演出なのか、もともとそういう男なのか。彼はべらべらとしゃべり続ける。
「ご対面」
ふざけているのだろうか。カップを持ち上げて、乳房をあらわにした。
「おお、フレッシュな安里咲のオッパイだ!」
「いやー」
剛介がそこに顔を埋め、しゃぶりはじめた。
これは間違いなくレイプなのに、剛介はおどけ、時にふざけ、饒舌で、カメラを回している。もしこの映像を見れば、いかにも「やらせ」に見えるだろう。女はイヤがっていない、演技だと思われるのではないか。
レイプは演出だと見せるつもりだろうか。
吸い付くような舌の感触が乳房全体に拡がる。剛介の唾液でベタベタになっているだろう。鳥肌が立っている。
「ぷはー、安里咲ちゃんのおっぱい、まいうー」
下品におどけ続けるつもりだ。
思わず見ると、剛介は長い舌を出して、ソフトクリームのように、乳房の下から乳首へ、べろっと舐めている。
「お願い。もうやめてください。助けてください!」
「助けてあげるよ。もちろんだよ。淫乱でレイプ好きなんだもの。助けてあげなくちゃね。慌てないでね。ゆっくり楽しませてあげるんだから。時間はたっぷりあるんだよ」
気が遠くなる。
このまま気絶してしまいたい。
剛介はそのままズリ下がっていく。肋骨。腹部。へその周り。べろべろと舐め回す。自分がどんな姿になっているのか、いやでも自覚させられる。
「つぎはここだよ」
ショーツの上から、口をつけてくる。
「ひっ、ひっ」
どうしていいのかわからず、体を捻る。
「動いちゃだめ」
彼の手に再びナイフがある。
「そうだよ。じっとしていて。大切なところを傷つけたくないんだからさ」
顎でぐいぐいとあそこを押した。
「安里咲のまんこは気持ちいいね。ふわふわだね」
そして鼻でこする。
「おや。安里咲ちゃん。おしっこ臭いぞ」
「いや! やめて!」
恐怖のあまり失禁しているのかもしれない。湿った感覚がある。そこを鼻で嗅ぎ、舌で舐める。
「いいねえ。いやらしい臭いがするよ」
深呼吸をする。
「楽しみだなあ。ワクワクするね。プレゼントをあけるときみたいだなあ」
パシッと、ナイフでショーツのゴムが切断された。
「あっ」
そして縦に、すーっと撫でるように切断していく。サイドのところで、ショーツは前と後ろに離れてしまう。
「こっちもだよ」
左右のサイドが切断された。布がただ腰にかかっているだけだ。
「ジャジャーン。では、まいります。みなさんお待ちかね。安里咲ちゃんの登場です!」
「やめてぇぇぇぇ」
男の手が布をゆっくり持ち上げていく。
「どれどれ。おお。こんもり、きれいに茂みがあるぞー」
無事ではすまないところに来た。ほとんど全裸になってしまう。わたしは体をひねることさえやめて、ただ、嗚咽していた。
「さあ、じっくり拝見しましょうね」
布がはがされて、股間が剥き出しになった。剛介はカメラを操り、いろいろな角度から撮影している。それを三脚に戻し、モニターを見ながら位置を決める。
「いくよ、安里咲。みんなに見られて恥ずかしいだろ? だけど、こんなこと、序の口なんだなあ。これぐらいで泣いていたら、ダメなんだよ」
剛介のがっしりとした両手が、下腹の左右に腰を掴むように置かれた。
「こうしてみようか」
「うううう」
その手が柔らかな下腹部を左右に広げていく。そんなことをすれば、直接触れていなくても、陰部がパックリ開いていくだろう。
「うわあ、カワイイねえ。色が薄いよね。縁もピンクだけど、中はもっとキレイなピンクだね。肌が白いから余計に淫らに見えるなあ。赤ちゃんみたいにきれいだし。何人とやったことがあるの? 何回ぐらいやったの? 処女みたいだなあ」
歯を食いしばって耐えた。このあとすぐ、剛介は男としての行動に出ると思っていた。ここまできたら、当然、セックスするだろう。それはもう避けられない。やらせるしかない。
そこまで心で決めたのに、剛介はなかなか、やろうとしない。
陰部を開いたり閉じたりして遊んでいる。
「おもしろいね。じわじわってお汁が出て来たよ。くちゃくちゃいってるなあ。安里咲の下の口は本当にスケベなんだね」
これほどまでに辱めを受けて犯されなければならないのだろうか。
「触ってみようかな」
さらに惨めにさせるつもりなのだ。
指先が陰部に近づいてくる。
「うわあ、ヌレヌレだよ。ほーら」
「あっ」
その指が溝を縦にすくうように動いた。
「見てごらん」
その指をわたしに見せつける。
「いやっ」
顔をそむけるが、指先は鼻、そして唇に押しつけられた。冷たい体液。にじみ出したものを、なすりつけられる。
「安里咲。だめだねえ。体は正直だね。でも、もうちょっと待ってよ。みんなに、安里咲をもっとよく見せたいんだからね」
指で溝をいったりきたりと擦り、小陰唇をつまんで、その形をはっきりと撮影しようとする。
「あああっ、気が変になりそう!」
「いいんだよ。おかしくなっちゃいなよ。乱れていいんだからさ。本当の安里咲を見せればいいんだからね。飾る必要なんてないんだよ」
本当の安里咲なんて、ここにはいない……。レイプされて悦ぶ作られた安里咲しかいない。
指先は魔術のように秘部をいじる。丘の部分を揉み、敏感な上の部分も撫でる。膣の入り口を執拗に触る。そして大きく開いていく。
「うわあ、ホントにきれいだね。おいしそうだ! いただきまーす」
乳房にやったように、剛介がそこに顔を押しつけてきた。
「ひやぁぁぁ」
鼻と唇と舌。
それが、わたしの中でうごめく。その感触……。
ジュルジュルと音を立てている。
「あふぅぅぅ」
泣いている声が、妙に変化する。ゾクゾクする悪寒に耐えているのに。
そう。感じている。確かに感じるのだが、それはおぞましさであり、嫌悪なのだ。
それでいて、映像を見れば、わたしは快感への期待に震えているように見えるだろう。
どんな抵抗をしてもムダで、すべて剛介のいいようにされてしまうのなら、なにも感じないフリをして、死んだようにしていればいい。
だが、それも難しい。
体はちょっとした刺激に反射的に動いてしまう。膝や腿が、うねうねと動く。まるで剛介の侵入を待ちわびるように。
「安里咲。これだけ濡れたら痛くないよ。大丈夫」
「お願い。やめて……」
一本調子の言葉しか出ない。残念ながら、なにも言葉を思いつかない。
「いくからね」
剛介が体をずらしてきた。いつの間にか彼はズボンを脱ぎ、ブリーフを下げていた。
「ひいっ」
見たくなかった。
「楽しいよ。きっと感じまくって大変だよ」
カーッと怒りにも似た熱が下半身からわき起こった。熱い。ものすごく熱いのだ。
それは怒りではなかった。
剛介が言うように、自分の体が男を求めている……。
わたしはそれがショックだった。
意識を失うほど強烈なものを飲まされたのだが、そこにはもしかしたら、体を熱くさせる物質も入っていたのではないか。
そうだ。クスリだ。
それなら説明がつく。
あの亜由美が、恍惚となって苦痛の中でもだえていた姿。ただ暴力で支配されるのが好きだというだけではないだろう。クスリを飲まされて、夢の中にいたのではないか。
さっきから体が妙な反応をするのは、そのせいだ。
薬漬けにされてしまうのだろうか。廃人にされてしまうのか。恐ろしいことなのに、一度火のついた体は、激しく燃え上がり、なにも正常に考えられなくなってきていた。
「ふふふ。安里咲。好きだよ」
目の前に剛介の顔があった。その唇が、鼻に。頬に。そして唇に触れてくる。
「うっ、ぎっ、ひっ」
逃げようとしても追ってくる。
体をくねらせているうちに、下半身にしっかりと固くなった棒状のものが乗っかっているのがわかる。剛介はそれを押しつけてくる。まだ入れないのだ。腹部や下腹を、それで撫で回す。
「うれしいよね。こうなりたかったよね。早く欲しかったんだろ?」
返事などしない。
「悲鳴ぐらいあげてよ」と耳元に囁かれた。
「ひー」
「そうそう、その調子。これはレイプなんだからさ」
「くううう」
あまりにも悔しい。
そうだ、剛介を囓ってやればいい。口を大きく開けた。
しかし剛介はあざ笑うかのように体を反らせ、その瞬間に、男根を膣にねじ込んできた。
「あああああ!」
「いいぞ。小さくて狭いけど、すごく気持ちいいよ」
十分ではない。入り口付近でグリグリと突き入れている。
「どんどん奥へいくよ」
ぐぐっと本格的な侵入をした。
「あぐうっ」
剛介がわたしの中に入っていた。
「かわいいなあ」
彼の指が髪を撫でる。耳に触る。そこからうなじに。
「あふぅっ」
ため息が出るほど、ぞくぞくする。悲しいほど、自分がダメになっているのがわかる。
「どう? レイプ、感じる?」
ぐいっと腰を使われた。
「きっ」
激しい動きはしない。ダンスでもしているかのように、グリッとやっては、すっと引く。そしてまたグリッと。
犯されている事実をしっかり刻み込ませようとしているかのように。
「好きでもない男のチンポが、いま安里咲のマンコに刺さっちゃったよ」
「はあぁぁぁぁ」
情けなく、切ない。
「いいよ。感じていいんだよ。レイプだって、感じるときは感じるさ。淫乱でレイプ願望のある安里咲ちゃんは、すぐ感じちゃうんだなあ。愛のないセックスでも本気で感じるなんて。安里咲ちゃん、淫乱だなあ。これじゃレイプ映像にならないよー」
うなじ。肩。脇。剛介の手はわたしを撫で回す。
これがレイプでなければどれほどよかったか。剛介ではない、最愛の人だったらどれだけよかったか。
もしかして、こんなことがなくても、末土教授の助手に採用されて、数回彼と会ううちにデートをするようになっていたかもしれない。好みではない男でも、好きになるかもしれない。デートをすれば、キスをしたかもしれない。キスをすればセックスにまで発展したかもしれない。
だけど、それは自然に任せていたら、何か月も先のことだろう。
泣きわめきながら、剛介の体を感じているわたしがいた。
たくましい男。
彼は十分に腰を動かして、わたしをえぐる。
「ひぃぃぃぃぃ」
感じないわけにはいかない。
「泣いていいよ。思い切り泣いてごらん。泣き虫の安里咲」
なんという余裕。女を犯しながら、適当なことをしゃべって、手は片時も遊んでいない。全身を撫で回されて、こんな強烈なセックスは生まれてはじめてのことで、これこそがセックスによる快楽なのだと教え込もうとしている。
ろくでもない性体験。かつての青い記憶同様、快感ではなく、ただつらいだけの記憶でしかないはずなのに。
だが、剛介はいま、わたしの中の女を目覚めさせている。理不尽な暴力によるセックスなのに。
「あああ、つらい……」
「なにがつらいの? 気持ちいいんだろう?」
「うううう。つらいの」
「レイプされて頭に来ているのに、すごく感じてるから、悔しいんじゃないのかな?」
「ち、ちがうわ。そんなんじゃないぃぃぃぃぃ」
突然、剛介が激しく動きはじめた。
抵抗するわたしを突き放すかのように、激しいセックス。息ができない。股間が壊れそう。わたしの上で剛介の全身が硬くなっていく。そのエネルギーが一点に注がれている……。
「いくぞ。中出しだよ」
「ええええ!」
「くらえ」
「あ、だめぇぇ」
叫んでも虚しく、彼はわたしの中に射精していた。
ひどい。
憎悪がむくむくと大きくなっていく。その直後に、燃えるような熱さがわたしを包んだ。
「あわわわ」
体が痺れて、どうかなってしまいそうだ。
「安里咲もイクんだね」
すでに剛介のものは力を失っているのだろう。存在感は薄れている。しかし、体を密着されて、その皮膚感覚だけでも、わたしを熱くさせるのだ。
「安里咲。かわいいぞ」
ぎゅっと剛介が抱きしめてきた。
「あう!」
肺から空気がいっきに抜けて、わたしは絶頂を味わった。
恥ずかしいことに、これほどまでの快感は経験がなかった。
強姦で輪姦
はからずもレイプされて絶頂感を味わってしまった。
それも、この異常な状況のせいか、性に目覚めて以来はじめてのものだった。途中で、これ以上の快感になったらきっと自分は死んでしまうだろうと本気で心配したほどだ。
急激に悔しさと恥ずかしさがこみあげてきた。
「安里咲。おまえ、感じちゃったね」
無言で顔を左右に振ったら、剛介はやさしい口調なのに、きなり頬を思い切り引っぱたいてきた。
耳元でバーンと音がして、頬も頭も痺れた。
「レイプされて感じちゃったんだねえ。演技が下手だから困るよね。これはレイプシーンなんだから、普通、感じるわけないじゃん」
そして彼の手が乱暴に乳房を掴んだ。
「うっ」
「そうだよ、その顔だろ? おまえさ。ちゃんとやろうよ。安里咲ちゃんはレイプ願望のある女子大生だけど、ホントにやられちゃったときは、恐ろしさと苦痛と恥ずかしさで、最後まで感じたりせずに、悲鳴を上げ続けるんだよ」
「そんな……」
彼が手を高くあげた。
「ひっ」
叩かれると思って目をつぶった。
「そうだよ。その表情だって。忘れちゃだめだよ。これかもさ」
「これから?」
剛介はカメラに向かって、「入っていいぞ」と言った。
襖が開いて、仲間たちが座敷に上がる。店員もいる。
たちまち男たちでいっぱいになった。剛介を含めて六人。
「レイプシーンだってことを忘れないようにね」
彼のこういうセリフを含めると、わたしは完全に演技指導をされて、この映像を撮ることに同意した人に見えるだろう。
あまりにも巧妙すぎる。そして、このあと彼らに襲われるのだが、その間にどんなに泣きわめいても、すべていまの指導の結果、必死に演技をしている下手な女優にしか見えないのだ。
「残念なお知らせがあります。安里咲ちゃんは処女じゃありませんでした」
剛介が言うと、男たちは「えー」とガッカリしたような声を出す。
「ですが、経験はメチャ浅い。はっきり言って自分のことがまだよくわかっていないと思います」
「おー」と男たちは少し期待をこめた雄叫び。その野獣のような太い声が恐ろしい。
「じゃ、とりあえずさ、みんなでこいつの服をジャキジャキって切り刻んじゃうところから始めようか。今日は中出しもOKだし、顔射もやりたいんで、好きなようにやってみてくれる?」
「いえーい」と男たちが笑いながら返事をした。
ナカダシ、ガンシャ……。意味がわからない。だが、きっとわたしにとってはよくないことだろう。
ハサミやナイフを手にした男たちが、わたしの服を切り刻んでいく。
「安里咲、忘れたのかよ」
耳元で小さな声で剛介が言い、耳たぶを囓った。
「やめて!」
「そうそう、その調子」と彼は囁く。
そして指先で乳首をつみまみ、引っ張り上げた。
「痛い! 助けて!」
彼らはわめくわたしをうれしそうに眺めながら、服をすべて切断してしまった。
ボロボロの布の中にいるわたし。
いつの間にか、男たちは無防備な体を触り、撫で、舌を這わせていた。
「うううう」
泣き叫ぶしかないのだが、情けなく悲しく、だんだん反応できなくなってくる。
バシンと頬を剛介に叩かれた。
「ぎゃっ」
わたしの中でなにかがキレてしまった。そのあと、わけのわからないことをギャーギャーと騒いでいた。だが、それはただ彼らを喜ばせただけだった。
「レイプ願望安里咲。輪姦に狂うって感じだね!」
リンカン……。
「ハハハ。強姦で輪姦。即感じて、アカン……」
誰かがラップのように口ずさむ。
暴れるわたしの中に男根をねじ込んで、いやらしい動きをしながら、果てていく彼ら。一人が「やったぜ、ナカダシ!」と叫んでいる。
「安里咲。中出しってわかるか? わからないか? おまえの膣の中に射精してるんだよ。こいつら全員でまわしたら、おまえ、妊娠するかもしれないぜ」
「そんなー」
石ころを詰め込まれたように働かなくなっていた脳に、新たな現実的な恐怖が注ぎ込まれて、わたしは焦った。そうか。そういうことなのか。膣の中に出すこと。中出し。それは妊娠の可能性があるセックス……。
「だめ! 中出しはやめて!」
その叫びが、また男たちを喜ばせている。
「それなら、ガンシャしてやるよ」
次の男はわたしをさんざん突いたあげく、その赤黒い性器をわたしの顔に向けた。
「口を開けろよ」
「いやです!」
叫んだところに白い粘液が飛び出し、わたしの目と鼻にべっとりと貼り付いた。
「安里咲。これがガンシャだよ。顔面射精の略だね。海外でもブッカケって言葉で知られているぐらい有名なんだよ」
それはただ精子を女の顔につけるだけ。子供じみた遊びに見える。
中出しは見えないが、顔射は見える。それだけに屈辱感は倍増していた。見知らぬ男たちの精液を顔で受ける……。
わたしの人生ではあり得ないはずだったこと。
それがいま、堂々と繰り広げられている。
彼らは犯して中出しか顔射をする。全部で六人いるのだが、六回ですんだわけではなかった。
彼らは飽きることなく、中出しと顔射を繰り返していった。
顔は彼らの精液だらけになっていた。耳や鼻にも入り込む。唇についたものは、口の中に入ってくる。ペッと吐き出したくても、粘液なので簡単ではない。
「ふー、どうだ。これだけやったら、少しは気がすんだかな?」
剛介も二発、三発とやっただろう。
だが、そのセリフは男たちに言ったのではなく、わたしに向けられていた。
「どうなんだ、レイプ願望の女子大生・安里咲。気がすんだかよ」
足で腿をぐりぐりと踏まれた。
ぐったりしていて、なにも考えたくない。死にたい。どうして殺してくれないのかと思う。
「おまえ、感じすぎて失神してたよな」
そんなことはない。ただ無感覚になっていただけだ。それを失神と表現したのは、そのほうが映像として都合がいいからだ。
「せっかくの顔射だから、こんどはゴックンしてもらおうかな」
ゴックンとはなにか。
「そうだ」と男たちははやしたてる。自分たちはさっさと服を着ている。わたしの服はボロボロにされてしまった。
「ゴックンっていうのはさ、ホントは口でやってもらって射精したのを飲むわけだけど、今日は最初だから、とりあえずおれたちの精液の味だけでも覚えてもらわないとな」
味を覚えるとはどういうことなのか。
ぼんやりとしていたら、一人がわたしの頭を膝頭と手でがっちりと押さえ込んだ。剛介は顎に手をかけて、口を開かせる。もう一人の、おそらく店員だった男はカレースプーンを持ってきた。その銀色の金属が、これほど恐ろしく見えたことはなかった。
「どうする? おとなしく自分で口をあけて飲む? それとも強制的にする?」
「いや。やめて」
小声で拒絶する。もうなにもしたくない。
誰かが鼻をつまんだ。
「うぷっ」
呼吸ができず、口をあけた。
そこにスプーンで顔についた精液をすくって、注ぎ込んでいく。
「あーんしてよ、安里咲ちゃん。大好きなスペルマですよ」
嗚咽が止まらない。
「ちゃんと飲まないと。気管に入ったら苦しいよ」
口の中に、六人が何度か発射した粘液が押し込まれていく。生臭く、不気味なものが口にいっぱいになっていく。
このまま死ぬか気が狂うか、どっちかにしてほしい。なんでもいいから終わりにしてほしい。
「飲み込めよ」
飲めるはずがない。口の中がねばねばしたものに占領されている。息もできない。
「せーの」
鼻をつまんでいた指が外れ、同時に顎を下から押し上げられた。
「んんんんっぐ」
むせる。気管に入った精子が鼻に入って飛び出す。
「うへ、下手クソだな」
みんなは笑っている。苦しんでいるわたしを見て笑っているのだ。
ああ、この光景は……。
拷問実験で見た亜由美の姿に重なる。彼女は苦痛にもだえ、泣き叫びながら男たちに笑われていた。感じているようにしか見えなかったが、彼女もこんな苦痛の中にいたのかもしれない。
なんて悲しい存在なのか。
「ちゃんと飲み込むんだ」
許してはくれそうにない。亜由美もそうだ。泣きわめいても許されないことを知っていた。わたしがいくらやめるように言っても、やめなかった。あのときはわからなかったが、一度受けた苦痛は、そこから逃れるだけでは消えないのだ。消せない苦痛は、受け入れるしかない。
口の中の薄気味悪いものを飲むことが、わたしにとってはとてつもない屈辱だとしても、いまは飲むしかない。吐き出してこいつらの顔にぶちまけてやりたいが、頭と顎を押さえつけられて、それもできないのだ。
ゴクリと、喉の奥まで入っていた部分を飲み込むと、生卵の白身のようにずるずる一塊が喉を抜けていく。そのおぞましさに暴れたくなるが、彼らに押さえつけられている。
しばらく葛藤しながら嚥下する作業が続いた。ほかに方法がないのだから。
「どうだ。飲み込んだか?」
泣きじゃくるわたしを彼らは見ている。楽しそうに。
ゴクリ、また飲み込む。
「飲まないとまたこれだぞ」
鼻をつままれる。息ができない。慌てて飲む。ゴクゴクと。
鼻を開放されて、息ができるようになったとき、自分が精子臭にまみれていることを自覚した。
もう、戻れないのだ。
素直に、口の中のものを飲み込んだ。
彼らは喉の動きを見ている。
「よーし。飲んだな。口を開けてみるぞ」
顎を押さえていた手が離れていく。
「はー、はー、はー」
息を吐く。どれだけ息をしてもこの臭いから逃れられそうにない。
「口を大きく開けろ。中を見せろ。舌を出せ」
ためらっていると、鼻をまたつままれた。
「がー」
吐き出すように舌を出し、口を開けた。
「よーし、すごいぞ、安里咲ちゃん。全部飲んだんだね。だけど、まだ足りないでしょ」
「どういうことですか」
喉にはまだ残りが貼り付いている感じがある。
わたしの足元にいた男が、皿とスプーンを持っている。
「おれたちの精子は顔にかけただけじゃないんだからね」
「う、うそっ」
「当然、安里咲ちゃんにはすべて飲んでもらうからさ。まずは畳にこぼれたものからだよ」
その皿が口元に。
それもかなりの量だ。
「さあ、あーんとしてよ」
なにをしてもやらされる。わたしは頭の中でカッと激しく稲妻のようなものが鳴り響くのを感じていた。自分の中で、そんなことをする自分を許せないという思い。そしてもう一方で、これを受け入れなければどうにもならないという思い。
とりあえずいまは、受け入れることで終わりにできるかもしれない。
口を開いた。
中出しされたのちに、あふれ出たものが、スプーンで皿から口の中に流し込まれる。
また同じものだ。吐きそうになる。
「どうだ。さっきみたいにやるか? それとも自分で飲むか?」
呼吸を整えて、ゴクリと飲んだ。
「おー」と彼らは喜んでいる。
「安里咲ちゃんのゴックン、完成!」
ちくしょう。こんなことで負けるものか。安里咲はオモチャじゃない。
そう思いながら、ゴクゴクと飲んでやる。
「すごいよ、安里咲ちゃん、最高!」
みんなが拍手をする。カラオケで満点が出たようなはしゃぎぶり。
ふいに泣きたくなるが、口の中と喉がそれどころではない。ゲホゲホとむせた。
「口を開いて」
また彼らにすべて飲んだことを見せる。
この儀式はなんだろう。
「じゃ、いよいよ、安里咲ちゃんの中にいるやつを、こいつで吸い出してみよう!」
小型の注射器を手にしている。針はないが、ゴムの管がついていた。
最初は、どうにでもなれと思っていた。しかし凌辱された秘部に彼らが何本も無遠慮な指を這わせて、管を入れてくると、泣きわめいてしまった。
「もうやだ! 痛い! やめて! 終わりにして!」
剛介がすぐ横にいて、耳に囁く。
「終わり? まだはじまったばかりなのに?」
「お願い。帰して。このことは誰にも言わないから」
すぐ横にいる剛介にすがるしかない。
「もちろん帰してあげるよ。約束する。もうレイプは終わったんだから、安心していいんだよ」
剛介の手がわたしの髪を撫でる。
「安里咲はきれいだし、かわいいし、ほかの女性がやらないようなことを率先してやるよね。男にとって夢のような女だもの」
「ちがう、そんなんじゃない」
「いいんだよ。もうそうなってるんだよ」
そのとき、チューッと音がして彼らが注射器を使ったことがわかる。わたしの膣の中から精子を吸い出している……。
「おお、けっこう入ってるぞ」
その管が今度はわたしの口に入れられる。見ると注射器が真っ白になっていた。
「はい、飲んでね」
口に入れられたものを、ひたすら飲み込む。
それを何度か繰り返した。
「よーし、今日は安里咲ちゃんのデビュー記念で、みんなで乾杯しよう!」
彼らはわたしを放り出して祝杯をあげている。
ようやく彼らは満足したらしい。
「安里咲ちゃん、送ってあげるよ」
帰してくれるのだ。
「だけど、服がないから、そのまま裸で帰るしかないね」
「え!」
「おれたちが守ってやるから」
裸で帰れというのか。
親が厳格なこともあり、大学が公認している女子寮に住んでいる。門限もあるし、規則がいっぱいある窮屈なところだ。
なにかあれば、すぐ寮長から親に直接、知らせがいく。入学時にいた学生の半分はいなくなっている。規則がいやだという人も半分ぐらいいたが、残りの半分は親に素行を通報されて追い出されるように去っていった。
そこに裸で夜中に帰ったら……。
もう終わりだ。わたしはレイプされたことを訴えるしかない。親にも知られ、警察に通報され、彼らは逮捕される。それはいいのだが、わたしはどんな立場になるのだろう。
「じゃ、いくよ」
彼らは縄を解いていく。やっと自由になる。いや、これは自由ではない。わたしに課せられたものから、逃れることはできない。一生、背負っていくことになる。彼らも同じだ。
しょうがない。彼らを告発して逮捕させよう。もしかしたら、被害者はわたしだけではないかもしれない。わたしが泣き寝入りすれば、新たな被害者が出るだろう。
たとえその犠牲者があの登美子たちだとしても、悲しすぎる。
わたしは彼らに寮まで送らせて、そこで寮長に訴えて逮捕させることを決意した。ほかに方法はないのだ。
女子寮
くたくたになっていた。
裸で靴だけ履いているわたしを、彼らは囲むようにして、寒い夜道を歩いた。
首に縄をかけられ、それを剛介が握っている。
いまは囚人のように扱われ情けない立場だが、寮につけば、それは逆転する。囚人になるのは彼らだ。
いまはその思いだけが、一歩一歩、先に行かせる勇気になっている。
あそこでされたことを
反
芻
する気はない。そんなことは、どうでもいい。寮にさえつけば、すべては終わる。わたしはさらに傷つくかもしれないが、彼らの人生も終わるのだ。
寮は大学の裏手にある。人通りは少なく、深夜ならなおさらだった。
徐々に寮が近くなっていく。
見かけはよくある築五十年ぐらいのマンションである。古めかしいタイル張りだが、それも二十年ぐらい前にきれいに直したのだそうだ。
耐震性の問題が出てきて、年内にも取り壊す話が出ている。寮生は近くの別のマンションに移るか、少し離れたところに建つらしい新しい学生寮へ移るかを迫られるとウワサになっていた。
そのエントランスに人影があった。
「すいません」と剛介が人影に声をかけた。
「おう。もう夜中なんだぞ」
末土教授だった。
寮長と見知らぬ美しい女性も一緒だ。
「連れてきました」
裸のわたしを、彼らは捕まえたまま、エントランスの明かりの下に押し出した。
「安里咲。君はぼくの助手になってくれるそうだね。うれしいよ。君は見込みがあると思っていたんだ」
「先生、わたし、彼らに……」
「シー。静かに」
教授は革の手袋をしており、それで口を塞がれた。
「君のおかれた状況を教えてあげよう。君はいまとても大事な時期にいる。監視下に置かないとまずい。だから、ぼくと妻の陽子は、寮長の渡辺さんにお願いして、特例な扱いをしてくれるようにお願いしたのだ」
わたしは暴れた。
「うー」
だが、声は出せない。みんなに手や胴を抱えられ、逃げることもできない。
「かわいい子じゃないの」
「妻の陽子だ。彼女も学者だよ」
教授の奥さん……。その陽子が、わたしに微笑む。
「だけど、礼儀も躾けもできていないようね。これからじっくりと躾けてあげましょうね」
寮長の渡辺奈美は、昔は女子柔道の選手として知られ、一度も結婚をしたことがない。かなり大きな丸々とした体つきだ。石頭で厳しいが、寮生たちからは母のような存在である。
その彼女が汚らわしいものでも見るようにわたしを睨む。
「うるさいから、事故にならないうちに、これをつけてしまいましょう。渡辺さん」
陽子に言われて、寮長が近づいてきた。手に丸い青いボールがついたベルトを持っている。
末土教授がさっと手をどけると、叫ぼうとしたわたしの口に、そのボールがガツンと当たった。
「うぐぅ!」
腕を男たちに背中にねじまげられ、髪を陽子に鷲づかみにされ、わたしに逃げ場はない。彼女の、彼らの服が素肌に触れる。そのたびに、自分がどれだけ弱い立場か、思い知らされる。
「安里咲さん。いま何時だと思っているの? 男の人たちと淫らな遊びが過ぎたんじゃないの?」
寮長が冷たく言う。
そして手を止めることなく、ベルトを頭の後ろに通して、ぐいっと引っ張った。
「あがっ」
陽子の片手が顎に伸びて口をさらに開けさせる。教授はわたしの鼻をつまんだ。
息ができず、口を開くしかないが、ぐいぐいとボールを奥まで押し込まれるだけなのだ。
寮長の力でベルトを締め付けられて、顔が歪んでしまう。
「これでおとなしくなったわ。次はこれよ」
ガチャリと音を立てて、地面に投げ出されたのは枷だ。
男たちがそれを足首につけていく。暴れようとしても、羽交い締めにされて、どうにもならない。
最後に手にも枷をつけられ、後ろ手に拘束されてしまった。
これは、亜由美が通った道なのだろうか。
やっぱり、わたしは拷問実験に連れていかれるのだろうか。
彼らが亜由美は海外へ行ったと言っているのはウソで、死んでしまったのではないだろうか。
わたしも殺されるのだ。
「まあ、涙を流してるの? かわいいわ」
陽子はうれしそうにわたしを見る。
その冷たい平手が、頬を軽く叩く。
「安里咲。いいこと? あなたがちゃんと言うことを聞きさえすれば、すべてうまくいくのよ。親に心配かけることもないし、あなたは奨学金付きで海外留学できる。すばらしいと思わない?」
それは、すべてウソなのだ。
肉体を極限まで痛めつけ、凌辱されて、売り飛ばされるだけなのではないか。それとも怖ろしい人たちから死ぬまで拷問されるのか。
「あなたはまだわかっていないのね。だけど、従順になる快楽を知ったら、それはそれはすばらしい世界が開けるのよ」
それは間違っている。快楽で開かれる世界は堕落でしかない。教授夫人で学者でもあるというのに、そんなことも知らないのだろうか。
古来、堕落への誘惑をする者を悪魔と呼ぶのだ。
だとすれば、わたしはいま、悪魔に囲まれている……。
「新しい世界へようこそ」
陽子は手品のように真っ赤な細い首輪を取り出した。
「これがおまえの印よ」
首輪は革でできている。ただしそれは普通のものではない。
「このベルトのところは飾りなの。革の中に丈夫な金属の輪が入っているわけ」
陽子はそう言いながら、首にかけられた縄を解いてくれた。
そして首輪をかけた。はじめて感じる革の感触。滑らかな表革でくるまれた金属環。小さなレンチのようなもので、止める。
「ちょうどいいわ。きつすぎないでしょ」
締め付けてはこない。といって、指が入るほどの隙間もない。陽子の指先が首輪と首の間をチェックしている。
そして飾りのバックル部分を留める。
「かわいいわ。これから長くつけることになるわよ」
工具を陽子はポケットに入れた。
「この工具でなければ、外すことはできないの。わかる?」
だから服従しろというのか。
こうした暴力による統治は反抗心しか生まないと、歴史が示しているのに……。
負けるものかと思う。
きっと亜由美は負けたのだ。だけど、わたしは負けない。
「いいわ。その目。昔のマンガなら瞳の中に炎がメラメラって感じだわね」
陽子たちが笑う。
「ステキよ。うんと反抗しなさい。あなたが反抗すればするほど、わたしたちも楽しめるから」
「きれいな子だと思っていたけど、憎たらしいですね」
寮長の渡辺の目にも燃える炎が見える。
わたしがなにをしたというの。被害者なのに。
陽子は手品のように長い銀色の鎖を取り出す。カチャリとその先を首輪につけた。
「おいで」
陽子に引っ張られて、寮の玄関にようやく入れてもらう。風を遮ってくれるだけで、ホッとした。
震えは止まらないが。
「じゃ、あとは渡辺さん。よろしくお願いするわ」
「わかりました」
鎖を寮長が持つ。
「ときどき様子を見に来ましょう。安里咲。簡単に屈しちゃだめよ。いつまでも、生意気で反抗し続けてちょうだいね」
パシンとお尻を陽子が叩いた。
「うっ」
ボールを咥えさせられて、うめくことしかできない。
ガチャガチャと後ろ手の枷を鳴らす。なにをされても、文句も言えないのだ。いつまで続くかわからないが、教授までも加わっている以上、なんらかの目的を達するまで続くのではないか。
教授、陽子、剛介らが帰っていく。
彼らの靴音が消えると、渡辺寮長は玄関のドアをロックした。
「三上!」
彼女が怒鳴った。
タタタッと足音がして、ジャージを着た三上彩芽がやってきた。ショートヘアで幼く見える学生。真顔でわたしを見る。
「来たわよ」
寮長はわたしを前に出す。
「すごい!」
彩芽が笑った。欲しかったものをやっと手に入れたような表情だ。寮に来てから、彩芽の姿を見ない日はなかった。彼女は寮長に傅くように、雑用をテキパキとこなしていた。体育会系なのだろうか。だが、柔道をやるような体格ではない。
「安里咲。うれしいわ」
しげしげと見られる。
「三上。あんたのオモチャじゃないんだよ。預かりものなんだからね」
「わかってますよぅ」
口を尖らせる。
「風呂場で洗ってから部屋に連れてきて。できる?」
「どうかな。すごく怖い目で睨まれていますけど」
「やり方は教えたよ」
「はい。やってみます」
「もう夜中だし、あまりムダにお湯を使うんじゃないよ」
「わかってますって」
完全に従属しているわけでもないのだろうか。
「安里咲、お風呂入ろうね」
なにが悲しくて、同世代にこんな扱いを受けなければならないのか。
風呂場は一度に八人ほど入ることができる広さで、シャワーのついたカランが四つ並んでいる。これまで何度も利用していて気づかなかったのだが、カランの一番奥。風呂場の角のところにフックや環が埋め込まれていた。
「おとなしくしてよ」
首輪からの鎖を高い位置にある環に通して引っ張られた。首が吊られる。
この寮は最初から、わたしのようなものがいることを前提に建てられていたのだろうか。
「つま先で立ってごらん」
「うがぁう」
体が伸びきり、苦しい。すべりやすいタイルにつま先立ちになると、それを保つのに必死になる。
彩芽はシャワーを手にして温度を調整している。
「これぐらいでいいよね」
勢いのいい水流を頭から浴びせられる。冷たい。お湯とは呼べないほどの温度だ。
「ぬるいかな。でもいいよね」
全身をくまなく濡らされる。逃れることはできない。立っているだけで精一杯なのだから。
「ふふふ。きれいねえ、安里咲って」
つま先立ちになると、彩芽よりかなり背が高くなる。
彩芽は小柄だが、手を伸ばしてシャンプーを頭にかけて、適当に洗いはじめた。
「きれいな髪だわ。健康そのものね。わたしなんか、何度も染めたり脱色したりして、バリバリになってるけどね」
わたしが知る限り、彼女が染めているのを見たことはない。黒いマニッシュなショートヘアだ。大学へ入る前のことなのだろう。
「安里咲は、肩まで伸ばしてるのね。ちょっとクシュッてさせて、ふわっとさせたらカワイイわね。だけど、そんな余裕はもうないかもしれないけど。前髪は横に流しているの? 額を隠すわけ? だけど出した方がいいかもよ」
勝手なことを言いながら、手で触りまくる。
やめて! 触らないで、と言いたいのにできない。
おそろしいことに、つぎにボディーシャンプーを持って、それをわたしの肩にかけると、手で伸ばしはじめた。
「きれいな肌ねえ。お手入れがいいのかしら」
その感触は、剛介たちに犯されたときとはまた別の嫌悪だ。
「暴れないでよ。気持ちいいことしてあげるんだから」
指先がつぎにどこへ向かうかわかる。鎖骨の窪みから、マッサージでもするように、下へ。緩やかな上昇のカーブに沿って。
「こんなにステキなオッパイだったのね。大きさもちょうどいいんじゃない? 大きすぎないし。乳首もピンクで、乳輪もきれいだし……」
「んんんん」
彩芽の手が乳房を
弄
ぶ。
「どう? 感じてきた? 気持ちいいでしょ? わたしは優しいのよ。これからも仲良くしよ!」
背中。脇腹。腕。脇の下。くすぐったい場所までも、石鹸を塗りたくる。お腹。ウエスト周り。
「うらやましいなあ。ぜんぜん、ムダなお肉がないし。まさかウエスト五十センチ? そこまで細くはないか。だけどくびれていて、いい感じよ」
お尻をぎゅっと掴る。
「ふふふ。おニューの子って感じ。男性経験、少ないでしょ? あ、でもやられたばかりだっけか。男は野蛮だから、気持ちいいこと、してくれなかったんじゃない? かわいそう」
言葉では同情しているが、彩芽の魂胆はミエミエだ。男とは違う凌辱を楽しんでいる。
「ここ、何発、やられたの?」
女同士ならその苦しみを理解してくれていいはずだ。レイプされた気持ちを。屈辱を。悔しさを。
それなのに、彩芽は股間を撫で、さすりながら、男たちに嬲られた場所に指を入れてくる。
「まあ、お汁たっぷりなの? やつら、喜んじゃったんじゃない?」
ぐいぐいと指で粘膜を擦る。
「あとで、たっぷりかわいがってあげちゃうね」
その指はお尻の割れ目に入っていき、恥ずかしいお尻の穴の中へも伸びてくる。
「ねえ、こっちはどうなの? もう、やられちゃったかな?」
涙を流して、心で懇願し、うめき続けても、彩芽には届かない。
不浄な場所をいじられて喜ぶ人はいないはずだ。やめてほしい。恥ずかしいだけではない。痛い。
「ここで感じるようになったら、楽しいわよ」
吐きそうだ。いつまでこの責め苦が続くのだろう。
何時間にもわたるような彩芽の指責め。お尻を触った手で、足にも触る。ボディーシャンプーがついているからといって、あまりに無神経ではないか。
「きれいな足だわ。長いし。細いし。なにかスポーツをしていたの? あ、これは」
足の指や踵まで触っていく。
「バレエね? あなたバレエをしていたことがあるわね。親指のところにタコができているわよ。いまでもやっているの?」
大学に入ってからはほとんど行っていない。学生まではプリマになれるかもしれないと本気でやっていたが、学生のときに才能のなさにあきらめたものの、親の期待もあって惰性で続け、大学では平凡な踊り手として地味に、そして自分の楽しみだけとしてやろうとしていたが、それも苦痛でしかなくなってしまった。
ある出来事をきっかけに、忙しさを理由に休止した。
「安里咲のバレエ、きっときれいだったでしょうね」
子どもの頃はよかったが、思春期以降はいい思い出がない。
冷たいといっていいシャワーを頭から浴びせられる。
「大好きになっちゃったわ、安里咲のこと」
彩芽はうれしそうだ。
「わたしね。ゲー研に所属してるの。ゲー研で女子は亜由美さんとわたしだけ。わたしは亜由美さんに憧れてゲー研に入ったのに、外国に行ってしまったんだって聞いてガッカリしちゃったの。だけど安里咲が来てくれて、すっごくうれしいわ」
震えているわたしを乾いたタオルで拭く。
「これから、わたしたちがすごい世界に連れていってあげるわ。想像したこともないような世界よ。立場は違うけど、一緒に楽しみましょうね!」
彼女の言っている意味がよくわからなかった。ゲー研という言葉に馴染みがない。亜由美がそこに所属していたということも、ピンとこなかった。
しかし、居酒屋で剛介が亜由美の動画を見せながら「みんな困ってる」と言っていたことを思い出した。ゲー研があの動画を作っているのだ。「ゲーム・亜由美」として大学内で作っている。剛介もそして末土教授らも、それに関わっている。
信じられない。
剛介たちと一緒になってわたしを凌辱した連中は、ゲー研のつながりだろう。
「どうしたの。また泣いているの? かわいいわ」
吊していた鎖が外されて、ようやくつま先立ちから解放され、思わずしゃがみ込んでしまった。
「さあ、寮長の部屋へ行きましょうね」
ぐいっと首輪を引かれる。
まだ絶望したくはない。なにか手があるはずだ。彼らがわたしを利用するなら、いきなり拷問実験はしないのではないか。
必ず逃げ出すチャンスがあるはずだ。
寮長はムリでも、彩芽ならなんとかなるかもしれない。
寮長
寮長の部屋は、一階の奥だった。浴室から近く、暗い廊下を歩くとすぐだった。
彩芽に連れられ、押し込まれるようにその部屋へ入った。
女性の部屋らしい明るく華やいだ雰囲気があって、それがかえってわたしには驚きだった。元柔道の選手で独身で、残念なことに男性に好かれるような容姿ではない寮長の渡辺奈美は、もっと無機質な部屋に住んでいるのかと思ったのだ。
印象派のような繊細な絵画。観葉植物の鉢植えがいくつもある。切り花のアレンジもテーブル、キッチン、テレビの前のテーブルなど何ヵ所も置かれている。
テレビの横の棚には縫いぐるみが大小さまざまあり、寮長が女子柔道部の部員たちと行ったピラミッドやディズニーランド、万里の長城などを背景とした写真が飾られている。
天井近くには、寮長として大学から認められている証拠だろうか。感謝状が額に入っている。
ソファーもイスもすべてピンクのカバーがかけられている。カーペットは白だ。
「安里咲。あなたの裸はきれいだけど、ここにいるときは、これを着てほしいの」
寮長がイスの背にかけた服を指さしている。
「よかったね、安里咲」
彩芽が、わたしの頭をこづき、むりやり下げさせる。おじぎをしろというのか。
腰に巻き付けたのは赤いマイクロミニのスカート。そしてやはり赤い細くて小さなブラをつけられた。どちらもフリルがついて、かわいらしさを過剰に演出している。
大きな姿見があり、その中にいるわたしは、売れないままでいるアイドルのようでもあり、男性向けの風俗店でやけくそになってはじめたコスプレサービスのようでもあった。
とても、太陽の下で街を歩くことなどできない、恥ずかしい姿だ。
「安里咲は、吠えたり噛みついたりしたらいけないから、しばらく猿ぐつわをさせたままにしておきましょう。躾けは厳しく、ビシビシいくわよ」
寮長は、鍛えられて固くなっている手で、わたしの体を触る。
「ホント、いい肌をしているわ」
乳房を掴む。
「ぐっ」
「憎らしいほどかわいいってやつね。たっぷりかわいがってあげるわよ」
ぐいっと握られる。
いやなことだが、体が妙な反応をする。乳房を潰され、股間がギュッとすぼまるような感覚。これを快感だと思いたくない。こんなことで感じるはずがない。
「おまえの部屋はあそこにあるの」
姿見は木の壁に取り付けられているのかと思ったが、その壁には小さな把手が埋め込まれていて、それを引き出して引っ張ると、鏡ごとドアのように開いた。
クローゼットだったのだろう。ハンガーをかけるパイプが二本、天井付近にある。物を置く棚もある。そこにはゴロゴロとなにかが置かれているのだが、直視できない。したくない。
床の部分に薄いクッションが敷かれ、そこで寝ろというのだろうか。
「暴れたりしてもしけないから、躾けが終わるまで拘束したままよ」
逃げだそうというよりも、ただ、そこに押し込まれるのが嫌なので暴れているわたしを、彼女たちは力尽くで抑えつけた。
「暴れたら、寝かせないで磔にするわよ」
わたしは暴れ続けた。最後の力を振り絞って。
「しょうがないわね。今夜は磔だわ」
シャワーのときのように、首輪の鎖を天井近くの環に通すと、首吊りのように引き上げていく。
「うぐぐぐ」
余計に暴れる。
その手が左右に広げられ、納戸の上部にある棚の下の金具に鎖で留められていく。足もクッションの下に隠れていた金具と枷を鎖でつなぐ。
手足が大の字に納戸いっぱいに引き延ばされたあと、やっと首の鎖が緩められた。
「自殺されても困るからね」
首輪から鎖を股間に通す。
「ふふふ」
寮長は笑いながらスカートをまくりあげて、剥き出しの肌を指で撫でる。
さきほどまで全裸で歩かされてきたのに、いったん、みっともない衣装でもスカートをつけてもらうと、それをあえて跳ね上げられることに恥ずかしさを感じてしまう。
「いまに、なにをやっても濡れるようになるのよ」
指先を男たちに蹂躙された部分に入れてくるのは、彩芽と同じだ。この二人の嗜好は同じらしい。
「がっがっ」
喉を鳴らして耐える。
痛い。自分の大切な部分をまさぐられるだけではなく、物のように乱暴に扱われている。
そこに鎖を食い込ませた。
「かわいい。食べちゃいたいわ」
お尻に回してグイッと引き上げた。
「ぐぐぐ」
どこまで辱め、痛めつければ気が済むのだろう。
冷たい鎖を背後に引き上げ、首輪の後ろにつないだ。


