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堕ちる 特別編 改訂新版 · 第5部

堕ちる 特別編 改訂新版 第5部 (5/5)
前の話

十頭の豚が広場に放たれて、一度にやってくるようなイメージがあったのですが、そうではありませんでした。

彼らは自然に順番を決めているのです。

次、また次と、彼らは私を犯していきました。

私の膣は腕が入るぐらい広がっていったのではないかと思えます。あのドリルが押し広げ、子宮は下がり、そこにいままでなかった入り口がぽっかりとあいて、ドリルを受け入れていくのです。

前の精子に次の精子が継ぎ足され、それがあふれ、ドバドバと私の中から流れ出ていきます。

豚の便所となったのです。

「ああ、なんていいの。なんて気持ちがいいの」

私はこれまでにない深い快楽に沈んでいました。

十頭すべてが一巡するのに、二時間近くかかりました。

外は夕暮れになっていきます。

豚たちは、さっきのような興奮状態ではありませんでしたが、平気で二巡目にはいりました。

きっちりすべての豚と二回交尾したのか、私にはわかりませんが、豚がおとなしくなって、私よりも食べ物を優先するようになった頃には、あたりは真っ暗になっていました。

「どうだった?」

「はい。最高でした……」

私は、そう言うしかありませんでした。

最後の日記

12

月9日(土)

これは、私が書く最後の日記になります。オガタ先生が昨日までのことをちゃんと書きなさいと、時間をくださったのです。

「これから先、おまえはもう日記を書くことなどないだろう」

私は、朝から考えていました。

これから、毎日、豚小屋の清掃、食事、給水の仕事をし、体も与える。

そうすると、豚に犯される毎日に、満足してしまうでしょう。

そんな、自分に脅えていました。

そんなのは求めた世界ではありません。

なにか違うのです。十一月のあの日、思い切って、公園にいき、ろくさんたちにお願いしたときのような、あの世界は戻って来ないのでしょうか。

だったら、私はいますぐ終わらせてしまってもいいぐらいです。

「先生、私はこうしたことを望んだのではありません」と、はっきり言いました。

「異常が日常になれば、それもただの日常にすぎません」と。

「先生は、私を立ち直らせようとでもしているんですか?」

「もちろん違う」とオガタ先生が笑います。「おれがそんないい人に見えるのか」

「だって、これじゃ……」

「豚は太らせて食うものだ。おまえは、ここで、昨日のような暮らしが続くとでも思ったのか? そんなわけないだろう」

「じゃあ、私は……」

「体力が戻り、準備ができたら、次の段階へ進む。そういうものだよ」

そして、オガタ先生は、次の段階に進めてくれたのです。準備はすっかりできあがっていたのでした。

オガタ先生は、ネットで私の肉体への拷問権を販売していたのです。

足は、爪、指、足首、そして膝。手の指は爪、第一関節、第二関節、基部、手の平、手首。

合計、足は二十四、手は四十二、合計六十六の部位にわけて、オークションにかけたのです。

購入者の好きな方法で、その部分を最終的に切除していいのです。

手足を切断するだけですが、それが六十六もの部位に分かれるとは、不思議でなりませんでした。六十六という数字も、なにかしら、暗示しているような気がします。

六十六回の拷問。それに、私は耐えられるでしょうか。

「どうだ? 気に入ったか?」

私は想像しただけで早くも失禁しながら、「はい、お願いします」と賛同しました。

それは十一月のあの日と同じです。鏡の中の自分に、マーカーで「公衆便所」と書いた日。ろくさんに恵んでいただいた日。いや、それ以上です。

「おれにはおまえの気持ちが、よくわかるよ。ほかの連中、たとえば、これからおまえの体を切り刻みにくる連中のうち、おまえを理解しているやつは、まずいないだろう」

オガタ先生はこうおっしゃいます。

「おれだって、すっかり理解しているとは言わない。だが、おまえのことを考えてはいる。だから、オークションをやったんだよ。どうだ、いい考えだろう?」

「はい。すばらしいです」

「おまえの自虐の欲望と、おれの加虐の欲望が、探り合いながら、二つの波がぶつかって、より高い波になるのさ。おまえの欲望の果てを見届けてやるよ。おまえの罪深さそのものを、罰してやろう。おまえを罰することができるのは、それだけの罪を負うことのできる人間だけだからな」

「ありがとうございます。どうか、こんな私を、徹底的に罰してください」

ここで、私は日記を終えます。最終段階は、ただひたすら、罪人として恥をさらし、苦痛にもだえながら、灰となって、風に吹き飛ばされていき、この世から消えていくのです。

オガタの日記

12

月9日(土)

あれ

の書き綴った日記の続きを書いておくことにする。

人間は誰もが罪を負っている。それを罰することができるのは支配者だけだ。おれも罪人だが、同時に、あれの支配者になった。その悦びはまた、格別なものがある。

あれの殺生与奪権を手にしたのだ。あれは、歓喜の中で、豚のように悦び狂いながら死んでいくだろう。

支配者はそれを見届ける義務がある。そしてすべての罪を引き継ぐのだ。

オークションですでに売り先は決めっていた。おれが立ち会う時間、そして順番をよく考えて、スケジュールを調整した。参加者の中には、複数の部位を買った者がいて、一度にやりたいと希望していたが、そうもいかない。途中であれが絶命しては、すべての計画が終わってしまうからだ。

しかも、クリスマスパーティーには間に合わせたかった。その日、変わり果てたあれを、やつらに見せて驚かせたいのだ。

同時にやらなければならないこともあった。

そこで、この日は豊胸手術の第一弾をやった。シリコンを入れ、皮膚を引き延ばし、次の段階へ進まなければならないからだ。

麻酔はいらないというので、ざっくりとメスを入れて、泣きわめくあれの中へシリコンを入れた。いまの豊胸手術はおれにはムリだから、一昔前のやり方だ。おまけに傷口を隠す必要もないから、乱暴にやっていい。

その夜、明日やってくる者たちとの連絡を取り、おれは、小屋の横にキャンピングカーを置いてそこで寝た。あれは、もちろん、豚小屋で豚に犯されて夜を過ごした。

12

月

10

日(日)

朝、今日のメンバーが揃ったのを確認して、豚に犯され続けているあれを見せた。

「なるほど、ここまで来ているんだったら、確かに手足はいりませんね」と参加者が言った。

「でも、まだまだキレイじゃないですか。もったいないですよ」と言う者もいた。

参加者のことは記録に残さない。男もいれば女もいた。若い者もいたし、七十代もいた。

なにかのサンプル調査のようで、この国から無作為に抽出した人たちのようだったが、参加者たちは自分たちを「選ばれし者」と思っていることだろう。

それは錯覚だ。罪を負う気もなければ、あれがどうしてこんなことを自ら求めたのか、理解しようという気もないのだから。参加者は、単なる道具にすぎない。

拡張が求められていたので、おまんこやアナルに太い器具を押し込んでいく。毎日、器具をより長く、より太くしていく。

小屋の前に、交尾に使っていた木製の台を置き、その屋根の部分だけを外す。仰向けにあれを縛り付けておけば、拷問台になる。

この日は、右足の指からはじめた。爪剥がしを終えると、あれはしばらく半狂乱になっていた。それでいて気絶することなく、生爪に焼けた釘が打ち込まれ、強引に爪を剥がされる様子をしっかり見ていた。

失禁もしていたが、淫汁もたっぷり垂らしていた。

これなら続けられると確信した。

指の切断だが、道具は参加者が好きなものを選ぶので、ハンマーで潰したり、トーチで焼いたり、針や鉄串を刺してから切断する場合もあれば、ペンチで強引に引き抜く場合、鉛筆を削るようにナイフで肉をそぎ、骨にしてから折る場合など、そのやり方のバリエーションには、おれも驚かされた。

まったく、人間というものは、計り知れない悪意の塊だとわかる。

「もったいない」などと言っていたやつが、ペンチで肉を潰しながらあれのアナルを犯して喜んでいたのだから、あきれる。

止血をしたり、気絶させないようにしたり、脈や血圧を測定しながら、最後まで絶叫が続くように気を配るのは、けっこう重労働だった。

人権問題はもちろんだが、拷問が廃れていった理由がよくわかった。気力も体力も根気も、極限まですり減らす行為だからだ。乱暴な人間が拷問をするイメージに惑わされてはいけない。乱暴者には拷問はできない。ある程度の繊細さと強靱さがなければ、完遂できないだろう。

おれもかなりの変態だと自負していたが、これをやり遂げるにはとんでもない努力が必要になりそうだ。

夜までかかって左足もすっかりきれいに指を失った。

この日は豚小屋で寝かせたが、暴れないように縛り付けて点滴をしておいた。豚との交尾は休ませる。

12

月

11

日(月)

雨だったが、参加者の熱気は相変わらずで、昨日のことが参加者たちに伝わったのか、朝早くから集まりはじめた。

今日は左手をやる。おれの診断では耐えられるはずだが、慎重を期してのぞむ。これからはあれの生命力との戦いにもなるからだ。

生爪剥がしはよほど痛いのか、泣きわめき過ぎるが、参加者たちは満足していた。

第一関節を一通り終えると、早くも午後になっていた。第二関節を終えたときは、まだ日が高かった。指は末節、中節、基節の三つの骨がある。親指の基節はオークションで手の平と一体にしていたので、残る四本だけで今日は終わりだ。

今日ははじめての人もいて、やっぱりあれが、泣きわめいている間、犯して楽しもうとしていた。

「うわっ、すげえ、食いちぎられそう」とその締まり具合に喜んでいた。

「切断した指をどうするのか」と参加者が聞いてきたので、「豚の餌」と答えたら、「欲しい」と言う。「貰えると思った」と主張する者もいた。

くれぐれも扱いに注意するようにと説明し、指紋のある末節だけは渡さなかった。

「焼いてみたい」と言う者もいた。その場で、おれのキャンピングカーのコンロを使って、ソーセージのように炒めて、変わり果てた自分の指をあれに見せつけてから、そいつは自分の口に……。

時間が余り、昨日の足の具合もまずまずだったので、参加者たちに豚の交尾を見せた。

こんな状況でも、よがり、喜悦の表情を浮かべているあれに、驚く。

「どうして、そんなにいいんだ?」

「だって、だって……」

あれの思考脳力は確実に低下している。言葉が出て来ない。

「だって、いいんだもの」と、やっと言ったが、おれはその微笑みにゾッとした。いますぐ殺して、このことを忘れてしまいたいと思ったが、参加者たちは逆で、自分たちはあれの願いを叶えてやったのだ、これでよかったのだ、と解釈し、満足しているようだった。

12

月

12

日(火)

拡張は順調だった。肛門は十センチ。膣は十二センチのものが入るようになっていた。今日はさらに一センチ、太いものを入れておく。

一方で大胆に肉体を痛めておきながら、この二つの穴だけは繊細に扱っておかなければならない。

いまだに、多くの参加者が、あれを犯して楽しみたがる。いまでは、あれはその二穴の感覚などどうでもよくなっているはずだが……。

拷問時に失禁は仕方がないし、参加者はそれを喜ぶ。だが脱糞は避けたいので、毎回、先に大量浣腸をしてやっている。ろくに食べていないはずだが、それでも出るからしょうがない。この数日は点滴で栄養も与えているが、それでも多少の汚物が漏れる。

足の消毒、左手の消毒。特に問題はない。いや問題はあるのだが、要するに絶命する前にすべての拷問メニューをこなせばいいのである。できれば最後の拷問まで、意識をしっかり保たせておきたい。欲を言えば自分の身に起きていることを認識できている間に、すべてを終えたい。

今日は右手の爪と指。参加者は常連も多くなってきた。常連の特徴を見極めたいと思ったが、やはり無作為に抽出された人たちにしか見えない。まだしも、映画のエキストラに集まった千人の素人たちのほうが、一つの特徴でくくれそうだ。

参加者が嬉々として、泣きわめくあれの爪を剥がし、指を潰す姿を見ていると、不思議な気持ちになる。

ミルグラム実験を思い出す。かつて近代史上、最悪の虐殺者であるナチスのアイヒマンは、生真面目な人間に過ぎなかった。ユダヤ人を何百万人も殺戮しておきながら、それで快楽を得ていたわけではない。

平凡な人間でもある条件下では、とんでもなく残酷な仕事をやり遂げる。そのことを実験で証明しようとしたのだが、おれはこの実験をそれほど評価していない。

なぜなら、人道的な見地から以後、新しい条件下での実験は表向きには実施されていないからだ。社会的な地位、男女、年齢、国籍、教養度合いなどでどう変化するかまで綿密に検証されてはいない。まして、いまの時代の人間ではどうなのか。誰にもわからない。

こうした拷問をしながらあれを犯す、という者たちも多く、常連は必ずといっていいほど、やりたがる。それを見て、初参加の者もやろうとする。

おれが目の当たりにしている人たちは、間違いなくいまの時代の人間である。もしかすると、人間の心の根底には、このような欲望があらかじめセットされているのではないかとさえ思えてしまう。

こうした参加者たちの欲望のおかげで、あれの二穴は、拡張しているものの、まだ男の欲望を満たすだけの機能があることもわかった。

「あひー」とわめき、感じてさえいることもわかった。

一つのプログラムをやり終えると、苦痛と疲労だけではなく、明らかな達成感や恍惚感を、あれは抱いている。

やっていることは、おれも彼らも変わらない。どちらかといえば、おれも参加者と同類だ。だが、参加者たちの仲間になりたいとは思わない。参加者たちは仲間を作りたがる。おれも仲間だと思っているフシがある。しかし、違うと思いたい。

群れたら、終わりだ。

あれが意識を失う回数が増えたので、カフェインを点滴しながら、続行した。その後、アドレナリンも追加。いずれもほんのわずかな量に留める。

この三日間で失われた血液量が、思ったよりも多かった。輸血はできないので、回復に時間がかかりそうだ。

12

月

13

日(水)

あらかじめ、考えていた通り、この日は拷問を休む。全休だ。

おれも疲れている。

あれの悲鳴が耳にこびりつく。豚の臭いもだ。

そこであれを縛って、増血剤、栄養点滴を与えて、おれは町に出て温泉に入り、リフレッシュした。

夜、あえて豚肉を食べた。

12

月

14

日(木)

拷問の後半戦が始まる。

あれは多少は回復していた。

「やれるか?」と聞くと、擦れた声で「大丈夫です」と答えた。「やってください。途中でやめないで……」と懇願された。

もう戻れないところに来ている。

今日の参加者は左右の足首を競り落とした人物。だから、たった一人だ。両方を別々のやり方で拷問にかけるのだそうだ。

その準備のために炭をおこすなど、多少手間取る。

左足に、何度も焼き鏝をあて、絶叫させたあと、すっかり焼け腫らしてから、そこに針を刺して皮膚をやぶき……。

右足は、小型のハンマーで少しずつ叩き割る……。あれは声が嗄れてしまった。

失神は二日前ほどではなく、よく耐えた。その瞳は無罪を信じている乙女のように澄み切って、それがいっそう哀れさを誘う。哀れで惨めな姿は、拷問意欲を振るいたせる。

休ませたのがよかったのか。その間に、あれはさらに覚悟を確かなものとしたのだろうか。

仕上げに「鉄の靴」と呼ばれる中世の拷問をやってみたいという。真っ赤に熱した鉄の靴を履かせるのだ。

「このために、わざわざ作ってきたんですよ」

うれしそうに鉄の靴を火にくべて、真っ赤にさせる。

あれは、自分の肉の焦げる臭いを嗅いで、瞳を潤ませ、破壊されていく自分の肉体を見つめていた。舌を噛まないようにゴムのベルトで猿ぐつわをしていたが、叫んだりしゃべることはできる。

叫び、泣いていたが、無言だった。

こんなことをする参加者に一日、付き合って、おれは自分がなんて善人なのか、と気付く。お人好しでさえある。

そいつのために、あれの止血してやり、脈を診てやった。

「どうなんだ?」

「あひっ、あひっ、あひっ」としかあれは声が出なかった。

最後は、おれが指導して参加者も手伝って、メスやナイフで足首から先を、切り離す。複雑な足首の骨に沿って、肉や腱を切断する。

どうせ膝から下は切断するのだが、問題を大きくしたくないので、血管の縫合をし、傷口をできるだけきれいにして、時間をかけて丁寧に処置した。大手術なのだが、おれにもこれぐらいのことはできるのだ、という満足感はあった。虚しい満足感だが。

12

月

15

日(金)

今日も休み。

これからは、体力と傷口と気力と。面倒を見ることが急激に増えた。

患者を受け持っているようで、医者気分が味わえるのはいいが、いかんせん、設備が決定的に不足している。

おまけに、あれは患者ではない。

「今日は、ないんですか?」

衰弱しきっているはずなのに、あれは、おれにそう言う。

「回復しないと次にはいけない」

「なんだか、おかしいわ。体を切り売りしているのに、元気にならないといけないなんて」

やばい。おれは一瞬、涙が出そうになった。

あれのために泣くやつはいない。おれもそうだ。だから、感情の高ぶりは、なにか別のことだと自分に言い聞かせる。

あれは、ある意味、美しかった。足は、先のとがった棒のように、あるべきものを失っている。そこに包帯が巻かれている。包帯は頻繁に取り替えている。傷口はまあまあだ。

ムダな出血を避けるため、足を高い位置に吊っている。

手も包帯でぐるぐる巻きだ。こちらの回復は比較的早い。手も吊り上げている。

心臓は思ったよりも丈夫で、わずかな休息で回復していた。

点滴だけではもたないので、流動食を与える。栄養だけで味は考慮されていないが、あれは喉を鳴らして飲み込む。そういえば、尿でも糞でも飲み込んでいたのだ。それに比べれば、ずっとマシだろう。

タイマーをかけて仮眠しながら、夜通し、あれの様子をチェックした。

12

月

16

日(土)

また雨だ。少し雪が交じっている。

「寒くないか」と聞くと、裸のあれは「よくわかりません」と言う。感覚が麻痺しているのか。神経がダメになっているのか。

しかし、よく見ると震えていた。

がまんしているのだ。がまんすることに慣れてしまっているのだ。

「今日は、とうとう、この手がなくなるんだ」と、おれは吊っている手の平を撫でた。

吊っている縄を外し、あれの頬に手の平や手の甲をあててやる。豊かなになった乳房に押し当てる。そして、激痛への期待に汁をべとべとに垂らしている拡張中のまんこに触れさせる。

「こんな、大きなものが……」と、あれは驚いていた。

「ああ。とうとう、どっちも十五センチが楽に入るようになった」

「ミチさんが言っていた、ワインのビンも入りますか?」

「だろうな」

「すごい……」

あれは、微笑んだ。

この日は二人の参加者で、どちらもはじめてだった。一人は持参した日本刀を使い、固定した手の平に、何本も垂直に切り込みを入れたあと、横になぎ払っていった。みごとな腕で、サイコロ状になった肉片が十いくつもできた。

その参加者はそれを持ち帰るといい、保冷用の容器に大事そうに入れ、あとは関心がないらしく、そそくさと帰っていってしまった。

おれは、その参加者だけは、今回、はじめて話を聞きたいと思ったほどだ。

もう一人は、あまり切れないナイフを使って、手の甲をぐさぐさと刺すのだが、はかばかしくなく、最後にはハンマーを使って……。

いずれにせよ、おれは止血に大忙しだった。

参加者が帰ったあと「まだ、やるのか?」と聞いてみた。

「あと、なにをすればいいのでしょう」と擦れた声で言う。

「明日は豊胸手術の第二弾だ。もっとでかいシリコンにする。明後日は、膝から下を失う。それからすべての歯を抜く。それで終わりだ」

「お願いがあります」

「なんだ」

「声を潰していただけませんか?」

「声を? どうして?」

「ミチさんに、返されたとき、あの人たちが欲しがっているような絶叫を上げてしまうのは、癪だからです」

「ふーん」

おれはその奇妙な依頼に応えることにした。

「声帯を切除して、舌を切る。だが、舌を切るには時間が足りないな。とりえず声帯だけでいいか?」

「はい」

舌の切除はやってやれなくもないが、フェラチオがつまらなくなりそうで、残しておきたい。

12

月

17

日(日)

雪が本格的に降った。

今日は参加者は来ないので、静かに豊胸手術に集中できた。

一度開いた傷口を再びあけて、以前のシリコンを取り出すと、新しい、より大きなシリコンを入れた。

きっちりと縫い、消毒し、雑菌が入らないような措置をしておく。

12

月

18

日(月)

暖かい日差しに、うっすら積もった雪があっという間に溶けた。まるで拷問者たちを祝福するような天気ではないか。

セーターでは暑いぐらいだ。

膝から下、つまり脛を手に入れた二人の参加者は、どちらも以前にも来た者だった。

二人は仲良くなったらしく、両方の

脛

を同時にいたぶる計画になった。

木刀で散々打ち据えたあと、あれを拷問台から降ろして、そろばん板に正座させると、いわゆる石抱きの拷問をかけた。

おれはそれにあわせて、あれを縛り上げた。できたばかりの乳房は特殊なブラをつけたが、いままで見たこともないほど、猥らなあれの姿に、さすがにおれも、ビンビンに立った。

哀れだった。惨めだった。石の重量が増えるにつれて、苦悶し、身もだえしていく。

参加者は自ら石の上にのって、体重をかけては、悲鳴を引き出す。足の先端など、傷口という傷口からビュービューと血が噴き出す。

「どうだ、苦しいか」

「ぐふあぁぁぁ、いっったぁぁぁ」

やがてバキッと音がして脛が折れ、あれが失神した。

参加者はそれで許すわけではない。あれを抱き上げて拷問台に戻すと、うつ伏せにして、アナルを犯しながら、骨折した脛を捻ったり、鉄串を刺したり、焼き鏝をあてたり……。

半日以上も、彼らはあれを苦しめて、ようやく、納得したらしく、「切りましょう」と言った。

膝から下なので、さすがに輸血が必要だろうと、さまざまな闇ルートを通じて血液製剤を手に入れていた。

拷問台をそのまま手術台にして、おれは、あれから、膝そのものと脛をすっかり取り除いていった。手術というよりも、肉の解体だった。

12

月

19

日(火)

昨日は手術が深夜までかかり、その途中で参加者が帰っていったのにも気付かず、夢中で取り組んでいた。

あれは、こういうときに限って、ときどき意識が戻っては絶叫した。それに豚たちが呼応する。

しばらく豚との交尾をしていないので、やつらは飢えているのだ。

疲れ果ててキャンピングカーに戻って爆睡してしまい、昼前に起きてあれを見に行くと、瀕死の状態にあった。

生暖かい、妙な日だった。

残りの血液製剤を使い、傷口を確認しながら感染症を警戒しつつ、なんとかリカバーする。

血管の縫合がうまくいかなかったのだ。だが、乱暴にやるわけにはいかない。あれはすぐに死んでしまうだろう。

死ぬな、と思いながら、この日もずっと傷の手当てをした。

手首の状態も悪化していた。それに気付くのが少し遅れ、ギリギリ間に合った感じだ。

四ヵ所を順繰りに診ては、手当てを繰り返した。

12

月

20

日(水)

昨夜から急激に冷え込んだ。朝、霜が立っていた。

手足の傷口は安定していたが、豊胸手術の跡が悪化していた。壊死している部分を切り取り、縫合し直す。

疲れている。昨日、そこに気付かなかったのはうかつだった。

野戦病院のような、悪戦苦闘が続く。助手がほしいぐらいだ。

12

月

21

日(木)

寒い朝だ。水が凍っていた。

小屋のあれは、安定していた。

「じゃあ、今日は歯と声帯をやろう」とおれは宣言した。

時間がなかった。明日にはミチの指定した場所に移動しなければならない。瀕死の状態からは逃れたが、どれだけ生きられるか、おれにもわからない。

だが、あれが望むことはしておこう。

「なにか、最後に言うことはないか?」

「先生、ありがとう。なにも言うことはありません。元気になったら、また豚と交尾させてください」

「ああ。約束しよう」

ミチたちも、パーティーが終わってあれに飽きれば、見たいに違いない、あれが豚と交尾して喜悦する姿を。

いつから、あれが、このような過酷な生活を送ってきたのか、おれはよく知らないが、歯はかなり悪くなっていて、大した力も必要なく、簡単に引き抜くことができた。

そして声帯だ。簡単にはできない。麻酔もしないので、焼き切ることにする。

あれを固定して、歯のない口に、漏斗のようなステンレスの筒を突っ込む。ライトで声帯を覗き込み、先端を焼いた鉄棒を押し当てていく。気管と食道の分かれ道にあるので、拷問のように雑にやるわけにはいかない。

冷や汗をかきながら、何カ所も焼いていき、最後に火傷の治療をした。

「まったく声が出ないというわけではないと思う。しかし、しばらくは声を出そうとしてはいけない」

あれは素直にうなずいた。

おれは、無償にあれが可愛くなり、口づけをし、ほおずりをした。体の隅々までを撫で回した。

だが、犯す気分にはなれなかった。ある意味、おれの作品なのだ、と思った。

「もしもし」とミチに電話をした。

「明日、そっちへ行くからな。もちろん、連れて行くさ。約束通り、引き渡す。待ってろ」

いい気分だった。

12

月

22

日(金)

都会は暖かいな、と思う。

裸のあれをトランクに入れて、ミチのところへ連れて行く。極端に痩せたわけではない。手足を失うだけで、人間はこれほどコンパクトになるのかと驚いた。

同時に、人間とは頭の生き物だと痛感する。頭が大きすぎる。それに重い。しかしこれがついていて、機能している限り、頭以外がどうなっても人間なのだ。

ドライブが長く感じられた。

迷った。このまま引っ返す。または、誰も知らないところへ行く……。

どっちも、あまり意味はない。あれを連れて、どこへ行くというのか。

苛烈な二週間を潜り抜けた戦友。病に苦しむ妹。失い続け、苦しみ続けることを選んだ、奇妙な恋人。

そうしたものをすべて混ぜたとしても、あれにはならない。

それに、おれは疲れていた。オークションで稼いだカネを持って、しばらく海外にでも行きたい……。

待ち合わせの場所は、あれの木造のアパートだった。ミチはいまでもそこにいるのだ。

「先生、お疲れ様」

ミチは、しばらく見ないうちに、美しくなっていた。人の生き血を吸っているからだろう。あれの財産をすべて横取りし、稼がせてきたからだ。

あれとほぼ同年代のはずだが、この溌剌として五体満足なミチを見ていると、あれが哀れでならない。

おれは自分勝手な妄想を振り切る。

「トランクに入っている」

「早く見せて!」

会いたい、ではない。見たい、なのだ。

トランクをあけた。

「へえー、すっごいねえー」

あれは不安そうな顔をして、ミチを見上げていた。脅えている。

歯のない口は、肛門のようだ。

そこにケンもやってきた。

「達磨奴隷ってことか。おまけにしばらく見ないうちに、巨乳になったなあ」

「歩けるの?」

「まだムリだ。傷口がしっかりするまでは、時間がかかる。それからカバーをつければ四足歩行はできるだろう」

「いつ頃になりそう?」

「年内にできればいいが、ムリかもしれないな」

「そうなんだ……。残念だわ。じゃ、パーティーではどうしようかな」

「ずっと吊っておけばいいんだよ」とケンが言う。

「そうか。そうしようか」

おれは、少し不安になってきたので、海外旅行は少し先に伸ばすことにした。なにも言わなければ、このままおれもそのパーティーの間、付き添っていられるのではないか、と思ったからだ。

あれは、久しぶりに自分の部屋に入り、鏡に映し出された自分の姿を眺めて、泣いていた。

「うれしいんだろ、おまえ」とミチはからかう。

そうかもしれない、と思う。だが、ミチが思っているうれしさではない。あれだけの拷問を受けて、まだ、生きていることを喜んでいるのだ。だから、泣いている。そして、まだ、泣くことができることを確認している。

あれに施したことを説明し、取り扱いについての注意点を、ムダだとは思うが、説明した。

その夜は、ミチやケンがおれを食事に誘い、しこたま飲み食いして彼らが用意したホテルに泊まった。

あれは一人寂しく、自分の部屋で飽きることなく、鏡の中の自分を眺めているだろう。変わり果てた姿に、なにを思い感じていることだろう。

そう思うと、なかなか寝付けなかった。

クリスマスパーティー

12

月

23

日(土)

パーティーは、ミチが探し出した倉庫のような場所で、コンクリートの床、見上げると梁が見えていて、寒々しい。ヒーターと照明を追加し、外では発電機がうなっていた。

テーブルに食べ物や飲み物が並び、クリスマスツリーがあった。そのあたりに、ハンガーや数脚のイス、ベンチも並べられている。

ケンとおれは、いろいろな支度を手伝った。その間に、長く話し込んだ。

集まったのはミチが招待した人たちだけで、二十人ほどだった。あれの会社時代の同僚、セレブな友人たちは、華やかなドレスで現れた。目が爛々と輝いて、嗜虐性を剥き出しにしていた。

そのほか、あれの体をむさぼった常連たちが来ていた。

上品な雰囲気は、最初からない。

ミチが得意げに挨拶をし、ケンが、ワゴンを会場の中央に運ぶ。箱がのっている。思ったより小さく感じる。手品でもやるのか、と思うが、ミチとケンが箱を持ち上げると、会場は興奮に包まれた。

「うそー」とか「すげえ」といった声が漏れる。人々がワゴンに群がる。

そこには、あれがいた。

大きな鼻輪をつけ、四肢のかなりの部分を切断されたあれが、台の上に腹部をのせていた。

痩せていた。顔も首もほっそりとしていた。ムダな肉がない。巨大な人工の乳房のすぐ脇には、肋骨が浮き上がっていた。腹部に弛みもない。

飢えた野性の獣のようだ。それでいて、肌は透き通るように白い。あれだけの目に遭って、傷だらけになっているのだが、それでも肌の白さが際立つのである。

ケンが操作したチェーンブロックが上から降りてくる。

あれの首輪、肩、腰、太ももにベルトがついていた。ワイヤーをそのベルトについた金具に通した。

ワゴンを取り除くと、あれが空中で四つんばいになっていた。

包帯をした手の先、足の先が、もがくように動いている。

「ツリーをご覧ください」とミチが言う。ツリーには、小さな責め道具が飾られていた。ツリーの回りにはプレゼントのように、責め道具の入った大きな箱が並んでいた。

「今夜はご自由に、お好きなだけ、これをいたぶってくださいませ。年に一度の感謝の気持ちですわ」

ミチは得意げにそう宣言した。

「その前に、乾杯をいたしましょう」

ケンがシャンパンのボトルを持ってくる。それをミチと二人がかりで、あれの拡張された肛門に押し込んでいく。ハラハラするほど乱暴に扱う。

ボトルのラベルが見えなくなるほど、中に押し込み、客たちは列をなし、そこからグラスにシャンパンを注いでもらいながら、あれの体を眺める。

吊られている体は、全体が大きなボトルのようなもので、注ぐために傾けると、体全体が傾く。

一本がたちまち空いて、ミチがぐりぐりとこねながら引き抜き、新しいビンが押し込まれる。

つーっと透明な液が性器から垂れ下がる。

「お好きな方はどうぞ」とミチが薄いゴム手袋を用意する。物好きが、手袋をして、あれの膣の中に指を、そして手を入れていく。

ビクンビクンとあれの体が震えて、激しく感じていることがわかる。

酔いながら、食べながら、なにをするか、考えている人たち。誰かがやっている責めを参考にして、責め道具を手にする人たち。

声帯を焼いたあれは、喉を鳴らして悲鳴を上げている。

「ごー、ごー」と風のように聞こえる。哀しみはあるものの、怖くはなく、むしろ滑稽だった。

勢い、激しさは増していく。

シャンパンは五本、立て続けに空いた。そのあとは、アナルもヴァギナも、客たちの腕で蹂躙される。

巨大に垂れ下がる乳房も、格好の餌食となっていた。乳首に錘をつり下げ、無数の針が打ち込まれ、火のついたタバコを押し付けられロウソクの炎で焼かれた。

歯のない口に、男たちは男根を突っ込んでいく。

おれはその輪に加わらなかった。

「あら、先生、どうしたの?」

ミチは美しかった。あれと同年代のはずで、あばずれのように見えたが、あれの稼いだカネと、あれが目覚めさせた嗜虐性によって、光り輝いていた。

「責め飽きたのかしら?」

口調まで、あれの友人であるセレブたちに染まっている。唾をはきかけたくなったが、おれは微笑んだだけだ。

鞭打ちの音が響く中で、おれはなにも言わず、酒を飲んだ。

夜半がすぎて、あれを責めるのに飽きてきたのだろう。満足して帰る者もいれば、イスにぐったりもたれて居眠りしている者も出てきた。

しかし、一部の好き者たちは、次になにかが起こることを期待して、あれを責めながら、談笑している。

ケンがやってきた。

「そろそろですかね」

「うん」

ミチが疲れたような顔をし、眠そうな目でイスにもたれていた。

おれはミチの横に座った。

「どうした。疲れたのか?」

「うーん、あれ、何時かしら」と言うが、目が開かない。

自然に彼女の手を取る。まったく力が入らないようだ。おれがケンに渡した薬を、彼はちゃんとミチの飲み物に入れたらしい。

「どうした。立てないのか?」

「ちょっと眠いわ。力が入らないの」

「どれ」とおれはミチの手首を掴んでみた。

「クリスマスプレゼントだよ」とおれは言い、彼女の手首に手錠をかけた。

「え? あら、なに?」とミチは少し微笑む。

「冗談はよして」

「冗談じゃないんだ」

そこにケンがやってくる。そして、ミチの背後から、彼女に目隠しをする。

「なに? やめて……」

「パーティーはこれからじゃないか」とおれはミチに囁く。

「主役は君だよ」

なにか言おうと開いた口に、ケンが追い打ちをかけるかのように、ボールギャグをかませた。あっという間に厳しくベルトを引き絞る。金具をきつく留める。

「うがっ」とミチはようやく目をはっきり開き、自分の状況を知る。

「サプライズ!」とおれはおどけて、大きな声を出した。

「ご来場のみなさん。本日のサプライズです。奴隷のミチさんの誕生です」

盛大な拍手。

「ダメ! やめてよ。ふざけるなよ!」と彼女は怒鳴りたい。だろうが、言葉にならない。

手錠された手首に、ワイヤーを装着すると、ケンがその先のチェーンブロックを操作する。

「あぐぅ、うがあ」

いくら抵抗しても、力の入らない体。そしてイスから床に倒れ込む。手首が引っ張られて、床を引きずられながら会場の中央へ。

そして手首から吊り上げられていく。かわいそうだが、ミチの手首は今夜で使い物にならなくなるだろう。

あれを食い物にする怠惰な生活によって、ミチは太り気味だった。その体重を手首だけで支えることになる。

体がゆっくりと持ち上がる。

そしてとうとう、足の先が床から三十センチほど持ち上がる。暴れることがあまりできないうちに、おれとケンは、彼女の足首に革の足枷をつけ、ボーリングのような鉄球をつけた。

ドレスがぐしゃぐしゃになっている。高級化粧品は涙で崩れていく。

「さあ、みなさん。今夜は特別な日です。新しい奴隷が誕生しました。そっちの公衆便所は、自らの欲望によって変わり果てた体になりましたが、今度の奴隷は違います。彼女の意に反して、奴隷にされるのです」とおれは説明した。

「この女は、とんでもないことをしました。隣室に住んでいたというだけで、この女性を食い物にし、みなさんからカネを巻き上げていたのです」

「悪い女だ」「罰しなければ」といった声が聞こえる。

「そうです。この女の罪は明らかです。こっちの哀れな公衆便所は、自ら刺青をしました。この女にも罪を誰の目にも見えるように刺青をしたいと思いますが、いかがでしょうか」

拍手。

ケンが脚立を持ってきて、ミチの横に立てる。手には電動のタトゥーマシンがある。スイッチは足で操作するようで、脚立ではやりにくそうだ。しかし、うれしそうに準備をしている。

「恐縮ですが、一つ、提案させてください。この女にぴったりの言葉が一つあるのです。そっちの、なんの罪もない公衆便所とは違うのです。それを、彼に彫りつけてもらいます」

静かにモーター音が鳴る。ケンはこれまで下僕のように使えてきたミチの顎に手をやる。

ボールギャグによって口は大きく開いており、その横にベルトが通っている。

大きく見開かれた目がケンを睨むが、彼はせせら笑い、アルコールで濡れた布で丁寧に右の頬を拭く。化粧や涙を拭う。

地肌はやや浅黒い。栄養満点のぷっくらした頬。そのほお骨のあたりに、針先をあてていく。

「ごおおお」とミチが叫ぶ。体を動かそうとするが、さきほどよりもさらに薬が効いている。多少は揺れるが、大したことはない。

公衆便所で練習した成果を披露している。

スジをあっさりと彫り込んだ。

塗りつぶすのも手早い。青黒いインクによって、ミチの左頬に文字が浮き上がる。目尻に涙のように「く」と入り、その斜め下の鼻のすぐ横、ほお骨あたりに「さ」、そして、やわらかな耳に近いところに「れ」と入った。

おれがミチの体をぐるりと回転させる。今度は右頬だ。

「ぐぅがぁうー」とミチがうなっている。

ケンの仕事は素早い。まったく躊躇がない。

今度は、目尻に「マ」と入る。鼻の横は「ン」、そして頬に「コ」。

「さ、みなさん、よくご覧ください。この姿を。罪人の証しを」

人々は笑いながら、ミチの顔に刻まれたタトゥーの文字を読み上げる。

「くされ、マンコ」

「そう、いまから、これは、みなさんから腐れマンコと呼ばれるのです」

ゲラゲラと笑う声。

だが、これは冗談ではないのだ。主催者であるはずの、すべてを取り仕切っているつもりでいた女主人気取りのミチ。それは12月23日で終わり、24日からは、ただの罪人、性奴隷、腐れマンコなのだ。

おれはあれの横へ行った。あれはミチを見上げて、涙を流していた。

「あんなやつのために、泣くことはないよ」

あれは首を左右に振った。その意味はおれにはわからない。激しい拷問によって、本当の苦しみ、痛みを味わったあれだからこそ、これから味わうであろう地獄を思い、涙したのか。

それとも、自分を必要以上に苦しめた者が、復讐されていることに喜んでの涙か。

あれのことだ。おそらく、前者だろう。

やさしく、おれはあれの頭を撫でてやった。

「だがげげがっでー」と言葉じみたうなりをあれはあげた。おれは意味がわかったような気がしたが、わからないフリをした。

助けてやって……。

それはムリだ。おれとしても、もはや、行き着くところまで行かなければ気がすまないのだ。

さきほどまで、公衆便所の尻、背中、腹、乳房を打ち据えていた鞭が、いまはミチの体を襲っている。

鞭でドレスを剥ぐ、というのだが、素人にはムリだろう。一本鞭を操れる者はほとんどいない。服が裂けるときもあるが、ただ打撲だけのときもある。

何十発と打たれて、ようやくドレスはボロボロになって、簡単にはげ落ちていった。

高級なピンクの下着が残る。鞭がそこに集中する。

しだいに薬は醒めていく。体の反応が激しくなっていく。

全員が打ち疲れた頃になって、ようやく、ミチだったものから、衣服がはぎ取られた。

傷だらけの浅黒い肌。贅肉がついているものの、年齢はまだ若いので、それなりに責め甲斐がある。

ケンが彼女を床におろす。

手首は折れ、肩は脱臼している。それは大した問題ではない。手錠を外し、背中で腕を拘束具で固定する。革紐を絞り上げていく。

「ぐぎゃー」とミチは泣く。

腕がもぎ取られるような痛みだろう。それでいいのだ。実際にもぎ取られているわけではないのだし。

「さて。では、この未熟な女を、今宵、たっぷり調教していきましょう」

おれが宣言すると、男たちが群がり、ミチを犯しはじめた。

人数は半減していた。セレブな女性たちはいったん、帰ったらしい。明日、また来るつもりだろう。

それまでにミチは、すっかり変わり果てているに違いなかった。

12

月

24

日(日)

おれもミチを犯す輪に入った。ローションやコンドームを使っていたが、まさに未熟な性器、未熟なアナルで、結果的にどちらも裂けてしまった。

十五人ぐらいで、何度も挿入を繰り返したからだ。

といっても、それほど酷い裂傷ではない。

そこに、おれが声をかけていた新たなゲストがやってきた。

五人のホームレスの男性だ。公衆便所のことを知っている者ばかりだ。中には年寄りもいた。

すっかり変わったあれを、彼らは囲み、撫で、声をかけて、「こんなになって……」と一緒に泣いていた。

彼らには寒い夜を暖かいところで過ごしてもらい、食べ物を好きなだけ食べ、そしてミチを犯してもらうのだ。

おれはあえて、ミチのボールギャグを外してやった。

「だめ! 絶対、殺してやる。ケン、なにしてるのよ、こんなことして、ただですむと思ってんのかよ!」

口汚くわめくミチは、次々とホームレスたちに犯されていく。

夜が明けてきて、空気を入れ換え、仮眠を取る者もいれば、食事をする者もいた。

ケンは若者らしく衰えぬ体力で、食事や飲み物を新しいものに取り替え、あれが寝られるような、ペット用のサークルを用意してやるなど、大活躍をしていた。

おれの提示したものが、彼にとっては大きすぎたのかもしれない。

「ミチがあれで稼いだように、今度は、君がミチで稼げばいいよ」とおれは示唆してやったのだ。

「ボディピアスの練習台にしてもいいでしょうかね」

「もちろんさ」

「やってみたいことがいろいろあるんですよ」

「やればいいよ」

散々楽しんだホームレスたちが、おれのところへやってきた。

「帰るのか?」

「ええ。もう、あれには会えないんでしょうね」

「うん。まあ、そうかもしれない」

「あれのこと、よろしくお願いしますよ。あんなになっても、可愛くてね、ホンネはね」と言い、彼らは小雪の混じる街へ出て行った。

ケンが、ミチのカネで用意してやった新品の服に着替えて。

昼前には、徹夜した連中はみな帰り、かわりに夜にいなくなっていたセレブたちが戻って来た。ドレスではなく、みなスポーティーな格好だ。

彼女たちは、昨夜、自宅でクリスマスパーティーをしたのだろう。その退屈な時間、今日はどんなことをしようかと想像していたはずだ。

飢えた者が食べ物に群がるように、ミチの若い体に群がった。

「なにするのよ!」

それは、生き残った者に襲い掛かるゾンビにも似ていた。

彼女たちのスポーツは、激しかった。あれもかり出された。二匹の獲物を、彼女たちは存分に打ちのめし、叩き潰し、辱めていった。

あれは、拡張された部分で、セレブたちの足を何本も受け入れて、内臓を踏みにじられてよがり狂っていた。

新しい方は、疲れ果てて反応が鈍かったが、火で炙られ、焼けた鉄串を打たれ、何百発も鞭を浴びると、何度も絶叫しては失神した。

汗が、尿が飛び散り、血と汚物の臭いでおれたちは気分が悪くなるほどだったが、セレブたちは平気らしかった。

宴が終わったのは、午後三時頃だった。

ケンはセレブたちから、かなりの金額を受け取って、愛想よく送り出した。

「これから、どうするんですか」

「まあ、どうもしない。こいつと、どこかで静かにしているよ」

「残念ですね。こういうパーティーをまたやれるといいんですけどね」

「君の腕しだいじゃないか。とりあえず、メシの種が一つできたんだ。それでしばらくは楽しめるだろ」

「ええ。まあ。腐れマンコの傷の手当てとかは?」

「手首は折れている。肩も脱臼しているが、放っておけ。そのままにしていいさ。どうせ、医者に診せるわけにもいかないだろう?」

「ええ、まあ」

「どうにもならなくなったら、呼んでくれ」

「切断……ですか?」

おれはニヤリと笑った。

「いろいろやり方はあるさ」

おれはケンに手伝ってもらい、あれを洗ってやり、傷口をチェックし、体の隅々までを診てやってから、ダウンジャケットをかけてクルマに乗せた。

トランクではなく、うしろの座席だ。

「それじゃ。当分、会えないと思う」とおれが言うと、ケンは、手を振ったものの、ミチのことが気になるのだろう。そわそわしていた。

「じゃあ、また」

「次回、お会いできるときを、楽しみにしています」

ケンはホッとしたようで、そそくさと倉庫に戻っていった。

おれは、ヒーターが利きはじめたクルマを、ゆっくりスタートさせた。ワイパーが細かい雪を払う。

あの小屋へ戻るのも面倒だったが、だからといって、どこへ行くというあてもなかった。

しかし、なんとなく、暖かい、雪の降らない地方へ行きたくなった。まったくあてがないわけでもない。

おれは高速道路が雪で閉鎖される前に、南へ向かうことにした。

バックミラーに、手足がないのに、ダウンに包まれて、シートベルトをして座っているあれがいた。こっちを見ている。

おれは、彼女に微笑んだ。

〈了〉

奥付

お読みいただき、ありがとうございました。

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