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隷獣 · 第7部

隷獣 第7部 (7/7)
前の話

考えることはないのです。このまま、朽ち果てていけばいいのです。そう思うと、余計に痺れるような悦びを感じ、股間の縄がべっとりと濡れていくのがわかりました。

インターミッション

郁美の話をすっかり聞いたとき、私はずっしりと重いものを感じた。だが、同時に、信じがたいとも思った。妄想癖のある女性なのだろうか。

私の前にいる郁美は、ふんわりとしたダウンのロングコートを羽織り、その下には、鉄錆色のタートルネックのセーターを着ている。

黒々とした長い髪が自然にウエーブを描き、もちろん鼻輪も鼻フックもない。

化粧はほとんどしていないようだが、自然な日焼けによるのか、浅黒い肌は艶やかだ。

言われてみれば、鼻には穴の跡がほくろのように残っている。鼻はもともとそうなのか、獅子鼻のようにひしゃげ、横に広がっており、もしそうでなければ、もっと美人に見えただろう。

ズボンに登山靴。都会から軽いハイキングに来た女性にしか見えない。それも妖艶で、美しい。

「どうです。おもしろいですか?」

鬼丘が言うのだが、私は返事に困ってしまった。

「まあ、信じられないかもしれませんね。じゃあ、ちょっと失礼して郁美をご覧いただきましょうか」

生唾を飲むしかなかった。

郁美は笑みを浮かべ、コートを脱いだ。高い身長、そして豊満なバストにくびれた腰。すばらしいプロポーションであることは、服を着ていてもわかる。ムダな肉がまるでない。

薄いセーターを脱ぐ。その手は少し不自由なのかもしれない。指がゴツゴツとして、女性のものにしては太く、こわばっているようだ。

セーターの下はなにも身につけていなかった。

豊満な乳房が露わになった。

乳首にリングはなく、太い杭のような銀の飾りがついている。それは小さなボルトのようだ。

乳輪の外側や乳房には話に出てきたフックではなく、ボルトが埋まっていた。乳輪には小さなボルト、乳房には想像以上に太いボルトが肉を突き破っていた。

さらに私の目を引いたのは、乳房に浮き上がった文字である。肌の凹凸で文字が浮き上がっているのだ。刺青ではなく焼き印ではないか。

向かって左の乳房に「隷獣」、右の乳房に「郁美」とある。それぞれが五百円硬貨ほどの大きさで、一生、消えることがないのだろう。

スラックスを脱ぐと、下着はつけておらず、ボルトの埋め込まれた性器が剥き出しになった。

それも彼女が言っていたものとは違っていた。

小陰唇を飾るいくつものボルトはなく、性器の恥丘を右から左に、一本のボールペンほどの太さのボルトが貫通していたのだ。

間にはさまれた二つのナットによって、秘部は剥き出しにされている。小陰唇はすっかり失われてしまっていた。

そして話には出て来なかった剥き出しの巨大で真っ赤な陰核。その根本と中程のところにリングが埋め込まれている。

「すっかりこんな姿になってしまいまして……」

郁美はそう言いながら、後ろを向いた。

尻にも向かって左に「隷獣」、右に「郁美」の焼き印があった。その文字を含め、無数の傷跡や痣で埋め尽くされていた。どれも古い傷のようだ。

背中には肩胛骨のあたりから、左右に三カ所ずつ、穴の跡が残っていた。そこにもフックを埋め込まれていたのかもしれない。

そしてお尻を開いて肛門を見せる。あの秘木があるのかと思ったが、それはなく、性器のように盛り上がった大きなアナルがあった。

「男の両腕が入りますよ」

鬼丘が言う。

「秘木は?」

「それは終わったのです」

「終わった?」

「パーティーから戻って、その後も隷獣として冬、そして春、夏と過ごしました」と郁美が答えた。

「それは、また別の機会にお話しいたしましょうか」

この機会を逃したくなかった。私は「ぜひ、いま」と頼んだ。

「では、あと一時間だけなら」と鬼丘が言い、彼は小屋を出ていった。

「じゃあ、少しだけお話しましょうか」

郁美は服を身につけ、長い髪を指ですいたとき、右の耳だけちらっと見えた。その耳たぶは、噛みきられたように、無惨にちぎれていた。

彼女は再び話しはじめた。

キノコ狩り

パーティーの夜から、私はふたたび隷獣の修業をいたしました。

帰るとすぐに外で虫をとります。

まだ暗いうちから、鬼丘が起きてきて虫を集めます。

「今日からは毎日が、隷獣の生活になる。いいな」

開口器が外され、口を開いたまま言葉を発しないこと。発すれば懲罰ということを鬼丘は繰り返します。

「よし。これからは、おれが起きるより前に、ケツ穴をきれいに洗って、秘木をしっかり入れておけ。今日は特別にこれからすぐやってくれば許す。今後は、やっていなかったら懲罰だ」

暗い朝、ヒンヤリした空気に身を震わせながら、小屋の裏へ行き、手押しポンプのついた装置を自ら使って体を洗うのです。指が使えないのですが、口や腕、足を使うと、なんとかできるのです。髪を失った頭、背中、昨日の鞭打ちの傷が痛む尻も洗います。

乳首リングとフックを埋め込まれた乳房。そのフックを動かして洗います。動かすだけなら、痛みはほとんどなくなっていました。

広げられたままの陰部も丁寧に洗います。

体が冷え切って、自分の体ではないような気持ちがします。

仮の尻尾を抜き取り、開ききった肛門から腸内に冷たい水を注ぎ、排便と洗腸をします。

冷え切った体です。震えながら、水できれいに洗った尻尾をお尻の中に沈めます。

指が使えないため、こうしたことをするのに普通の人の何倍も時間がかかるのです。

ハーハーと息をしながら戻ると、鬼丘がチェーンを持って待っていました。鼻輪に鎖をつけ、ぐいっとわざと強く引きます。

「うっ」

声が出てしまいます。鼻がちぎれそうな痛みです。

「どうだ。今日からはホンモノの秘木を埋め込んでやろう。いいか、毎朝、ちゃんと丁寧に洗って入れるんだぞ」

秘木なしでもこの二日、それなりの快楽を得ていました。ですが、もしあれが腸内深く入り込んだら、と思うだけでうずいてきます。

鬼丘は慎重に尻尾を抜き取ると、秘木を手にしました。

それをぽっかりと開いたアナルに入れていきます。

木の枝のようなものとしか思えなかったものが、装着することに慣れたのでしょうか。偽の尻尾とはまるで違う感触です。温かみがあって、まるで生まれたときから私の中にあったもののように、すんなりと奥まで入り込んできます。

先端部分が腸内の奥へ生き物のように侵入していくだけで、熱く痛みをともなった快楽が全身に広がっていきました。

じんわりと沈めていくにつれて、熱いものが体内からこみあげてくるのです。最後の太い部分はまだ入りませんが、それもいままでよりは少し深く入っているのが実感できました。こうやって、いつか、すっかり飲み込む日が来るのでしょう。

「山へ入るぞ」

空の竹籃を担いだ鬼丘のあとを四つん這いで歩き、山に登ります。

昨日のことはもう忘れて、夢中で歩きました。なにも考えず、ひたすら目の前のことだけに対応し、反応することに集中するのです。

秘木の感触だけを味わいながら、私はうっとりしていたはずです。

鬼丘は山頂の手前から獣道に入っていきました。急な下りのあと、穏やかな雑木林に出ました。

「これからは秋の採取だからな。見ろ。そこら中に栗があるだろう」

毬

栗

がいくつか、地面に落ちています。

「それをおまえが採取するんだ。やり方は簡単だな? 体のどこでもいい。突き刺すだけだ。本格的な秋になれば、そのあたりをころがり回って、体中で採取できるようになるぞ」

思わず言葉が出そうになります。これまで、毎日のように過酷な作業を強いられていましたが、それは否応なく受け入れるしかないように、拘束され、強いられてきました。

それが今度は自ら、過酷な作業をしなければならないのです。叫び、拒絶し、逃げ出したくなります。鬼丘が握っている鎖は、鼻柱に取り付けられた輪につながっていますが、鼻がちぎれる一瞬の痛みさえガマンできれば、逃げ出すことはできるのです。

でも、決意を新たにしました。私は考えないのです。命じられたことをするだけ。それでいいのです。

「さて、このカゴにどれだけ入るかな」

鬼丘はカゴを示す。

飛び込めと言われれば飛び込むだけです。

私は地面にころがる毬栗の上に身を投げました。

「ぎゃー」

すると、ハハハ、と鬼丘は大きな声で笑うのです。

「それじゃ、ただトゲが刺さるだけで、トゲが折れて栗が採れないぞ」

腹部に数カ所、トゲが刺さり折れていました。栗は地面に落ちたままです。

「いくら痛いことが好きだからって、無闇に飛び跳ねてもダメだ」

なにも考えなければ、痛みに飛び込むことはできます。しかし、考えなければ、栗を持って帰る、という本来の目的は達成できません。

考えたらできないようなことを、考えながらしろというのです。

それが気持ちとしてはとっても苦しいことでした。とてつもない葛藤に身もだえていることを、鬼丘は知っているのでしょうか。知っていて笑っているのでしょうか。

指は使えませんが腕は使えます。栗を足で集めて、長いトゲの突き出た小山を作ります。その山の横に寝そべって、腕を開き、腕と脇、乳房の側面で鋭い毬栗を抱えてみてはどうでしょう。

左右の脇でその小山をすくいあげてみました。

もちろん激痛です。トゲが腕、乳房、脇腹に突き刺さります。ある程度、深く刺さっていないと、カゴのところまで持って行くことはできません。

立ち上がるとき、思わず強く力が入り、深く刺さります。

「ぐあー」

ガマンできなくなって叫びます。雑木林には私の叫び声と鬼丘の笑い声がこだましています。

カゴに辿り着くと、再び激痛に耐えながら、栗をカゴへ落とします。深く刺さっていると簡単には取れません。トゲが折れて肉に残ることもあります。

そうやってカゴをいっぱいにしていくのです。

左右の脇腹、乳房、そして腕の内側は血だらけになって、無数のトゲが刺さっていました。

「うまいもんだ。できるじゃないか」

鬼丘は私の惨状を見ても、まったく同情しません。

乱暴にトゲを抜くと、作業はそれで終わりではなかったのです。その林の奥の斜面へいきます。

「見ろ。これがなにかわかるか?」

木の根付近にキノコがはえています。松茸に似た形で、親指より太く、大きく、傘が平らに開いています。根本へいくほど太くなっていきますが、男性の性器によく似ていました。

「このあたりだけで採れる。マツタケに似て、食べるとうまい。シロマツタケの一種かもしれないが、名前はわからない。これを採る方法を教えよう」

それも私の体を使えと言うのです。

「男のものだと思って、そいつを奥まで入れてみろ。折れないようにな」

しゃがみながら、開いた陰部をキノコの先端につけていきます。傘は柔らかく閉じ、粘膜の奥へと入っていきます。

「そして、ケツを擦るようにして、くいっとひねれば採れる」

股間を木の根に擦りつけ、ゆっくり動かし、腰をひねってキノコを樹木から引き剥がすのです。

すっぽりと男根に似たキノコが私の体内に入り込みます。

「よし、次」

取り出すことは許されず、二本、三本と、続けて体内に入れていくのです。

「口でもできるが、口でやらせない理由があるんだ。おまえの歯形がついたんじゃ売り物にならないし、食べる気にもならない。口じゃ、そんな風に何本も続けて入れるわけにはいかない。それに、おまえのいやらしい体液に触れると、そのキノコは変化してうまくなるんだよ」

キノコから出ている物質に刺激されて、私はたっぷりの愛液を流し、それがキノコの分泌物と混ざり、ジーンと痺れるような感触が下腹部に広がっていきます。

五本採取したところで、それを鬼丘が指先で取り出していきます。

山肌に仰向けになった私に、鬼丘が無造作に指を入れてきます。

「あうううん」

悩ましい声が出てしまうのです。

「感じるんだろう。このキノコはある種の毒がある。それがおまえを刺激して愛液がたっぷり出て、しかも快感になるんだ。そのとき、キノコの毒は抜けて食用になる」

一本出すたびに、通常のセックスと同じぐらいの快感があるので、落ち葉の上で身もだえします。

二本、三本と鬼丘のごつごつした指先が奥に入ってくると、その快楽はより強烈に脳を真っ白に染め上げます。

「ふぇー、ひゅえー」

みっともないよがり声をあげながら、のたうちまわります。もう栗拾いの痛みなど忘れています。

「派手だな。ま、最初だからしょうがない。少しずつ慣れるよ」

最奥にある一本を取り出すため、鬼丘は手を突っ込んで、ベタベタになっている膣内をグリグリと刺激しながらキノコを引き出していきます。

「あふぅー」

すべて取り出すと、ようやく荒い呼吸をしながら、我に返っていきます。

鬼丘は取り出したキノコを、大事そうにカゴに移します。べとべとになっています。

見えている範囲のキノコを、五本ずつ六回にわけて採取させられ、鬼丘によって取り出されるたびに、激しい快感に呑み込まれ、腰が抜けそうになりました。

「おまえのここ、大きくなったな」

何度も繰り返している間に、とうとう鬼丘の手をほぼ受け入れてしまっていたのです。そこまで膣が柔らかくなって、広がってしまうのでした。

「隷獣のまんこで採取したとわかれば、高値で売れる。べたべたになってるだろう。おまえのイヤらしい液がつくと、ほら、白い傘が黒く変わる。唾や水じゃこうはならない。すぐ見分けがつく」

そんなことを言いながら、ついでに鬼丘は、私の体にまだ残っていた栗のトゲを抜くのです。

「ひーっ」

その痛みが新たな悦楽です。

「次はもう少し上手にやれよ」

深く刺さったものを、絞り出すように抜きます。消毒もしなければ、薬もつけません。

ケモノの悦楽

「どうだ。うなぎを食べたいか? それともヘビがいいかな?」

私は首を横に振りました。あのようなおそろしい漁はしたくないのです。

「じゃあ、もっと楽しいことをしよう。これから、キノコを売りに温泉に行こう」

以前行った湯治場へ行くと、大勢の男たちがそこにいました。

「おまえのウワサを聞いて、男たちが集まってるんだ。彼らにキノコを売るんだ。もちろん、それだけではすまないがね」

高齢の男たちが十人いました。鬼丘同様、ゴツゴツした手、よく焼けた肌で、外で働いていることがわかります。

「来た来た、ホントだな。隷獣だぞ。久しぶりだ」

「昨日まで女子大生だったんだよ。まだ成り立てなもんで、お手柔らかに」と鬼丘が紹介します。

「でかいな。いい体してるぜ」

「ホント、ピッチピチだ、うまそうだ」

男たちは遠慮なく郁美の体を触りまくります。

「キノコと栗を買ってくれ」

「ああ、そこに置いておけ。隷獣のキノコが食えるとは、長生きできるってことだな」

みんなは大声で笑い、カネを鬼丘に払うのです。

「じゃ、あとはよろしく」

鬼丘は帰ってしまいました。

男たちに囲まれて、どうしていいのかわかりません。

「さあて、じゃあ、明日の朝までたっぷりと楽しませてもらおうか」

男たちは私の鼻輪を引っ張って露天風呂に連れて行きます。そして露天風呂の葦簀を張るための柱に、その鎖を縛り付けました。柱には、そのための金具が取り付けてあるのです。

「まあ、急ぐな。夜は長い。ゆっくりべっぴんの隷獣さんを拝ませてもらおう」

風呂の縁に座らされます。男たちが興味を持ったのは、乳房のフックとリング、そしてラビアを広げているボルトでした。

乳輪と乳房に埋め込まれたフックは、錘を吊して鍛えたおかげで、指先で簡単にクルクルと回るほどになっていました。

「すげえな、こんな体になってな」

「ああ、人間じゃねえから」

乳首のリングを引っ張られます。大きな乳房が伸びきります。

「ちぎれそうだな」

「おっぱいがでかいぜ」

なにをされても抵抗しません。拘束されていませんが、手を背中に回し、足を大きく開いたままです。

次に彼らが注目したのは、おまんこです。

「開きっぱなしってわけだ」

「まだ若いからね。いずれ、こんなびらびらは、ちぎれてなくなっちゃう」

「そうなんだ」

そんな声がしていました。

「年季が入った隷獣をずっと昔に見たことがあるけどな。そいつは、乳首なんかちぎれてないんだ。乳房にこんなでっかいフックがぶっ刺さっていてな」と人差し指を軽く曲げて、乳房の脇から向こうまで突き通っていたと言うのです。

「びらびらはちぎれてなくなっちまって、クリは子どものチンチンぐらいに大きくしてあって、そこに、いまこいつが乳首にしているぐらいの輪っかが、三つぐらいついていたかな」

「それはすげえな。そこで感じるのかね」

「ああ。ビンビンだよ。そこをいじってやると、潮吹いてた」

男たちは笑います。

「おしっこの穴もでかくてな。指が簡単に入るぐらいだった」

「ええ! そこでもやれるのか?」

「おまえの細いちんこなら入るぜ」

みんながどっと笑います。なんだかおかしくて、私も微笑んでしまうのです。

「で、おまんこの左右の肉に、やっぱり大きなフックが二つ埋め込まれていたな。あとケツと背中にもフックがついていて、荷物を縛り付けて運んでいたよ」

「こいつも、そうなるのかな」

「いずれな。だが、まだまだだよ。ケツに入ってる尻尾があるだろう。あの瘤が見えているようじゃ、ダメだな。あいつがすっかり見えなくなってはじめて一人前だから」

「ええ! あんなでかい瘤が入るのかよ」

「こうやってつけて毎日過ごしていると、少しずつなじんで、ケツ穴がでかくなって呑み込んで行くんだってよ」

「そんなバカな」

「本当だって。これはな、昔からある秘木と言うやつで、めったに見られるものじゃない。枯れた木を磨いただけに見えるんだが、生きてるんだよ、これは」

「うそだろ」

「女から栄養を吸い込んでるんだ。じきにケツ穴を慣らして、すっぽり潜り込むってわけさ」

「信じられねえな」

「いずれ見られるかもよ」

「そいつは楽しみだ」

そんな会話を聞きながら、自分の行く末を想像してしまうのです。隷獣としてとことん堕ちるとき、きっと、自分はそんな姿なのでしょう。しかし、まだ乳首はあるし、小陰唇も穴をあけられて伸びきっているものの、まだ存在しています。尿道の拡張はまだ行われていません。

お尻が裂けて死んでしまうかもしれませんし、みなさんがいうような隷獣になれるかもしれません。

どちらにせよ、まだまだ、大変な苦痛が必要なのです。それに耐えられるでしょうか。

「よし。じゃあ、明日の朝まで、好きなだけこいつを使わせてもらおうか」

男たちは、全員、裸になって風呂に入ってから、小屋に戻って食事をし、酒を飲み、歌い、騒いでいました。

外に放置された私に、男たちが三々五々、やってきては、熱くたぎった肉棒を突き入れていきます。

背後から犯すだけではありません。まるで女のように、地面に仰向けにし、キスをし、乳房をまさぐり、正常位で犯す者もいます。

その執拗な愛撫は、私の中にある女を目覚めさせるのです。考えてみれば、強引に望月に処女を奪われて以来、女として扱われた経験がほとんどないのです。

すでに女ではなく、変わり果てた姿となっています。自分を普通の女として考えることなどできません。

しかし、この人里離れた山村に暮らす男たちは、まるで十年連れ添った夫のようにふるまう純真さがありました。

彼らは浮気をしている後ろめたさはないのです。私は隷獣であって、女ではないからです。だから、存分に好きなようにできます。獣に対して獣欲を吐き出すのは、ごく自然なことなのです。

肉体を改造されつつある隷獣という存在が、男たちを刺激するのでしょう。欲望を解放することで、男たちはまた厳しい自然に向き合って毎日を平穏に生活することができるのかもしれません。

男たちに抱かれることで、自分の中の女の「性」が満たされていきます。愛、という言葉がぼんやりと見えることさえありました。

男たちは飽くことなく私の中に精を注ぎ続けます。口で、膣で、それを受け止めていきます。

そして、彼らは私に自分たちの小便と、猪肉の脂身をくれました。

「隷獣にはこれをやる決まりになっているのさ」

男たちは伝統的な決まりごとだと言います。

猪の脂身の部分を焼いて、それを食べるのです。

「小便を飲ませるのも大切なことだぞ。こいつは女じゃない。間違っても惚れてはいけないのさ。おれたちの小便を飲んでいるところを見れば、惚れるやつはいないだろう」

私は、彼らに一方的にぼんやりとした愛を感じ、脂身がとてもおいしいのでむさぼりました。お小水もありがたくいただきました。

ときどき風呂に浸かり、傷ついた体を洗い温めながら、夜明けまで入れ替わり立ち替わり犯され続けるのです。

この数日なかったほどの満足感がありました。

獅子鼻

うっすらとあたりが白くなっていく頃に、鬼丘がやってきて、鎖を支柱からはずしてくれました。

「どうだ、よかったか? このあたりも過疎化と高齢化で、湯治場に来て隷獣を抱く男は減っているんでね。昔は隷獣目当てに近隣から、多いときは百人ぐらい来たものだよ。もちろん、隷獣も数頭いたけどな」

そんな話をしながら、小屋まで連れ戻してくれました。

望月と有希恵が待っていました。

有希恵は意味ありげな薄笑いを浮かべて私を見るのです。もう目でも挨拶すらしません。一匹のケモノとして見ているのです。

私は、裏で全身と秘木を洗い、腸内を洗浄して秘木を装着して戻りました。

「どう、慣れた?」と有希恵。「ずいぶん、ケモノらしくなってきたじゃない?」

「はい」

発することのできる返事だけをし、深々と頭を下げました。

「今日、どうしておれたちが来たかわかるか?」

わかるはずがありません。

この三人が揃ったとき、必ずおそろしいことが起こるのだ、ということぐらいはわかります。

「じゃ、やりますか。早くやれば早く終わるし」

望月が床に広げたのは、新しい金属の部品でした。それがどこに使われるのか、うすうすわかります。

最初は乳房です。

「正座」

土間に跪き、乳房を台にのせ、縛り付けられます。開口器がひさしぶりに装着されました。

乳輪の周りにある四つのフックを、鬼丘は返しの部分をうまく潜らせて、引き抜いていきます。いつの間にか、それぐらいの余裕ができるほど穴は広がっていました。

乳房のフックも同様に、肉を少し引っ張りながら外していきます。出血はありません。

乳首のリングも外されました。

金具がすべて取り外されても、私の乳房はもう元には戻りません。目で見てわかる大きな穴が貫通しています。その穴のところだけ肉が盛り上がっています。

そこに新しい金具が通されるのです。より太い金具が、せっかく慣れた肉を削るようにして突き通されていきます。

その痛みに、体を揺すりながら耐えます。

「おおげさね。ちょっとだけじゃない」

銀色の金属が、乳房に飾られていきます。いままで以上にずっしりと存在感があります。これまでは、抜けないように釣り針のような返しがありましたが、今回のフックは先端にネジが切られていて、そこにナットをはめ込むのです。

「新しい穴もあけるぞ」

望月は例のパンチを手にしました。

耳たぶに四・五ミリの穴を開けました。

「ぐぅげぇぇ」

悲鳴は押し殺しても、大きくなってしまうのです。

穴に短いチューブが入ります。

続いて、一度、鼻輪が外されました。そして、鼻孔の上と横にも穴を開けていくのです。そこには、乳輪から外した小さなフックが通されました。

鼻輪を戻され、耳のチューブにヒモが通されます。そして鼻孔のフックに結びつけるのです。

ヒモを絞るプラスチックの小さな円筒形の器具がついており、耳のうしろで絞り上げて止めます。

「ぐぎゃー」

耳と鼻に激痛が走ります。

「開けたばかりだから、あまりきつくはしないよ」

それでも、ヒモが頬に食い込むほどの強さで固定されました。耳たぶは完全に前に折れ、鼻孔は左右に開ききるのです。耳も鼻も引きちぎられそうな痛みでした。

さらに鼻孔の上につけたフックにヒモをつけて、頭頂部を通り首輪で引き絞ります。

完全なブタ鼻です。鼻がむしり取られるような痛みは、鼻フックどころではありません。

これは本当に肉を貫通しているからです。

「いいわ、郁美。お似合いよ」

有希恵がケラケラと笑います。もはや元の私の顔ではないのです。潰された鼻、折れた耳。涙を流す目。開いた口。ケモノの顔です。

「それじゃ、獅子舞だわ」と有希恵が笑います。

口を大きく開き、鼻を三方向に広げられ、目を剥いていたからです。

「そうだ。一部の地域の獅子舞は隷獣を模したものだよ」

鬼丘がこともなげに言う。

「ライオンの意味じゃないの?」

「獅子頭もいろいろあるんだ。よく見てみろ。人間ともケモノとも言えない顔をしたものもあるはずだ」

「ふーん」

「獅子舞はもともとインドのライオン像がもとになっていて、日本では十六世紀頃に疫病を払う行事として広まったというのが定説だ。ある意味、隷獣はその獅子に模して生まれたのかもしれない。獅子に似せた顔にしようというわけだ。そして時代が下り、その隷獣を見た人が、それを模した人間味のある獅子頭も作った。そんな関係じゃないか」

「そうか、郁美は獅子舞になるんだ」

「地域の守り神であるシンの使役動物としてな」

彼らの作業は止まりません。

「眠りのポーズ」

自分の腕で自分の足を抱えるように引き絞り、股間をすべてさらけ出す格好になりました。

鬼丘が手早く縄を打ちます。

コルセットのような腰のベルトが外されて、これまで広げきったままだった小陰唇が弛緩していきます。

ぱっくりと割れていた恥丘が戻っても、伸びた小陰唇は、だらしなく外に出たまま、ボルトの重みでひしゃげています。

湯治場で聞いたように、小陰唇が切除されるのでしょうか。

「ほら、これだ」

鬼丘が手にしたのは、金属のハトメでした。指が入るほどの大きさの穴が開いていました。

男たちは額に汗をしながら、小陰唇にあいた八つの穴からボルトを取り外し、その穴を指で押し広げ、ハトメをはめ込んでいきます。

小型の機械でプレスし、完全に小陰唇に食い込ませてしまいます。

「ぶひゅぅぅうぇー」

この数日の扱いで、少しは痛みに慣れていたはずですが、ハトメが肉をはさみ込み、押し潰すので、悲鳴を上げてしまうのです。

「そんなにうれしいの。ブタみたいによく鳴くわね」

銀色の縁がついた穴が八つできていました。有希恵は、両手の指をその穴に入れて、あやとりでもするように、広げたり閉じたりしてみせます。

「こうなったら、本当にもう、ただの道具って感じね」

「よおし、それらしくなってきたな。だけど、まだまだ、今日はやらなくちゃいけないことがあるからな」

三人はお茶を飲み、食事をします。私は縄を解かれて、土間でひとり、痛みに耐えていました。

乳房に新たにはめ込まれた金具。鼻にうがたれた新たな穴、そしてラビアをもはや人間の皮膚とは思えない形状に変えてしまった八つのハトメ。

脂汗を流しながら、苦悶するしかないのです。

鬼丘は水をくれて、薬草を飲ませてくれました。しかし、ほかにはなにもしません。隷獣となっていくのですから、自然治癒力を高めなくてはならないのです。それが十分に備わらないようでは、この先の隷獣となるのは無理でしょう。秘木にお尻を裂かれて、苦悶の中で死んでいくのです。

誘蛾灯で確保した虫や、パンチによって切り取られた自分自身の肉片などを炒めてすりつぶしたものに、以前望月が持ってきた賞味期限の切れた非常食が混ぜられた食事が用意されました。

開口器に漏斗が突っ込まれます。私は正座して、その漏斗を腕で支えています。

不気味な液状の食事が喉の奥へいっきに流し込まれます。

ゴミを捨てるように。

涙を流しながら、喉を開いて飲み込むのです。

「さて、お次はちょいと痛いぞ」

手、足に縄をかけ、天井から吊されました。

胸と腹部にも縄を巻いて支えます。婦人科の診察台のように、股間を開いて作業しやすい高さに調整されます。

体が柔らかいので、ほぼ百八十度に近い開脚にされます。太ももの付け根にも縄を巻き付けて天井から吊り、支えます。

重い頭ががっくりと下がってしまうので、額にも縄を巻いて、天井から吊り下げられます。自分の股間になにがされるのか、見やすいようにやや上半身を高くしているようです。

悪魔の乳首

「いままで触っていたなかったところが二カ所ある。これから、ゆっくりいたぶってやろう」

有希恵が煮沸消毒してきた黒い枝を持って来ました。濡れて艶やかに光っています。

まっすぐなようで、かすかにカーブを描いています。太さは二、三ミリしかなく、長さは二十センチほど。

「おまえはもう一つ、使える穴があるんだ」

そう言うと、鬼丘はラビアのハトメに、両端にフックのついたゴムのバンドを引っかけていき、バンドを尻に回し反対側のハトメにつけていきます。性器が、これまでにない大きさに開かれていきます。

巨大な手で、体を裂くほどの力で性器を剥き出しにするのです。

「ぶふぅえー」

確かにこんな扱いをされ続ければ、そのうち小陰唇はちぎれてしまうでしょう。そうなってもいい、と鬼丘たちは思っているのです。

鬼丘手製の薬液が垂らされます。粘膜に染みて、焼けるような痛みです。

「ばふあー」

「大げさね」

有希恵が細い枝を手にしています。

「これも秘木と同じ素材だ。古くから使われてきたものだ」

その丸くなっている先端を、有希恵が尿道に入れていくのです。強烈な灼熱感。身もだえすると、天井近くの支柱がぎしぎしと鳴ります。

「すぐ慣れるよ。最後には、おれたちの指だって自由に入るようにするんだからな」

信じられない行為です。そういえば、温泉で誰かが言っていました。指が簡単に入るぐらい、と。

「この枝はあと九本ある。少しずつ太くなる。最後には指が入る」

「あひー」

「とにかく、こいつに慣れることだな。じゃないと、次は一回り太いんだから、もっときついぞ」

枝は半分以上差し込まれて、先端は膀胱に達しているのでしょう。それを、シフトレバーかなにかのように、有希恵は前後左右、あらゆる角度に倒して刺激するのです。ぐるぐると回すと、尿がこぼれ出てきます。

「ふふふ。おもしろいわ」

そんなことをされたら、どれほどの苦痛と恥ずかしさか、同性の有希恵ならわかっているはずですが、鬼丘や望月よりも非情なのです。

硬い物体を入れたことなどない繊細な器官を乱暴にいじられ続けるのです。

「ぐあ、ぐあ」

喉を鳴らして耐えます。

「指が入るようになったら、どうなるの?」

「そう。もちろんここも使役に使う」

「たとえばどんなことに?」

「まあ、慌てるな。そこまでこいつが保つかどうかもわからないのに、そんなことを話してもしょうがないだろう」

棒は入れたままで、鬼丘が私のクリトリスを指で揉みはじめました。皮を剥きあげていきます。

「皮が厚いな。核も大きい。どうだ、立派なものだ」

「まあ、恥ずかしいわ」

「こうしてやろう」

鬼丘はハサミで、包皮をジョキッと音を立てて切除しました。

「がぐぅわー」

体が跳ね上がるほどの痛みです。自分の下半身にされていることに、目は釘付けです。

包皮が切り取られ、陰核が剥き出しになっていました。薬液をかけたあと、泥のようなものをべったり塗ります。

「こうすれば化膿したりしない」

十分に泥を塗ると、飛び出たクリトリスに短い試験管のようなガラスのカップをかぶせました。底のゴムに注射器型のポンプを取り付け、中の空気を抜いていきます。

「おひやー」

わけのわからない叫びを発してしまいます。

切り取られる痛みではなく、吸い出されていく痛みです。やさしく愛撫するだけでも感じる部分です。

「魔女裁判では、『悪魔の乳首』と言われたそうだ。女性を狂わせるほどの大切な器官だが、もちろん隷獣はそこも使役のために鍛えることになる」

「うわあ、出てきたわ」

小さな粒のようなクリトリスが吸い上げられて、ピンクの未熟な指のようにガラス管の中に伸びてきます。

「これは吸い玉の応用だな。かなり古くから使われている器具なんだ」

ポンプを外すと弁のついたゴムの部分が閉じ、中は真空になります。

「ほふゅぎゅー」

激しく膨張した陰核が、破裂するような痛み。

「がんばれよ。しばらくこのままにしておいてやろう」

私は苦悶し続けていますが、鬼丘と望月は次の支度にかかっているのです。

「隷獣には、印が必要だ。こいつにも、その印をつける。昔は、頭に角を生やした隷獣もいたんだ」

「ウソでしょ。人間に角が生えるはずがないわ」

「インプラントだよ、いまで言うところの」

望月が説明しています。

「頭皮の下になにかを押し込んで、変形させるんだ」

「信じられないわ」

「言っても信じないかもしれないが、おれは頭に十センチぐらいの角が出っ張っている隷獣を見たことがあるよ。そこに縄をつけて、荷車を引っ張ってみせていた。もしかすると、頭蓋骨にボルトで取り付けていたのかもしれない」

鬼丘はそう言って私を見ます。

「ふふふ。いきなりそんなことはしないよ。おまえはまだ隷獣に堕ちきっていない。堕ちきったあとにもし、ケモノのままで一生を終えたいというのなら、そういうことになるかもな」

いま私が受けているようなことは、ほんの序の口なのです。

もしかしたら、人間に戻れるかもしれない。ケモノに堕ちたまま死ぬことがはっきりしたときは、もっとすさまじい改造を私の体にする、ということなのでしょう。

ああ、そんな変わり果てた姿……。それは、もしかすると人間に戻るよりもずっと甘美で、悦楽に満ちたものなのかもしれません。

いまでさえこれほどの苦痛で、これほどの陶酔を得ているのです。完全にケモノになってしまえば、とことんその快楽に浸ることができるのではないでしょうか……。

望月も有希恵も黙っています。いま、すでにかなり変わり果ててきた私が、もっとおそろしい姿になっていくところを想像しているのでしょう。

望月に強姦され処女を奪われ、まだ一週間しか経っていないとは信じられません。

一度は普通の世界に戻ったはずなのに、わざわざ自分からケモノの道へ飛び込んだのです。それからの変貌はあまりにも急激でした。

ケモノの完成

鬼丘は黙々とふいごを使って炭をおこし、火鉢にいこった炭を移していきます。山の秋は早く、気温も午後になるといっきに下がっていきます。

火鉢は部屋を、サウナのように暑くしていきます。

望月が換気のために天井に近い窓を開けました。それから、自分の荷物を取りに戻り、「これでいいかな」と五本の棒を鬼丘に見せます。

「上出来だ」

火鉢に、その鉄棒が押し込まれます。熾火が飛び散ります。

「さて、これからおもしろいショーになるぞ」

鬼丘と望月は、私を一度、土間におろしました。

今度は手を背中で縛り、乳房にも縄をかけます。そしてその縄尻に別の縄を足して天井から吊り下げました。

腰と太ももにも縄をかけて、尻を突き出すのように吊すのです。

足はそろえて足首で縛り、重い石臼を置いてぶれないように縄を通します。体が「へ」の字をタテにしたようになっています。

頭ががっくり落ちすぎないように、額に巻いた縄で持ち上げます。

「すごく暴れるからな。注意しろよ」

望月がいつでも私の体を支えられるようにその横に立ちました。

鬼丘は、炭の中から棒を一つ取りだしました。先端は複雑な形状で、真っ赤に焼けていました。

「有希恵様、やってみるかな?」

「いいの?」

「ああ。その度胸があるのなら」

「もちろん、あるわよ」

パーティーからすっかり度胸のついた有希恵は、棒を受け取っても表情ひとつ変えません。

「ここに押しつけるんだ。そうだな、三つ数えるぐらい」

「わかったわ」

有希恵が棒を両手で抱えるようにして、私の背後に回りました。

「いくわよ」

ジューと音がして肉が焼ける臭いがしてきます。

「がぁああああ!」

痛みは遅れてきます。最初は冷たいものが、傷だらけのお尻に触れたと思いました。次に、鋭利な刃物でお尻をズタズタにしているように感じました。

最後に、燃えるような熱さが肉まで達してきました。

それにつれて、みっともないほどの悲鳴がどんどん高くなっていきました。

有希恵は「いち、にい、さん」と声に出して数えてから棒を離しました。

「うまいもんだ。じゃ、こっちも」

もう一つの棒を鬼丘が手渡します。

ムリです。これ以上の苦痛は耐えられません。もう一度、あれがやってくるなんて……。

有希恵は再び、背後に消えました。

ダメ、ダメと叫んでも、声にはなりません。

「ぐぅああああ!」

激しく暴れます。それを望月が抱えて抑え付けるのです。

引き裂くような痛みがお尻を襲います。猛獣に食いちぎられているような感覚です。

「あごぅぅぅ」

両方のお尻が、きっと焼けただれたにちがいありません。

「どうだ、焼き印を押した気分は?」

「あひっ、あひっ」

喉を鳴らして、まったく衰えない強烈な痛みを味わっていました。

「なかなか、いいわね」

有希恵は強がって言ったが、額から脂汗を垂らしていました。

「一生、消えないのね?」

「そうだよ」

落ち着いたとみたのか、望月は鏡を持って来ると私にお尻を見せようとします。

二十インチのディスプレイぐらいの大きさの鏡ですが、真後ろの様子をちゃんと見るには小さすぎます。

それでも、私は自分のお尻に酷いことがされたのだけは、はっきりとわかりました。

しっかり読めませんが、漢字らしい文字が右のお尻、左のお尻に、真っ赤に焼け爛れた跡として残っていました。

一生消えない文字を刻まれたのです。

あとで、「隷獣」と「郁美」であることを知りました。

鬼丘はそこに薬液をかけ、泥のようなものを塗っていきます。

傷口に塩をすりこむようなもので、私は痛みに暴れまくりました。

「こいつは自然に落ちていく。すっかり落ちたら、もう大丈夫ってことだ」

棒はまだ三本あるのです。それを有希恵は手にして炭の中をかき混ぜています。

「あと、どこにやるの?」

鬼丘は吊っている縄を緩めていきます。

「昔からの決まりがある。その通りにやらなくては……」

失神寸前で力の抜けきった私は、外に連れ出されました。

蒸し風呂のような暑い小屋から、極寒の外にいきなり出されます。そのとき、股間や足がしっかり濡れていることにはじめて気づきました。失禁していたようです。

「なんだか、雲行きが怪しいな」

薄暗くなっています。森の中なので、少し雲が出ても暗くなります。いまは森全体が闇の中へと深く沈み込んでいました。

冷たい風が吹き、木々がざわざわと鳴っています。

それは不気味なのですが、隷獣の儀式にはふさわしいと私は思いました。

「とっととやろう」

外の杭に仰向けにされて、大の字に縛り付けられました。開かれた恥部が、漏れた小水と、これだけの苦痛でも感じているのでしょう。どろっとした愛液で、濡れそぼっています。

「望月、頼む」

朦朧としている私の頭を、望月は自分の膝ではさみ固定します。坊主にされていますが額よりも上、頭頂部に近い部分を望月は手で何度も拭っています。

「いいぞ」

小屋から赤く焼けた棒を持って来た有希恵が、それを望月に渡しました。

望月は慎重に角度を確認したあと、無造作に焼けた鉄の先端を私の頭部に置きました。

「がっ」

目を見開いて叫びます。

「ああああぅぅ」

頭が熱い、燃えそうです。その鉄棒は、皮膚を破り肉を燃やし頭蓋骨まで達したように感じました。

「OK。いいぞ」

鬼丘が鉄棒を受け取ります。

頭にも焼き印が押されたのです。あとでわかりましたが、「獣」という文字でした。いまでは髪が生えているのでよくわからないでしょうが、剃ればはっきり読むことができます。

鬼丘によると、これは誰かに見せるための印ではないのです。お尻とは役目が違います。

私の頭の中が、この焼き印によって変化していったのです。焼かれた熱で、脳細胞はいっきに反応し、隷獣になるための最後の準備が整ったのでした。

人間ではなく、女でもなく、ケモノになったのです。

まだ終わりません。残りの二本を有希恵が持ってきました。

これまででは一番小さな先端部分ですが、真っ赤に焼けていることには変わりません。

望月は私の右の乳房に、有希恵は私の左の乳房に、それを押し当てました。

「だぎゅぅうう」

叫び続けます。

それでも失神しません。失神できないのです。これほどの苦痛の中にいて、私ははっきりと自分の身に起きていることがわかっていました。

左右の乳房に「隷獣」と「郁美」の文字が、五百円硬貨ほどの大きさで焼き付けられたのです。

「燃えるように熱いわ。この場でオナニーをしたいほどよ」

有希恵は興奮しています。

鬼丘は、泥のようなものを塗っていきます。

「有希恵様。あなたは自分の立場があるのだ。これからは限度をよく考えて行動してほしい。そうしなければ、立場が逆転するかもしれない」と鬼丘が言ったのです。

「なによ。逆転ってどういうことよ」

「いくら巫女としての特殊能力があっても、隷獣を過度にいたぶったり、シンの使役動物ではない扱いをしたり自分の欲望を優先させた場合は、巫女の地位を剥奪されて隷獣に堕ちる」

「ええ? うそでしょ。私が郁美みたいに? 冗談じゃないわ」

「だったら、しっかり務めないといけません。われわれは、みなシンに仕えている身ですから」

有希恵はなおも抗弁しようとしたが、深呼吸して耐えました。

「ええ。もちろんよ」

おもしろくなさそうな顔をしつつも、黙ったのでした。そして手をパンパンと叩き、「帰るわ。遅くなっちゃったから」とお嬢様ぶりを発揮します。

「送っていこう」

望月は有希恵の機嫌をとるかのように、一緒に荷物を持って、山道へ消えていきました。

興奮した有希恵はその欲望を望月に静めてもらうのでしょうか。

もしそうだとすれば、もしかすると有希恵の能力も大したことはないのかもしれません。私にしたことで興奮のあまり、「オナニーしたい」などと口走るのです。情欲の虜となるのなら、私つまりケモノと同じですから。

儀式が終わるのを待っていたかのように、激しい雨が森に降り注いできました。

腹を波打たせ全身を震わせながら痛みに耐えている私を、鬼丘はしばらく見ていましたが、冷たい雨にぶるっと身震いすると小屋へ戻っていきました。

私は、顔に降り注がれる雨を感じていました。

なんという痛みでしょう。体をバラバラにもぎ取られたかのような痛みです。

開口器の口、開かれた鼻に雨粒が入ってきます。冷たくて大粒の雨です。

それが森にシャワーのように降り、葉を打つ音が響いています。

水はけの悪い土地でした。しだいに地面がぬかるんできます。あたりに水が溜まっていきます。

燃えるように熱かった体が、いまはすっかり冷え込んでいました。柔らかい地面に体が埋まります。折りたたまれた耳たぶまで水が増してきました。

すっかり暗くなり、夜半まで雨は断続的に激しく降り続けました。

ずぶ濡れになっても、鬼丘が塗った泥は体に貼り付いていました。

痛みがかなり落ち着いてくると、剥き出しにされた秘部に注がれる雨が愛撫のようにも感じられるのです。

大地に呑み込まれるような、不思議な気持ちになりました。

それは、穏やかで長いエクスタシーでした。

はじめてシンという神の存在が近くに感じられ、これまでになく心が安らぐのでした。

ケモノになるとはこういうことなのかもしれない、とおぼろげにわかったような気がしたものです。

終わりに

「話はこれで終わりにしましょう」

郁美はそう一方的に告げた。

私はもう延長を申し出ることができずにいた。

「そのあとはどうなったのです?」

「ケモノになったからといって、隷獣になりきれたわけではありません。そのあとも、きついきつい毎日でした。季節もどんどん寒くなっていきました。幸い、雪はそれほど多くない土地ですが、二月には一週間ほど吹雪となって、一メートルぐらい雪が積もりました。秋には、その冬に備えて賽の河原と呼ばれる尖った石ころだらけの上を裸足で歩かされ、鞭打たれました。自分で石を積んで自分の処刑台を作り、そこに磔にされて鞭で打たれるのです」

「そんな……」

「いくらきつい訓練を受けても、本物の冬はとても辛いものでした。小屋の裏の水は冬でも凍りません。むしろ温かく感じるのです。でも、それで全身や腸の中まで洗うのですから、大変な苦痛です。皮膚はひび割れ、裂けていきます。雪の中でも全裸で使役をするのです。夜は鬼丘の湯たんぽとして使われました」

言葉にならないほどの日々だったのではないか、と私は想像した。

「でも、あなたは、生き延びたのですね。いまはケモノというよりも、ずっと人間らしいじゃないですか」

「いろいろあったのです。でも、それをお話しする時間はありません。もしまたここでお会いすることがあれば、そのときにしません?」

「わかりました」

私は録音を止めて、郁美のあとをついて小屋の外に出た。硫黄の強い臭いがしている。

鬼丘は全裸の四つん這いの女を連れていた。彼らはそもそも、その女を湯治場の客たちに犯させるために連れてきたのだった。

それは郁美に比べると、かわいそうなぐらい小柄で細身の女だった。乳房も貧弱で、手足は折れそうに細い。

それでも大きな鼻輪から伸びた鎖。剃られた頭に「獣」の焼き印。乳房にもお尻にも焼き印が押されていた。

郁美はその隷獣の尻を、鞭でバシッと叩いた。

「さ、行くわよ、有希恵」

開口器で大きく口をあけた有希恵が、私をうらめしそうに見た。「助けてくれ」と訴えているように感じた。

どうやら、有希恵は巫女の座を剥奪されたらしい。そしてどうやってか、隷獣を克服して人間に再び戻った郁美から厳しい調教を受けているのだ。

二人と一匹が、獣道へ向かって行くのを私はながめていた。尻の「隷獣」そして「有希恵」の焼き印がはっきり見えた。尻臀の間から長い尻尾が生えていた。そこには、郁美から受け継いだ秘木が埋め込まれているのだろう。

まだ瘤の部分まで入っているようには見えなかった。

有希恵の辛い日々は、始まったばかりなのだ。

そのあとを付いていってはいけない、と感じた。そこは普通の者が入ることのできない世界だろうから。

彼らが背の高い草むらの中に消えていくまで、私は見送るのだった。

奥付

お読みいただき、ありがとうございました。

二〇一二年一月 第一版 二〇一六年四月 第三版著作権 あんぷらぐど(荒縄工房)荒縄工房の情報は下記サイトへ●ブログ「荒縄工房」

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