「これから、そういう態度じゃ、ダメなんだけどな」
有希恵は私にこう言わせました。
「有希恵様。貴重な食べ物をお恵みいただき、ありがとうございます」
私は倒れ込むようにして、泥のついたおにぎりを手にすると、それを口に入れました。
歩くときに必死だったからか、手の平から血が出ていましたが、そんなことはもう気になりません。
ほどよい塩気がおいしく感じられました。
「もっと栄養つけるんだ」
望月がザックから出したのは、レトルトフードでした。
私の横の土の上に、その中身をボトッと落としました。
「なに、それ。ドッグフード?」
「いいや。不味すぎて売れなかった非常食だよ。知り合いがタダでくれたんだ。処分するのに費用がかかるらしいからね。賞味期限は半年前に切れているが、中身がダメになったわけじゃない」
「ドッグフードにすればよかったじゃない?」
「ドッグフードのほうが高いんだよ。なんといってもタダなんだからさ」
温めて食べるべき五目ご飯。それでも、私は必死に食べました。まずい、という感じはしません。なにか薬品っぽい臭いが染み込んでいるだけです。
「全部、食べちゃったわよ」
「さすがに食欲は落ちないか。ますます見込みがあるね」
三本目のペットボトルが出されて、それを飲まされました。飲めなかった残りは再び浣腸です。
有希恵の前でされることに抵抗はあっても、逃げられないのです。
力が尽きたのか、望月がゴム管を抜くと、それにつられるように、入れたばかりの水が腸内からだらしくなく、漏れ出しました。
「ひどいわ、郁美。せっかく入れたのに、どうして」と有希恵が怒ります。
「そうだな。栓をしなくちゃいけないみたいだな」
自分の腸内から出た水で、股間のロープや下半身を濡らしてしまいました。
望月は郁美のザックをあけて、中から使い切った虫除けスプレーを見つけ出しました。細長いペンタイプです。
私にそれを見せつけます。望月は自分の指と比べて、指二本分ほどの太さであることを見せます。
「許してください」
「だめよ。締まりのないお尻は、きちんとしつけないと」と有希恵。
最後のペットボトルを取り出した望月は、薄笑いを浮かべながらゴム管をセットします。
「さて。たっぷり飲んでもらおうかな」
「尻をこっちに向けろ」
靴でお尻を蹴られ、私は重い体を動かします。
「ほら、ケツを上げろ」
四つ這いになってお尻をあげます。
管を肛門に入れていくのも、朝に比べればスムーズでした。これまでになく深く入っていきます。腸内はほとんど空なのです。
ペットボトルはテーブルの上に、横向きで置かれました。四角いボトルの小さい側面を上に向けて、そこをナイフで大きめに切り裂きます。
「圧力は面積に比例するからね」
同じ気圧でも、それを受ける表面積が広がり、いままで以上に強く管に水が流れ込んでいく、と説明します。
「あっあっあっ」
その勢いは激しく、空だった腸内がたちまち水でパンパンに膨らんでいきます。
私はもだえますが、立ち上がらないように有希恵が背中のザックに腰をおろしました。
「ぎひぃー」
地面に押しつけられ、なすすべもなく、一・五リットルもの水を受け入れるのです。
ズズッと音を立ててボトルの水がなくなりました。
「そのまま押さえていてくれよ」
望月はスプレー缶を持ってしゃがみ込みます。濡れてたるんでいるロープ。
その間から、管を慎重に引き抜きます。すぐに水が一緒に出て来ようとするので、そこにスプレー缶の底を押しつけました。
管が抜け、スプレーをグリグリと動かします。
「いやー」
「うるさい」と有希恵が、私の鼻のあたりをつま先で蹴りました。
「ふぅえぇえん」
思わず子どものように泣いてしまいました。
缶がぐりぐりと沈み込みます。
「力を入れるなよ」
肛門が緩んだり締まったりしているようです。望月は缶を動かして、それを楽しんでいるのです。
とうとうスプレーの底がすっぽりと体内に沈みます。
「いいぞ」
さらにぐいっと、えぐるように押し込まれました。
そこに股間のロープを戻します。
望月はそのロープを結び直し、これまで以上にきつく股間に食い込ませました。
「出発だ」
「お、お願いです。苦しいです」
「うるさいよ」と有希恵が怒鳴る。
「それ貸して」と望月の杖を借りて、ゴルフのスイングのように振り回し、何度も何度も私の尻を打ち据えます。
そのたびに悲鳴を上げてしまいます。有希恵は手加減をしません。杖の石突きの金属部分が、お尻に食い込むぐらい、叩きつけるのです。
「それぐらいでいいだろう。もう少し歩くことになる。ただ、今度はちょっと道は険しいぞ」
「迷ったりしない?」
「大丈夫だよ。道としてはしっかりしている。元はけもの道だったが、何度も使っているから大丈夫だ」
山頂をあとにすると、道は下りです。それだけ荷物が下がり、ロープが股間に強く食い込みます。
登山道を少し下ったところにもテーブルが二つ置かれていました。ながめのいい頂きです。そこから左が正式なルートらしく、案内の矢印もあります。
山頂を巻いて北側に回り込むように、右側に細い道らしきものもあります。そこには案内はありません。
望月が先頭に立ち、私、その鎖を持つ有希恵の順で、背の高い笹が生い茂る中をしばらく歩きます。
あまり下っているようではなかったのに、急に傾斜がきつくなるのが股間の痛みでわかります。
笹はなくなり、薄暗い森に入っていくのでした。
荷物を股間のロープだけで支えているようなものでした。
歩くたびに、粘膜は激しく傷つき、めくれ上がり、押し潰され、血を流しています。一歩、一歩、痛みが加わっていきます。
この下りが何時間も続けば、体が股間から真っ二つに割けてしまうのではないでしょうか。それほどの苦痛の中で、必死についていくのです。
ヒンヤリとした森は、どんどん暗くなっていきました。日当たりが悪いため、道がじめじめしています。
下りが突然、終わりました。道が広くなっていました。
「着いたぞ」
そこには小屋がありました。窓、煙突。外には薪で焚くドラム缶風呂もありました。
苦悶の小屋
「いるかな」
望月は独り言を言って、鍵などかかっていない小屋のドアを開けました。
「おう、いたか」と声がします。
「早かったな」としわがれた声がしました。
望月は、初老のがっしりとした男をともなって小屋から出てきました。男は、目を細めて私を見下します。
「これまでの中では、一番、でかいな」
「ああ。身長が百八十近くある」
「ふーん。大したもんだ。そうやってここまで来れたのだからな」
ぐるっと私をながめます。
「ケツになにか、突っ込まれてるぞ」と笑います。
「粗相をしたからだ。ケツの締まりが悪い」
男は望月の言葉にさらに笑います。
「郁美。この人は、鬼
丘
さんだ。鬼の丘と書くが、やさしい人だよ。これからお世話になる。ご挨拶しろ」
そう言われても、すぐには言葉が出ません。考えてから声を発しました。
「郁美です。望月さん、いえ、望月様に命じられ、人間としてもう一度、チャンスをいただくためにこうしてやってまいりました。よろしくお願いいたします」
正解かどうか、わかりません。誰も文句は言いませんでした。
「これからどうなるの?」と有希恵。
望月は、私のザックから、携帯、サイフ、部屋の鍵などの入ったポーチを取り出し、それを有希恵に渡しました。
「また連絡する。それまで、頼む」
「わかったわ」
「こっちの道を二時間も行けば、バス停に出る。森の中の平坦な道だから楽だろう」
有希恵は名残惜しそうにしていたが、「じゃ、がんばってね」と私に言って、帰って行きました。
有希恵が見えなくなると、そこが暗く、あまりにも静かで、隔絶された場所に感じられました。森が人を圧倒しているようです。
「いまのうちに水場を使え」と鬼丘。
望月は、残りの二つのザックも降ろし、小屋に運び込んでから、私を立たせてくれました。
「裸足になれ」
登山靴を脱ぎ、靴下も脱ぎました。
久しぶりに立ってみて、体のあちこちの痛みに顔をしかめます。なによりも肛門の痛み。これまで異物はおろか、指先でさえそれほど触れたことのない場所です。そこが傷つきただれ、大変なことになっているのです。
望月はロープを使って、私の二の腕を縛り、それを脇に固定し、乳房にも縄をかけました。肘から先が自由になるものの、苦しみから解放されたわけではないのです。
チェーンを引かれて小屋の裏に行くと、水が勢いよくビニールパイプから噴き出していました。
「湧き水だ」
その水はタイル張りの古い流し台が受けており、あふれた水がさらに流れて小川となって森の中へ消えていきます。
流し台に入るように言われ、足を入れました。身を切るほどの冷たさです。
「外してやろう」
アナルに深く突き刺さった缶を、望月は捻るように引き抜きました。
「あっ、ひっ」
腸内に残っていた水が排泄されます。おしっこも一緒に漏れました。
ヒリヒリと痛む粘膜。
望月は手で水をすくって、私の髪、顔、体をごしごしと擦ります。物のように扱われるのです。ガタガタと震えながら、汚れ、疲れ、傷ついた体に山の水が染み込んでいくのを感じました。それは、心地よくもありました。
「どうだ、気持ちいいだろう」
「ありがとうございます」
「大事なところは自分で洗え」
脇にくくりつけられている手は、肘から先は自由なので、流し台にしゃがみ、自分の手で股間を洗うことができました。
傷ついた粘膜を冷たい水で洗い流すと、痛みは多少、引いていくようでした。
恐る恐るお尻の穴にも指を這わせます。そこに直接触れたことがほとんどないので、唇のようにぶよぶよと柔らかく、腫れているような感触に少し脅えました。
お尻は、細かい傷がたくさんついているらしく、どこに触れてもピリッと痛みが走ります。
「行くぞ」
濡れたまま、小屋に入りました。
土間があり、畳八畳ほどの部屋があります。囲炉裏があって、煙が立ちのぼっています。
時代劇に出てくる寒村のセットのようです。
鬼丘に渡されたのは、何十年も前からありそうなバスタオルのなれの果てでした。もとの色がわかりません。毛羽立ち、穴があいています。ごわごわしていますが、それで拭くしかありません。
「郁美というんだな」
「はい」
「いくつだ」
「二十一歳です」
「男は?」
「え?」
「セックスは何人、経験した」
「ふ、二人です」
望月が笑って、今朝のことを鬼丘に話します。
「おれと運転手で、こいつを女にしてやったんだよ」
それを聞きながら、鬼丘は、私が体を拭いたボロ布を土間に敷きました。
「おまえはそこだ」
「えっ」
まともな対応などされないとは思っていましたが、まさかこれほどひどい扱いが続くとは、さすがに絶望的な思いにかられました。
「夜にもう一枚、出してやるからな」
呆然としていると、望月の平手が飛んできました。パチンと弾ける音が小屋に響きます。
「お礼は!」
「ありがとうございます」
「もう忘れたのか! なんなんだ、おまえは」
「すみません」
「これは時間がかかりそうだ」
「まあ、ゆっくりやればいいさ」と鬼丘は悠然としています。
「いつ、帰していただけるのでしょうか」
「なんだと? おまえ」と望月が手をあげると、間に鬼丘が入りました。
「いいか、郁美。おまえは人間として戻れるか、ケモノに成り下がるか。その瀬戸際にいる。それはわかるか?」
「わかるはず、ないじゃないですか。私は人間です。人間の女です」
「それはどうかな」と鬼丘。
片手で私の乳房を鷲づかみにしました。
「ひいっ」
「こんなものをぶらさげて、本当に人間かな?」
「人間です」
「ほらね。鬼丘さん。こいつは、しぶといんですよ」
「かもしれない。厳しくやるしかないか」
鬼丘は私の乳房を両手で握り潰します。ぐいぐいとねじり上げます。
「望月が言ったことを覚えているか。おまえはなんでもすると誓った。違うか」
「いやです。そんなこと、できるわけがありません。これ以上、私はなにもしたくありません」
「そういう言い方をすると、どんどん、おまえはゴールから遠ざかっていくな」
鬼丘の手に力が入る。節くれ立った黒い指先が、白い肌にめり込んでいます。
「勝手なことを言わないでください。あなたたちが、決めたことでしょう。私は関係ありません。これって誘拐でしょう? みんな逮捕されればいいわ」
望月と鬼丘が、静かに笑った。
望月は首を横に振り、「ダメだな、こいつは」と吐き捨てた。
「殺せばいいわ。殺しなさいよ」
もう私の怒りは止まりません。これ以上、どんなことにも応じたくなかったのです。自分から進んで、とんでもない仕打ちを受けるつもりはないからです。そう決意しました。
有希恵は平然と町に帰っていきました。そして明日は大学へ行くでしょう。だったら、私もそうする権利があります。それができないなら、殺されてもいい。むしろ殺してくれたほうがいいぐらいです。
もう、苦痛も屈辱も十分でした。
鬼丘は部屋の奥の棚へ行きました。いろいろな道具が置かれているようです。奇妙なものを手にして戻って来ました。
「これがなにか、わかるか?」
磨き込まれたように光沢がある節くれ立った木の枝です。全長、三十センチほどで、ねじくれながら、いくつもの瘤を作っています。末端は拳ほども太く、そこに丸い金具がついていました。
鬼丘はそれを私の腕と、比べるように並べてみせました。私の肘から親指の付け根ぐらいまであります。
「これはな。相当に古いものでね。
秘
木
と呼ばれている。なんに使うと思う?」
「わかりません」
「これは、わかっているだけで、おまえのような者が、六人、使ってきたのだ。それ以前は江戸時代で、もっと大勢の人に使われていたと思われる。これは、職人が磨いてこうなったわけじゃない。大勢の人間の体で磨かれたんだ。もっと具体的に言うとな、こいつはケツの穴で磨かれたんだよ」
意味がわかりませんでした。
鬼丘は小さな輪を親指と人差し指で作り、そこに、秘木と呼ばれる道具の細い方の先端を入れました。
「こうしてな」と、ぐりぐり動かしながら、輪の向こうへと秘木を突き進ませるのです。
金具のついた大きな瘤が、指を通り抜けることができずに残りました。
「問題はこいつだ。最初は、これがこんな風に外に出ている。しかしな、最後には……」
指の輪は広がり、人差し指と親指は遠く離れてしまいます。それは、肛門が裂けて、その瘤を飲み込んでしまうことを暗示していました。
最後に残っているのは、金具の部分だけでした。
「この金具、なんのためにあるか、わかるか?」
鬼丘はどうせ答えは求めていません。私は、怒りとおそろしさで、荒い息をするばかりです。
「ケモノと人間の違い。それは尻尾だ。この金具にその者の髪を切って、束ねて取り付ける。すると、立派な尻尾になるんだ」
吊し打ち
私は首をひたすら横に振りました。狂っています。もう、この場にはいられません。
思い切り戸口に向かって走ろうとしましたが、首輪とチェーンを忘れていました。
望月がしっかりと握っていたのです。がくんと首が引っ張られ、バランスを崩し、土間に仰向けに倒れてしまいました。
喉と首に強烈な痛みが残ります。
「おまえから、これをどうぞ、入れてくれださい、私の尻尾を作ってくださいと言うのは、いつだろうか」
鬼丘はまだ自分のペースでしゃべっていました。
「おかしい! 狂ってる! そんなの、ぜったい変よ。私は人間なのよ。ケモノになるなんて……」
「そうそう。いま、自分で言って気づいたな? いまのけがれた、間違っている自分を捨てて、ケモノに堕ちることなく、人間となる。もちろん、それが目的だ。だがね。自分を捨てたとき、つまり人間を捨てたとき、いったんはケモノになる。人間として再生するためには、その道を通らないわけにはいかない。まずは、自分を捨ててケモノになることだ」
「そんな……」
「ケモノになれない者は、自分を捨てることもできない。つまり、生まれ変わることもできない。違うかね?」
鬼丘はギラギラとした目をしていました。催眠術でしょうか。奇妙な理論に、私は混乱していました。
とても理解できないことです。理解する気もありません。この場からなんとか逃げ出したいだけです。そのためには鬼丘と望月を、安心させて隙ができるのを待つしかありません。
「多くの者は、こいつをちゃんと受け入れることができない。つまりケモノにさえなれなかった。だが、何人かは、ケモノになることができた。もっとも、今度はケモノであり続けることを望むようになってしまい、人間に戻りたいとは思わなくなった。ケモノのまま死んでいくのだ。おそろしいことだ」
「どうなるんですか」
「なにが?」
「ケモノになれなかった人……」
「別に。昔のままの人さ。生きるに値しない者だ。そのまま、寿命が尽きる」
死ぬのか。殺されるのか。
「ケモノでいたいという者は、どうなったんですか?」
「悲しいものだよ。哀れなものだ。ケモノの寿命は、人よりもずっと短い」
どのみち、殺されるのです。
「有希恵は? 彼女はどうしたんですか」
鬼丘がおそろしい形相になりました。
「有希恵様は、巫女だ。そもそもが人間と同列ではない。ふざけたことを言うな!」
別格というのでしょうか。
さらに混乱してしまいます。
もはや、まともな会話は成り立ちません。狂った世界の狂った話です。理解できないのが普通です。
「少しは素質があると思うから、それなりに対応しようと思ったが、どうも違うらしい。なあ、望月さん」
「すみません。少しはまともになろうとしているんだと思っていたんですが……。有希恵を自分と同列と思うような、とんでもない思い上がりで……」
「わかっとらんな。じゃ、ともかく、やってみるか。この哀れな娘を救うためなのだから」
「ええ、そうですね」
男たちは勝手なことを言っています。
「いいか。これからしばらくは、おまえにとって、ここの小屋だけがすべてだ。ここで自分を捨て、ケモノになる」
望月が私の背後に回り、羽交い締めにしました。その間に、鬼丘はすばやく棚から道具を持って来ると、土間に飛び降り、私の口に押し当てたのです。
鉄の味がします。金属の棒です。それを口に深く噛ませようとするのです。抵抗してもムダで、がっちりと顎をとらえた手が、上下の歯を左右から押し開けていきます。
金属の棒が、口に食い込みます。唇が割けるのではないかと思うほど、深くきつく。
金属の棒には革のベルトがついていて、頭の後ろで固定されてしまいます。
「あー、がー」と私は声を出します。言葉になりません。
なんとか望月から逃げようと、体重を活かして暴れてみても、圧倒的な力で身動きが取れません。
鬼丘は首輪の鎖を持ち、それを天井から下がる太い縄の先端に取り付けました。縄の先端に金具が仕込まれていて、チェーンを引っかけることができるのです。
鬼丘は、小屋の隅へ行き、そこに取り付けられた丸いハンドルを回しています。みるみるチェーンは短くなっていくのです。
「ふえええ」
首が締まってきます。
望月が手を離したのですが、私に自由はありません。
天井から首を吊り上げられ、つま先で立つのがやっとです。
「チャンスをやろう。いまなら、そのまま楽に死ねる」と鬼丘。
「ほら、死んでみろ。腐ったメスブタとして死んでいけばいい」
天井を見ると、そこに素朴な山小屋らしさはありません。何本ものパイプが格子状に見えていて、チェーンや滑車、ロープが下がっているのです。
望月は、私の足を蹴ってきました。七十キロを超える体重を、首だけで支えることは困難です。片足だけでも地面についていなければ、本当に死んでしまいます。
「どうだ、辛いか」
片足ずつ後ろから蹴られ、そのたびに首にぐいっと輪が食い込みます。
強制的に開かされた口から、涎とうめき声が流れ出ます。
おそろしさに小水が吹き出し、足を伝っていきます。真っ黒な濃い陰毛にその滴が残り、生温かい感触が広がります。
「じゃあ、少し楽にしてやろう。首だけで支えるのは難しいだろうから」
望月が合図をし、それに鬼丘が応じて、隅に立て掛けてあったアルミの脚立を持って来ました。
望月は背後から私の乳房を握りました。
「FカップかGカップだな」
揉みしだくので、身もだえします。そこに新たな縄がかかりました。乳房の根本に、二重三重に縄が巻き付き、ぎゅっと絞り上げていくのです。
左右の乳房に別の縄を取り付け終えると、乳房が前に飛び出しています。
その縄尻を鬼丘が持って三脚を上がっていきます。天井のパイプに縄を通します。
「このぐらいボリュームがあれば、いきなりやってもいいだろう」と鬼丘。
「まあな。少しはおとなしくなる」
二人して縄を持って「せーの」としゃがみ込みました。
「うがー」
叫ぶしかありません。
乳房がもぎ取られるように引き上げられ、首と二つの乳房で、体重を支えるのです。
乳房がちぎれる痛み。何秒も耐えられないでしょう。でも、しばらくすると、自分が身動きしなければ、体重を分散させて、痛みも多少は耐えられることがわかってきました。
「どうだ。郁美。ケモノに堕ちる気になったか?」
返事などできません。
望月たちも、返事を聞きたいわけではないのです。
二人は手に、細長い鞭を持っています。長さは一メートルほどで小ぶりですが、革の一本鞭は、振り上げるとヒュッと小気味いい音を立てます。
そしていきなり一撃が、お尻に打ち込まれました。
「がー」
せっかくかろうじてバランスを取っていたのに、鞭の勢いと痛みでつい体が動き、乳房や首に余計な負担がかかってしまいます。
鞭の痛みは尻だけではなく、首と乳房にも連鎖するのです。
「まだまだ許さないぞ」
ピシッ、ピシッと細い鞭が尻たぶを切り裂いてきます。石突きの跡が残っている尻に、餅つきのように交互に鞭を打ち込み、新たな赤い傷が生まれていきます。
二人で五十発ほど打ち込んだでしょうか。
「限界かもしれないな」と鬼丘。
「よし、じゃあ、もう一カ所、体を支える場所を増やしてやろう」
新たなロープが天井のパイプから下がってきます。黒ずんで見える縄は、瘤がいくつも作られていました。それを私の足の間に通します。
彼らがやろうとしていることは、私にもわかりました。
「せーの」と二人は声をかけて、その縄をピーンと張ろうとしました。瘤のついた部分が股間を直撃します。
「あぐぅう」
うめき声が小屋に響きました。
発電機の音が大きくなりました。天井や壁の電灯がいくつも点灯し、薄暗い中に、私の白い体を浮かび上がらせているのです。
私は、天井から吊された縄にまたがっていました。登山中に股縄でなぶられた敏感な部分に、新たな痛みが加わっていました。
首が絞まるか折れるかして死ぬかもしれないという危険は少し遠のきました。
ただ、乳房は赤黒く変色して、そのうちに、ちぎれてしまうでしょう。股間も縄で切れて、ズタズタになってしまうでしょう。
恐怖は、形を変えただけで、消え去ることはないのです。
二人は飽くことなく、鞭を振り下ろしていました。お尻だけとは限りません。好きなところを打つのです。
鬱血した乳房、背中、汗で光る下腹部……。例外はありません。
さらに五十発以上の鞭打ちを受けて、失神寸前になっていました。
「今日の仕上げだ」
鬼丘がスプレーを手にしています。そこにライターの火をかざすと、大きな炎の舌が噴き出しました。
気が遠くなっていた私は、とうとう最後が来たと思い泣きわめきました。なにかを言ったと思うのですが、鉄棒を咥えているので言葉になりません。ただ、「あわあわ」と叫んでいるだけです。
炎の先が、股間に向けられました。ドラゴンの吐く息のように、音を立てて炎が陰部に襲い掛かります。逃げ場はありません。
パニックです。もう体がどうなってもいい。首が折れようが、乳房がちぎれようが、股間が裂けようがかまわない。もうこんな状況は終わりにしたかったのです。
激しく暴れました。
死の恐怖以上の恐怖なのです
「どれどれ、おとなしくしろ」と鬼丘は、私の股間の毛を炎で炙ります。その臭気を逃すために、天井に近い窓を開けました。
「こいつを焼いてやろうな」
永遠とも思える苦悶の時間。それはまだ始まったばかりなのでした。
ケモノ狂い
泣きました。涙がとめどなく流れて止まらないのです。
男たちは、私の手を肩胛骨のあたりに絞り上げて縛りあげ、足は左右とも膝を折って縛り胴と密着させて固定しました。思い切り股間を広げてしゃがんだような格好です。
「図体はでかいが、思ったより体が柔らかいな」と鬼丘。
ザラザラとした畳に転がされました。
焼け焦げたた陰毛を、男たちにからかわれるのです。
「濃いな。燃えきらなかったぞ」
「ケモノの証拠だな」
「どうだ、つるつるに剃ってやろうか」
ややサビの浮いたカミソリを手に、鬼丘はうれしそうに洗面器と石鹸を持って来ました。
「こうされたのは初めてだろう?」
鬼丘はうれしそうにカミソリを操ります。燃え残った毛が、ジャリッと音を立ててそり落とされました。
「つるつるに、赤ん坊のように仕上げてやろう」
昼間の登山、そして小屋に連れ込まれてからの縄による吊りによって、そこは真っ赤に腫れていました。
今朝、処女を失ったばかりなのに、外側からも激しく傷つけられているのです。
そこを飾る毛まですっかり剃られて、剥き出しになってしまいます。
その柔らかな部分を、男たちの指先が無遠慮に触るのです。
二人の男は、油のようなものを手につけてザックで擦り剥けた背中や乳房、そして股間を感触を確かめるように揉んでいます。
「これだけの体だ。きっと、どんなことにも耐えられるだろう」と鬼丘。
「最初に見たときから、責め甲斐があると思ったんだ」
肉体的にも精神的にも限界に近づいている私を、二人はさらに追い詰めます。
「最初が肝心だからな。忘れられない夜にしてあげよう」
油のついた二十本の指が自在に体の中を行き来し、敏感すぎる核にかかる皮を剥きあげるのです。そして、お尻の穴までも……。
「あふぃぃぃ」
最初、どこを触られているのかわかりませんでしたが、人に触れられるべきところではない穴だとわかると大きな声で泣き叫びました。
少し落ち着いたのを見計らって、猿ぐつわの鉄棒が取り除かれました。
「どうだ、気持ちいいだろう?」
「やめてください。もう、これ以上は」
「これ以上? まだ序の口じゃないか」と望月が言います。「おまえは、わかっていないんだよ、自分の本当の姿を」
「いやです」
「なにがいやなんだ。本当の姿を知りたいだろう?」
「知りたくありません」
「知ることになるさ。たっぷりとな」
鬼丘は、細い泥だらけの棒を持って来ました。その先端をナイフで剥いていくと、真っ白な中身が出てきました。
それを二本作り、鬼丘と望月が一本ずつ持ちます。
「さあ、すごいことになるぞ」
望月がその先端を私の恥丘にこすりつけます。二人の指になぶられて柔らかさが増している女性の穴に、冷たく尖った棒の先端が入り込みました。
「これがなにか、わかるか?」
「わかるわけないじゃないですか。やめてください」
望月が棒をゆさぶります。その先端は私の粘膜に密着して、しだいにねばねばとしてきました。
「よし、おれはこっちだ」
鬼丘は棒を私の肛門にこすりつけ、静かに押し込んできました。
「やめて!」
怖ろしくて叫びます。
二人とも無視して、二つの穴の粘膜にたっぷりとねばっこい汁をつけていきました。
「ここの自然薯はな、ものすごく体にいいんだよ」と鬼丘。「それだけに、かゆみの成分もとびきりきつくてな」
二人はそう言いながら、穴の奥へと棒をすべりこませていくのです。
柔らかくなった部分に粘りのある棒がぐいっと、奥深く入り込んできます。そして彼らはその棒をこねるように動かすのです。
「あひぇあひぇ」
私の体に異変が起きていました。最初は言葉にならず、ひたすら汗がどっと噴き出てきました。
「かゆい、かゆい!」
やっとその感覚を表現できる言葉を見つけました。
「まだまだ、これからだ」
男たちは、自然薯を手加減せずに押し込みます。そしてその汁をたっぷりと粘膜の襞という襞にこすりつけていきます。
かゆみ成分が敏感な肉体に、じんわりと染み込んでいきます。
「うひー」
頭が激しくスパークし目をぐるぐると回して、身もだえしながら私は狂っていくのだ、と思っていました。このまま狂って死ぬのだ、と。
鬼丘は、金属の道具を持って来ました。私には、それがなんだかわかりませんでした。
「医者が使う膣鏡だよ。前は直径五センチ、後ろは三・五センチからやってみるか」
膣鏡、と聞いてもピンときませんが、その器具をパカパカと長い先端部分を開いて見せるので、なにをするつもりか私にもわかりました。
自然薯の汁ですべりやすくなった性器に、望月は大きな方を差し込みました。冷たく、硬く、奥の子宮に乱暴に突き当たります。そして、ネジを回すのです。
「どうだ。こうすると、あそこがめいっぱい広がっていくぞ」
男をほとんど知らない性器が、彼らの目の前で限界まで広げられていくのです。
かゆさ、恥ずかしさ、痛さ。そのすべてによって、私の毛穴から大量の汗が噴き出し、死にたい、とばかり思うようになりました。殺してほしい、そのほうがラクになれる、と……。
言葉は出ません。歯を食いしばって耐えているだけです。
次に鬼丘がお尻を広げて、細いタイプを突き入れてきました。最初は痛みはあまりなかったのですが、ネジを回して口を開いていくにつれて、股間が裂けるような痛みになります。
「こっちはまだ経験が浅いから、慎重にやらないとな。三、四センチぐらいは普通に開くはずだがな」
とうとう二つの穴を全開にされてしまいました。猛烈なかゆみは肉体を蝕み、痙攣するような震えが止まりません。
「取って、お願いですから」
歯を食いしばりながら、なんとか絞り出した声。でも、それはすぐに泣き叫ぶ声になってしまいます。
「うがぁー、助けてぇ、殺してぇ」
彼らはまったく無視しています。
「これからだ」と鬼丘。
おろし金を持って来て、私の体にこすりつけた自然薯を、すり下ろします。そして全開にされた穴の中へどろっとした自然薯を流し込み、たっぷりと詰めていくのです。
「びゅえー、気が変になります」
二つの穴を責められて、身もだえしながら泣き叫ぶしかありません。
膣鏡を抜き取られていくとき、どろっと大量の自然薯があふれました。その量はどんぶり一杯ほどもあるようで、体内に残された分がどれほど大量か想像するのも怖ろしいことでした。
「どうだ。どうしてほしい?」
「かゆいんです。取ってください。洗わないと死にます」
「それはできないな」
二分、三分。じわじわとかゆみの成分が体に染み込んでいきます。
感じてる苦痛だけではなく、これから何時間もこの苦痛の中にいることへの恐れも重なります。
絶望的な気持ちです。
「なんでもします。なんでもしますから、お願いです。取ってください」
なんとかまともな言葉を発することができました。
二人はあんまり反応してくれません。
「なんでもしますから!」
「たとえば、どんなことをする?」
「なんでもします」
二人の男たちは全裸になりました。汗臭い男たち。小屋に体臭が広がっていきます。
「じゃあ、まず、おれたちの臭いをたっぷりかいでもらおうか」
望月が私の顔の上に腰をおろしてきます。汗臭く、男ならではの臭気を発散している部分。硬い毛がびっしりと生えています。それが私の鼻、口に押しつけられます。
「舐めろ。なんでもするんだろう?」
抵抗をしようにも、それもできません。なんでもしなければ、助けてはもらえないのです。私は口を開き、舌を伸ばしました。
望月はわざと腰を浮かして、ちゃんと舌が伸びているか確認するのです。
「どうなんだ、舐めたいのか。だったら、お願いしろ」
「助けてください」
「違うだろ。舐めさせてくれ、だろ」
「ううう」
これほどの苦痛、屈辱。頭がカッとなっています。
言うしかないのです。
「お願いです。舐めさせてください」
「なにを?」
涙があふれてきます。
「望月さまのお尻を」
「よし」
望月が腰を下ろしてきました。息ができないほどです。ぐいぐいと前後に揺すります。舌に、彼のお尻の穴の部分や、ぶらさがった陰嚢が触れてくるのがわかります。
「もっと、しゃぶるように吸え!」
そんなことはできない、と思いながらも吸っていました。いやらしい音がしていて、それを自分がやっているとはとても信じられません。
「次はこっちだ」
鬼丘の尻は、山小屋に長く暮らしているからでしょう。望月以上に臭いだけではなく、ケモノのように毛深いものでした。陰嚢も大きく垂れ下がっています。
私は必死で舌を伸ばします。
どれほど吸い、舐めたことでしょうか。口の中に二人の陰毛がたくさん残っています。
「吐き出すんじゃないよ。飲み込め」
うげっとなりますが、とりあえず飲もうとはしました。大半は口の中に残ったままです。喉にもへばりついています。
初めての絶頂
「よおし。だいぶ、よくなってきたな。じゃあ、かゆみを取ってやろうか」
「お願いします」
「方法はいくつかあるが、ケツは酢を浣腸してやろう」
鬼丘は、その支度をはじめます。ガラス製の大型の注射器のような道具に、酢をたっぷり吸い上げていきます。
異臭に強い酢の臭いまで混ざり、吐きそうになります。
「きついぞ」
「早く、早く! 耐えられません」
鬼丘は先端をお尻に押し込んで、ぐりぐりと肉の感触を楽しむようにゆすりながらプランジャーを押しました。最初は液体が入り込む感覚だけでしたが、やがて酢の激烈な刺激が腸に染み込んでいきます。
かゆみを痛みで抑えるとでも言うように……。
「ぐぅああー」
腸が焼け爛れてしまう、と思いました。
「熱い! 焼ける!」
叫んでも男たちは笑うばかりです。
「うるさいな。こっちはどうするかな」と望月。「掻き出すしかないか」
棚から、木の枝を削って作ったらしい、杭のようなものを取ってきました。よく見るとこけしのようでもあり、その顎の部分は傘のように大きく張りだしています。
「どうだ、これで掻き出してやろう」
望月は、白い粘りのある自然薯をぷくぷくとあふれ出している膣に、その杭を押し込んでいきます。それは男性の性器を模したものだ、と私にもようやくわかりました。もちろん、私が経験したことのない大きさ、硬さです。望月も、運転手も、鬼丘も、そこまで残酷な固さ、容赦のない大きさではありませんでした。
「ぐひぃぃぃ」
ぐりっと、引き裂くように奥まで入れてきます。
「すごいね、入ったぜ」
しばらく中に押し込んだまま、ぐるぐると回すようにこねています。内臓がえぐられるようです。
そして、今度は抜こうとします。
「あぐぅぅ」
それも強烈な痛みをともないます。自然薯とそれに反応して体から滲み出た汁によって、普通のサイズのものなら、それほど苦痛ではないはずです。
傘の部分が、粘膜をこそげ取るように突き刺さりながら、引き抜かれていくのです。
「ぐげぇぇぇ、いったーい!」
ゆっくり抜き出されていきます。くちゃっと音を立て、大量の自然薯が掻き出され、私の股間に山のように盛り上がりました。
それほどの量を入れられていたのです。
「お願いです。殺してください」
私は泣き叫ぶのでした。
望月は股間に食酢を垂らし、再び杭を押し込みます。ぐちゃぐちゃとイヤらしい音がして、酢が流し込まれます。杭が激しく抜き刺しされています。
白い汁は出なくなり、透明になっていきました。
小屋の中は強い酢の臭いでいっぱいです。天窓から少しずつ空気は抜けていくようですが、息苦しい空気が淀んでいました。
「ふぇー」
私の全身が突然、痺れます。体全体をなにかが、ぎゅっと包み込むようです。
肛門から酢と自然薯を吹き出します。性器からは、透明な液体がビュッと噴き出しました。
とうとう私は壊れてしまった、と思ったのですが、押し寄せる波のような感覚がつぎつぎとやってきて、わけのわからない状態になりました。
「アクメってやつだぜ」
体がビクビクと震え、魚のように口をパクパクさせ、白目を剥いてしまいます。なにも考えることはできません。脳みそが宇宙に吹っ飛んだような感じです。
「どうだ、こんな気持ちのいいこと、初めてじゃないか?」
「ふひっ」
気が狂いそうになっているのです。口をパクパクさせるだけで、言葉になりませんでした。
これが、私の生まれてはじめての絶頂感だったのです。
彼らはなにもしませんでした。それでも、長い時間、私は勝手に感じまくっていたのです。
部屋の空気が冷たい、と感じたとき、ようやく、私は目の焦点が合うようになりました。
「よがり狂いやがって」
鬼丘たちは、私の下半身を水で洗ってくれました。
「どうだ。おまえはケモノだったな」と鬼丘。
「認めるか?」
「はい。私はケモノでした」
認めるしかありません。
逆らえば、さらに激しい責めを受けるでしょう。それに耐えることはできそうにありません。
それに、通常の人なら耐えられないような責め苦を受けて、私は絶頂を感じていたのです。
怖ろしいことでした。私は本当にケモノなのかもしれません。
「じゃ、次は、これだ」
鬼丘は、拳
ぐらいの大きさの円盤状の金属に、木の
外枠がはめ込まれた道具を持って来ました。
「見ろ。この木のところ。ガタガタになっているだろう。これは、おまえの先輩たちがつけた歯形だよ」
「いや」
拒絶です。もう責められるのはイヤでした。心も体も壊れてしまうに違いないからです。
「いやなものか。あれだけ感じておきながら。おれたちに感謝するべきだろうが」
望月が怒鳴っています。
「なんでもします。ほかのことなら、なんでもしますから」
「だめだ。これをするんだ。口を開けろ」
仕方なく、口を開きました。
器具がねじ込まれます。木の枠に刻まれた歯形のいくつかが、ぴったりとはまります。ベルトで後頭部にしっかりと止められました。
鬼丘がネジを回すと徐々に金属が開いて、口が強制的に開いていきます。鬼丘は私の顎に指をあてて、限界を探りながらネジを回します。
「これで、おまえは、口の中に何を入れられても文句は言えないな」
男たちは笑っています。
男たちは交互に、その男根を開ききった口に入れてきました。
舌が逃げようとしてもかえって彼らに触れてしまい、悦ばせてしまうのです。
「あげっ、あげっ」としか、私は言えません。
望月のものは、長く細いのです。鬼丘のものは太くて短いですが、傘状にはっきり張りだしていました。そしてなんと言ってもすさまじく臭い。
容赦なく口に押し入ってきます。舌に、頬の内側に、喉の奥にこすりつけてきます。
「ほらほら、いくぞ」
ほどなくして、鬼丘のものがビクビクと震え、粘りのある液体が喉に流れ込みました。
望月は、その喉の奥まで突き入れて、激しくこすりあげたのちに液体を噴き出しました。
粘りがあって、味も臭いもない、えたいの知れない物質を、私は吐き出したくてなりません。
「飲めよ。おれたちの精子だからさ」
飲みたくないのです。体がそれを吐き出そうとしますが、できません。
仕方がなく、喉に貼り付くように粘る大量の精液を、なんとか飲みます。
「まだ残ってるぞ」
二人は口の中を見下ろし、ぺっぺっと唾を吐きます。
「うまいだろう。ちゃんと飲めよ」
唾と精液を飲みます。それはもはや味などというものではありません。
「へへへ。だんだん、それらしくなってきたな」と男たちは妙に満足そうです。
私を放置したまま男たちは料理を作り、酒を飲みはじめました。気が向くと食べ物と水を、開いたままの私の口にも押し込みます。
味のするものが喉を通ることで、正気が保てているようです。
休息は束の間でした。
望月は、再び勢いを取りもどした男根を見せつけます。
「どうだ。少しは慣れたか。ケモノはケモノらしく。よがり狂えばいい。それがおまえの本性なんだ」
そう言い聞かせながら、私の中にそれを突き入れます。
「どうなんだ。少しは感じるようになったか」
なぶられて、痛みしか感じない膣を彼は擦り上げていくのです。
そして、中に果てました。
「しぶといやつだな」
鬼丘は、私のお尻に興味があるのです。
「こっちのバージンをいただくか」
硬く太いものが、ぐいっと私の体を持ち上げるかのようにめり込んできます。
そのおぞましい感覚に、泣きながら耐えるしかありません。尻の穴が限界まで押し広げられ、激しく揺さぶられるのです。
「おう、おう」と私は思わず声を上げていました。
「感じてるのか? こいつ、こっちのほうがいいらしいぜ」と鬼丘は満足げに、射精しました。
でも、それで終わったわけではないのです。
二人はすぐにまた硬く立ち上げると、今度は、同時に二つの穴を狙うのでした。鬼丘のものは、さきほどよりもすんなりと尻に入ります。鬼丘が私を担ぐようにして、股間を望月に突き出させます。
そこを望月が覆い被さってきて、肉棒を入れてくるのです。
「あふうう」
二本の棒が体内でふくれあがり、ゆすられていくうちに、これまでにない熱いものが体の中を駆け巡っていきました。それが、全身を包み込むような快感になっていくのです。
いつまでも、これが続けばいいと思いました。そしてそのまま狂って死んでしまえたらいい、と。
だが、そうはなりません。
「あぁうぁぁ」
うまく言葉が出せないまま、絶頂を一度、二度と迎えて、男たちが射精して終わりました。
そして現実に引き戻されたのです。
「よかったなあ、おまえ」と鬼丘。
「望月に目をつけられなかったら、こんなすごい快楽を感じることは一生なかっただろうさ」
その意味を噛みしめます。悔しかったのです。その言葉に反論できなかったからです。
あれほど苦しく、痛く、かゆく、そして恥ずかしい目に遭わされ続けているのに……。
自分の中にある獣性が目覚めさせられたようなのです。
もっと快楽が欲しい、という気持ちがあることに初めて気づいてしまったのです。なんとかそれを彼らに知られないように、押し殺そうとしていました。
縄を解かれ、痺れた手足に血が戻ってきます。
「おまえは、そこだ」
土間に落とされ、首輪をつながれたまま、夜を明かしました。
男たちは、酒盛りをしながら寝てしまったようです。
泣きはしません。このまま、ここで自分は快楽と死に直面するのでしょうか。もはや、自分は元には戻れないのだろう、とは思っていました。
冷静になると、とてもケモノになりきることもできそうにありません。そこまで堕ちることなど、できるのでしょうか。
あの底なしの快楽の中に、ずっと死ぬまで浸っていることができるというのでしょうか。
ケモノになれなければ、殺されるかもしれません。ケモノに堕ちきっても、そのまま死ぬかもしれません。
どっちにしろ、私はもう自分の意思で生きることはできないのです。
それなら、苦痛よりも快楽の中で死にたいと思うことは、いけないことでしょうか。
ケモノから再び人間に戻ることなど、とうてい、できそうにない話です。
どっちにしろ明日も、明後日も、彼らに責められ、殺されるのです。
泣き叫び、わめき、そしてたとえようのない快感に包まれて、私はこの世から消えていくのです。
痛む体を抱えて、眠れぬ夜が明けていくのを待ちました。思ったよりも早く、外が明るくなりました。
帰宅
小屋の窓に光が差して、あたりがよく見えるようになるにつれて、私は自分の惨めな姿を自覚させられることになりました。
なにも悪いことはしていないのに、なぜ、こんな目に遭うのでしょう。
望月、鬼丘の二人の常軌を逸した行動に、ただ、なされるがままにされてきたのです。その疲れ、だるさ、そして節々の痛み、さらにそけい部など皮膚が一枚剥がされたような痛みもありました。
今日、さらに過酷な現実を突きつけられるのでしょうか。ケモノに堕とされるのでしょうか。
なにもかも、あきらめるしかないのでしょうか。
楽しい大学生活、就職し、仕事を持つこと。働いて得たお金で海外旅行をすること。その間に、運命的な出合いがあって、恋愛、結婚。愛する人の子を産むこと。人として人生を精一杯生きること。
そのすべてを失うのです。取り返しのつかないところに来てしまっているのです。
有希恵は、同じ女性なのに、私をこんな目に遭わせて平気なのでしょうか。彼女は、なにごともなかったように大学へ行き、就職し、結婚するつもりでしょうか。
あまりにも理不尽です。
激しい怒り。悔しくて涙が出てきてしまいます。
「起きてるのか」と望月の声がしました。
その声、その影を見ただけで脅えてしまい、逃げようとしました。
ですが首輪とチェーンを忘れていました。
「あぐっ」
喉が締まり、私は土間に倒れてしまいました。
「元気そうじゃないか」
体がケモノじみた反応をしてしまうのです。怖くて、怖くて、仕方がありません。
「今日は、朝飯抜きだ。すぐ出発するからな」
身支度をした望月は、二つのザックを私に前後に縛り付けます。昨日に比べると、半分以下の重さでした。
それでも素肌は疲れ、傷ついています。布が当たるだけでもきついのです。そして、シュッと音を立ててロープが股間に通されていきます。
「うぁへっっー」
痛みがすべてよみがえるのです。
開口器のせいで、一晩中、口を開けたままでした。
望月はそこに水を注ぎます。ごくごくと飲みましたが、こぼれて体を濡らしました。
「じゃあな、また来るから」
半分寝ている鬼丘は、「おう」と言っただけで、起き上がってもきません。
鎖を引かれ、四つん這いで小屋を出ることになりました。
昨日、有希恵が歩いて行った道をたどるのです。微かに期待がありました。もしかしたらこれは悪い冗談で、このまま解放されるのではないでしょうか。
二時間ほど比較的平坦な森の中の道を歩かされます。
今日は登山靴も取り上げられて素足です。道には小石や小枝はあるものの、湿った土が多く、なんとか遅れることなく歩くことができました。
惨めすぎる姿で、このまま誰かの目にさらされるのが怖ろしくてなりません。
縄がこすれる股間の痛みも、激しいものです。昨日のいたぶりによって腫れている部分が破れ、血が出ているに違いありません。
何時間もこうしていたら私の股間は生木を裂くように、真っ二つになっていくのだろうと思うほどです。
突然、森が終わりました。


