっぷりと浸っていた怒張は、湯気が立ちのぼるほど濡れそぼっていた。
「どうしたの?」
「だって、あなたがあんまり見たいって言うから……」
「椅子の位置を変える?」
「そうじゃないわ。ベッドに行きましょう。仕掛けがあるの。その代わり、私を早く帰して。こんなところにいつまでもいたくないわ」
最後のつけ足しの言葉は、自分を正当化するためのものだった。
私はあなたの望んでいるようなことを少しも欲していないわ……。
貴美子はそんな顔をして、先にベッドに乗った。
後ろからその姿を見ていた正紀は、ヒップの割れ目からほんの一瞬チラッと見えた長い亀裂に、女の正体を見た思いがした。
「ほら、こうすれば見えるわ」
壁側に細工された小さな襖を開けると、ベッドと同じ位置に等身大の細長い鏡がはめこまれてあった。二人の貴美子がベッドに横たわっている。
「矢崎先生とも見ながらしたんだね」
正紀はその時の光景を想像した。
「やめて!」
貴美子は強い調子で否定したが、あらぬほうを向いた表情には、言葉ほどの強がりは見られなかった。
正紀は、女は不思議な動物だと思った。本来、貴美子はあくまでも被害者であって、正紀とは同一のレベルにない。言ってみれば、はるかに格下の存在である。加害者の命令を泣きながら拒み、哀願して取りさげてもらうよう努力しなければならないのに、ちょっと加害者がやさしくすると、すぐにつけあがって、同一レベルの存在であるかのような振る舞いをする。
この女、ぼくが演技していることに、まったく気づいていないのだろうか?……
どうもそうらしい。女という生き物はおしなべて鈍感のようだ。今にみてろという強い気持ちを内に秘めて、正紀は鏡をのぞきこんだ。
「こうすると、もっとよく見えるのよ」
貴美子がスイッチを押すと、ベッドの中心に、映画のスポットライトのような照明が当たった。
「ねえ、とにかく私、早く帰らないと」
貴美子はまたしても、こんなことに長い時間はかかわっていられないというような言い方をした。
すっかり友だちのつもりでいやがる!……
正紀はベッドの真んなかにゴロリと引っくりかえって、顔を鏡に向けた。分身は見事な角度を保って反りかえっている。
「さあ、しようよ。見ながらセックスしようよ」
小鳥がさえずるように言うと、貴美子が戸惑いの表情を見せた。
「上に乗るんだ……そういうやり方でしたことあるんだろう」
さりげなく、それでいて、じんわりと聞いた。
貴美子は答えずに、いかにも渋々と、這うように体を低くして乗りかかろうとした。ぶざまな姿を見せたくないらしい。
「ストップ!」
貴美子のいぶかしそうな顔を眺めながら、正紀はやさしく微笑んだ。しかし、心のなかでは、少しずついじめてあげるからね、とつぶやいていた。
「駄目だ。ちゃんと体をまっすぐ立ててから、ぼくをまたぐんだ。さあ立って」
「…………」
貴美子はその姿を想像した。開いた両脚の間をまともに下から見あげられたら……。
「さあ、やるんだよ」
今までの甘えが消えて、少年の顔には厳しさが滲みでていた。大人の顔になっていた。
「下から割れ目を見たいんだ。さ、ちゃんと両脚をひろげてまたぐんだ」
貴美子の表情に怯えが浮かんだ。
正紀は強い力で貴美子の尻をパシッと叩いてうながした。ビクッとしたように貴美子は立ちあがり、両手で恥部の前を覆って少年の体をまたいだ。しかし、両手で隠しきれるものではなかった。仰ぎ見た正紀の目には、そのほとんどが見えた。
長く割れた肉の亀裂には、複雑に濡れた大きなホールと無数の皺に囲まれた小さなすぼまりが、わずかな間隔を置いて同居していた。差渡しの狭い肉路は赤褐色に染まり、その近くまで生えた短毛は、口のまわりに生えたヒゲのように思えておかしかった。
「手をどけるんだ。ちゃんと見せて」
貴美子の表情が歪んだ。情けない立場を、今になってやっと思い知ったようだった。
いっさいの障害物が除去されたので、何もかもが丸見えとなった。貴美子はいたたまれない思いで、立ちつくすしかなかった。
針で刺されるように、開かれた秘肉のあたりに痛みが走った。その痛みには、特別な味つけがしてあった。疼きであり痺れであり、それらを一括した快感という感覚だった。貴美子はいつまでも立っていることに耐えられそうもなかった。膝が震え、体が不安定に揺れた。
「あ、流れてきた……」
下から楽しげな正紀の声がした。貴美子にはその意味がよくわかっていた。両脚を開いて少年をまたいでいるから、いつも閉じているはずの肉の裂け目が、締まりなく左右に割れている。その奥から、女性特有の愛の蜜が、自然な流れの法則に従って下に落ちてくる。内腿に生温かいものが走って、どんどんふくらはぎのあたりまで流れ落ちた。
「さっき、いじられると女の人は濡れてくるって言ってたけど、これはどういうこと? ぼく、どこも触ってやしないのに……」
あなたが、いやらしい目で見るからよ!……
しかし、そう言っても、女の複雑な心の動きや生理を、少年は理解できないだろう、と貴美子は思った。
「ね、座らせて……疲れたわ」
実際は、恥ずかしい姿をいつまでもさらしていることに耐えられなかったのだが、貴美子はそう言って、少年に理解を求めた。
「なんだ。もう入れてほしくなったんだ」
正紀はニヤニヤした。
「ち、違うわ!」
そーら、きたぞ……。
そう思ったが、とぼけた。
「違わないだろ」
「疲れただけよ」
「ま、どうでもいいけどさ。じゃ、座っていいよ」
貴美子はホッとしたように腰を落とした。正紀の腹か太腿の上に座ることになる。彼女は前者を選んだ。そうすれば、こわばりはヒップの後ろになるから、見ないですむ。太腿の上に膝をおろせば、自分の割れ目がこわばりと間近に対面してしまう。それを避けたのだ。しかし、誤算があった。開いた柔肉と正紀の顔の間隔が、あまりにも近づきすぎていた。
正紀はわざと大きく息を吸いこんだ。
「いい匂いがする……これが女の匂いなんだ……」
貴美子は両手で、割れ目を少年の視線から隠した。
「いちいち隠すなよ。ぼくは見たいんだから」
貴美子は自分の意志が通じないことをはっきりと思い知らされた。
情勢は刻々と悪くなるばかりだった。貴美子の秘部はすべて正紀の視界の範囲内におさまった。分厚い粘膜は人間の唇を縦に置いたようであり、見方によっては滑稽でもあった。
「ふふふ、冷たい……」
貴美子のひろげられた太腿の付け根がグッショリ濡れたまま、自分の腹に押しつけられているので、正紀はあまりいい気持ちがしなかった。
濡れ具合を指摘され、貴美子は非常に恥ずかしい思いをした。けれどもそれが事実だけに、反論できない。
正紀は目の前にひろがる、鮑に毛の生えたような女陰をしみじみと観察した。貴美子がどんな顔をしながら耐えているか、おおよその見当がついたが、わざと素知らぬふうを装い、ひたすら目を凝らして女芯を眺めた。
本当に淫らな表情をしていると、つくづく感心した。衣服をまとったときの女からは、絶対に想像もできない代物で、まさに神の造型物のなかの秀れものに他ならなかった。正紀はおもむろに、生きた姫貝に向かって手を伸ばした。
さあ、これから触るよ……。
そう告げるかのような手の動きは、見ている貴美子にある種の緊張感を与えずにおかなかった。
正紀は、貴美子の深い吐息を聞きながら、濡れそぼった恥毛を人差し指でくしけずるように分けた。剥きだしになった陰唇から、さらに強い匂いが漂うと、正紀は卑猥な感情に押しあげられて、新しい冒険への旅立ちにざわめくのだった。親指の腹で飛びでた陰核を下からスーッとなぞった。
「ひいーっ……」
くぐもった歓びの声をあげながら、貴美子の体がピョコンッと跳ねた。すぐに正紀は指を引っこめて、今触ったばかりのところを注視した。触発された女の秘肉は、もっと強く触ってとでもいうように細かく震えていた。豆粒大の陰核は大きく膨らんだ風船のようにパンパンに張り、ちょっと強い力で突つくと、すぐに破裂しそうな感じだった。
もう一度指を伸ばしかけた正紀は、あることを思いついて、ニヤニヤした。行き場のないような貴美子の右手を取ると、肉芽に押しつけた。
少年の意図を敏感に察した貴美子は、びっくりして手を引っこめてしまった。
正紀は下から笑顔を向けながら、「触るんだ。自分の指で自分のクリトリスを……さあ」とうながした。決して強い口調ではなかったが、貴美子にはズシリとこたえる重みがあった。
あらゆる抵抗が無駄だと知りつくしている貴美子は、動作におどおどした感じを滲ませながら、指先をクリトリスにあてがった。
「自分でもするの?」
いきなりの恥ずかしい質問は、三十路の女を大いにあわてさせた。
「そんな……しないわ、絶対に!」
あまりにも強い口調は、かえって真実からかけ離れていることをうかがわせた。
「へーえ、オナニーしたことないの……ぼくなんかしょっちゅうさ」
「男と女とでは、体の仕組みが違います」
貴美子はムキになった。
「フーン……そう言われてみると、男はこんなに濡れたりしないなァ……」
鼠蹊部を指が這うと、貴美子は悶えるように腰を振った。そして、自分の気持ちを裏切った体に腹を立てた。
「感じやすいんだ、女の人って……さあ、早く自分の指で触るんだ。いろいろ見せてよ」
「いろいろって
!?
」
貴美子は不安そうに正紀を見た。
「触るだけじゃ駄目さ。ぼくはオナニーするところが見たいんだもの」
平然と言う少年が恐ろしかった。
「早く帰してください」
唐突に貴美子は言った。
早く帰りたいから、言うことを仕方なく聞くのよ……。そんなずるさが、正紀には気に入らない。しかし、顔には出さないで大きくうなずいた。
「こんないやらしいこと……したことなんかないのに……」
貴美子の弁明を、正紀は腹のなかでせせら笑った。
貴美子は真実いやそうな顔をしながら、仕方なさそうに陰核をなぞりはじめた。貴美子の気持ちを集中させるために、正紀は何も言わないことにした。そして大袈裟な表情を作って指の動きを注視し、ときには喉を鳴らして唾を呑みこんだりした。
貴美子は本気でやるつもりなどなかった。いい加減なところでお茶を濁すつもりだった。しかし、長時間にわたる前戯で高められた性感がそれを許さなかった。
最初にクリトリスに触れたとき、自分でもびっくりするほどの快感が生じた。チラッとさりげなく見おろすと、正紀が今にも食いつきそうな顔をして股間を凝視している。距離にして三十センチと離れていない。
正紀の吐く生温かい息が、濡れた陰唇にかかるのがよくわかった。おざなりでやるはずが、途中から気持ちに変化が生じていた。自分の弱点を握っている相手は確かに強者であり征服者であるが、まだ子供ではないか。挑発して、どんな顔をするか見てやりたいような気持ちも湧く。
そう考えると、気持ちが高ぶった。今は亡き夫に強要されてオナニーをしたことがある。はじめのうちはいやでたまらなかったのに、いつしか夫を歓ばせることに興味を覚え、すすんでやるようになっていた貴美子である。気持ちを切り換えるのも早かった。
緩慢だった指の動きが徐々に速まった。自分自身の指だから、快楽のツボをさぐるのも容易である。押したり、二本の指に挟んで円を描いているうちに、本格的な快感のとりこになっていた。紅潮していく正紀の顔を見ていると、さらに歓びも興奮も高まる。
「見て! 貴美子のオナニー、見てちょうだいっ」
左手で粘膜を引っぱると、女陰全体に緊張感が張りつめて、快感も鮮烈になる。ついにはかきむしるように指を操った。股間でグチョッといやらしい音が発生したが、それはむしろ夢中になっている貴美子の耳には、またとないBGMとなった。
「ああっ、いいわ……気持ちよくってよ、ほら……こんなに濡れてる!」
貴美子は首を折り曲げるようにして股間をのぞきこんだ。そして、歪んだ恥肉の上で指を躍らせながら「触って! あなたも触って!」と少年をうながした。
正紀は人差し指の腹を上に向けると、貴美子の指の妨げにならないように、一番下の会陰部から差しこんだ。
「ああっ、ああっ、いいっ
!!
」
貴美子は腰をはずませて、自らの指を淫裂のなかに押しこんだ。そうしながら、手首に近いてのひらの分厚い肉の部分で、クリトリスを含めた割れ目全体を激しく揉みしだいた。膣に押しこまれた二本の指は、Gスポットと呼ばれるあたりの天井部分のざらつきを、かなりの力で擦った。
正紀は貴美子が限界寸前にまで高まるのを待った。貴美子の様子が一変したとき、正紀は女陰をまさぐる手を払いのけて、ストップをかけた。
貴美子は息をはずませながら「どうして?」というように正紀を見おろした。
「もっといいことがあるんだ」
正紀は体を乗りだすようにして、サイドテーブルの上にある電話を手にすると、それを貴美子の手に預けた。
「?…………」
貴美子は不審そうにしている。
「電話をするんだ」
「どこへ?」
訝しげな顔に、にわかに不安の色がひろがった。
「矢崎先生のところさ。さあ」
「いやです……家に電話なんかできないわ」
「奥さんが出るかもしれないから?……じゃ、ぼくによこしなよ。奥さんが出たら、ぼくが出て、いい加減なことを言って切っちまう。先生が出たら、何も言わずにあなたに渡すよ。いいね」
「何をしゃべればいいの?」
「愛してます……じゃ、平凡で面白味がない。だから……」
「だから?」
「我慢できなくてオナニーしてるって言うんだ。いいな!」
最後のひとことのときだけ、正紀は怖い顔をした。
「ひどいわ……」
恨みがましく言ったものの、貴美子は電話せざるをえなかった。
電話に出たのは矢崎本人だった。正紀はすぐに受話器を貴美子に押しつけた。
「私です……」
貴美子が沈んだ声を出した。
相手が何を言っているのか、正紀には聞こえない。受話口に耳を近づけた。そして貴美子の感情を高めるために、股間をまさぐり、クリトリスを揉んだ。
不意をつかれた貴美子は、思わずよがり声をあげてしまった。
「どうしました?」
矢崎は丁寧な口のきき方をした。正紀は、さあ言うんだとばかりに、またクリトリスを揉み、そのうえで空いている貴美子の片手をそこに導いた。
「……はい、私、淋しくて……」
貴美子は真っ赤になって口ごもった。
正紀はわくわくしながら、ピタリと受話器に耳を押しつけ、一語一句聞きもらすまいとした。
「そりゃ、ぼくも同じですよ……でも、どうしてこんな時間に?」
「奥様は?」
「風呂に入ってる。よかった」
「私……笑わないで……」
「どうかしたんですか? 変ですよ……言ってください。何があったんです?」
「我慢できなくて……どうしても我慢できなかったので……今、自分の指で……」
電話の向こうから、矢崎の息を呑む様子が伝わってきた。
正紀は震えだしたいほど興奮した。
「ごめんなさい、こんな電話……」
貴美子が切ろうとしたが、正紀は強い力でそれをとめた。そして、貴美子の手に自分の手を重ねて、こうやるんだとばかりに、激しく動かした。
「ああっ……先生……」
貴美子の口から自然にもれた言葉だった。
「長谷部さん……つづけるんだ! その声をもっと聞きたい」
低いが、矢崎ははっきりとそう言った。
正紀は貴美子の自慰を手助けするように、乳房に吸いついた。
「あっ、あああ……ハァン……」
貴美子が仰向けになってオナニーに熱中しはじめるまでに、そう時間はかからなかった。
正紀は、想像していた以上の効果に満足したが、同時に自分も限界に近いことを悟った。
正紀は貴美子の両足首を持って、高々と脚をかかげた。貴美子は自分の行為にのめりこんでいた。正紀は膨らみきったこわばりを、充血した粘膜の狭間に押しこんだ。
ひときわ高いよがり声をあげて、貴美子はなおも陰核だけを弄ぶ。割れ目をうがった肉棒は、すぐに激しい締めつけにあった。
「イキそうっ……ああっ、どうしよう……たまんないっ……」
貴美子は電話を手離して悶え狂った。
「もっとやるんだ! 貴美子、もっとしてっ
!!
」
矢崎の声が受話口の振動板を揺るがしていたが、正紀はそのまま乱暴に電話を切ってしまった。
貴美子はそんなことにかまわず、はしたない言葉を口走り、さらに性的な快感を高めていった。
「どうだ、いい気持ちか?」
「いいっ……いいわっ! はあーっ……もう私……我慢できない」
貴美子が両脚を絡ませて、陰阜をドスドスと突きあげてくる。正紀は発情した女体にひしとしがみついて、一気に熱水をほとばしらせた。
「うーっ、出てる!……」
激烈な噴射を感じた貴美子は、少年の脈動に合わせるように愛液を噴きあげて、いかに気持ちいいかを声高に喚き散らすのだった。
【第六章 弄ばれた好奇心】
正紀は一人の女性に執着しなかった。
それがさいわいしてか、どの女に関しても警察沙汰になることはなかった。
もっとも相手の女たちは、息をひそめて、再び正紀が襲ってくるのではないかと思い悩んでいたのが実情である。それに対して、悪魔の如き少年、正紀は、二度と彼女たちの前に現われることはなかった。
とはいっても、女に興味がなくなったわけではない。若いだけにすぐによこしまな考えが頭をもたげてくる。体が要求するのである。土曜と日曜になると、特に時間的な余裕が生まれるからか、集中的に女体のことを考えてしまう。
あの女はよかったな。この女はこうだったっけ……。
そんなことを思い起こしていると、正紀は自然と体が熱くなってくる。
土曜の下校途中、正紀は銀座の文房具専門店に出かけた。
美しく着飾って街を歩く女を見ると、ついつい下半身を想像してしまう。
みんなアレをくっつけているんだ。いくら澄ましても、みんな知ってるんだぜ……。
正紀はなんともいえない優越感にひたりながら、四丁目の三越の前を、松屋のほうへぶらぶらと足を運んだ。
夏の名残りの日射しはかなり厳しい。しかし、湿気がないので爽やかである。赤信号で立ちどまると、向こう側でも大勢の人たちが足をとめている。
おやっ
!?
……
父の伸吾がいた。隣りの女に話しかけている。女も笑顔で受け答えしている。ゴルフ練習場で父と一緒にいた女であった。
二人に気づかれないよう、正紀は建物の陰に隠れた。二人は、正紀が来た道をゆっくりと仲睦まじそうに歩いていった。後ろ姿を見送りながら、正紀は似合いの二人という感想を持った。
以前のように、女に対して憎いとか腹が立つとかいう気持ちはなかった。女が清楚で、慎み深い感じがしたからかもしれない。どこか死んだ母に似ているような気がした。
あの女を、父は抱いたのだろうか……。
ふとそんなことを考えた。
正紀は女性を知ってから、父に対して以前より寛大な気持ちを持てるようになった。自分自身に照らし合わせてみると、男なら女に対して性的な欲望を抱くのが当然と思うのだ。
家に戻ったのは父より先だった。
父とさっきの女が裸で重なり合っている姿が浮かんだ。
いい女だったな……。
いつのまにか、父が自分に変わっていた。女に対して、不透明な欲望が湧いた。
風呂に入って、これまでのレイプについて思いを巡らせていると、ペニスがにわかに膨張した。女が欲しいという思いが急激につのった。
膨らみきった分身は、なかなか小さくなってくれない。浴室で正紀は、しみじみ怒張を眺めた。自分自身の欲望がびっしりつまっていると思うと、気の毒な気もするし、愛おしくもある。
もうすぐ、また思いっきり楽しませてやるからね……。
自分の手で始末しようとしたとき、脱衣室に置いてあるコードレスホンが鳴った。大急ぎで濡れた手を拭き、電話を取りあげた。
「はい?」
父からだろうと思ったが、電話の向こうの主は、思ってもみない人物だった。
「すみません、夜分遅く……私、F組の市村という者ですけど、おわかりでしょうか。市村香澄です……」
わかるもわからぬもない。学院のトイレで犯したのが、香澄の義母、理恵である。そのことに関しての電話かと、正紀はにわかに落ち着きを失った。
「あのう……わかります?」
正紀が沈黙したままだったので、香澄は遠慮がちにまた聞いた。
「ああ、わかる……わかるよ……」
西洋人形のように彫りの深い香澄の美貌を思いだしながら、正紀は口ごもって答えた。
「よかった……」
香澄はホッとしたらしい。屈託のないはずんだ声がした。
「で、何か?」
正紀は警戒した。
バレたのだろうか
!?
……
しかし、理恵は香澄の実母でなく、後妻として市村家に入ったと聞いている。確かまだ二十代のはずだ。市村家は財産家だから、若さを犠牲にしたとしても、玉の輿に乗ったというべきだろう。そんな女が、義理の娘に自分の汚点をしゃべったりするものだろうか。
「実は学級新聞のことで、ちょっと相談したいことがあったの……」
自分を知っていてくれたという気やすさからか、香澄の声には親しい友だちと話しているような感じがあった。
「ああ、学級新聞ね……」
正紀は緊張感から解放された。
学院では自由教育の一環として、各クラスごとに毎月一回、生徒の企画編集による学級新聞を発行させている。そして、年間を通して、独創性のあるクラスを表彰する。一年生のとき、正紀はクラスの新聞編集委員をやり、年間グランプリを獲得した。F組の新聞編集に携わっている香澄は、その件で相談をもちかけてきたのだった。
「グランプリとまではいかなくても、せめて努力賞ぐらいはとりたいの。いきなりで悪いんだけど、コツのようなものがあったら教えてほしいの」
話を聞いているうちに、正紀は自分の女性経験に、同年代の若い女がいないことに気づいた。
不自然だよな、これって……。
途中から香澄との会話はうわの空になっていた。
「……あら、御迷惑かしら?」
いきなり香澄の不満そうな声が流れてきた。
「い、いや、違うよ。いつでも相談に乗るさ。ぼくでよかったら」
香澄は、できることなら明日の日曜に会いたいと言う。正紀は即座に承諾した。場所は自分の家にした。父は早朝にゴルフに出かけて不在の予定である。
気がねなく訪問できると思ったのだろう、香澄ははずんだ声を出した。
「それじゃあ、お邪魔します」
電話を切った直後に父が帰宅した。上機嫌である。
父のそばへ寄ったとき、いつもと違うオーデコロンの匂いがした。ひょっとすると香水かもしれないが、正紀には違いがよくわからなかった。
父は翌日は六時に起きると言って、すぐに自分の部屋に入ってしまった。正紀もまたベッドにもぐりこんだが、明日の香澄とのことをあれこれと考えると、なかなか寝つけない。
正紀は、自分の好みが、ひょっとしたら若い娘よりも、年上の女に向けられているのではないかと思った。水着姿の女子生徒を見ても、欲情を覚えたことはない。
たったひとつだけ、気がついたことがあった。正紀は一人っ子で、母によく可愛がられた。その母が早くに亡くなったことと関係があるような気がする。
しかし、たとえ年上好みであるにせよ、性欲に目覚めた少年にとって、新しいターゲットは想像するだに楽しいことであった。
いつしか眠りについた正紀は、次の朝遅くに目覚めたとき、久しぶりの夢精に気づいて苦笑いした。体が欲しがっているのは、それだけで明白だった。
香澄は一時頃、正紀の家に来ることになっている。甘口のワインを冷やした。若い女体に対する興味だけで香澄に会うようなものである。学級新聞のことなど、正紀にとってはほんの付け足しでしかなかった。
シャワーを浴び、父が使っているオーデコロンを肌に擦りこむと、身も心も引きしまる。Tシャツとジーンズで身を包んだ。
午後一時きっかりに、ドアチャイムが鳴った。玄関先に出迎えた正紀は、まるで絵本から抜けだしてきたような令嬢スタイルの香澄に、少なからず失望した。長い髪は束ねて大きなリボンで結んである。パーティに出かける、おしゃまな幼稚園児のようだった。
正紀は父の書斎を使うつもりだったが、考えを変えて、自分の部屋に招き入れた。窓際にベッドがあるが、それでもかなりのゆとりがある部屋で、勉強机と椅子の他に、ガラスのテーブルと、それにふさわしい二脚の椅子も備わっている。
なぜ正紀が自分の部屋に香澄を誘ったかといえば、香澄があまりにも子供っぽかったので、ベッドがあっても気にしないだろうと判断したからである。
部屋に導かれた香澄は、案の定、ベッドを見ても特に興味を示さなかった。ただ男の部屋自体が珍しいのか、興味深そうにあたりを見渡している。
「ねえ、他に兄弟はいないの?」
「ああ、一人さ」
「私と同じってわけね……ふふふ」
香澄はツンと上を向いた特徴のある鼻をひくつかせた。
「何?」
「男くさい匂い……」
「君の部屋はどんな匂いがするの?」
「さあ、私にはわからないわ。今度家にいらっしゃいな。自分で確かめるといいわ」
芸能界で活躍しているせいだろうか、香澄は幼いスタイルのわりには、妙に大人びた口をきく。
香澄の家か……なるほど、それも悪くないぞ……。
正紀は、もし自分が香澄の家を訪ねれば、義母である理恵は、いったいどんな顔をするだろうかと考えた。自分を学校のトイレで犯した少年を、娘が家に連れてくるのだ。背筋がゾクッとするような興奮が体の芯を突き抜けた。
香澄は正紀のこれまでの学級新聞を持参し、正紀にいろいろなアドバイスを求めた。
正紀は、たとえ学生の新聞とはいえ批判精神が必要だと述べ、グランプリをとった自分の作品を取りだして説明した。
一時間ほどで、香澄の来訪の目的は終了した。そのまま香澄が帰ってしまえば、二人の関係はそれだけのものだっただろう。
「ねえ、いつ家へ来る?」
未練でもあるのか、あるいは儀礼的なものか、香澄のほうからさっきの話をぶりかえしてきた。
その時点で、正紀の肝は決まった。新しい冒険に出発するような高ぶりが湧いた。
「そうだね……やっぱり土曜か日曜がいいと思うけど」
「じゃ、今度の土曜にしない? パパはヨーロッパに出かけて留守になるわ。ママは気がねのいらない人だから」
「わかった。そうしよう」
理恵との再会がどんな結果をもたらすか、考えないことにした。
「ねえ、ワインが冷えてるんだ。飲まないか?」
「こんな明るいうちから?」
そう言ったものの、香澄はすぐに同意した。
「あら、これ、シャトー・マルゴーだわ」
冷蔵庫から持ってきたボトルを見て香澄が言ったが、正紀はワインの銘柄についてはまったく無関心だった。
ワインに詳しいのなら、もしかすると香澄は相当に強いのではと正紀は考えたが、いざ飲んでみると、一杯のグラスを空けただけで、香澄は熱い風呂から出てきたばかりのように頬を紅色に染めてしまった。さっきまでの可憐な子供の表情が、ほんの少しばかり大人っぽく見える。
「おうちの人、どなたもいないの?」
あまりにもシーンとしているのに耐えられないのか、香澄が口を開いた。
「父と二人暮らしだからね」
「淋しいわね」
「今日は君がいるから楽しいよ」
平気できざなことが言える自分を、正紀は酔ったせいかなと思った。
机の引出しからアルバムを持ちだし、さりげなくベッドに腰かけた。
「小さい時の写真なんだ」
「へえ、見せて……見たいわ」
つられたように香澄は椅子から立ちあがり、正紀と並んでベッドに腰をおろした。
これでお膳立てはできた……。
アルバムを手渡した正紀は、必要以上に顔を近づけて香澄の横からのぞきこみ、写真について説明した。
長い睫毛とうなじのあたりに生えたうぶ毛を見ているうちに、正紀の体のなかを駆け巡る血がいっそうざわめきたった。そのままスーッと頬を寄せて、香澄は横顔に静かに唇を押しつけた。
ハッとしたように、香澄が視線を宙に泳がせた。手にしたアルバムが膝の上をすべって床に落ちた。そのまま正紀が抱きかかえるようにしながら体を預けると、香澄はゆっくりとベッドに仰向けに倒れこみ、正紀は覆いかぶさるように重なった。
唇を求めた。香澄は二、三度イヤイヤをしたが、すぐに応じて正紀の舌を受け入れた。
甘い味がした。正紀の舌の動きに合わせるように、香澄の唇は大きく開いたりすぼまったりする。もう少し抵抗すると予想していた正紀は、あまりにスムーズに進んだのにびっくりした。
キスに馴れていない正紀は、香澄の受身の巧妙さに舌を巻いた。
これは……見かけによらず、かなりの経験者かも……。
そう思うと、気圧されたようで、弱気の虫が疼く。
そのとき、香澄の腕が首に巻きついた。香澄が積極的なら自分も……と気をとり直し、正紀は少し荒っぽく美少女の唇を貪った。そうしながら思いきって服の上から乳房をまさぐってみた。
途端に香澄の息がせわしくなり、息苦しそうに顔を左右に振りたてる。しかし、正紀の手を拒んだりはしなかった。
正紀は激しく勃起した。それを香澄の太腿に押しつけてぐりぐりさせると、それを待っていたかのように、香澄が体の位置をずらした。女の中心に勃起が当たった。強く押す。香澄も下からぐんと中心をせりあげる。
数枚の着衣を隔てて、若い二人の性器は強烈な擦り合いを演じた。
正紀はもう耐えられそうになかった。まるで熱い女肉のなかにおさまっているような錯覚に陥った。ぐいぐい押すと、香澄は息をはずませて正紀の腰をしっかりと抱いた。
香澄のほうは、異様に膨れあがったペニスを意識したときから、すでに下腹部の割れ目をおびただしい媚液で濡らしていた。香澄は処女ではなかった。だから、下腹部にゴツゴツとぶつかるこわばりの異様な大きさに気づいていた。それを薄い衣服の上から押しつけられたものだから、女陰に淫らな炎が燃えあがり、切ないまでに疼いてしまったのである。
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